中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

スマート化により成長市場となっている中国家電。トレンドは「高級化」「健康機能」「ペット家電」

 

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明日、vol. 091が発行になります。

 

今回は、中国の白物家電の状況についてご紹介します。

2020年はコロナ禍で、家電製品の売れ行きは大きく落ち込みました。例外は、空気清浄機や衛生家電などのコロナ特需のあったものだけでした。しかし、2021年の上半期の統計が出てみると、軒並み回復をしています。テレビとエアコンはコロナ前の2019年の水準にまで回復することはできませんでしたが、冷蔵庫、洗濯機、調理家電、生活家電は2019年の水準を上回りました。

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▲各家電の販売額。すべてが2020年は上回ったが、テレビとエアコンはコロナ前の2019年の水準には戻りきれなかった。「2021年上半期中国家電市場報告」(中国電子情報産業発展研究院)より作成。

 

この回復に大きく寄与したのが、家電の3つのトレンドです。

1)スマート家電化、高付加価値、高級化

2)ECと店舗の販売チャンネルの棲み分け

3)ECの浸透による地方市場拡大

同様の傾向は日本でも進んでいますが、中国の方がより早くより強く進んでいると思います。そのため、日本の家電市場のトレンドを予測するときの参考になるのではないかと思い、ご紹介をしたいと思います。

 

スマート家電化では、今、一定グレード以上の家電製品はBluetoothなどでスマートフォンとつながるのが常識になっています。ほぼ、スマート化=高付加価値化、高級化と同義語だと考えて間違いありません。もちろん、豪華な化粧板を使った冷蔵庫など、古いタイプの高級化もありますが、多くの人が求めているのがスマート化です。どのようなスマート化が行われているのかは、後ほど個々の事例をご紹介します。

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▲各家電の平均価格と2020年の比較。いずれも平均価格が10%以上上昇している。低価格競争から抜け出すことができている。「2021年上半期中国家電市場報告」(中国電子情報産業発展研究院)より作成。

 

もうひとつは、ECと店舗の棲み分けです。いわゆるオンライン販売とオフライン販売です。現在、家電のEC化率は50%+程度で、コロナ禍の2020年に大きく伸びましたが、2021年はやや伸びが鈍化しました。店舗も意外に頑張っているのです。

店舗では、品揃えを大きく変え、高価格帯の家電が中心になっています。量販店のイメージのように、大量の段ボールに入った家電製品が山積みになっている店舗は減少し、高級さを前面に出したショールーム的な店舗が増えています。

理由は明らかで、低価格帯から中価格帯の家電は店舗では売れなくなったからです。店頭に並べて、販売員が説明しても、すぐにスマホを取り出されて、ECでの販売価格を調べ、そちらで買われてしまうからです。特に低価格帯の家電製品の利益率は非常に小さくなっており、ECがキャンペーンなどでクーポンを配布した場合、量販店は実売価格でまったく太刀打ちできません。

一方、高級家電はある程度の利幅がある上、テレビラックやケーブル、交換フィルターなどの関連製品も売れます。このような関連製品は、単価が安いため、多少価格を上乗せしても、多くの消費者がついで買いをするために、販売店にとっては貴重な利益源になっています。

また、高級家電は価格もそれなりになるので、消費者にも見比べてから買いたい、プロの意見を聞きたいというニーズがあるため、販売店に足を運び、自分の目で見て比較をします。販売スタッフは、家電コンシェルジュの役割をするようになっています。

さらに、地方都市、農村での家電の伸びが顕著です。このメルマガをご購読されている方にはおなじみの下沈市場です。EC「京東」(ジンドン)の全国配送、ソーシャルECの「ピンドードー」、日用食料品の社区団購など、近年、下沈市場へのECの浸透が進んでいます。これにつれて、下沈市場でも家電が売れるようになっています。

 

テレビとエアコンは、2019年の水準に回復をすることができませんでしたが、販売店は悲観はしていません。

テレビは、半導体不足の影響で品薄となり実勢価格が上昇気味になりました。また、スマート化も進み、希望小売価格自体も上がっています。2019年までは、厳しい価格競争が進行していましたが、その悪い循環から脱出できる機会がやってきていると捉えられています。今後、よりスマートかが進み、有機EL(OLED)が標準となり、壁掛けなどテレビの設置場所も変わり、より市場が拡大するのではないかと期待をされています。

すでに若い世代の間では、テレビは必須の家電ではなくなっています。映像はスマホで見るのが当たり前になり、テレビ離れが進んでいます。その中で、市場規模を維持していることに関係者は自信を持ち始めています。今後も、台数ベースでは減少しながらも、単価があがり、販売額ベースでは市場を維持、場合によっては拡大が期待できる状況になりつつあります。

 

エアコンも2019年の水準を大きく割り込みましたが、2020年を上回ることができ、関係者は安堵をしています。2020年7月からエアコンのエコ性能の基準が改訂されることから、2019年は旧基準のエアコンの強い駆け込み需要が生まれ、将来の需要を先食いすることになりました。

2020年は、その反動とコロナ禍で売れ行きが大きく落ち込みましたが、2021年はそれを上回ることができました。2021年は天候不順もあり、エアコンにとっては悪条件が重なりましたが、それでも上回ることができたのです。今後も順調に買い替え需要に従って、堅実に売れていくと見られています。

 

その他の家電は、2020年の落ち込みをカバーして、2019年の水準を上回ることができました。買い替え需要をベースに、さらにはウォシュレット、洗顔器、マッサージ機などよく売れる商品も定期的に登場してきています。また、スマート化により価格が高くなっても売れる状況が生まれています。

2021年上半期で、家電業界はコロナ禍の負の影響を完全に払拭をし、再び成長軌道に乗るという状況になっています。家電業界の人はみな明るい表情をしています。

では、スマート家電にはどんなものがあるのでしょうか。今回は、中国の家電の今の状況をご紹介します。

 

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