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「テンセントの壁」が崩れ、ネットのオープン化で何が変わる?異なる流量戦略を持っているWeChatとアリペイのミニプログラム

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明日、vol. 092が発行になります。

 

今回は、中国で起きているネットの規制緩和についてご紹介します。

報道などで、厳しいゲーム規制や教育改革が進んでいることはご存知だと思います。日本の報道では、ゲーム規制は子どもたちの遊びを奪う、教育改革は習近平思想を徹底させるためと批判的に受け止めたものが多いですが、「vol.090:今どきの子どもたちのネット事情。ゲーム規制、教育改革をしたたかかに生きる子どもたち」でもご紹介したように、素直に内容を見れば、学校が課す宿題の量を制限し、学習塾や補習系のオンライン講座などを規制し、学業への負担を和らげ、空いた時間を科学技術や芸術、スポーツなどの有益な体験をする時間に向かわせるため、以前より問題になっていたオンラインゲームへの規制を行なったように見えます。中国版ゆとり教育であると思います。

 

これと同じくらい大きな変化が、政府がネットの垣根を取り払う指導を行ったことです。9月9日、工信部は「サイトリンク遮断問題行政指導会」を開催し、ネットの中でのリンク遮断を9月17日までに解消する道筋をつけるように指導をしました。

ネットリンク遮断とはなんでしょうか。詳しくは「vol.074:アリババはテンセントの軍門に降ったのか。アリババのサービスがWeChatミニプログラムに続々対応」でご紹介していますが、騰訊(タンシュン、テンセント)の国民インフラともなっているSNS「WeChat」は、リンク遮断を行なっていたのです。

WeChatは中国人の誰もが利用していると言っても過言ではないSNSですが、メッセージの中にアリババのEC「淘宝網」(タオバオ)へのリンク、バイトダンスの中国版TikTok「抖音」のショートムービーへのリンクを入れると、タップをしてもエラーページが表示されるだけで、リンク先に飛ぶことができません。リンク遮断を行なっていたのです。

建前としては、WeChatの規定により、他社のサービスの宣伝活動が禁止をされているため、外部リンクは他社サービスの宣伝活動にあたるとして遮断をされています。しかし、実態は、WeChatが集めた流量を他社に渡したくないということであるのは明らかです。

 

テンセントが特別強欲で自分のことしか考えていないというわけではありません。アリババのスマホ決済である「アリペイ」、テンセントの「WeChatペイ」、銀行業界の「銀聯」の間でも分断が起きています。アリババ系サービスではアリペイしか使うことができず、テンセント系サービスではWeChatペイしか利用できないということはよくあり、消費者はさまざまなサービスを使いこなすには、最低でも「アリペイ」「WeChatペイ」の2つはインストールしておく必要があります。

日本で言えば、クレジットカードのVISAが使える店、Masterが使える店、JCBが使える店に分かれているようなもので、その使い分けは消費者にとっては不便でしかありません(アリババ、テンセントと無関係な商店は両方に対応が一般的)。

これについても中央銀行が「プラットフォーム経済領域の独占に対するガイドライン」策定の必要性に触れ、遮断状態を解消していくべきだとしました。

これにより、アリババ系サービスは銀聯とWeChatペイに対応することを表明し、テンセント系サービスである美団(メイトワン)、ピンドードーもアリペイに対応することを表明しました。

今後多くのサービスが主要なスマホ決済が利用できるようになり、消費者は自分が最も使い勝手のいいスマホ決済を使えるようになります。

 

これもWeChatのリンク遮断、スマホ決済の垣根がなくなり、消費者にとっては利便性が大きく向上する優れた政策です。工信部の指導会の後、テンセントは期限の9月17日に、「WeChat外部リンクコンテンツ管理規範」を改訂することを表明し、監督部門の指導の下、外部リンク遮断の解消を段階的に進めていくことを発表しました。

しかし、今度は、遮断解消がなかなか進まないことが話題になっています。遮断を解消するには、不正コンテンツ発見システムから、対象を削除すればいいだけのでやる気になれば一瞬でできることです。しかし、テンセントとしてはできるだけやりたくない。あるいは準備をしてから遮断を解消してきたいようです。

なぜなら、圧倒的な多くの流量をWeChatで集め、それを自社サービスにミニプログラムを通じて配分するということで、テンセントのビジネスが成り立っていたからです。それが他社にも流れるとなると、ゲーム規制で事業の方向転換を考えなければならなくなっているところに、法人ビジネス事業まで事業の転換を考えなければならなくなります。

 

ミニプログラムについてご紹介したのは「vol.007:ミニプログラム活用で新規顧客を獲得する店舗小売」とかなり以前のことなので、今回はまずミニプログラムの簡単なおさらいから入りたいと思います。また、ミニプログラムはテンセントだけでなく、アリババや百度、バイトダンスも取り入れていて、日本ではLINE、PayPayなどもミニプログラムの考え方を取り入れています。さらには、アップルもiOSでAppClipsというミニプログラムと同じ考え方の機能を採用しました。

この中で、重要なのはやはりテンセントのライバルであるアリババのアリペイミニプログラムであり、アリペイのミニプログラムは、WeChatミニプログラムとはまた違った考え方で収益に結びつけようとしています。そこで、今回は、アリペイのミニプログラムがどのような発想で収益に結びつけようとしているのかをご紹介し、両者の比較もしてみたいと思います。

世界の潮流を見れば、ネイティブアプリの時代は終わり、ミニプログラムの時代に移ろうとしており、日本でもミニプログラム(ミニアプリ)が伸びてくることは間違いありません。どのような構成のミニプログラムであれば成功ができるのか、その参考にしていただければと思います。

今回は、WeChatミニプログラム、アリペイミニプログラムについてご紹介します。

 

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