再び無人ビジネスに投資が集まり始めている。2017年にブームとなった無人コンビは結局フェードアウトしてしまったが、新型コロナの感染拡大により、無接触というキーワードが注目をされていると鉛筆道が報じた。
再び注目を集める無人スタンド「茶里小怪獣」
ロボットが作るタピオカミルティースタンドに投資が集まり始めている。このようなドリンクスタンドは、2017年に無人コンビニ、無人スーパー、無人カラオケなどの「無人」ブームの際に、無人コーヒー、無人ジューススタンドなどが登場した。自動販売機よりはやや規模が大きく、飲料を作る過程が見えるというのがポイントで、多くの投資資金を集めた。
しかし、無人コンビニを始めとする無人ビジネスは結局フェイドアウトしてしまった。ところが、2018年8月に創業した「茶里小怪獣」がタピオカミルクティーの無人スタンドを開発し、ニューヨーク、パリ、香港などにオフィスを持つ投資会社「Invus」(インバス)が2300万元(約3.6億円)のエンジェル投資を行ったことが話題になり、同様の無人タピオカミルクティースタンドが現れ始めている。茶里小怪獣は、投資資金を得て、スタンドの改造を行い、11月にも新しいバージョン3.0を公開する予定だ。
▲茶里小怪獣の店舗。ロボットアームが製造するところが見られるようになっている。その面白さと、きちんと作っていることがわかること、無接触であることなどから歓迎をしている消費者も多い。
▲茶里小怪獣のタピオカミルクティー。人が作るよりも分量などは正確。
ロボットアームの製造プロセスも魅力のひとつ
茶里小怪獣は無人スタンドといっても、でき上がっているタピオカミルクティーを売る自動販売機ではない。ロボットアームが動き、1からタピオカミルクティーを作っていく。その動きも、茶里小怪獣の魅力のひとつになっている。
茶里小怪獣は、高紫梁と王司嘉の2人が起業した。高紫梁はマーケティング業界の出身。王司嘉はエンジニアで、上海冀晟自動設備で、150人のチームを率い、ロボットアームによる自動化システムを開発していた。
▲すべてのプロセスはロボットアームが行う。人が手を触れないため、無接触というキーワードが話題になっている。
▲ミルクも必要になってからパックを開ける。このようなプロセスがすべて見えることが安心感につながっている。
人件費よりも、スタッフ採用コストを下げることがメリット
2人が無人タピオカミルクティースタンドに狙いを定めたのは、タピオカミルクティー店のスタッフ採用コストだった。
多くの店舗は50平米ほどの広さで、12人のスタッフで、1日400杯を売るというのが標準になる。問題は、スタッフの定着率の悪さだった。年の離職率は128%にも登る。勤続3ヶ月がベテランと呼ばれる世界だ。
もし、客席もある大型店を100店舗展開すると、1店舗に50人ぐらいのスタッフが必要になるので、チェーン全体で5000人のスタッフが必要になる。これで離職率が128%のままであると、年に6400人を補充しなければならない。毎日20人弱を採用しなければならないのだ。
これでは人事担当者は激務になってしまうし、何より企業文化を構築する暇がない。それでは企業は長続きしない。
茶里小怪獣は、この問題を解決するために、ロボットアームによる無人店舗という答えにたどり着いた。
人よりもロボットの方が品質の高い製品を作れる
高紫梁は、チェーン店の人材採用のコストを不要にするだけでなく、飲料の品質にもロボットアームは貢献できるという。「タピオカミルクティーを作るプロセスは複雑です。お茶を淹れる、タピオカを煮る、ミルクを入れる、氷を入れるなどの作業プロセスがあります。これを人間が行うと、忙しい時には砂糖を多く入れてしまったり、お茶の抽出時間が長くなったりしてしまいます。それを防ぐには、マニュアルによる厳格な標準化と、それを守らせる教育が必要になります」。
しかし、タピオカミルクティースタンドでは、スタッフは作業の質が上がってきたところで辞めてしまう。ロボットであれば、いつでも同じ作業を行ってくれる。
損益分岐点は1日106杯
2018年8月、茶里小怪獣の試験営業を始めた。既存のロボットアームがタピオカミルクティーを作る。店舗は透明なアクリルに囲まれ、ロボットアームが制作をする過程がすべて見えるようにした。1杯18元で販売した。
2019年1月には、新開発のロボットシステムが完成をした。7種類の飲料を作ることができる。
このロボットシステムを使った第1号店を上海に開店した。ロボットアームの製造費用は35万元、店舗の広さは8平米、1日で500杯を作ることができ、損益分岐点は106杯だった。
▲上海1号店は、物珍しさもあって、行列ができるほどの賑わいとなった。
有人スタンドの半分以下の期間で投資を回収できる
この無人スタンドには数々の利点がある。一般的なドリンクスタンドは最低でも20平米から40平米は必要で、上下水道設備を必要とする。しかし、茶里小怪獣は8平米で、上下水道設備を必要としない。そのため、出店場所の選択肢が大幅に増える。ショッピングモールの空きスペース、公園の中など、場所さえあれば出店できるため、家賃は大幅に下げられる。
もうひとつの利点は、投資の回収期間が短いことだ。一般的なタピオカ損益分岐点が1日約250杯で、大規模チェーン店では多少低くなり、個人営業店では高くなる。しかし、茶里小怪獣は人件費と家賃が大きく減るために、損益分岐点は100杯前後となる。つまり、投資の回収に必要な期間は半分以下になる。
▲茶里小怪獣3.0の予想図。1杯を60秒で作れるというスピードアップが図られている。
「無接触」をキーワードして、再び投資熱が高くなる
2020年5月に、茶里小怪獣のロボットアームの第2世代が投入された。第1世代のロボットには砂糖の量を調整する機能がなかった。加糖か無糖かを選ぶしかなかった。しかし、第2世代では少なめ、半分を選べるようになった。製造できる品目も25品目に増えた。
現在、11月の第3世代投入に向けての開発が進んでいる。目標はタピオカミルクティー1杯を60秒で作ることだ。
再び、無人○○の投資ブームが起きる気配が生まれようとしているが、以前のブームとは質が違っている。以前は「無人なので人件費が節約でき、商品を安く販売できる」というものだったが、実際は商品の搬入、監視システム、顧客リモート対応などにコストがかかり、有人コンビニと比べて、コストが大きく圧縮できるというわけではなかった。そのため、ブームが弾けてしまった。
しかし、今回は、消費者側が「無接触で作った飲料を、無接触で受け取れる」という「無接触」が焦点になっている。以前のブームは、経営側のメリットが主導したものだったが、今回は消費者側のニーズが主導をしている。
そのようなことから、しばらくはこの「無人、無接触」ビジネスに投資がされることが続きそうだ。