中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

中国で始まった海外渡航。日本へのインバウンド旅行客はいつ戻ってくるのか

 

まぐまぐ!」でメルマガ「知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード」を発行しています。

明日、vol. 065が発行になります。

 

日本の街の風景の中から、中国人観光客の姿が消えて1年が経ちました。中国人インバウンド客は、日本政府観光局(JNTO)のデータによると、2019年には、約960万人が日本を訪れ、訪日外国人の約30%を占めていました。それがコロナ禍によりほぼゼロになってしまいました。JNTOの統計によると、2021年2月の訪日中国人は1700人となっています。ほとんどは、ビジネスか肉親との面会でしょう。

観光業だけでなく、飲食業、小売業などにとって、インバウンドは大きな収入源でした。それがまるまるなくなってしまうことにより、厳しい状況に追い込まれている方も多いかと思います。

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▲この2年間の訪日中国人数。2020年1月は前年越えだったものが、2月以降、ほぼゼロの状態になっている。日本政府観光局(JNTO)のデータより作成。

 

一方で、中国では再び旅行熱が高まっています。新型コロナが終息して、マスク、体温検査、健康コード、長距離移動の制限は続くももの、長距離移動にあたらない周辺游と呼ばれる近場旅行が盛んになっています。

中国文化旅游部の中国旅游研究院は、今年の2月に「中国旅行経済ブルーブック(No.13)」を公開しました。この中に、2021年の旅行需要の予測が記載されています。

それによると、国内旅行は41億人で前年比42%の伸び、海外旅行は約70%の伸び、中国へのインバウンド旅行は約65%の伸びになると予測しています。と言っても、伸び率の基本にしている2020年の海外旅行はほぼゼロ状態なのですから、海外旅行に関しては本格的な回復は2022年からになると見ているようです。

中国メディアの中には、2021年前半に国内旅行を完全回復させ、後半から海外旅行、そして、2022年の北京冬季五輪を機に海外から中国への旅行を回復させるスケジュール感ではないかと見ているところもあります。

ただし、国内はともかく、海外旅行に関しては不確実です。相手国の感染状況とワクチン接種状況の進捗が関わってくるからです。中国旅游研究院のブルーブックでも、海外旅行の具体的な予測数字は書かれてなく、まだまだ不確定な要素が多いと注釈されています。

とは言え、すでに中国は、海外との交流に動き出しています。この3月には、中国版国際健康証明証の運用が始まりました。これはPCR検査、抗体検査などで陰性であった人、ワクチン接種を受けた人に発行する証明証で、スマホ版と紙版があります。あくまで中国独自のものですが、今後、相手国との交渉を進めていき、入国審査に使えるものとし、最終的には世界全体で共通して使われる国際健康証明証システムと連結する予定です。

 

私は感染症の専門家ではないので、あくまでも一般常識からの推測ですが、最も好ましいシナリオは、夏の東京五輪前後から中国人インバウンド客が戻り始め、秋の国慶節で回復基調が鮮明となり、2022年の春節で以前と同じ賑わいが戻ってくるというものだと思います。多くの方が、このスケジュール感を望んでいるでしょう。

一方、最悪のシナリオは、何年経ってもインバウンド客が戻ってこず、日本旅行ブームが終わるシナリオです。そんな話聞きたくないという方も大勢いらっしゃるかと思いますが、その可能性は否定しきれません。このメルマガでも何度か触れている「内循環」のライフスタイルが定着をし、旅行は近場に行く、身近なところで楽しいことを発見するという考え方が広がっています。

また、中国がパンデミックの起点であったにも関わらず、世界に先駆けて感染を抑え込んだことに対して、中国人は自国に自信を持ち、中国を再発見する「国潮」と呼ばれる考え方も広まっています。

中国版Tik Tok「抖音」(ドウイン)を通じてヒット曲になった「簡単的幸福」という曲のサビのフレーズは、「身近にあって、すぐそばにある幸せ。もう孤独になることはない」というもので、多くの中国人の共感を呼んでいます。海外に出かけて豪華なホテルでおいしい食事をするのもいいけど、自分の家族と食卓を囲む、子どもと遊ぶ、そういうところに幸せはあると考える人が増えています。新型コロナのロックダウンや外出自粛で、孤独になること、孤立することがいちばんつらいことだと感じたのだと思います。

 

つまり、旅行に対する考え方もがらりと変わる可能性があります。後で触れますが、参考にした資料のひとつ「2021中国旅行市場展望」(マッキンゼー&カンパニー)の副題は「非線形的復調にチャンスを探す」となっています。つまり、以前と連続した変化ではなく、がらりと状況が変わるということです。

少なくても、日本の感染状況が落ち着けば、中国人は自然に戻ってきてくれるだろうという考えが間違いであることは確かです。もし、観光関係者全員がそんな感覚であれば、中国人の日本旅行ブームは終わります。なぜなら、タイやベトナムというライバルたちはすでに動き出しているからです。

今回は、中国で国内旅行から始まった旅行業の復調をご紹介し、そして、中国人は再び日本旅行をしてくれるのかどうかを考えます。

 

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vol.062:突如として売れ始めた電気自動車(EV)。中国のEVシフトが本格化

vol.063:テック企業にとっての春節。テックサービスを地方と高齢者に伝播をさせる重要な時期

Vol.064:中国社会の弱点「信用形成」を補うブロックチェーン技術。その応用事例

 

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Tik Tokのバイトダンスが検索エンジンの開発へ。百度との競争は激化

バイトダンスの張楠CEOが、ショートムービー時代の検索エンジンを開発すると宣言をして話題を呼んでいる。中国で検索エンジンと言えば、百度の独壇場だったが、バイトダンスはこの牙城を崩そうとしていると創造一下が報じた。

 

Tik Tokが検索機能を開発。百度とも競争激化

バイトダンスが、抖音(ドウイン、Tik Tok)のSNS化を進め、テンセントのSNS「WeChat」とポジションが重なり始めている。テンセント側はWeChatからTik Tokへのリンクを遮断、独自にWeChatにTik Tokそっくりのショートムービー共有サービス「視頻号」(チャネルズ)を追加するなど対抗策をとっている。これに対して、バイトダンスは遮断措置の解除を求めて裁判に訴えるなど対立が激化している。

それだけではなく、バイトダンスはBATの一角である百度バイドゥ)のポジションも脅かそうとしている。

バイトダンスの張楠(ジャン・ナン)CEOは、同社のニュースキュレーションサービス「今日頭条」の中の個人アカウントで、Tik Tok用の検索エンジンを開発することを表明した。

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▲バイトダンスの張楠CEOは、「今日頭条」で、ショートムービー時代の検索エンジンを開発することを宣言し、多くの人の支援、参加を募っている。百度との競争が激化すると見られている。

 

ショートムービー時代の検索エンジンを開発する

それによると、今や世の中の表現、創作物の多くはムービーになっている。だとしたら、情報を調べるには、テキストで検索をするのではなく、ムービーを検索する方が理にかなっている。すでにTik TokのMAU(月間アクティブユーザー数)は5.5億人になっていて、人々は知らないことがあると、まずTik Tokを開いて検索をしてみるという習慣が生まれている。

そのため、Tik Tokを人類のムービー百科全書にしたい。しかし、ムービー検索を開発するのは簡単なことではない。この1年で、バイトダンスはムービー検索に多くのリソースを投入する。興味のある研究、プロダクト、運営の領域の人は、ぜひバイトダンスに加わって手伝ってほしいというものだ。

 

単なるタグ検索ではないムービー検索エンジン

このTik Tok用の検索エンジンの開発は、今始まったものではない。すでに2019年8月には、「0から独自の検索エンジンを開発する」と宣言をしている。2年間の研究開発期間を経て、開発が本格化したのだと見られている。

Tik Tokには、すでに検索機能が備わっている。キーワードで検索をすると、それに関連するショートムービーが見つかるというものだ。Tik Tokにムービーを投稿すると、まず画像解析が行われる。その内容は非公開だが、ムービーの中に映っている物の物体認識が中心になっているのではないかと言われている。現在の検索機能は、この物体認識によるタグを検索しているものだと考えられる。バイトダンスはこれから新たに検索エンジンを開発すると宣言しているのだから、このような単純なものではないはずだ。それがどのようなものになるかはまだわからないが、バイトダンスの技術力と発想力を考えると、検索エンジンの歴史を変えるものになるのではないかと期待をする声が集まっている。

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▲現在の中国版Tik Tokの検索画面。ショートムービーには、AIによるタグがつけられているため、そのタグをテキスト検索するというもの。

 

時代はテキストからムービーに移っている

21世紀以前、インターネットは巨大な図書館だとみなされ、本の索引を検索するという手法が検索エンジンの中心となった。この手法を洗練させたのがグーグルだった。そして、2011年にグーグルは、画像検索を公開し、テキスト検索の次に一歩を踏み出した。

この数年で、インターネットの中心はテキストや画像から、ムービーに移り始め、YouTubeやTik Tokが最も消費されるコンテンツになってきた。そのために、効率的にムービーを検索する仕組みが必要になっているのだ。それは、ムービーにつけられたタグをテキスト検索するなどというものではなく、より精度の高い、ほしいムービーがすぐに見つかるものでなければならない。

それがどんなものになるか。今後1年で明らかになる。

 

時代の役割を終えたテキスト検索エンジン

バイトダンスはそのつもりはなく、自分たちのやるべきことをやっているだけだと思うが、世間は、この検索エンジン宣言によって、バイトダンスと百度の関係に注目をしている。

百度の業績が2019年に著しく落ち込んだのは、百度そのものが検索広告の企業からAIの企業に大転換をしていることもあったが、ネット広告の主軸が検索広告からTik Tokなどのショートムービー広告に移ったことも大きかった。当時、元「南方週末」の記者がネットに発表した「検索エンジン百度はすでに死んだ」という文章が話題を呼んだりした。

この筆者が、2015年に百度の李彦宏(リー・イエンホン、ロビン・リー)CEOをインタビュー取材した時、ロビン・リーはすでに検索エンジンが時代の役割を終えたことを認識していたという。スマホアプリが全盛になっていた当時、ロビン・リーはこう答えたという。「多くの企業が独自のアプリの開発を行なっていることはわかっている。もう検索エンジンに頼らなくてもよくなり、企業はアプリを通じて消費者に対して適切な情報提供をすることができるようになる。消費者が、スマホ時代になって、検索ということに時間を使わなくなっていく。それは私たちにとって大きな問題になる。消費者がサービスを求める時は、まずアプリを利用するだろう。検索エンジンは情報しか提供できず、サービスは提供できないからだ」。

つまり、百度は、飲食店の前で、勝手に「おいしい餃子はこちらです」と呼び込みをしていて、以前は飲食店の売上に貢献をしていたため、目をつぶってもらっていたが、今では飲食店が自分たちでお客を呼び込むことができるようになった。そうなると、人の商売を利用をして、小銭を稼ぐ「勝手に呼び込み」は目障りな存在となり、追い払われることになったのだ。

そのため、ロビン・リーは、百度の最大の成功プロダクトである検索広告を追求するのではなく、背水の陣で、AIに大転換を始め、それが2020年になってようやく実を結び始めている。

 

検索エンジンは、新たな時代に突入する

バイトダンスのTik Tokの検索エンジンがどのようなものになるのかはまだわからない。しかし、単なるテキスト検索で、ムービーに付加されたタグを検索するなどという単純なものではないことは確かだ。その機能であれば、すでにTik Tokに備わっている。1年後に、どのような検索エンジンが登場するのかは想像もつかないが、テキスト検索エンジンの時代が終わったことは確かだ。検索は21世紀になって、次世代検索へと進化を始める。

 

 

菓子メーカー「三只松鼠」がTik Tokライブコマースで10億円の売上。直販ライブコマースに活路を見出す

中国で人気のある菓子メーカー「三只松鼠」が中国版Tik Tok「抖音」(ドウイン)のライブコマースで、春節前の1月、年貨期間の20日間という短い期間に6500万元(約10.9億円)を売り上げ、食品部門で1位となり、すべてのライブコマースの中でも第2位となった。しかし、その陰には、4年にわたるライブコマースに対する準備期間があったと億邦動力網が報じた。

 

挫折後、ライブコマースに活路、上場へ

「三只松鼠」(サンジーソンシュー、Three Squirrels)は、2012年6月に創業したナッツ、ドライフルーツなどを中心とした菓子メーカー。社名の通り、三匹のリスのキャラクターを前面に打ち出し、オンラインを中心に販売をしてきた。日本でもアマゾンや楽天市場を通じて販売をしている。

そして、2019年7月には、深圳証券取引所の新興企業向け市場「創業版」(チャイネクスト)に上場をした。

しかし、販路についてはアリババの天猫(Tモール)、京東の旗艦店などのオンライン店舗の他、実店舗の展開など、急速な拡大をしたため、品質低下を招き、2017年に上場準備を進めている中、国家食品薬品監督管理局から品質問題を指摘されるという打撃を受け、いったん上場計画を取りやめている。

それがライブコマースに活路を見出し、再び成長をし、上場を果たすことになった。

 

インフルエンサーの委託販売から、自分たちのライブコマースへ

三只松鼠は、2017年にタオバオライブでライブコマースを始めている。この時には、タオバオ達人に商品を託して販売してもらう方式で、人気の高かったタオバオ達人「薇」(ウェイヤー)と契約をすることを試みた。

2018年には、タオバオライブでの販売を始める。薇を始めとするトップインフルエンサーに商品を託して販売をしてもらう形式だ。11月11日の独身の日にはタオバオライブのライブコマースが成功する。同時にタオバオに店舗を開設して、通常時も購入できるようにした。

2019年になると、台頭してきたショートムービープラットフォーム「抖音」(ドウイン、Tik Tok)、「快手」に、同社のキャラクターなどを使ったムービーを配信し、プロモーションを行うことにして専任チームを設置。

2020年には、ライブコマースを三只松鼠の重要な戦略販売チャネルと定め、ブランドデジタル化チームを設置、インフルエンサーに委託をするのではなく、自社でライブコマース番組を制作する方向に進み始めた。担当社員が販売する形式、CEOが直接販売をする形式、同社のキャラクターが販売をするバーチャルライブコマースなどさまざまな方法が試された。

つまり、当初はトップインフルエンサーに商品を委託して、販売してもらう方式のライブコマースだったが、最終的には、自分たちでライブコマース番組を制作する形式に変化している。ライブコマースの委託販売から直販に変わったことになる。

2020年、この直販ライブコマースで、タオバオライブでは1600回で9000万元、京東ライブでは571回で6400万元、Tik Tokでは109回で879万元、そして、今年2021年1月の年貨キャンペーンでは20日間で6500万元を売り上げた。

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▲三只松鼠のTik Tokでのライブコマース。出演をしているのは社員。トークなども独自のシナリオを作り上げている。

 

ブランド価値を守るには直販ライブコマース

三只松鼠は、2017年当初からタオバオ達人に課題を感じていたという。担当者はこう振り返る。「当時は、タオバオ達人に委託するライブコマースが主流で、流通総額も大きかったので、当然の選択肢でした。しかし、タオバオ達人のライブコマースの内容は雑なこともあり、我々が大切にしている商品イメージを毀損してしまうこともありました。しかも、タオバオライブの場合、タオバオ達人に対する委託料が売上の14%もあり、利益が大きく低下してしまいます。そのため、自社による直販ライブコマースを模索するようになりました」。

しかし、直販ライブコマースの道は簡単ではなかった。タオバオライブでは、すでに薇や李佳琦といったとップインフルエンサーが大量の流量を確保しており、三只松鼠が直販ライブコマースを行っても、なかなか流量を獲得できない。そこにTik Tokが新たにライブコマースの仕組みを始めた。新しいプラットフォームであれば勝機はあると考え、三只松鼠はTik Tokでの直販ライブコマースに注力をしていくことになる。

 

コンテンツ内容に工夫が必要なTik Tokライブコマース

三只松鼠では、現在、タオバオ、京東、Tik Tokの3つのプラットフォームで直販ライブコマースを行っている。しかし、Tik Tokのライブコマースは、他の2つとは違っているという。「最も大きな違いは、タオバオと京東のライブコマースの視聴者は、すでに三只松鼠の商品を購入するつもりがあるということです。一方、Tik Tokのライブコマースはそうではありません。ライブコマースの内容に工夫をする必要があります」。

タオバオ、京東のライブコマースは、多くの場合、商品名で検索をしてライブコマースを選び、視聴して購入をする。しかし、Tik Tokの場合、検索をしてライブコマースに入る人はそう多くない。通常のショートムービータイムラインにライブコマースも配信され、面白いと思った人がタップをすると、ライブコマースに入れる仕組みだ。そのため、まず映像で興味を持たせなければならないし、いったんライブコマースを視聴したらアカウントをフォローしてもらえるようにする工夫をしなければならない。

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▲三只松鼠は3匹のリスをキャラクターとしている。キャラクターCGを使ったバーチャルライブコマースも実験的に行なっている。

 

オリジナルの言語体系を確立

三只松鼠では、Tik Tokのライブコマースに参入する前、Tik Tokのユーザープロフィールの分析を行い、三只松鼠の商品を購入する利用者は1億人だと見積もった。これを3億人にすることを目標に設定し、さまざまな施策を行っている。

ライブコマースに出演するスタッフの服装、道具、照明、音楽などを三只松鼠のブランドイメージに沿って試行錯誤をしている。また、スタッフのトークも「歓迎話術」「注目話術」「感謝話術」「質疑応答話術」「追加注文話術」の5つのシナリオを作成し、三只松鼠独自の言語体系を確立した。さらに、三只松鼠のIPであるリスのキャラクターを前面に打ち出すなどの工夫を行なっている。このキャラクターを使ったバーチャルライブコマースにも挑戦している。

現在、ライブコマースチームは15名。このチームがタオバオ、京東、Tik Tokのライブコマースを担当している。3つのプラットフォームで同じライブコマースを行うのではなく、それぞれのプラットフォームの特性にあったライブコマースを制作している。その努力が、Tik Tokライブコマースで、20日間で6500万元という大きな成果に結びついた。

Tik Tokのライブコマースで成功をすることは簡単でない。しかし、その分、チームのクリエイティブは鍛えられる。その成果を、他のプラットフォームにも応用することで、三只松鼠は成功をした。

 

 

百度の業績が回復。検索広告からAI事業への転換を進める百度

百度の業績が回復をしている。検索広告からスタートした百度は、AI事業への転換を図り、2019年には業績不振に苦しんだ。中国AIは、技術力と発想力は高いものの産業応用がなかなか進まず、マネタイズが痛点だと言われていた。その中で、百度がAI事業で業績回復をしたことは、中国AIにとっても大きな出来事だと新視財経が報じた。

 

百度の業績回復が鮮明に

百度の復調が鮮明になっている。2020年の財務報告書によると、営業収入は1070.74億元(約1.78兆円)となり、2019年の1074.13億元から微増したにすぎないが、純利益は2019年に20.57億元と大きく落ち込んだものが、2020年には224.72億元(約3700億円)にまで回復している。これは、一昨年の2018年の275.73億元に近い水準で、2019年の危機的状況は脱したと見ることができる。

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百度の業績が回復をしている。2019年は赤字寸前にまで落ち込んだが、AI事業に転換をし、再び利益の出る企業になっている。

 

AI事業に転換をしている百度

百度は、グーグルとほぼ同じ事業ドメインで中国で検索広告のビジネスを展開し、一気に成長したが、創業者の李彦宏(リ・イエンホン、ロビン・リー)は、「AI先生」と呼ばれるほど、百度創業当時からAIに強い関心があった。

検索広告で百度が成功すると、ロビン・リーは積極的にAI事業に挑戦をしていった。その象徴的な存在が、「アポロ」自動運転プラットフォームだ。すでにアポロ仕様のロボタクシーが長沙、北京などで全面開放試験(指定された地域内で、市民を乗客として乗せる運用。営業運行の一歩手前)を行っている他、ロボバスの販売を始めている。

検索広告からAIに転換する間で、利益が大きく落ち込み、先行きが危ぶまれたが、AI事業とクラウド事業がようやく収益を出せるようになってきた。AI先生が目指す世界観までにはまだまだ道のりは遠いが、背水の陣で大転換をしている最中で、なんとか第一歩を踏み出すことができたという段階だ。

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百度の自動運転プラットフォーム「アポロ」によるロボタクシー。すでに市民に開放された試験運行が各都市で行われ、営業運行目前になっている。

 

マネタイズが痛点になっていた中国AI

2019年、2020年は、中国のAI開発にとって大きく躍進をした年で、百度を始めにさまざまなAI系のスタートアップが生まれている。しかし、どこも苦しんでいるのがマネタイズだ。技術力は高くても、うまく収益に結びつけることができない。そこがAI事業の難しさになっているが、AI に大転換をした百度が業績を以前の水準まで戻したことは大きい。

百度のAI事業の構造は、アポロ自動運転プラットフォーム、百度地図、音声アシスタント「小度」(シャオドゥ)というAIツールを、百度クラウドで処理をするというものになっている。すでにこれらを利用した自動車製造の企業を設立することを公表している。

百度は2021年Q1の営業収入を260億元から285億元(約4800億円)と予測しており、これは前年同時期から15%から25%の伸びになる。

BATの一角とされながら、2019年の業績不振で、ファーウェイ(Huawei)を入れたHATが中国のテックジャイアントに相応しいとも言われるようになった中で、再び百度が成長の兆しを見せている。それも以前の検索広告ではなく、AI企業としてだ。ロビン・リーは、2度、百度を起業したと言っても過言ではない。

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▲BAT3社の売上を比較すると、百度は他の2社に比べて小さい。それでもテックジャイアント3強に咥えられているのは、高い技術力を持っているからだ。中国のテック企業には、百度出身のエンジニアがたくさんいる。

 

 

Tik Tokのバイトダンスがゲーム市場に本格参入。テンセントとの競争は激化

Tik Tokを運営する字節跳動(バイトダンス)が、ゲーム市場に本格参入し、公式サイト「朝夕光年」を公開した。これで中国には、テンセント、網易(ワンイー、NetEase)に続く第3極となるゲーム企業が生まれることになると雷科技が報じた。

 

収益ランキング上位に中国製ゲーム

公式サイト「朝夕光年」(Nuverse)が公開されたのは2月22日。すでに7つのゲームが掲載されている。

調査会社Sensor Towerのスマホゲームの収益ランキングでは、テンセントの「王者栄耀」「PUBGモバイル」、MiHo Yoの「原神」などの中国製ゲームが上位にランキングされている。王者栄耀は1月だけで2.67億ドル(約290億円)の収益をあげている。

また、PUBGモバイルは、韓国のPUBGが開発したPCゲーム「PleyerUnkown’s Battlegrounds」を、テンセントがスマホ版に移植をしたもの。網易は、「荒野行動」が日本でも広く遊ばれている。中国企業は、オリジナルのゲームと、スマホの移植の2本立てでゲームを量産している。

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▲バイトダンスは、朝夕光年で現在7つのゲームを公開している。

 

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▲Sensor Towerのスマホゲームランキング(2021年1月)。テンセント、miHo Yo、NetEaseなどの中国企業がランキングに顔を出している。https://sensortower.com/blog/top-mobile-games-by-worldwide-revenue-january-2021

 

アリババもゲーム市場に参入

スマホゲームは、PCゲームや家庭用ゲーム機用ゲームと比べて、開発期間が短く、開発費用も比較的小さくすむ。そのため、テンセントはスマホゲームにフォーカスをし、ゲーム関係の売上が全体の30%前後になっている。

アリババの創業者、馬雲(マー・ユイン、ジャック・マー)は、かつてゲーム産業には参入しないと発言していたが、結局アリババも阿里互娯(アリババゲームズ)を設立し、「三国志戦略版」「三国志幻想大陸」「風之大陸」などを公開している。ただし、課金要素が強く、一部のゲーマーからは批判もされている。

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▲アリババゲームズの三国志戦略版。一部のユーザーからは課金要素が強く批判をされている。

 

ゲーム領域でもテンセントのライバルに

バイトダンスが公開しているスマホゲームは、「鏢人」「魂猫伝」「オールスターファイト」「火影忍者」などのように、コミックやライトノベルの原作があったり、過去のゲームキャラクターがベースになっているものが多い。

バイトダンスは、すでに10のゲームスタジオを買収または投資をしている。2020年のバイトダンスの収入は1750億元(約2.9兆円)だったが、ゲーム関係の収入は40億元から50億元程度だと見られている。仮に40億元(約670億円)だとしても、中国のゲーム企業トップ10にランクインする。今回の朝夕光年サイトの公開は、このゲーム事業をさらに成長させていこうとするものだ。

バイトダンスはTik TokのSNS化を進めている。それに加えてゲーム、ライブコマースに力を入れている。テンセントの事業ドメインと重なる部分が多くなっている。バイトダンスは、エンターテイメント界のテンセントを目指しているのだと見ている人もいる。

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▲バイトダンスは、10のゲームスタジオを買収、投資をして開発体制を整えている。

 

 

 

人が休んでいる時に働かなければならないフードデリバリー。ウーラマの報奨金施策を中央電子台が批判

ウーラマが春節休みに仕事をしてくれた配送スタッフに報奨金を出す施策を行なったところ、中央電子台が批判キャンペーンを展開している。誰もが休みたい春節休みに働かないと報奨金が減額されることを問題にした。央視網はそれに対するウーラマの批判も報道した。

 

ギグワークに支えられるフードデリバリー

中国の新小売の毛細血管的配送として重要な働きをしているフードデリバリー企業「美団」(メイトワン)と「餓了麽」(ウーラマ)。料理だけでなく、店舗ECで購入される商品も配送することから「即時配送」とも呼ばれるようになっている。

定時勤務の配送員も多いが、ギグワークの配送員もたくさんいる。スマートフォンの専用アプリで、配送員登録をしておけば、自分の好きな時にログインをして働くことができる。働く側からは、空いた時間に副業として働くのに便利であり、運営側からは、ピーク時とオフピーク時の配送員の人数調整がしやすくなる。

配送員が不足すると思われる時間帯、曜日には、報奨金を出すことで、働く人の数を増やすという仕組みだ。

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▲ウーラマの配送員。労働環境は改善され、低賃金の仕事とは言えなくなっているが、仕事がきついのは変わらない。

 

報奨金制度は、基本報酬を下げ、配送員の質を下げる

しかし、この報奨金による配送員人数の調整の問題は、報奨金のための準備金を用意する必要があるため、ベースとなる基本報酬が低くなる傾向があることだ。あまりに、基本報酬を低くし、報奨金を高くしてバランスが悪くなると、毎日働く人の時間あたりに得られる報酬が少なくなり、報奨金が出る時だけ要領よく働く人の時間あたりの報酬が高くなることになる。

毎日、定時で働き、配送を本業としている人は、その仕事を失うと生活に困ることから自然と職業意識も高くなっていく。しかし、週に数時間しか働かないギグワークの人は、あくまでも副業のひとつであり、その仕事を失っても大きくは困らない。そのため、職業意識はあまり高くならない。

つまり、基本報酬を下げ、報奨金の割合を多くすると、配送員の需給調整はしやすくなるが、業務品質は下がっていく。基本報酬をあげ、報奨金の割合を下げると、業務品質は上がるが、配送員の需給調整がしづらくなり、場合によっては消費者からの注文に応えられないという事態も起こる。この配送員の需給調整は、即時配送企業では大きなテーマとなっている。

 

中央電子台がウーラマを批判するキャンペーン報道を展開

その中で、ウーラマが春節期間に行った報奨金の仕組みがあまりにひどいと中央電子台のニュースサイトである央視網が批判を展開している。

今年の春節は、帰郷をせずに現住所で年越しをすることが奨励されたため、デリバリー需要が急増すると見られ、その対策として打ち出された奨励金キャンペーンだった。

春節の期間、7期のクエストをクリアすると、8200元(約13.6万円)の報奨金が得られるというものだったが、現実には、その報奨金を得られる人はほとんどなく、いわゆる高額の報奨金を餌に働かさせたのではないかと批判をしている。

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▲中央電子台が問題にしたウーラマの報奨金施策。誰もが休みたい春節休みに働かないと、報奨金の総額が大きく下がるというものだった。

 

春節休みに厳しい条件をクリアしないと報奨金が減額

このキャンペーンは、2021年1月11日から2月28日までの49日間実施された。7週間は7期に分けられ、例えば、第1期は7日間で290回の配送を達成すると、350ポイントが獲得できるなど、配送回数の達成条件とそれで得られるポイントが定められている。このポイントも報奨金となるが、多くの配送員がねらっているのは、7期のうち3期の達成条件をクリアするともらえる8200元の報奨金だ。

しかし、どの3期でもいいわけではなく、第6期と第7期の達成が必須条件になっていて、もし、第6期を達成せずに他の3期で達成した場合は報奨金は4700元に減らされ、第7期を達成せずに他の3期で達成した場合は報奨金は2000元になってしまう。

この第6期は、2月14日から2月21日の2週間であり、春節が2月12日であり、春節休みの2月11日から2月17日までと重なっている。春節休みは公共サービス以外、すべての市民が休みを取る時期で、この期間に働かないと報奨金が満額受け取れないという仕組みは問題ではないかと央視網は問題にした。

さらに、最初の5期は達成配送回数が、290、265、255、260、94となるのに対して、第6期の達成条件は380件と跳ね上がる。休みたい時に働かせて、なおかつ無理な条件をして、報奨金を受け取らせない意図があるのではないかと批判をしている。

 

ウーラマは中央電子台の報道に反論

ウーラマは、この報道に反論をした。第6期の条件が高く設定されているのは、春節休みでデリバリー需要が高まるからであって、配送員にとっては、同時並行での配送ができるため、他の期と比べて特に難しい条件とは言えない。むしろ、空き時間がなくなり、配送員にとっては効率よく稼げる期間でもある。

また、キャンペーンの意図は「春節休みにも働かないと報奨金が減らされてしまう」というものではなく、本来は4700元の報奨金だが、春節休みに働いてくれる配送員には、特別に8200元に増やすという意図だったという。ただし、キャンペーン自体を「最高額8200元」を前面に打ち出して告知をしたのは、誤解を招く表現で不適切だったと謝罪をした。

 

デリバリーがきつい仕事であることは変わらない

即時配送の配送員は、もはや低賃金の仕事ではなくなっている。副業として、週に数時間しか働かない人も多いため、統計を取ると平均賃金が低くなってしまうだけだ。他の職業に比べて高いわけではないが、フルタイムで働けばじゅうぶんに生活をしているだけの額が稼げるようになっている。特に、仕事が少ない地方都市では、定番の職業になっている。また、失業をした人が、つなぎで働くことができ、その社会的効果も評価をされるようになっている。

また、美団、ウーラマともに、ギグワークを減らし、フルタイムで働く配送員を増やしていく策を進めている。

ただし、決して楽な仕事ではないようだ。繁忙期にはトイレに行く暇もなく、少しでも遅れれば顧客から低評価をつけられ、低評価が多いと一定期間働けなくなる。マンションなどでは、防犯を理由に、配送員を立ち入り禁止あるいは居住者エレベーターの利用禁止にしているところもある。ストレスの多い仕事であることは確かなようだ。

 

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  • 発売日: 2019/08/21
  • メディア: ホーム&キッチン
 

 

中国社会の弱点「信用形成」を補うブロックチェーン技術。その応用事例

まぐまぐ!」でメルマガ「知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード」を発行しています。

明日、vol. 064が発行になります。

 

中国のブロックチェーン技術の産業応用が活発になってきます。大きな話題になったのが、「vol.046:デジタル人民元の仕組みとその狙い」でもご紹介したデジタル人民元です。デジタル人民元は、暗号資産ビットコインと同じように取引記録がブロックチェーンで管理をされています。

メルマガでも触れましたが、デジタル人民元の登場により、スマホ決済「アリペイ」「WeChatペイ」が不要になってしまうということはありません。デジタル人民元はデジタル通貨であり、スマホ決済はデジタルウォレットで、「お金と財布」のように本質的に異なるものです。

アリペイやWeChatペイの中に入っているのは単なるポイントで、スマホ決済は財布や通帳の役割をしています。デジタル人民元の登場により、スマホ決済が不要になると言うのは、「日本円があるから、銀行口座が不要になる」というのと同じくらいおかしな話です。

アリペイ、WeChatペイは、飛行機や高鉄のチケット購入、タクシー配車、フードデリバリー、飲食店予約などさまざまな決済を必要とする生活サービスが使えるようになっていて、これがウォレットとしての価値を高めています。銀行口座が振り込みができたり、光熱費の自動引き落としなどの機能があるのと同じことです。ですから、近い将来、デジタル人民元をアリペイにチャージをして、アリペイのサービスを使うということになっていくでしょう。

 

しかし、アリペイ、WeChatペイの2つの決済が、決済市場を独占をしていた時代は終わることになります。なぜなら、これから銀行もデジタル人民元のウォレットを開発していくことになるからです。当面は、対面決済や送金ができる程度のウォレットですが、銀行も研究を重ね、アリペイ、WeChatペイと肩を並べられるウォレットを開発していくことになります。すると、スマホ決済(ウォレット)にはライバルが多数登場し、アリペイとWeChatペイだけで競い合う時代は終わり、どのウォレットが最も使いやすいかというウォレット競争が激しくなっていきます。

中央銀行である人民銀行が、デジタル人民元を推進しているのは、銀行の開発力を高め、アリペイやWeChatペイと競争できるようにするという狙いもあります。

しかし、生活系サービスへの対応は、銀行よりも、アリババやテンセントの方がはるかに得意です。商売に不慣れな銀行が手を出してもあまりうまくいかないでしょう。そこで銀行のウォレットに期待されるのが金融機能です。簡単に投資信託ができる機能、少額から株式や証券が購入できる機能、簡単に自動車ローン、住宅ローンが組める機能、収入や借入金を人工知能が判断をして、最も効率的な返済計画をリコメンドしてくれたり、投資と借り入れのアドバイスをしてくれる機能、年齢などのプロフィールから適切な保険商品をリコメンドしてくれる機能などが求められます。

銀行がこのようなフィンテックサービスをデジタル人民元のウォレットを中心に展開していくのに必要なのが、ブロックチェーン技術です。それゆえ、ブロックチェーン技術が重要になってきているのです。

 

ブロックチェーンについては、読者の方もよくご存知だと思いますが、一言で言えば、改竄がきわめてしづらいデジタル台帳です。ですから、金融関係の台帳だけでなく、土地や自動車、商品のデジタル台帳としても利用することが考えられています。面白いところでは、簡単にコピーができるはずのデジタル画像をブロックチェーン台帳に登録することで、この世に1枚しかないという価値を持たせ、絵画のような売買市場を作ろうというアイディアもあります。

 

ブロックチェーンの技術的な詳細については、検索をすれば、他の優れた記事がいくつも見つかるので、ここでは簡単におさらい程度に留めます。技術的な話を読むのが煩わしい方は、「改竄がきわめてしづらいデジタル台帳」という認識だけでも問題はありません。しかし、ブロックチェーンの産業応用を理解するには、ある程度の技術的概要を知っておいた方が理解しやすくなります。

ブロックチェーンというアイディアのキモとなっているのは、記録がチェーン(鎖)のように連続をしているということです。預金通帳には、残高が日付ごとに並んでいますが、あれも一種のチェーンになっています。もし、ある日の残高を改竄しても、出入金記録と以前の残高から計算し直すことで、残高が改竄されていることがわかってしまいます。

 

では、ブロックチェーンはどのようにして、記録のチェーンを作っているのでしょうか。そこで必要になる考え方がハッシュ値です。言葉は難しいかもしれませんが、考え方はシンプルです。ハッシュとは切り刻むという意味です。

ハッシュ値は、小学校の頃に習った九去法による検算に近い考え方のものです。今は、電卓やエクセルがあるので、筆算ということはほとんどしなくなっていますが、筆算に間違いがないかどうかを簡単に検算できる方法です。

例えば、3264+7253を計算すると、答えは10517となりますが、この計算が正しいかどうかを簡単に調べられるのが九去法です。九去法では、それぞれの数字をバラバラにして、9になる組み合わせを消していき、残りをメモします。例えば、3264であれば3と6は組み合わせて9になるので、残った2と4を足して6となります。7253も同じようにして、7と2を消して、残りの5と3から8となります。答えの10517は、1と1と7が9になるので5となります。この数値だけを計算と同じ(ここでは足し算)計算をします。6+8は5+1+8=5+9と考えて、5となります。これが答えの5と一致をしているので、この計算は正しいと判断できます。もちろん、計算間違いがあっても偶然うまくいってしまうこともないわけではないので確実ではありませんが、筆算では強力な検算方法になります。

ポイントは、それぞれの数字を組み合わせて9になるたびに消していくことと、検算操作が1桁の計算という誰でも暗算できる簡単な操作になることです。

 

ハッシュ値もこの九去法によく似ています。元のデータよりはるかに小さなデータになり、計算が容易になるという特性を持っています。デジタルデータは数値の羅列ですから、そこから特定のアルゴリズムにより、桁数が決まった数値に変換したものがハッシュ値です。アルゴリズムは使いやすさなどを考えてさまざまなものが考案されていますが、計算が軽く、複数のデータが偶然同じハッシュ値になる確率が少ないものが使われます。

このハッシュ値は、動画でも使われています。動画共有サービスでは、正式な権利者が公開した公式動画のハッシュ値を計算し保存しておきます。そして、利用者がアップロードしたすべての動画のハッシュ値も計算し、先ほどの権利者のハッシュ値と比較をします。もし、ハッシュ値が同じである場合は、公式動画をコピーした権利侵害である可能性があるのです。動画そのものを比較するのは膨大な計算が必要になりますが、桁数の決まった数値であるハッシュ値を比較するのは軽い計算で済みます。ハッシュ値は、元のデータを要約した数値のような感覚です。

 

ブロックチェーンに、新しいデータを追加する場合は、2つの要素から新しいブロックを作ります(本来は3つの要素ですが、ここでは省きます)。1つはもちろん記録したいデータです。2つ目が前のブロック(記録)のハッシュ値です。ここがポイントになっています。

前のブロックのハッシュ値が、新しく追加されるブロックに使われているため、前のブロックのデータが改竄されると、ハッシュ値も変わってしまい、次のブロックに記録されている改竄前のハッシュ値と一致しなくなります。これで改竄されたことがわかり、チェーンは切断されることになります。

このハッシュ値を、次のブロックの要素のひとつとして利用することで、ブロックが繋がり、チェーンが繋がっていきます。これがブロックチェーンの「改竄されない」特性を担保しています。

 

中国では、2019年2月に「ブロックチェーン情報サービス管理規定」(http://www.cac.gov.cn/2019-01/10/c_1123971164.htm)が施行されて以来、すでに1000を超えるサービスなどの申請がありました。また、広州市杭州市、北京市上海市を中心に23の都市が、30のブロックチェーンテックパークの建設計画を発表、着手し、動きが活発になってきています。特に杭州市が積極的にブロックチェーン産業の育成に力を入れています。

さらに、清華大学北京大学浙江大学西安電子科技大学、上海財経大学、西安交通大学などで、ブロックチェーン技術関連の講座を設置し、専門の研究室の設置、企業との共同研究体制を築き、研究に力を入れるだけでなく、人材の育成も行おうとしています。

中央政府ブロックチェーンを国家基幹技術のひとつに定めたことで、にわかに銀行、大学、企業、都市政府が動き始めた印象です。

今回は、中国で、ブロックチェーン技術がどのように応用されようとしているのかをご紹介します。

 

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