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キャッシュレス決済というと、よく「中高年が苦手としている」と言われますが、実態は違っているようです。キャッシュレス推進協議会の「キャッシュレス調査」によると、85.31%の人が何らかのキャッシュレス決済を利用しています。
面白いのは、年代別のデータで、現金決済が多い世代の第1位は10代(39.9%)で、これは未成年であるために仕方ありません。第2位の70代以上(17.7%)も予想通りです。しかし、ほぼ現役世代の20代から60代の中では、最も現金決済が多い世代は20代(14.4%)であり、最も現金決済が少ない世代は50代(9.4%)になっています。
世間が想像している「若者がキャッシュレス決済を積極的に使い、おじさん、おばさんは苦手としている」という話は、むしろ真逆で「おじさん、おばさんが積極的にキャッシュレス決済を使っているのに、若者が足を引っ張っている」とも言えるのです。
▲最も「現金決済のみ」が少ない年代は50代。むしろ、20代に現金決済のみの人が多い。
もちろん、これには理由があります。それは、中高年は、キャッシュレス決済といっても、使っているのは多くがクレジットカードなのです。「中高年はスマホ決済を苦手としている」というのであれば、その通りかもしれません。
「一般消費者におけるキャッシュレス利用実態調査レポート」(NECソリューションイノベータ)によると、20代男性のQRコード型スマホ決済利用率は34.4%であったのに対し、50代では19.8%、60代では15.4%となっています。
これはわかります。面倒くさいのです。クレジットカードであれば、基本は渡すだけで店舗スタッフがやってくれます。最近はセキュリティの観点から、利用客が自分で操作をするようになりましたが、それでも差し込んで、PINコード(暗証番号)を打つだけです。
一方のスマホ決済は、まずアプリを入れ、アカウントを作り、決済関係の設定をしなければなりません。しかも、決済のたびにアプリを起動してQRコードを表示するなどの手間がかかります。「クレジットカードでいいじゃないか」。そう思っている中高年は多いと思いますし、当面はそれでいいのです。
▲QRコード型スマホ決済の利用率を見ると、20代が最も多く、世代が高くなるほど利用率は低くなっていく。
しかし、社会の進化を考えると、最終的な理想形はやはりスマホ決済です。QRコードではなく、NFCなどのタッチ型が好ましいと思いますが、それは枝葉末節のことです。
スマホ決済の最も大きな利点は、スマホの中で買い物から決済までが完結するということです。例えばモバイルオーダー。街を歩いていて喉が渇いたら、スマホでカフェを検索。そして、その場で飲み物を注文してしまいます。当然、決済まで済んでいます。歩いて店舗についた頃には、飲み物ができあがっていて、スマホの注文表を見せれば、飲み物を受け取れます。行列に並ぶことも必要ありませんし、決済という行為そのものをする必要がなくなります。
つまり、決済は物々交換から始まって、通貨を介在させるようになり、さらに電子化をされ、最終的には取引の中に埋め込まれるようになり、「決済」という行為そのものが消えていくことになります。そのためには、ツールとして、通信機能もなく操作もできないプラスティックカードではなく、スマートフォンを決済ツールとするのが正解なのです。
ただし、将来はともかく、現在はその過渡期なので、決済ツールとしてのスマホは決して使いやすいものではありません。決済プラットフォームも、物理通貨の時代の感覚と電子通貨の感覚が入り混じっていて、仕組みも理解しづらいものになっています。
このような過渡期には、次々と新しい仕組みが登場をして、しかも合理的とはいえない仕組みになってしまいがちです。中高年は、こういう方向性が揺れ動く形の進化にはなかなかついていくことができません。かかる手間と得られる利便性を秤にかけると、かかる手間の方が大きいと判断してしまうのです。
しかし、若い人は、かかる手間と好奇心を秤にかけて、好奇心が上回るため、多少合理性を欠く進化であっても追従していき、新しい道を切り開いていくことになります。
ですので、中高年は枯れたツールであるクレジットカードを使い、若者は新しいツールであるスマホ決済を使うことになり、現実もそのようになっています。
小売業にとって、長期の戦略を考えた場合、キャッシュレス決済に対応するのは当然のことですが、その中でもスマホ決済に積極的に対応をしておく必要があります。スマホ決済に対応をすることで、新小売を始めとする多彩な販売方法が取れるようになるからです。以前は、「人が店を探す」ことで消費が成立をしていましたが、現代は「店が人を探す」ことをしないと消費が成立しません。旧態依然とした店頭販売だけをしていたら、ECに蚕食されてしまいます。
もうひとつは、若い人も歳を取るということです。ECやスマホ決済を使いこなす若い人が中高年になったとき、突然、店頭購入と現金決済に戻ることはありません。若い時と同じようにECを使いスマホ決済を使います。旧態依然とした小売を続ける店舗は、時間とともに市場が縮小していくことになります。
そうならないために、小売業は常に新しい消費スタイルに対応をしていかなければなりません。
台湾に「全聯福利中心」(PX Mart)というスーパーがあります。PX Martによると、顧客の中心層は「ママとおばあちゃんがお客様」という庶民派スーパーです。このPX MartもECの成長により、次第に経営が苦しくなっていきました。
この苦境を脱するために、PX Martは独自のQRコード型スマホ決済「PX Pay」を導入して、宅配などの新小売に対応をしました。しかし、スマホ決済が苦手な「ママとおばあちゃん」にどうやってスマホ決済を浸透させたのでしょうか。
今回は、PX Martが独自スマホ決済を顧客に浸透させ、新小売化に成功したストーリーをご紹介します。
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