中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

海外旅行でも7割の中国人がアリペイ、WeChatペイで決済

アリペイとニールセンは、中国人の海外旅行先での消費動向をまとめた「2017:Outbound Chinese Tourism and Consumption Trends」を公開した。これによると、中国人は海外旅行先でも7割の人がアリペイなどのスマホ決済を利用していることが明らかになったと上游新聞が報じた。

 

中国人のニーズに合う観光地としての日本

中国人の海外旅行熱は依然として拡大し続けている。アリペイの利用データを分析したこの報告書によると、2017年の渡航先トップは香港、そして、日本、マカオ、タイと続く。純粋な外国としては、日本がいよいよ「中国人がいちばん好きな外国」になった。

その理由は、観光地としての日本が中国人のニーズに合っていることが大きい。旅行先を決める要因を、中国人と中国人以外で比較すると、中国人は「治安のよさ」「ビザ取得のしやすさ」を重視する。日本は、さらに自然景観地からテーマパークまで、観光スポットがコンパクトにまとまっている。また、同じ漢字文化圏でもあり、中国人の意識の中で「いちばん近い外国」になっている。

人気の日本の観光地は、東京ディズニーリゾートと北海道はすでに定番となったが、富士山と東京タワーも上位に上がっている。いずれもインバウンド対策に積極的な施設で、特に富士山は自然景観地を背景に富士急ハイランド、ホテルなどの施設があり、中国人の間で人気が高まっている。

f:id:tamakino:20190227113948p:plain

▲中国人人気の旅行先は、香港、マカオを除けば、日本が首位になった。観光地としての日本は、中国人のニーズに合っているからだ。

 

f:id:tamakino:20190227113955p:plain

▲ディズニーリゾート、北海道人気はよく知られているが、富士急ハイランド、東京タワーも人気が高い。

f:id:tamakino:20190227113959p:plain

▲中国人が旅行先を決めるときには、治安のよさ、ビザの取得しやすさ、地元の人の親切さなどを重視する。日本は、この3つをいずれも高いレベルで備えている。


爆買いではなくなったものの、買い物欲は旺盛

一昔前の日本旅行の目的は「爆買い」だったが、今ではやや下火になっている。旅行の主目的の上位にくるのは「レジャー」「食事」で、「買い物」は3位に後退し、よく言われるように体験型旅行にシフトしている。

とは言え、中国人の買い物欲求はいまだに高い。中国人旅行者は旅行で平均762ドルの買い物をするが、中国人以外の平均は486ドルだ。爆買いではなくなっているものの、中国人の買い物欲は相変わらず旺盛だ。

f:id:tamakino:20190227114004p:plain

▲旅行の目的から「買い物」は下位に下がり、レジャー(体験)が上位にきている。特に日本は、治安のよさから子連れ旅行の割合が他国よりも多く、子どもが体験できるレジャーが人気だ。

 

f:id:tamakino:20190227114007p:plain

▲爆買いは下火であるものの、買い物欲は強い。その代わり、宿泊費や食事代は抑える傾向にある。

 

若い世代は「買い物から体験へ」

実際の旅行支出の内訳を見ても、中国人以外が宿泊費に最も支出しているのに対し、中国人は相変わらず買い物だ。

ただし、これも変わりつつある。世代別の内訳を見ると、若い世代ほど買い物と宿泊費の支出割合が減少し、一方で、食事代と入場料などの支出割合が増加している。今後、「買い物から体験へ」の流れは、世代とともにより進んでいくことになる。

f:id:tamakino:20190227114012p:plain

▲世代別に見ると、買い物支出と宿泊費は若いほど減少傾向。食事、入場料などの体験支出が増加傾向にある。

 

海外でもスマホ決済のニーズは高い

海外で利用した決済方法は、相変わらず現金がいちばん多いが、2017年と2018年を比較してみると、現金と銀聯カードは下がり、アリペイなどのスマホ決済が伸びている。

中国人旅行者の99%以上が、アリペイのアカウントを持っていて、できればスマホ決済をしたいという人が圧倒的に多い。スマホ決済比率がまだ低いのは、海外に対応している店舗、施設が少ないためであり、対応状況が進めば、スマホ決済比率は確実に上がっていくだろう。

「普段使っている決済方法だから」「為替の両替をしなくていい」「どのみち地図や検索でスマホを使うので、スマホ決済が便利」などの理由で、中国人はスマホ決済を使いたがっている。

 

購入の決定要因は「クーポン」と「決済方法」

旅行先で、買い物をするときは、その商品が気に入って、価格と予算の兼ね合い、商品の品質などを考えて、購入を決める人がほとんどだ。中国人以外に尋ねた「購入を決める要因」は、まさしくその通りになっている。

しかし、中国人の購入決定要因は大きく異なっている。「割引」「決済方法」「価格」なのだ。

割引というのはただのディスカウントのことだけでなく、さまざまな割引クーポンのオファーを含んでいる。アリペイなどのスマホ決済は、海外に行くと、膨大な数のクーポンが配信されてくる。そのクーポンを見て、気に入ったものを買いにいくというケースが多い。

また、最近は銀聯カードやクレジットカードを持っていない人も多く、現金決済では手持ちの現金が少なくなると、両替をしなければならない面倒を考えてしまう。スマホ決済が利用できる店舗で買い物をしたいと考えるようだ。

f:id:tamakino:20190227114018p:plain

▲中国人が買い物先を決める要因は「クーポンなどの割引オファー」「決済方法」が上位にくる。買い物も体験のひとつと考えているようだ。

 

買い物そのものが体験型レジャーとなっている中国人

つまり、中国人のインバウンドショッピングに対応しようとしたら、アリペイ、WeChatペイのスマホ決済に対応することは必須。なおかつ、店頭ではなく、スマホ決済アプリにクーポンを配信する、あるいはミニプログラムを公開するなどして、中国人の持つスマホに割引クーポンを届けることが重要になる。

中国人の海外旅行の典型的なパターンは、旅行の予約をすると、スマホ決済に配信されるクーポンを見て、どこに行き、何を買い、何を食べ、何を楽しむか予定を立てる。その計画に基づき行動するということが多い。

中国人にとって、買い物そのものもすでにレジャーや体験になっているのだ。

f:id:tamakino:20190227114023j:plain

▲日本の観光地でよく見かけるようになった「和服体験」。こういったSNS映えする体験が中国人には人気だ。