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「テンセントの壁」が崩れ、ネットのオープン化で何が変わる?異なる流量戦略を持っているWeChatとアリペイのミニプログラム

まぐまぐ!」でメルマガ「知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード」を発行しています。

明日、vol. 092が発行になります。

 

今回は、中国で起きているネットの規制緩和についてご紹介します。

報道などで、厳しいゲーム規制や教育改革が進んでいることはご存知だと思います。日本の報道では、ゲーム規制は子どもたちの遊びを奪う、教育改革は習近平思想を徹底させるためと批判的に受け止めたものが多いですが、「vol.090:今どきの子どもたちのネット事情。ゲーム規制、教育改革をしたたかかに生きる子どもたち」でもご紹介したように、素直に内容を見れば、学校が課す宿題の量を制限し、学習塾や補習系のオンライン講座などを規制し、学業への負担を和らげ、空いた時間を科学技術や芸術、スポーツなどの有益な体験をする時間に向かわせるため、以前より問題になっていたオンラインゲームへの規制を行なったように見えます。中国版ゆとり教育であると思います。

 

これと同じくらい大きな変化が、政府がネットの垣根を取り払う指導を行ったことです。9月9日、工信部は「サイトリンク遮断問題行政指導会」を開催し、ネットの中でのリンク遮断を9月17日までに解消する道筋をつけるように指導をしました。

ネットリンク遮断とはなんでしょうか。詳しくは「vol.074:アリババはテンセントの軍門に降ったのか。アリババのサービスがWeChatミニプログラムに続々対応」でご紹介していますが、騰訊(タンシュン、テンセント)の国民インフラともなっているSNS「WeChat」は、リンク遮断を行なっていたのです。

WeChatは中国人の誰もが利用していると言っても過言ではないSNSですが、メッセージの中にアリババのEC「淘宝網」(タオバオ)へのリンク、バイトダンスの中国版TikTok「抖音」のショートムービーへのリンクを入れると、タップをしてもエラーページが表示されるだけで、リンク先に飛ぶことができません。リンク遮断を行なっていたのです。

建前としては、WeChatの規定により、他社のサービスの宣伝活動が禁止をされているため、外部リンクは他社サービスの宣伝活動にあたるとして遮断をされています。しかし、実態は、WeChatが集めた流量を他社に渡したくないということであるのは明らかです。

 

テンセントが特別強欲で自分のことしか考えていないというわけではありません。アリババのスマホ決済である「アリペイ」、テンセントの「WeChatペイ」、銀行業界の「銀聯」の間でも分断が起きています。アリババ系サービスではアリペイしか使うことができず、テンセント系サービスではWeChatペイしか利用できないということはよくあり、消費者はさまざまなサービスを使いこなすには、最低でも「アリペイ」「WeChatペイ」の2つはインストールしておく必要があります。

日本で言えば、クレジットカードのVISAが使える店、Masterが使える店、JCBが使える店に分かれているようなもので、その使い分けは消費者にとっては不便でしかありません(アリババ、テンセントと無関係な商店は両方に対応が一般的)。

これについても中央銀行が「プラットフォーム経済領域の独占に対するガイドライン」策定の必要性に触れ、遮断状態を解消していくべきだとしました。

これにより、アリババ系サービスは銀聯とWeChatペイに対応することを表明し、テンセント系サービスである美団(メイトワン)、ピンドードーもアリペイに対応することを表明しました。

今後多くのサービスが主要なスマホ決済が利用できるようになり、消費者は自分が最も使い勝手のいいスマホ決済を使えるようになります。

 

これもWeChatのリンク遮断、スマホ決済の垣根がなくなり、消費者にとっては利便性が大きく向上する優れた政策です。工信部の指導会の後、テンセントは期限の9月17日に、「WeChat外部リンクコンテンツ管理規範」を改訂することを表明し、監督部門の指導の下、外部リンク遮断の解消を段階的に進めていくことを発表しました。

しかし、今度は、遮断解消がなかなか進まないことが話題になっています。遮断を解消するには、不正コンテンツ発見システムから、対象を削除すればいいだけのでやる気になれば一瞬でできることです。しかし、テンセントとしてはできるだけやりたくない。あるいは準備をしてから遮断を解消してきたいようです。

なぜなら、圧倒的な多くの流量をWeChatで集め、それを自社サービスにミニプログラムを通じて配分するということで、テンセントのビジネスが成り立っていたからです。それが他社にも流れるとなると、ゲーム規制で事業の方向転換を考えなければならなくなっているところに、法人ビジネス事業まで事業の転換を考えなければならなくなります。

 

ミニプログラムについてご紹介したのは「vol.007:ミニプログラム活用で新規顧客を獲得する店舗小売」とかなり以前のことなので、今回はまずミニプログラムの簡単なおさらいから入りたいと思います。また、ミニプログラムはテンセントだけでなく、アリババや百度、バイトダンスも取り入れていて、日本ではLINE、PayPayなどもミニプログラムの考え方を取り入れています。さらには、アップルもiOSでAppClipsというミニプログラムと同じ考え方の機能を採用しました。

この中で、重要なのはやはりテンセントのライバルであるアリババのアリペイミニプログラムであり、アリペイのミニプログラムは、WeChatミニプログラムとはまた違った考え方で収益に結びつけようとしています。そこで、今回は、アリペイのミニプログラムがどのような発想で収益に結びつけようとしているのかをご紹介し、両者の比較もしてみたいと思います。

世界の潮流を見れば、ネイティブアプリの時代は終わり、ミニプログラムの時代に移ろうとしており、日本でもミニプログラム(ミニアプリ)が伸びてくることは間違いありません。どのような構成のミニプログラムであれば成功ができるのか、その参考にしていただければと思います。

今回は、WeChatミニプログラム、アリペイミニプログラムについてご紹介します。

 

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アリババに入社を誘われた小学6年生。中国テック界で最も有名な天才少女

中国テック界で、名前を知らない人がいないほど有名な少女がいる。万海妍で、小学6年生の時に、アリペイのプログラミングコンテストに出場して、大学生や大人を退け、決勝戦にまで進出した。アントグループのCEOからも直接入社を誘われていると恰同学少年録が報じた。

 

自主性が教育方針の家庭の少女が選んだのはプログラミング

万海妍(マン・ハイイエン)は、2007年に上海の恵まれた家庭に生まれた。両親の教育方針は、自主性を尊重するというものだった。親の希望を押し付けるのではなく、本人が興味を持つことはなんでもやらせてみた。そして、万海妍が興味を持つものは続けさせ、興味を持たないものはやめさせた。万海妍は快活で、自分の意見を持つ少女に育っていった。

10歳の時、プログラミングに興味を持った。万海妍は今までになく強い興味を持ち熱中した。

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▲万海妍。自主性を尊重する家庭に育ち、10歳の時、プログラミングに夢中になった。

 

周囲の無理解にも動じず、娘を応援した両親

10歳の少女がプログラミングに熱中していることを、周りの親たちは冷笑することもあったという。しかし、両親は、それが本人が選んだことなのだからと一言も文句も言わず、万海妍を応援した。

しかし、10歳の少女が初級プログラミングを終え、複雑なアルゴリズムに取り組むようになると、やはり難しかった。学校で習っていない数学的な知識が必要になるからだ。万海妍はたびたび行き詰まりを見せることになる。それでも、万海妍はプログラミングへの興味を失わなかった。

毎週通っている小学生向けのプログラミング教室では飽き足らず、万海妍は図書館に行くようになった。必要な専門書を読み、読み終わらない本は借りて家に持ち帰り、夜遅くまで読んでいた。専門書に出ていないことについては、ネットで自分で調べるようになった。万海妍の家の家族の団欒は、アルゴリズムについて語り合うことになった。

学校が長期の休みになると、万海妍の求めに応じて、両親は深圳市で開催されたプログラミングセミナーに参加をさせた。そこで、青少年向けのオンラインプログラミング講座を提供している「編程猫」の創業者、李天馳と出会い、万海妍は李天馳を「師匠」と呼び、JavaScriptを学ぶことになる。

 

アリペイチャレンジに出場、1秒差で優勝を逃す

それからの彼女の進歩は著しく、李天馳はアリペイの運営会社であるアントグループのプログラミングコンテストに出場することを勧めた。「アリペイ8分間ミニプログラムチャレンジ」というもので、7人でプログラミングの腕を競い合うというものだ。

ミニプログラムの仕様が3つ用意され、7人にランダムでお題が割り振られる。これを8分以内にミニプログラムの形にするというもので、プログラミング能力だけでなく、早さも必要な競技だ。最も早く完成させた人にポイントが入り、これを3セット繰り返すことで勝者が決まる。

2018年9月、杭州市で開催されたこの試合で、万海妍は、決勝戦まで進出をした。決勝戦では、わずか1秒差で優勝を逃したが、高校生や大学生、あるいは社会人としてプロのITエンジニアが50名以上出場する試合で、準優勝に匹敵する結果を残した小学6年生の万海妍は大きな話題となった。

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▲アリペイ8分間ミニプログラムチャレンジに出場した万海妍。背後にいるアリペイ、アリババのエンジニアも苦笑するほど優秀な小学6年生だった。

 

アントCEOが直々にリクルート

さらに会場には、アリババやアントグループのプロのITエンジニアがスタッフとしてきている。万海妍は、あこがれのエンジニアを見つけると自分から寄っていき、教えを請うことを繰り返してた。

その姿を見て、当時のアントグループの井賢棟CEOは、万海妍にぜひアントグループかアリババに入社してほしいと語った。社交辞令ではなく、好きな時期に入社してほしい、何年でもアリババはあなたのためにドアを開けて待っていると言う。井賢棟CEOはSNS「ウェイボー」でもそのことに触れ、本気で誘っていることを明言した。

このことにより、万海妍は、プログラミングの天才少女として名が知られるようになる。

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▲アリペイ8分間ミニプログラムチャレンジの表彰式。大学生やプロのエンジニアの中で、決勝戦に進出をするという好成績を挙げた。わずか1秒差で優勝を逃した。

 

プログラミングはやればやるほど好きになる

その後の万海妍は社会課題に興味を持ち、プログラミングで解決することに熱中するようになった。四川省の大凉山には少数民族のイ族が山間の集落で暮らしている。海抜が高いため、薪や炭などの燃料を使って暖を取る。そのため、一酸化炭素中毒の事故が起きていた。

それを知った万海妍は、子どもたちのために一酸化炭素警報機を開発して無償提供をした。警報機が鳴ったら、窓を開けて換気をするというものだ。

万海妍は現在中学生。プログラミングや科学系のコンテストに出場して、好成績を残し続けている。「プログラミングはやればやるほど好きになる」と語る万海妍に、当初、「親にやらされている」と批判的に見ていた人たちも、今はそのような批判はしなくなっている。

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▲現在では、すっかり有名となり、青少年向けのテックイベントには必ず呼ばれるようになっている。

 

 

アリババEC「Tmall」で起きた悪徳商法事件。アリババの出店審査に思わぬ落とし穴

引っ越しで荷物を乗せてから見積もりとは異なる高額請求をする悪徳商法はどこにでもある話だが、それが、アリババが販売業者を審査するEC「天猫」(Tmall)で発生した。この業者は、アリババの審査をうまくすり抜けて、Tmallへの信頼を利用して悪徳商法を行なっていたと新聞晨報が報じた。

 

安心のTmallで起きた悪徳商法事件

上海市徐匯区に住む路さん(仮名)は、3km程度の距離に引っ越すことになり、アリババのEC「天猫」(Tmall)で、引越し業者を見つけた。亭夕旗艦店という、格安をうたう引越し業者だった。当初見積もりでは900元(約1万5000円)だったが、荷積みをした段階で、1万2800元(約21万8000円)を請求された。

よくありがちな悪徳商法だと言えばそれまでだが、Tmallに出店をしていることが大きな問題となった。アリババのECは淘宝網タオバオ)とTmallの2つがある。タオバオは誰でも簡単に出店ができるため玉石混交で、粗悪品や悪徳業者も混ざっているのではないかと誰もが警戒をして利用する。しかし、Tmallはアリババが審査を行い認めた商店しか出店することができない。多くの場合、著名ブランドの旗艦店が出店をしている。そのため、Tmallで買うなら安心と警戒心が緩んでしまうことになる。

当然ながら、アリババのTmall運営の責任も問われることになる。

 

見積もりは900元。支払いを済ませた

路さんは、Tmallのアプリの中で亭夕旗艦店を見つけた。引っ越しは、荷物を2カ所に運ぶというものだが、距離は3kmでしかない。すべてエレベーターがあり、荷物の量はトラック1台で収まる程度だった。亭夕は、路さんが作成した荷物のリストから見積もりを作り、トラックが400元、運搬員が1時間80元という料金を提示し、合計額で900元程度になるという見積もりを出した。

路さんは、オンラインで900元の支払いを済ませた。亭夕は、実際の費用は、当日の業務量により多少の上下があるので、不足分が発生した場合は、当日、担当者に支払ってほしいと告げた。

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▲路さんと亭夕旗艦店とのチャットの記録。見積もりを依頼すると、だいたい900元前後である言われたため、路さんは900元をオンラインで先払いした。

 

荷物を載せた段階で15倍の料金を請求された

引っ越し当日は5人のスタッフが訪れ、荷物がトラックに積み込まれた。その段階で、引越し作業の責任者という人物が、「上海引越し企業統一価格表」という書類を渡し、それによると、引越し費用は1万2800元という高額のものになり、それを請求された。

路さんは、すでに900元という見積もりを受け、900元を支払っていると反論すると、責任者はそれは予約金にすぎないと言う。もし、支払ってもらえないのであれば引越し作業はできない。キャンセルする場合でも、すでに荷物はトラックに積み込んでいるので、これを載せ、元に戻す費用を支払ってほしいという。

路さんは怖くなった。相手は屈強な5人の男性で、こちらには老人や子どもいる。揉めることはしたくなかった。さらには、キャンセルをしても、荷物のあげおろしにいくら請求されるかわからない。

路さんはしかたなく、とりあえず1万2800元を払い、後で返金請求をしようと考えた。

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▲当日、荷物をトラックに積んだ段階で、引っ越しスタッフが提示した書類。「上海引っ越し企業統一価格表」というもので、これによると引っ越し料金は1万2800元という高額になるという。

 

実際の運営業務は別会社が行なっていた

路さんは、Tmallの運営に苦情を申し立てた。しかし、Tmall運営は、亭夕の返金申請のリンクを提示し、警察に相談することをお勧めしますというメッセージを返しただけだった。そこで、路さんは亭夕の運営会社である蘇州新楚秦商貿を相手取り、蘇州工業園区人民法廷に訴えた。

しかし、新楚秦商貿は、亭夕は確かに自社傘下の企業だが、実際の運営業務は上海強生搬家サービスという企業に委託をしている。そのため、新楚秦商貿には責任がないと主張した。確かに、亭夕のページをよく見ると、「運営は上海強生搬家サービスが行います」と書かれていた。

結局、法廷は新楚秦商貿に返金義務はないと認定をした。

 

実体のない幽霊会社がTmallに出店していた

そこで、路さんは状況を調べ直した。当日、引っ越しを担当した責任者は、名刺によると六安強生搬家サービスの社員となっている。本社は上海市普陀区のマンションで、路さんが当日支払った1万2800元も、この六安強生搬家サービスの口座に送られていた。

また、トラックのナンバーから所有者を調べると、このトラックの所有者は上海寧祥搬場運輸という会社だった。

この問題を路さんから聞いた新聞晨報の記者も調査を始めた。責任者が所属をしているはずの六安強生搬家サービスに問い合わせをしてみると、そのような人物は在籍していないということだった。しかも、上海に強生という名前を使っている引越し業者はそこだけで、Tmallの業務も委託されていないという。記者が、責任者の名刺にあった六安強生搬家サービスの住所を訪れてみると、マンションではあったが、その部屋は住民理事会が使っている部屋で、ここに企業が入居したことなどないという。

トラックの所有者である上海寧祥搬場運輸に問い合わせをすると、当日、その車両は確かにレンタルをされたが、どのような使われ方をされたかは関知していないというものだった。

つまり、亭夕旗艦店は幽霊会社であり、それがなぜアリババの審査が必要なTmallに出店をしていたのかが大きな問題になる。

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▲新聞晨報記者が引っ越し業者の本社の住所を尋ねてみると、そこはマンションの住民理事会室で、企業に貸し出したことはないという。まったくデタラメの住所で、幽霊会社だった。

 

Tmallの出店スペースを又貸ししている

新聞晨報の記者は、亭夕旗艦店の筋を調査することにした。ところが、亭夕旗艦店を開いてみると、すでに引越しサービスは行ってなく、その代わりにスマホの査定、法律相談、営業許可証の申請代行など行政書士と法律事務所のような内容に入れ替わっていた。しかも、それぞれのサービスの実際の運営者の名称や住所が異なっている。

記者は、この亭夕旗艦店を運営する新楚秦商貿を取材した。この企業は、Tmallに亭夕旗艦店を出店したものの、その旗艦店を他の業者に又貸ししているのではないかという疑いを抱いたからだ。

ある新楚秦商貿の従業員が匿名で新聞晨報の取材に答えた。引越しの問題が発生した時は、亭夕旗艦店のスペースを3ヶ月間、ある業者に3000元で貸し出したという。それが路さんが被害にあった引越し業者だが、新楚秦商貿では業者の営業許可証などをきちんと確認をしていないため悪徳な幽霊会社が入り込むことになった。

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▲新聞晨報記者が、亭夕旗艦店を調査すると、すでに引っ越しサービスは扱ってなく、スマホの査定や法律相談、営業許可証の申請代行などのサービスを提供する内容に入れ替わっていた。

 

アリババの審査をすり抜けた又貸し

つまり、アリババは亭夕旗艦店の運営会社である新楚秦商貿の審査はきちんと行っている。しかし、この新楚秦商貿が業務委託を名目に、勝手にTmallのスペースを又貸ししていたのだ。この時には審査は厳格には行われない。しかし、消費者は「Tmallで買えば安心」と思い込んでいるため、悪徳業者に引っかかってしまうことになった。

この悪徳業者は、実態がなく、すべてが寄せ集めで、すべての情報が偽物だ。民事的に賠償請求をすることは現実的にはかなり難しいと見られている。警察に被害届を出し、逮捕されることはあっても、実態がないため返金までは難しい。また、Tmall運営にも道義的な責任はあるはずだが、アリババはこの件に関して今のところ特にコメントしていない。

消費者から信頼をされているTmallにも思わぬ脆弱性が存在した。

 

 

どうやっても人が対応してくれないテンセントのサポート。消費者からも疑問の声

多くのITサービスのサポートが、FAQやAIチャットボットを採用し、人が対応しないようになっている。電話番号などは深い階層をたどらないとわからないようになっていることも多い。しかし、テンセントのサポートは無人化が徹底されたあまり、消費者からも疑問の声が出ていると人人都是産品経理が報じた。

 

人の対応窓口にたどり受けないサポート

さまざまなITサービスのカスタマーサポートの無人化が進んでいる。ユーザーがサポートを必要とする場合、多くの場合、FAQのようなページに飛ばされ、そこでも解決しない場合は、AIによるチャットボットが対応するケースが増えている。それでも解決しない場合は、人間のスタッフとチャット、電話で話す必要があるが、人のチャットの入口や電話番号などは階層の奥深くまで行かないとたどり着けないようにしているのが一般的だ。言うまでもなく、サポートスタッフを維持するのはコストがかかるため、できるだけ人にたどり着けないようにし、人件コストを抑えるようにしている。

 

人のサポートが受けられないことにより起きた悲惨な事件

しかし、2021年8月に、このようなサポートの仕組みが悲惨な事件を起こすことになった。

8月12日に、深圳市の唐さん(仮名)のWeChatアカウントが凍結された。理由の詳細は不明だが、テンセントによると、性的な内容のコンテンツを投稿したためであり、規定に従って72時間の凍結処置を行なったという。しかし、唐さんは納得がいかず、WeChatが使えないことで仕事にも大きな影響を被った。そこで、サポートセンターと連絡をとって、誤解を解いて、WeChatのアカウントの凍結を解除してもらおうとし、サポートスタッフと直接電話で話がしたいと考えたが、どうやっても電話番号を見つけることができなかった。

8月15日になって、唐さんは直接テンセントの本部ビルに出向いた。しかし、当然ながら、中に入れてもらうことはできず、守衛は本部にこられても対応できないとして、サポートセンターが入居している嘉達ビルの場所を教えた。その後、唐さんは、この嘉達ビルの11階から飛び降り自殺をし、死亡が確認された。

唐さんは、飛び降り自殺をする直前に、自分のスマートフォンにビデオメッセージを残している。遺族は裁判などもあるとしてそのビデオを公開していないが、内容は、自殺の原因はWeChatアカウントの凍結により、商売がだめになってしまってことにあり、テンセントの本部とサポートセンターに出向いたがまったく相手にしてくれなかったことだという。

唐さんがどのような投稿をして規約違反となったのかもテンセントはコメントしていない。唐さんは食料品の小売商いをしていて、連絡のほとんどにWeChatを使い、支払いなどもWeChatペイを使っていた。このため、期限のある支払いができなくなり、仕事上の被害を被ったのではないかと見られている。

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▲飛び降り自殺が発生したテンセントのサポートセンターが入居する嘉達ビル。この事件により、サポート体制の問題が議論になっている。

 

問題が解決されないサポート体制

この事件をきっかけに、ITサービスのサポート体制の問題が議論されるようになっている。2021年5月に、江蘇省の消費者保護委員会は、48種類のサービスについて利用者アンケート調査を行ったところ、52.9%の利用者が、AIチャットボットが適切な回答をしてくれなかった、スタッフと連絡ができてもたらい回しにされたなどで問題が解決しなかったという経験をしているという。

 

どうやっても人にたどり着けないテンセントのサポート

微信(ウェイシン、WeChat)の中にサポートという項目は用意されてなく、その代わりに「テンセントサポート」というWeChatミニプログラムが用意されている。このことに気がつかず、戸惑う人も多い。

よく起こりがちな「パスワードを忘れた」などの問題には項目が用意されているが、それ以外のケースではAIチャットボットが対応するようになっている。チャットボットの中からスタッフと連絡を取るには「人によるサポート」というチャットメッセージを送ればいいいはずなのだが、直接人が応答するのはではなく、問題の概要を入力する画面が現れるだけだ。これに入力をすると、24時間程度で人が応答をするというメール対応に近い体制になっている。

テンセントの公式サイトには、サポートの電話番号も掲載されている。しかし、電話をしてみると、「スマホの紛失、アカウントの凍結の場合は9、…の場合は1」などの番号を選択するように求められ、それを押すと、音声による一般的な案内が流れてくるだけで、サポートスタッフと話をする選択肢は提示されない。

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▲AIチャットボットで「人のサポート」というキーワードを入力すると、リンクボタンが返される。それをタップすると、問題の状況や連絡先などを記入するフォームが現れる。記入をすると、24時間以内に人がメッセージか電話で対応するというものだ。

 

電話番号がわかっても誰も出てくれない

このようなことから、ネットではテンセントのサポートセンターは無人で、すべて人工知能がやっているのではないかと揶揄されている。実際、ネットでも「テンセントのサポートスタッフと直接話をした」という人はまるで出てこないのだ。

昨2020年7月、司会者などで有名な謝娜(シエ・ナー)が、ウェイボーに発信をしたツイートが話題を呼んだ。謝娜は、突然WeChatにアクセスができなくなり、表示された画面の指示に従って、サポートセンターに電話をした。しかし、呼び出し音が10数分鳴った後に、オンラインサポートを利用するように合成音声で案内をされた。そこでチャットボットのオンラインサポートを使うと、この問題は直接サポートセンターに電話をするように指示された。そして、サポートセンターに電話をすると、10数分呼び出し音が鳴った後に、オンラインサポートを案内される。この無限ループにハマってしまったことをウェイボーで発信した。

このツイートは広く拡散をしたため、テンセントサポートの公式サポートが謝罪をし、問題の状況はすでに改善されているという内容のコメントをつけた。ネットでは、「テンセントサポートにも人がいた!」と話題になった。

消費者問題を共有するサイト「黒猫」には、テンセントのサポートに関するクレームが2021年8月時点で1万8473通も寄せられている。

WeChatの月間アクティブユーザー数は10億人を超えている。そのため、すべてサポートスタッフによるサポートセンターを設置したとしたら、何万人ものスタッフを用意しなければならなくなってしまう。そのため、AIチャットボットなどを大幅に導入するのは当然のことだとも言える。テンセントによると、問題の90%以上はAIチャットボットで解決をしているという。しかし、それは裏を返せば、10%近い問題はAIでは解決をしていないということだ。

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▲著名なタレントが、WeChatのサポートで、電話サポートとオンラインサポートのループにハマったことを紹介するメッセージに、テンセントサポート公式が謝罪のコメントをつけた。テンセントサポートにも人がいた!とネットで話題になった。

 

スマホ決済のサポートもつながらないWeChatペイ

河北青年報では、スマホ決済のサポートセンターは緊急を要することもあるが、読者から「サポート電話につながりにくい」という意見を受けて、「アリペイ」「銀聯」「ApplePay」「WeChatペイ」のサポートセンターに実際に電話をして、状況を調査した。

9時、11時、14時、17時、19時、23時の6回かけて、つながるまでの時間を測定した。最も成績がよかったのはアリペイで、6回とも通じ、平均1分6秒で応答した。次は銀聯で平均2分20秒。その次がApplePayで23時の通話は時間外ということでオンラインサポートに案内をされ、残りの5回の平均時間は3分28秒。最も成績が悪かったのはWeChatペイで、5回はつながらず、1回は音声でオンラインサポートに案内をされた。つまり、1回もサポートスタッフにはつながらなかった。

スマホ決済の場合は、他のサービスと違って、トラブル時の不安は大きく、人が対応をする必要がある。また、トラブルを数時間放置するだけで、場合によっては講座の資金をすべて失ってしまう危険性があるケースもある。テンセントのサポート体制は、この事件によって、大きな問題に発展する可能性もある。

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▲河北青年報の実験結果。アリペイ、銀聯は多少待たされるものの人のサポートが受けられた。ApplePayは午後9時以降はオンラインサポートのみになる。WeChatペイは6回のうち5回はつながらず、1回はオンラインサポートを利用するに促す音声メッセージが流れただけだった。

 

https://www.ixigua.com/6693296651529880078?logTag=be2dfa3a4787c7d57168

▲河北青年報では、各種キャッシュレス決済のサポートに電話をしてみる実験を行った。

 

 

 

客単価200円の町食堂に全自動化テクノロジー。労働力不足は付加価値の低い仕事から進行する

上海市の虹橋に調理を全自動化した無人レストランがオープンした。客単価は10元という庶民向けの食堂だ。中国でも労働人口が減少し、労働力不足の影響が出始めている。労働力不足は付加価値の低い仕事から進行するため、虹橋社区AI食堂は全自動化を進めたと職業餐飲網が報じた。

 

すべて自動調理の無人レストラン

上海市長寧区の虹橋に、完全無人の全自動レストランが開店した。「虹橋社区AI食堂」で、130平米の広さがあり、上海熙香芸享電子商務が運営をする。調理、接客に関わるスタッフは存在せず、調理はすべて自動化されている。決済も顔認証などスマホ決済で行われる。メニューは1000種類用意され、同時に100人分の調理をすることができるという。

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上海市にオープンしたAI食堂。客単価200円の庶民的な食堂に全自動化テクノロジーが導入された。

 

ロボットアームがつくる牛肉麺

例えば、麺を食べたい場合、どんぶりを取り、それを指定された台の上に置く。するとそれを感知して調理が始まる。麺が茹で上がると、ロボットアームがどんぶりに麺を入れる。すると台が動き、蛇口の下に移動し、スープが注がれる。具は10種類以上が用意され、自分で好きなものを入れる。

料理を取ったら、それを無人レジに持っていくと、料理の画像解析が行われ自動精算されるので、スマホ決済やデジタル人民元、現金などで支払うという仕組みだ。顔認証や人体認証の仕組みも導入されているため、精算をせずに勝手に料理を食べてしまう行為に対しては対策されている。

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▲麺を作るロボットアーム。人が介在しないため、衛生問題も起こりづらい。

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▲麺の具はセルフで取る。あとで画像解析により精算される。

 

ご近所の人が気軽に利用できるAIレストラン

このようなテクノロジーを活かしたレストランの場合、通常はAIの話題性を生かした値段が高めの飲食店になるケースが多い。しかし、この虹橋社区AI食堂は価格が安い。麺は6.6元、料理も10元以下、ご飯は2元と、客単価は10元(約170円)程度を想定している。社区食堂というネーミングも「近所の飲食店」というイメージで、近所の人が気軽に利用できる食堂を目指している。

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▲セルフで取った料理をレジ代に置くと、画像解析によりメニューが認識され、料金が表示される。デジタル人民元スマホ決済、現金に対応。

 

24時間テイクアウト、デリバリーにも対応

また、全自動化されていてもメンテナンスや清掃、食材の搬入があるため、24時間営業ではなく、定休日もある。そのために、24時間利用できるスマート自販機も用意されている。メニューは限られるが、食堂と同じようにロボットが調理をした食品が購入できる。

さらに、フードデリバリーにも対応しており、デリバリー専用のロッカーもある。スタッフが料理を注文し、ロッカーに入れておくと、デリバリースタッフがスマホを使って解錠し、配達する。

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▲閉店時には、メニューは限定されるが、24時間利用可能な自販機が用意されている。これも作りたての料理が提供される。

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▲デリバリー用の保温ロッカーも用意されている。デリバリー配送員は、このロッカーから商品を取り出し、配達をする。

 

付加価値の高くない領域にテクノロジーを投入する

この虹橋社区AI食堂が注目されているのは、観光地や繁華街でテクノロジーをエンターテイメントの演出のひとつとして取り入れるレストランではなく、街中のごく庶民的な食堂に全自動テクノロジーを導入したという点だ。つまり、付加価値の高くない領域にコストをかけてテクノロジーを投入している。

一般的に飲食業は、全自動テクノロジーに対して及び腰だった。調理というのは複雑な工程があるため、全自動化を進めれば進めるほどメニューに制約が生まれるようになる。味で勝負している飲食店は、利用者の反応を見て、常にメニューを入れ替える必要があり、全自動化は難しいのだ。

そこで、多くの飲食店が人とロボットの共同作業を取り入れるようになっている。ひとつは食材を取り出し、カットなどの下処理をして、それを調理師に渡す部分。室温で食材を扱うため、衛生的にも敏感な工程であり、単純作業でもある。ここを自動化することで、衛生レベルがあがり、食材の利用データも取得できるため、食材の発注、消費期限などの管理がやりやすくなる。

もうひとつは配膳で、移動ロボットを導入するところが増えている。これもやはりデータを取得することができ、注文から配膳までの時間を測定し、解析することで厨房の作業工程を改善することができる。

 

労働力不足は付加価値の高くない仕事から影響を受ける

つまり、多くの飲食店が、人が厨房の中心であり、それをサポートするためにテクノロジーが存在すると考えている。それがなぜ、庶民的な町食堂で全自動化テクノロジーを導入したのだろうか。

その背景にあるのは労働力不足だ。中国の労働人口は減少トレンドにあり、各分野で人手不足、採用難の問題が起き始めている。飲食業の場合、その労働力不足が直撃をしているのが付加価値の低い町食堂だ。労働人口そのものが減る中で、調理師資格を取得した若者は、できるだけ付加価値の高いレストランで働きたいという希望を持っている。定番メニューを作るだけの町食堂へは、仕方くなくでしか働いてもらえない。高い報酬も払えないため離職率も高い。さらには、管理をしっかりしないとスタッフのモラルも容易に低下する。

そのような理由から、虹橋社区AI食堂は全自動化テクノロジーを導入した。テクノロジーが付加価値としてではなく、本質的価値を維持するために使われている。

 

 

テンセントがゲーム専用SNSのテストを開始。ライバルはDiscord

国民的インフラとも言えるSNS「WeChat」(ウェイシン、WeChat)を運営するテンセントが新たなSNSのテストに入っている。ゲームに特化したSNSとなる見込みで、ゲーマー用コミュニケーションアプリ「Discord」に対抗するものになるとTech星球が報じた。

 

注目されたテンセントの人事異動

今年4月、騰訊(タンシュン、テンセント)のある人事異動が注目された。インタラクティブエンターテイメントグループ(IEG)内の天美工作室群(Timi Studuo)の姚暁光(ヤオ・シャオグワン)総裁が、プラットフォームコンテンツグループ(PCG)のソーシャルプラットフォーム責任者を兼任するというものだった。

天美工作室群は、テンセントのロングヒットゲーム「王者栄耀」を開発した部署。つまり、ゲームの責任者がソーシャルプラットフォームの責任者を兼ねるということで、ゲーム関連のコミュニケーションツールやSNSが開発されるのではないかと見られていた。

そして3ヶ月後、PCGが新しいプロダクトの内部テストに入った。「閙閙社区」(賑やかなコミュニティの意味)という名称で、英文名はNokNok、略称はKKとなるものだ。

 

テンセントがゲームSNS「NokNok」のテストを開始

NokNokは、無料で利用ができるゲームSNSになるという。本格的な開発が始まったのは2021年4月で、投稿機能やタイムライン、画像送信機能などシンプルな機能だった。5月になると、チャット、グループメッセージ、動画の公開などの機能が加わり、6月にはグループやメッセージの評価システムが加わり、7月からモニターテストを始め、A/Bテストを行なっている。

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▲テスト中のNokNokの画面。ユーザーはグループを作ることができ、そこで他のユーザーと交流することができる。

 

音声チャットや投票機能も実装予定

グループ内には複数のスレッドを作成することができ、各スレッドで利用者同士でメッセージ交換ができるようになっている。個人のアカウントにはSteamなどのゲームプラットフォームが紐づけられるようになっており、ゲームの好みや熟練度などがわかる工夫がされている。

作成できるグループには4種類ある。1つはゲームグループで、特定のゲームについて攻略法や感想などを交流する場になる。2つ目が募集グループで、オンラインでの協力者や対戦相手を探すもの。3つ目がKOLグループで、著名ゲーマー、ゲーム実況者がファンと交流する場。4つ目がブランクグループで、自由に使えるというものになる。

現在のところ、音声チャット、投票、接龍(リスト送信)、QQ/WeChatアカウントによるログインなどは搭載されていないが、テンセントによると開発を進めているという。また、NokNokはクロスプラットフォームになる予定で、Android版だけでなく、ウェブ版、PC版も開発が進められている。

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▲グループの中は掲示板方式になっている。音声チャットなどの機能も実装予定だ。

 

原神のヒットでDiscordを使う中国人が急増

このNokNokは、ゲームコミュニケーションツール「Discord」を意識して開発されたと見られている。

現在、中国でDiscordを使っているユーザーは多くはないが、今後爆発的に利用者が増える可能性が出てきている。それは、テンセントの出資を断り、独自で世界同時配信をして成功した「原神」(miHoYo)の存在だ。

miHoYoは、Discordのサーバー容量80万人では足りなくなり、サーバーを増強するという発表を行なった。原神を通じて、Discordを使い交流する中国人が増えていると思われる。これに対抗するためには、中国内にDiscordと同じ機能を持つサービスが必要で、それが可能なのはテンセント以外にない。そこにNokNokが登場した。

 

WeChatの成長の限界を補うゲームSNS

また、テンセントにとっても、WeChatは国民的ツールとなっているものの、QQは利用者数が減少をし続けている。この減少分を補う新たなSNSを必要としていた。

テンセントはWeChatが国民的インフラとなるほど成功したが、同時に成長の壁に突き当たっている。WeChatをこれ以上成長させるのは無理な話で、新たなSNS、コミュニティツールを開発していく以外方法はない。その中で、「ゲーム愛好者」は数も多く、利用頻度も高く、成功の可能性が高い市場だ。

しかし、ゲーマーの中には、「Discordのようなツールをわざわざ国内で開発しなくても、Discordを使えばいいだけなのでは?」ともっともなことを言う人もいる。

中国のゲーム業界は「テンセントによる国内中心の配信」と「独自による世界配信」の二極化が始まろうとしている。

 

 

スマート化により成長市場となっている中国家電。トレンドは「高級化」「健康機能」「ペット家電」

 

まぐまぐ!」でメルマガ「知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード」を発行しています。

明日、vol. 091が発行になります。

 

今回は、中国の白物家電の状況についてご紹介します。

2020年はコロナ禍で、家電製品の売れ行きは大きく落ち込みました。例外は、空気清浄機や衛生家電などのコロナ特需のあったものだけでした。しかし、2021年の上半期の統計が出てみると、軒並み回復をしています。テレビとエアコンはコロナ前の2019年の水準にまで回復することはできませんでしたが、冷蔵庫、洗濯機、調理家電、生活家電は2019年の水準を上回りました。

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▲各家電の販売額。すべてが2020年は上回ったが、テレビとエアコンはコロナ前の2019年の水準には戻りきれなかった。「2021年上半期中国家電市場報告」(中国電子情報産業発展研究院)より作成。

 

この回復に大きく寄与したのが、家電の3つのトレンドです。

1)スマート家電化、高付加価値、高級化

2)ECと店舗の販売チャンネルの棲み分け

3)ECの浸透による地方市場拡大

同様の傾向は日本でも進んでいますが、中国の方がより早くより強く進んでいると思います。そのため、日本の家電市場のトレンドを予測するときの参考になるのではないかと思い、ご紹介をしたいと思います。

 

スマート家電化では、今、一定グレード以上の家電製品はBluetoothなどでスマートフォンとつながるのが常識になっています。ほぼ、スマート化=高付加価値化、高級化と同義語だと考えて間違いありません。もちろん、豪華な化粧板を使った冷蔵庫など、古いタイプの高級化もありますが、多くの人が求めているのがスマート化です。どのようなスマート化が行われているのかは、後ほど個々の事例をご紹介します。

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▲各家電の平均価格と2020年の比較。いずれも平均価格が10%以上上昇している。低価格競争から抜け出すことができている。「2021年上半期中国家電市場報告」(中国電子情報産業発展研究院)より作成。

 

もうひとつは、ECと店舗の棲み分けです。いわゆるオンライン販売とオフライン販売です。現在、家電のEC化率は50%+程度で、コロナ禍の2020年に大きく伸びましたが、2021年はやや伸びが鈍化しました。店舗も意外に頑張っているのです。

店舗では、品揃えを大きく変え、高価格帯の家電が中心になっています。量販店のイメージのように、大量の段ボールに入った家電製品が山積みになっている店舗は減少し、高級さを前面に出したショールーム的な店舗が増えています。

理由は明らかで、低価格帯から中価格帯の家電は店舗では売れなくなったからです。店頭に並べて、販売員が説明しても、すぐにスマホを取り出されて、ECでの販売価格を調べ、そちらで買われてしまうからです。特に低価格帯の家電製品の利益率は非常に小さくなっており、ECがキャンペーンなどでクーポンを配布した場合、量販店は実売価格でまったく太刀打ちできません。

一方、高級家電はある程度の利幅がある上、テレビラックやケーブル、交換フィルターなどの関連製品も売れます。このような関連製品は、単価が安いため、多少価格を上乗せしても、多くの消費者がついで買いをするために、販売店にとっては貴重な利益源になっています。

また、高級家電は価格もそれなりになるので、消費者にも見比べてから買いたい、プロの意見を聞きたいというニーズがあるため、販売店に足を運び、自分の目で見て比較をします。販売スタッフは、家電コンシェルジュの役割をするようになっています。

さらに、地方都市、農村での家電の伸びが顕著です。このメルマガをご購読されている方にはおなじみの下沈市場です。EC「京東」(ジンドン)の全国配送、ソーシャルECの「ピンドードー」、日用食料品の社区団購など、近年、下沈市場へのECの浸透が進んでいます。これにつれて、下沈市場でも家電が売れるようになっています。

 

テレビとエアコンは、2019年の水準に回復をすることができませんでしたが、販売店は悲観はしていません。

テレビは、半導体不足の影響で品薄となり実勢価格が上昇気味になりました。また、スマート化も進み、希望小売価格自体も上がっています。2019年までは、厳しい価格競争が進行していましたが、その悪い循環から脱出できる機会がやってきていると捉えられています。今後、よりスマートかが進み、有機EL(OLED)が標準となり、壁掛けなどテレビの設置場所も変わり、より市場が拡大するのではないかと期待をされています。

すでに若い世代の間では、テレビは必須の家電ではなくなっています。映像はスマホで見るのが当たり前になり、テレビ離れが進んでいます。その中で、市場規模を維持していることに関係者は自信を持ち始めています。今後も、台数ベースでは減少しながらも、単価があがり、販売額ベースでは市場を維持、場合によっては拡大が期待できる状況になりつつあります。

 

エアコンも2019年の水準を大きく割り込みましたが、2020年を上回ることができ、関係者は安堵をしています。2020年7月からエアコンのエコ性能の基準が改訂されることから、2019年は旧基準のエアコンの強い駆け込み需要が生まれ、将来の需要を先食いすることになりました。

2020年は、その反動とコロナ禍で売れ行きが大きく落ち込みましたが、2021年はそれを上回ることができました。2021年は天候不順もあり、エアコンにとっては悪条件が重なりましたが、それでも上回ることができたのです。今後も順調に買い替え需要に従って、堅実に売れていくと見られています。

 

その他の家電は、2020年の落ち込みをカバーして、2019年の水準を上回ることができました。買い替え需要をベースに、さらにはウォシュレット、洗顔器、マッサージ機などよく売れる商品も定期的に登場してきています。また、スマート化により価格が高くなっても売れる状況が生まれています。

2021年上半期で、家電業界はコロナ禍の負の影響を完全に払拭をし、再び成長軌道に乗るという状況になっています。家電業界の人はみな明るい表情をしています。

では、スマート家電にはどんなものがあるのでしょうか。今回は、中国の家電の今の状況をご紹介します。

 

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