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人が休んでいる時に働かなければならないフードデリバリー。ウーラマの報奨金施策を中央電子台が批判

ウーラマが春節休みに仕事をしてくれた配送スタッフに報奨金を出す施策を行なったところ、中央電子台が批判キャンペーンを展開している。誰もが休みたい春節休みに働かないと報奨金が減額されることを問題にした。央視網はそれに対するウーラマの批判も報道した。

 

ギグワークに支えられるフードデリバリー

中国の新小売の毛細血管的配送として重要な働きをしているフードデリバリー企業「美団」(メイトワン)と「餓了麽」(ウーラマ)。料理だけでなく、店舗ECで購入される商品も配送することから「即時配送」とも呼ばれるようになっている。

定時勤務の配送員も多いが、ギグワークの配送員もたくさんいる。スマートフォンの専用アプリで、配送員登録をしておけば、自分の好きな時にログインをして働くことができる。働く側からは、空いた時間に副業として働くのに便利であり、運営側からは、ピーク時とオフピーク時の配送員の人数調整がしやすくなる。

配送員が不足すると思われる時間帯、曜日には、報奨金を出すことで、働く人の数を増やすという仕組みだ。

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▲ウーラマの配送員。労働環境は改善され、低賃金の仕事とは言えなくなっているが、仕事がきついのは変わらない。

 

報奨金制度は、基本報酬を下げ、配送員の質を下げる

しかし、この報奨金による配送員人数の調整の問題は、報奨金のための準備金を用意する必要があるため、ベースとなる基本報酬が低くなる傾向があることだ。あまりに、基本報酬を低くし、報奨金を高くしてバランスが悪くなると、毎日働く人の時間あたりに得られる報酬が少なくなり、報奨金が出る時だけ要領よく働く人の時間あたりの報酬が高くなることになる。

毎日、定時で働き、配送を本業としている人は、その仕事を失うと生活に困ることから自然と職業意識も高くなっていく。しかし、週に数時間しか働かないギグワークの人は、あくまでも副業のひとつであり、その仕事を失っても大きくは困らない。そのため、職業意識はあまり高くならない。

つまり、基本報酬を下げ、報奨金の割合を多くすると、配送員の需給調整はしやすくなるが、業務品質は下がっていく。基本報酬をあげ、報奨金の割合を下げると、業務品質は上がるが、配送員の需給調整がしづらくなり、場合によっては消費者からの注文に応えられないという事態も起こる。この配送員の需給調整は、即時配送企業では大きなテーマとなっている。

 

中央電子台がウーラマを批判するキャンペーン報道を展開

その中で、ウーラマが春節期間に行った報奨金の仕組みがあまりにひどいと中央電子台のニュースサイトである央視網が批判を展開している。

今年の春節は、帰郷をせずに現住所で年越しをすることが奨励されたため、デリバリー需要が急増すると見られ、その対策として打ち出された奨励金キャンペーンだった。

春節の期間、7期のクエストをクリアすると、8200元(約13.6万円)の報奨金が得られるというものだったが、現実には、その報奨金を得られる人はほとんどなく、いわゆる高額の報奨金を餌に働かさせたのではないかと批判をしている。

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▲中央電子台が問題にしたウーラマの報奨金施策。誰もが休みたい春節休みに働かないと、報奨金の総額が大きく下がるというものだった。

 

春節休みに厳しい条件をクリアしないと報奨金が減額

このキャンペーンは、2021年1月11日から2月28日までの49日間実施された。7週間は7期に分けられ、例えば、第1期は7日間で290回の配送を達成すると、350ポイントが獲得できるなど、配送回数の達成条件とそれで得られるポイントが定められている。このポイントも報奨金となるが、多くの配送員がねらっているのは、7期のうち3期の達成条件をクリアするともらえる8200元の報奨金だ。

しかし、どの3期でもいいわけではなく、第6期と第7期の達成が必須条件になっていて、もし、第6期を達成せずに他の3期で達成した場合は報奨金は4700元に減らされ、第7期を達成せずに他の3期で達成した場合は報奨金は2000元になってしまう。

この第6期は、2月14日から2月21日の2週間であり、春節が2月12日であり、春節休みの2月11日から2月17日までと重なっている。春節休みは公共サービス以外、すべての市民が休みを取る時期で、この期間に働かないと報奨金が満額受け取れないという仕組みは問題ではないかと央視網は問題にした。

さらに、最初の5期は達成配送回数が、290、265、255、260、94となるのに対して、第6期の達成条件は380件と跳ね上がる。休みたい時に働かせて、なおかつ無理な条件をして、報奨金を受け取らせない意図があるのではないかと批判をしている。

 

ウーラマは中央電子台の報道に反論

ウーラマは、この報道に反論をした。第6期の条件が高く設定されているのは、春節休みでデリバリー需要が高まるからであって、配送員にとっては、同時並行での配送ができるため、他の期と比べて特に難しい条件とは言えない。むしろ、空き時間がなくなり、配送員にとっては効率よく稼げる期間でもある。

また、キャンペーンの意図は「春節休みにも働かないと報奨金が減らされてしまう」というものではなく、本来は4700元の報奨金だが、春節休みに働いてくれる配送員には、特別に8200元に増やすという意図だったという。ただし、キャンペーン自体を「最高額8200元」を前面に打ち出して告知をしたのは、誤解を招く表現で不適切だったと謝罪をした。

 

デリバリーがきつい仕事であることは変わらない

即時配送の配送員は、もはや低賃金の仕事ではなくなっている。副業として、週に数時間しか働かない人も多いため、統計を取ると平均賃金が低くなってしまうだけだ。他の職業に比べて高いわけではないが、フルタイムで働けばじゅうぶんに生活をしているだけの額が稼げるようになっている。特に、仕事が少ない地方都市では、定番の職業になっている。また、失業をした人が、つなぎで働くことができ、その社会的効果も評価をされるようになっている。

また、美団、ウーラマともに、ギグワークを減らし、フルタイムで働く配送員を増やしていく策を進めている。

ただし、決して楽な仕事ではないようだ。繁忙期にはトイレに行く暇もなく、少しでも遅れれば顧客から低評価をつけられ、低評価が多いと一定期間働けなくなる。マンションなどでは、防犯を理由に、配送員を立ち入り禁止あるいは居住者エレベーターの利用禁止にしているところもある。ストレスの多い仕事であることは確かなようだ。

 

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