中国の春節(旧正月)は、実家に帰り、家族と過ごすのが伝統だった。しかし、最近では、家族を連れて国内旅行、海外旅行に出かける人が増えている。国家旅行局データセンターとシートリップ旅行ビッグデータ連合実験室は、「2018春節中国海外旅行ビッグデータ報告」を公開した。この報告書によると、中国人の海外旅行熱はますます高く、広くなっていると中国旅行研究院が報じた。
春節イベントのある海外都市が人気。日本では長崎
報告書によると、春節(旧正月)連休中に、中国人が訪れた海外の都市は、120カ国、3944都市。国内230都市の市民が、ネットの旅行予約サービスを利用して、約70カ国、800都市の海外旅行を楽しんだ。
春節の連休で人気が出てきているのが、春節関連のイベントを行う海外都市への旅行だ。春節は中国ではいまだに一年で最も重要な祝祭日で、爆竹や縁起物でお祝いをする。この連休を利用して海外旅行をする人も増えているが、春節の気分が味わえなくなってしまうことが難点だった。そこで、中華街などがあり、春節のお祝いをしている都市での「海外で過ごす旧正月」旅行に注目が集まっている。
人気のあるのは、華人も多く住んでいるシンガポールだが、海外の主要都市も、中華街に住む華人が中心になって春節のお祝いをすることから人気になっている。日本では長崎が人気になっている。長崎市では、1994年から本格的に春節を元にした長崎ランタンフェスティバルがこの時期に開催されるからだ。
中国人観光客を呼び込むには、地元中華街と連携し、中国の伝統行事をイベント化することが必須になってきている。
▲長崎のランタンフェスティバルは、春節の行事が元になったイベント。中国人にも人気が高い。
▲各国の主要都市は、中華街を中心に春節関連のイベントを開催している。中国人が、春節の連休に出かけやすい都市になっている。
▲春節期間は、実家に帰る人も多いが、最近では家族揃って国内旅行、海外旅行に出かける人が増えてきている。
暖かい東南アジアが人気。寒くても日本人気は衰えず
実際の渡航者数ランキングでは、タイが1位、日本が2位となった。春節の期間は中国の冬なので、暖かい東南アジアや夏であるオーストラリア、ニュージーランドに人気がある。その点、決して暖かいとは言えず、春節気分もそうは濃くない日本が2位にランキングされていて、根強い日本人気がうかがえる。
また、ヨーロッパに旅行した人は全体の6%にすぎないが、2週間前後の長期の旅行をしている。旅行者全員の平均旅行日数は8.5日だが、日本とタイの旅行者の平均は7.8日とやや短い。ヨーロッパと北米、南米の平均旅行日数は12.6日となる。
▲圧倒的に人気なのが、タイと日本。その他は、東南アジア、南半球など暖かい場所が続く。その中でも、寒いはずの日本の人気が衰えない。根強い日本人気がある。
南極、アイスランドと渡航先は多様化していく
さらに、伸び率のランキングでは、南極、ポーランド、ベルギー、アルゼンチン、アイスランド、ブラジル、スイス、ヨルダン、ポルトガルとなり、中国人の海外旅行が年々多様化していることがわかる。
また、今年の春節で大きく伸びたのが、ビーチリゾートで、家族で出かける例が目立った。家族でビーチリゾートという海外旅行は、昨年から50%の伸びを示している。東南アジアのビーチリゾートが多いが、日本の沖縄も人気が高い。
▲人気の観光スポットは、やはりテーマパーク。ユニバーサルスタジオが任天堂とコラボをすることで独自性が生まれ、より人気が高くなる可能性がある。
地方都市の市民の旅行支出が増えている
興味深いのが、一人当たりの旅行支出(旅行代金+現地での消費)の都市別ランキングだ。北京、上海といった高収入の市民が多い大都市が上位にくるのは不思議ではない。しかし、銀川、宜昌、無錫、杭州といった日本にはあまり馴染みのない地方都市が多くランキングされている。
このような地方都市は、規模としては一級都市に劣るが、工業、商業、IT、観光業など、その都市特有の産業が確立している都市で、平均収入も高く、格差が少ない。仕事のストレスも比較的少なく、豊かに暮らしている。そのような都市住人が、春節を海外で過ごす傾向が現れ始めている。
中国の海外旅行は、10年前は、大都市住人の贅沢なレジャーだったが、今では、余裕のある市民が休暇を豊かに過ごすレジャーに変わりつつある。
▲平均旅行支出は、蘇州が最高の1万2114元(約20万円)。小さな地方都市も上位にランキングされていることが興味深い。

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