中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

Tmallが2時間配送を開始。商品は実店舗から配送

アリババが運営するECサイト「Tmall」がいよいよ一部地域で、2時間配送のサービスを始めた。ワトソンズの商品に限り、店舗を配送拠点とする仕組みだ。ECサイトの物流は集中型から分散型に変わっていく可能性があると新農村物流が報じた。

 

配送時間が短いECサイトが顧客をつかむ

ECサイトの配送時間は短ければ短いほどいい。「そんなに急いで配送してくれなくても結構」と言う人は多いが、現実には、配送時間が短いECサイトが顧客をより多くつかんでいる。問題は、商品の受け取りなのだ。

単身者の場合、配送時に在宅していなければならないということが問題になる。その時間、出かけることができない。不在時に配達が行われてしまい、再配達を依頼すると、また、新たな配送時間に外出することができなくなる。近所の定食屋に食事をしにいくこともできない、コンビニに買い物にいくことすらできなくなる。この自由度が奪われることが悪いユーザー体験になっている。

「2日後の午後4時から午後6時の間に配送」という時間指定では、2日後の予定が正確にはわからない。これが翌日配送で「明日の午後4時から午後6時の間」になれば、翌日はこの時間に合わせて近所での買い物などを済ませておけばいい。さらに、Amazon Nowのように「2時間後配達」であれば、予定を合わせやすい。外出する可能性があるなら、そのときは注文をせず、用事をすませて帰宅をしてから注文をすればいいからだ。

翌日配送よりも当日配送、当日配送よりも即時配送の方が好まれるのは、商品を早く手にしたいということよりも、商品の受け取りという面倒なステップを早く確実に終わらせることができるからなのだ。

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▲中国の宅配配送員。中国は北京のような大都市であっても、大型自動車が入っていけない路地が多く残されている。風致保存地区として、区画整理をせずに、観光資源として活かす例も増えている。このような都市形態では、集中型物流だけでは、配送の効率化に限界が生じる。

 

ワトソンズの店舗を配送拠点にする2時間配送

この傾向は、中国でも同じで、すでに大都市部では翌日配送がごく当たり前になっている。自宅だけでなく、職場に配送を頼む人も多く、早朝のオフィスビルの玄関には、宅配便業者が荷物を広げ、まるで青空市場のような光景ができる。小さな化粧品、本などは職場に翌日朝に受け取り、重くて大きな家電製品などは、翌日夜に自宅で受け取るという使い分けをしている。

このような状況を受け、アリババが運営するTmallでは2時間配送のサービスを始めた。といっても、すべての商品ではなく、香港を拠点とするドラッグストア「ワトソンズ」の商品のみ。化粧品、薬、菓子、飲料などの小さな商品が主体。サービス提供地域は、上海、広州、深圳、杭州、東莞の都市にある約200のワトソンズ実店舗から3km以内の地域。つまり、Tmallに注文が入ると、近所のワトソンズ実店舗から配送をすることで2時間配送を可能にしている。

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▲2時間配送を始めたドラッグストア「ワトソンズ」。現在は、香港を拠点として、アジア各国に出店している。やや高級感のあるドラッグストアで女性に人気がある。

 

集中型物流から分散型物流へ

アリババでは、この2時間配送をワトソンズ商品について他地域にも拡大していく他、他のブランドにも拡大していく予定だという。これは、物流の仕組みが変わっていくことを示している。

従来の物流は、大規模な物流拠点を設け、そこに商品を集積し、全国各地に配送していくというもの。現在、Tmallの最も速い配送は「午前11時までに注文をすれば、当日午後6時に配送」というものだ。しかし、集中型物流では、ここまでが限界。これ以上の時間短縮を図ろうとすると、大量に実店舗を持っているチェーンと協力をして、そこから配送をしてもらう「分散型配送」を取り入れていくしかない。

アリババのライバルであるECサイト「京東」も、当日配送を拡大しているが、それに合わせて、中型の物流拠点を各地に置くという分散型物流を一部取り入れている。

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▲Tmallの配送拠点。どのECサイトも郊外に大規模な物流拠点を作り、そこに商品を集積することで、配送の効率化を図っている。しかし、この方式では、顧客のニーズに応えることに限界が出てきている。

 

チェーン店舗の出店計画も変わってくる可能性がある

この2時間配送は、ワトソンズの商品が小さなものが多いということもあり、午後2時から6時ぐらいまでの間に、職場に配送をする例が多いという。職場の昼休みにスマートフォンから注文をして、職場で受け取り、帰宅するという使い方が多いのだと思われる。

実店舗を在庫倉庫としても利用するこの方式により、チェーン店舗の出店計画も変わってくる可能性がある。住宅地のターミナル駅付近よりも、オフィスが集中する都心への出店が増えるかもしれない。

今後、どのようなチェーンが「2時間配送」に対応するのかが注目される。

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