中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

電子決済システムがトラブるとこうなる

今年の1月1日、深圳市の大型スーパーで、スマートフォン決済ができなくなるというトラブルが生じた。街頭での決済のほとんどをスマホ決済に依存するようになった中国で、決済ができなくなるトラブルはパニックをも起こしかねない。何が起きたのか、今日頭条が報じた。

 

スマホ決済への依存を強める中国

中国では、日常消費のほとんどをQRコードを利用したスマートフォン決済で支払うようになっている。現金を持ち歩く人は、急速に減っている。電子決済化することで、シェアリングエコノミー、消費者金融などさまざまなビジネスが生まれ、個人消費は大きく伸びているが、もし、この重要インフラともなってしまったスマホ決済がトラブルを起こしたらどうなるのだろうか。専門家の中には、サイバー攻撃を受けた場合の弱点になるので、対策が必要だと訴える人もいる。

幸い、この数年、スマホ決済が使えなくなるという大規模障害は起きずに済んでいる。スマホ決済は、携帯電話網のパケットネットワークとWiFi経由のインターネットという2つの通信手段を持っているので、その両方が使えなくなるという事態はそうそう起こらないからだ。

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散乱するカート、買い物カゴ

今年、1月1日、深圳市の龍華区の大型スーパー「RT-MART」で、突如、スマホ決済ができなくなるというトラブルが生じた。スーパーのレジ側のトラブルだった。決済できなくなったのは、アリペイとWeChatペイで、銀行カード(デビットカード)による決済は可能だった。

店舗側も予期しなかったトラブルで、混乱をし、来店客に対するアナウンスが遅れ、レジには長い行列ができる事態となった。数分後、店舗側が、スマホ決済が決済不能になっていること、そのため、現金か銀行カードによる決済でお願いしたいということをアナウンスすると、行列に並んで来店客の中には困惑をする人が続出した。なぜなら、現金や銀行カードを持たずに買い物にきている人が大半だったからだ。

買い物をやめるにしても、買い物カゴに中に入れた商品を戻すのは一苦労だ。RT-MARTの店舗は広く、1つ1つ商品を元の場所に戻していく作業は簡単ではない。店舗側の判断は早く、すぐに「買い物を中止される方は、商品はそのまま置いたままでけっこうです」とアナウンスした。そのため、レジ付近には、カートや買い物カゴが散乱することになったが、実際の現場は大きな混乱もなく、落ち着いていたという。現金、銀行カードを持っている人は、通常通りレジでの決済ができたが、脇に放置されている買い物カゴの中の商品から、買い忘れた商品を見つけて、自分のカゴに移す人もいた。

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▲当初、レジ付近まできてから初めてスマホ決済が使えないことを知った人多く、多くの人が、カートやカゴを放置して去ってしまった。

 

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▲通路にも商品が放置される事態になった。

 

二重の決済手段があれば、混乱は限定的

原因は、スーパー側の携帯電話ネットワークルーターの呼称だった。数時間後に復旧をし、レジ付近に放置されたカゴ、カートは、スタッフの手により整理された。

RT-MARTでは、当日の売り上げが大きく下がることは避けられないにしても、大きな混乱はなかったと説明している。

おおごとにならなかったのは、中国はスマホ決済も普及をしているが、同時に銀行カード(デビットカード)も普及をしているからだった。実際の決済に銀行カードを使う人はあまりいないが、キャッシュカードと兼用なので、日頃から持ち歩いている人が多かった。こういう事態になって、初めてデビットカードによる決済をしたという人も多かったが、多くの人が代替手段を持っていたというのが、大きな混乱にならなかった理由だ。

電子決済は、現金と違って、決済不能のトラブルが起きるリスクは避けられない。そのリスクがいかに小さいものであっても、トラブルが起きたときに、他の手段がなければ、混乱が生じるだろう。電子決済社会に突き進むことはいいことだが、複数の決済手段を普及させるということが重要なのだということを、この事件は教えてくれる。

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▲レジ付近に放置されたカゴ。その中から買い忘れた商品を拾い上げて、購入する人もいた。

 

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▲レジに並ぶのは、スマホ決済以外の決済手段を持っている人。放置された商品は、混乱が収まった後、スタッフにより片付けられた。

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中国IT経営者たちのセンターテスト「高考」

中国の学校の新学期は9月。高校3年生は、年が開けると、いよいよ志望校を決め、受験準備に入らなければならない。そして、6月に行われる高考(中国の共通入学試験)に向けて猛勉強しなければならないつらい時期が始まる。彼ら受験生が憧れるのは、現在、IT業界で活躍する経営者たちだ。その経営者たちは、18歳のとき、高考の時期をどう過ごしたのか。AI財経社が報じた。

 

 

1982年、ジャック・マー18歳

ジャック・マー(馬雲)は、アリババの会長。現在最も勢いのある経営者だ。「銀行が変わろうとしないなら、私が変える」「Amazon Goよりも先に無人スーパーを開店する」といった「宣言」をすることでも有名で、そのたびに世間からは「ホラ吹き」と揶揄もされてきた。しかし、アリペイの普及、杭州市の無人スーパー「アリカフェ」などの開業で、ホラを現実のものに変えてきた。

18歳のジャック・マーは、学校の勉強があまり得意ではなかった。英語は熱心に勉強していて成績もよかったが、数学が大の苦手。足切り基準点にもはるかに及ばないレベルだった。

杭州師範大学を目指して、高考を受験したが、数学はなんと1点。ひとつの科目でも基準点を割ると、合計点がいくら高くても大学には進学できない。アルバイトをしながら浪人生活を送るが、翌年の高考も数学は19点。やはり大学には進学できない。

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当時のジャック・マーは、「この世界は悪意に満ちている」と考えていたという。自分は英語が好きで、英語を使った仕事に就きたい、そういう仕事であれば実力を発揮できる自信もあるのに、自分にはまったく興味のない数学という科目があるために大学に進学ができない。大学進学をあきらめ、働きながら学べる服務学生の道も探ったが、これも成績が足らず叶わなかった。ジャック・マーは、失意のうちに、アルバイトをしながら、参考書で独学をしていたという。

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三度目の高考では、数学は79点となった。しかし、基準点は85点であり、これを下回ったジャック・マーには大学進学の権利が与えられない。しかし、英語の得点はずば抜けてよかった。高校の教師たちは、杭州師範大学に対して運動をし、その結果、ジャック・マーは特別枠で、杭州師範大学への入学が許されることになった。ジャック・マーの人生はここから開けていく。

高校の教師たちを動かしたのは、ジャック・マーの英語に対する熱心さだった。1点しか取れなかった数学を必死で勉強して79点を取るところまできた努力だった。それがなければ、教師たちもわざわざ運動などしてくれなかっただろう。

 

1986年、ロビン・リー18歳

ロビン・リー(李彦宏)は、百度のCEO。中国のグーグルと呼ばれる百度は、検索エンジンを提供しているが、最近では自動運転技術や人工知能技術の開発に力を入れていて、グーグルの真似からスタートして、現在ではグーグルのライバルになるところまで成長している。

ロビン・リーの家庭はごく普通の家だったが、ロビン・リーは子どもの頃から頭がよかった。山西省陽泉市の高考ではトップの成績を取り、北京大学に進学をし、図書情報学を専攻した。子どもの頃から本が好きで、図書館などで働く仕事をしたかったからだという。

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しかし、入学して3ヶ月、ロビン・リーは五月病にかかってしまった。図書情報学という分野に落胆をしてしまったのだ。図書情報学は、古臭い文献カードの作り方と読み方を学ぶばかりで、興味のある授業がまったくない。北京大学の中では、成績があまり振るわない学生が専攻する「吹き溜まり」なのだということも、入学後に初めて知った。

当時、姉が海外の大学に留学をしていて、ロビン・リーも海外留学をしようと考えるようになった。結局、在学中は留学がかなわなかったが、北京大学を卒業後、ニューヨーク州立大学でコンピューターサイエンスの修士課程を専攻する。卒業後、そのまま米国で就職し、インフォシークなどで検索エンジンの設計を行う。その経験を活かして、中国に帰国後、百度を設立した。

ロビン・リーは、成績はよかったが、大学進学は失敗だった。しかし、その失敗を取り戻すために留学をしたことが、ロビン・リーのその後の人生を切り開くことになった。

 

1989年、ポニー・マー18歳

ポニー・マー(馬化騰)は、テンセントのCEO。テンセントは中国最大のSNS「QQ」、メッセージSNS「WeChat」、電子決済WeChatペイなどを運営している。さらに、ゲーム開発にも強く、ネットゲーム「王者栄耀」は中国で社会現象となっている。海外のゲーム開発企業を次から次へと買収もしていて、現在、グループ全体では、世界最大のゲーム企業にもなっている。

馬化騰は、海南島の生まれで、14歳の時に家族で深圳に越してきた。天文学の好きな少年で、天文学者になりたかったという。高校1年生の時、親に天体望遠鏡をねだったが、親は買い与えなかった。当時の天体望遠鏡はとても高価で、親の給料の2ヶ月分もしたからだ。馬化騰は日記にこう書いたという。「天体望遠鏡を買ってくれなかった僕の親は、将来の天文学者を一人、殺してしまったのだ」。

馬化騰の親は、ある時、その日記を読んでしまい、心を痛めて涙を流したという。

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しかし、それは大きな問題にならなかった。馬化騰は、天文学が学べる大学を調べ始めたが、卒業生の就職先を見ると、ほとんどが小中学校の地理の教師だった。馬化騰は、教師になりたいわけではなかった。その時、コンピューターを知り、馬化騰はコンピューターに興味を移していき、コンピューターサイエンス系の大学に進学をしたいと考えるようになる。

高考の成績は900点満点で739点という優秀なものだった。馬化騰は深圳大学への進学を選ぶ。深圳大学は630点ほどで進学できるので、余裕だった。もっとレベルの高い大学にも進学できたが、深圳大学を選んだのは、自宅から通うことができ、親元から離れなくて済むという理由からだった。

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深圳大学を卒業後、深圳のIT企業の研究職に就職、5年後に独立して、テンセントを創業した。そこで、後のSNS「QQ」の前身となるメッセージSNS「OICQ」を開発。パソコンを使って、チャットと音声で連絡ができるというメッセージサービスで、当時としては先端的なものだった。このヒットが、QQ、WeChatに繋がっていく。

 

1992年、劉強東18歳

劉強東は、ECサイト「京東」の創業者。京東は、アリババのTmallに対抗する大手ECサイトで、配送物流に力を入れ、いち早く翌日配送、当日配送を実現し、TmallとECサイトナンバーワンの座を競っている。

劉強東の家は、江蘇省宿遷市にあり、かなり貧しかったという。体が大きかったので、少年の頃は、村長や村の幹部の護衛のようなこともしていた。報酬はなかったが、食事を出してくれるからだ。それほど、家は貧しかった。

それでも学業は優秀で、高考では宿遷市のトップの成績をとる。北京市にある中国人民大学に進学し、社会学を専攻した。県知事になり、地元の貧困問題を解決することが目標だった。学費はなんとか都合をつけたが、生活費などはギリギリだった。劉強東は北京に上京する時に、親戚から集めた生活費500元を下着に縫い付け、リュックには親戚一同が持たせてくれた76個の茶葉煮玉子が入っていたという。

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そのため、大学に入学してすぐさまざまなアルバイト、ビジネスを始めた。大学2年生の時に、コンピュータープログラミングを学ぶと、すぐに宿遷市政府の電力管理部門や、瀋陽市のファストフード店の在庫管理システムなどの仕事をとってきて、学生としてはかなりの額を稼いでいた。

そして、大学4年生の時に、大学近くのレストランを20万元で買収し、オーナーとなる。そこから、本格的な劉強東のビジネス人生が始まった。人民大学は、北京市のIT拠点である中関村に近いこともあり、中関村に「京東マルチメディア」を設立。電子部品やCD-Rなどの卸業を始める。これが後のECサイト「京東」につながっていく。

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この4人は、BATJ(百度baidu、アリババ、テンセント、京東Jingdong)と呼ばれる4社の創業者たち。現在、中国のIT業界はBATJを中心に回っていると言われている。

しかし、この4人の経営者の大学進学は決してスムースではなかった。受験で失敗する者、大学選びを間違える者、大学の外に生きる道を見出す者、さまざまだ。大学選びは、人生を決定づける大きな選択だが、それがすべてではない。大学に入ってから、どう行動するかの方が重要なのだ。

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すでに実用化されている無人運転技術。北京オリンピック公園を清掃するカタツムリ

昨年9月より、北京オリンピック公園の歩道は、無人運転清掃車が掃除をしている。百度無人運転技術「アポロ」を使用した10車種を公開したが、この清掃車は実用第一号になるとAutoLabが報じた。

 

オープンプラットフォームで進める百度の「アポロ」

ドライバーレスカー(無人運転自動車)の開発は、米国グーグル(ウェイモー)と中国百度がリードをしている。百度のドライバーレスカープロジェクト「アポロ」の大きな特徴は、オープンプラットフォームだということだ。百度が開発した自動運転技術を、参加企業は一定の条件下で無料で利用することができる。多くの中国企業が参加をしているが、海外からもボッシュダイムラー、フォードなどの自動車関連企業、インテルマイクロソフトNVIDIAなどのIT企業も参加をしている。

このようなオープンプラットフォームにする最大のメリットは、多角的な「知恵」を集めることができることだ。日本や米国でのドライバーレスカーは、乗用車が中心になりがちだが、中国のアポロ計画では、商用車の無人運転化も進んでいる。物流トラック、長距離バス、路線バスなどの無人運転車の開発が進められている。

例えば、物流トラックの場合、走るルートはほぼ決まっていて、高速道路が中心になる。また、途中であちこち寄る必要もないので、要求される運転技術は基本的なものだけになる。無人にすることによってコストが下がるという直接のメリットが大きい。実用化を考えたら、乗用車よりもはるかにハードルが低いのだ。

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百度が公開した無人運転車10車種。小型バス1車種、作業車1車種、乗用車8車種だ。まずは作業車などの商用車から販売が始まる。

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公園の歩道を清掃するカタツムリ

このアポロ計画の中で、すでに実用化して、使われているドライバーレスカーがある。それは、智行者科技が開発をした「蝸Ω」だ。蝸(カタツムリ)という名前からも分かる通り、低速走行車のシリーズ名で、用途としては道路清掃車、工場内物流運搬車、閉鎖区域内カートなどに応用される。

昨年12月20日、百度アポロ計画から生まれた10種類の無人自動車を公開したが、その中の1台がこの「蝸Ω」で、すでに昨年9月から北京オリンピック公園の歩道の清掃に利用をされている。作業は、閉門後の夜間に行われるので、原則、人身事故の危険性はない。

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北京オリンピック公園内を清掃する「蝸小白」。実際は、閉門後の夜間に作業が行われる。画像解析には頼らないので、夜間でも問題なく、自動運転が可能。

 

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▲公開された清掃車「蝸小白」。すでに昨年9月から北京オリンピック公園の夜間清掃を行っている。右は、貨物運搬をする無人運転車「蝸必達」。

 

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▲操作、管理はすべてウェブから行う。ルート設定をしておけば、その通りに作業を進めてくれる。

 

百度は、年内に無人運転車の販売を開始する

この清掃車「蝸小白」は、8つのミリ波レーダー、2つのレーザーを備え、アポロ1.5の自動運転システムを搭載している。5から10cmの精度で、道路や障害物を把握し、時速は最高20km。操作、管理はすべてウェブからできるようになっている。

智行者科技は、この自動

運転清掃車「蝸小白」を、他の公園や大学、工場などに広げていきたいとしている。考えてみれば、大型のルンバのようなもので、自動運転技術を最も実用化しやすい領域だ。このようなところから、すでに自動運転の時代が始まっている。

次は、閉鎖区域内での貨物運搬車が焦点になる。工場内での貨物配送などだ。まずは、万が一事故が起きても被害の少ない貨物から始まり、今後、公道での作業車、そして人を輸送する自動運転車とステップアップをしていくことになる。百度では、年内に、一般の人が購入できる無人運転車を発売すると公言している。

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▲運搬をする無人運転車「蝸必達」も公開試験が行われ、発売目前だ。工場内、大学内、マンション内での配送、貨物輸送に使われる。

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順豊が大型ドローンを公開。軍用ドローンと同じ仕様か

中国宅配企業「順豊」が、無人配送計画に使う中型ドローンを公開した。貨物ユニットは外侮に装着をし、飛行中に切り離して落下させるというものになる。このドローンが、人民解放軍の空軍で使われているドローンと同型ではないかと晨曦科技が報じた。

 

無人化へ突き進む中国の宅配物流

中国の物流は、無人化への道を進み始めている。宅配企業「順豊」は、ECサイト「京東」と共同で、すでにドローン宅配を一部始めている。また、トラックの無人運転配送も試験段階に入っている。将来的には、農村部は完全無人配送にし、都市部も期間物流は無人化し、最後の宅配部分を人間が行うことで、コストの低減とサービスの向上を両立させようとしている。

 

ドローン専用飛行場を経由する大がかりな計画

その中でも大がかりな計画が、京東と順豊が共同で行っているもので、四川省に185カ所、陝西省の100カ所のドローン専用飛行場を建設する計画だ。主要空港までは貨物飛行機で荷物を運び、空港からドローン専用飛行場までは中型無人ドローンで運る。ドローン専用飛行場から各戸までは小型ドローンで運ぶというものだ。

順豊は、この中型無人ドローンをメディアの前にお披露目した。

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貨物ユニットは300m上空で切り離し

その姿は、ドローンというよりも無人飛行機だ。翼長20m、機体長10m、重量3トンで、1.2トンまでの貨物を積載することができる。巡航速度は、最高時速250km、6000m上空を最大3000km飛行することができる。

貨物室は、ユニットとして腹部に装着することができ、飛行中に切り離すことができる。ユニットにはパラシュートが装着されていて、着地をする。高度300mのところから切り離し、30秒後にユニットは着地する。順豊では、当面は化粧品などの小さい商品の配送から利用をしていく予定だという。

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▲メディアの前に公開された順豊の中型ドローン。1.2トンの貨物を積載することができ、空港とドローン専用飛行場の間を担当する。

 

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▲貨物ユニットは、腹部に装着をし、切り離して落下させる。

 

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▲翼長は20m。時速は250km。最大巡行距離は3000km。人民解放軍の探査用ドローンとほぼ同型であると報じられている。

 

軍用機と共通化することで生まれる双方のメリット

多くのメディアが指摘しているのが、この無人飛行機は、軍用機の転用ではないかということだ。腹部に装着をする貨物ユニットの代わりに、爆撃弾や探索レーダー装置などを装着すれば、軍用に転用することができる。

それもそのはず、この無人ドローンを開発した四川騰盾科技は、新興の飛行機メーカーだが、中国人民解放軍の空軍にも製品を納入しているのだ。同じドローンのしようを変えて、軍用と民生用の両方に納入することで、軍用としてはコストが大きく下がり、民生用としては信頼性が大きく向上できる効果が見込めるとメディアは論評している。


中国空军 - 四川腾盾科技双尾蝎无人机成功首飞

人民解放軍の空軍に納入された四川騰盾科技の無人機。順豊で採用されたドローンもほぼ同型であると考えられている。

 

 

ロボット導入に反対するフォクスコン女性工員たちが美しい抗議

世界のIT企業の製品の委託生産を行う中国フォクスコンは、たびたび労働問題を起こしている。そのフォクスコンは、工員からロボットへの転換計画を進めている。工員は、反発をし、反対運動を行っているが、杭州工場の女性工員たちが、水着を着て作業をするというユニークな抗議活動を行ったと今日頭条が報じた。

 

「冷酷無情」と呼ばれるフォクスコン

ホンハイグループのフォクスコンは、中国で電子機器の生産委託を請け負うEMS企業だ。有名なところではアップル、任天堂、HP、デルなどの製品を受託生産している。本社は台湾だが、生産拠点の多くは中国にあり、中国を代表する企業のひとつになっているが、中国人からの評判はあまりよくはない。たびたび労働問題を起こし、冷酷無情な企業というイメージがあるという。

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4万台のロボット導入、6万人のリストラ計画が進行中

昨年、ホンハイの郭台銘会長は、4万台の製造ロボットを導入して、工員をリストラすると発表した。すでに鄭州、崑山、喜善の3工場にはロボットの導入が始待っている。同時にグループ全体で6万人以上の行員のリストラ計画が始まっている。

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▲フォクスコンの工員は、以前は貧しい農村の実家を支えるために働いていたが、今は、自分の人生を謳歌するために働いている。

 

残業するように仕向けるフォクスコンの報酬体系

フォクスコンの工場で働くのは女性が多く、その仕事は過酷だ。以前のような長時間労働の強制、過大なノルマの設定は緩められてきたが、実質的にはほとんど変わっていない。基本給の引き上げは見送られ、残業代の単価をあげるている。工場の多くは郊外にあり、街に遊びにいくにも交通機関がない。多くの工員が、仕事が終わっても寮でぼうっとするよりも残業をしてしまう。

結果的に手取り給与は年々上昇しているが、それは長時間の残業をしているからで、この残業は強制ではなく、あくまでも「工員自らの意思によるもの」になっている。

 

私たちは、タバコの吸殻ではない

フォクスコンで働く女性たちも以前とはだいぶ違ってきている。以前は、現金収入がない農村の若い女性がフォクスコンで働き、実家に仕送りをするというパターンが多かった。そのため、どんな過酷な労働にも耐えていた。

しかし、今では、農村出身者が多くことは同じだが、都市の生活を楽しむために働く女性が増えている。フォクスコンの厳しい労働に耐えてきたのは、年々待遇が良くなり、給与も上がっていくと信じていたからだ。しかし、その結果、ロボットに置き換えていく方針が発表された。「私たちは、まるでタバコの吸い殻のように、吸えるところを吸われたら捨てられてしまったのです」と、ある女性工員はSNSに発言をした。

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▲フォクスコンで働く女性たちは、10年前と様変わりしている。単なる工員ではなく、専門技術を身につけた技能士になっている人も多い。

 

水着を着て出社するアピール

杭州のフォクスコン工場では、女性工員たちがユニークなアピールをした。全員が水着を着て、作業を行ったのだ。「私たちは水着を持っているのに、海にいく時間もない」というアピールだという。

このアピール自体にはさほどの効果はない。ネットでも「男性工場長は大喜び」という声や、「単に目立ちたいだけ」という批判もある。しかし、この話題がネットで拡散することにより、多くの人がフォクスコンの労働問題に目を向けたことは確かだ。

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杭州の工場では、女性工員たちが「海に遊びにいく暇もない」と、水着を着て作業に就くというアピールを行った。

 

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▲一見、目立ちたいだけのアピールにも思えるが、これでフォクスコンの労働問題に目を向ける人が増えたのは事実だ。

 

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▲「男性の管理社員がなんとなく楽しそう」とネットでも話題になった。

もっとなかよしRobi Jr.

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デジタル時代でも生き延びる広告付きポケットティッシュ

デジタル広告の時代になっても、街頭で配るポケットティッシュは生き残っている。転換率が高く、広告効果が高いからだ。中国広東省のスタートアップ「ZHO」は、この転換率の高さに目をつけ、自動配布機で広告付きポケットティッシュを配布するというシェアリングティッシュビジネスで業績を伸ばしていると36クリプトンが報じた。

 

転換率が高いことから生き残る広告付きポケットティッシュ

インターネットが登場して、多くの広告がネットに移行する中で、時代錯誤とも思える広告ポケットティッシュ配りは不思議なことになくならない。答えは簡単で、ネット広告並みの効果があるからだ。

最も大きいのは、広告の持続時間が長いことだ。一般の紙チラシのようなものであれば、もらっても広告の内容が必要ないと感じれば、すぐに捨てられてしまう。しかし、広告ポケットティッシュは、広告の内容が無関係だと思っても、ティッシュが使えるので、しばらくの間は持ち歩くことになる。もらった時は必要のない広告だと思っても、しばらくした後で、広告の内容に反応することがあるからだ。わかりやすいのは、消費者金融や出会い系サイトの広告で、もらった時は不必要だと思っても、自宅で寝る前にティッシュを使った時に、その広告にピンとくるということがある。

また、配布員が人を見ることによって、広告ターゲットだけに渡すことも可能で、広告ポケットティッシュは、ネット広告よりも転換率が高いという人もいる。

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▲広告付きポケットティッシュを無料配布するビジネス「ZHO」。ニッチなところに目をつけた賢いビジネスとして注目されている。写真は創設者の鄭品氏。

 

手を一切触れることがないニーハオトイレ

中国の衛生観念は、日本とはまったく考え方が違っている。中国の伝統的な公衆トイレは、俗にいうニーハオトイレで、個室にドアがない。トイレットペーパーも備え付けられていない。観光地などのトイレなどは、日本と同じように個室のドアがあり、トイレットペーパーが備え付けられているが、下町の無料の公衆トイレは、今でもニーハオトイレだ。

日本人にとっては、このニーハオトイレを使うのはなかなか難しいが、公衆衛生的には極めてよく考えられている。なぜなら、トイレに入って、用を足し、外に出るまで、どこにも手を触れないからだ。感染症の多くは、手を触れることによって感染をする。消毒などの公衆衛生の知識が乏しい時代、手を触れることがないニーハオトイレは、感染症予防に大きな役目を果たしていたと思われる。

トイレットペーパーも備え付けられていないが、逆に備え付けのペーパーは、誰が手を触れたのかわからないので、不安なのだ。紙は自分で持ち込み、手を触れることなく用を足す。そうすることで、感染リスクを避けている。

 

トイレにトイレットペーパーは置いていない

そのため、中国の公衆トイレには、ほとんどの場合、ポケットティッシュ自動販売機がついている。ここで、新品のティッシュを買って、使うのだ。

ここに目をつけたのがZHOシェアリングティッシュだ。広東省中山市で起業したZHOは、500万元(約8600万円)のエンジェル投資を受け、現在では60都市に7000台の配布機を設置し、毎日20万個のポケットティッシュを配布している。

このティッシュは、会員登録をすると1日1個まで無料で手に入れることができる。ティッシュには広告が印刷され、会員登録時のプロフィールから最も適した広告が印刷されたティッシュが出てくる。

ZHOの創設者、鄭品氏は36クリプトンの取材の応えた。「公衆トイレの75%にはトイレットペーパーが備え付けられていません。しかも、80%の男性、62%の男性はティッシュを持ちあかず、トイレで購入しています。ZHOの会員になれば無料で手に入るのです」。

このZHOシェアリングティッシュは、トイレだけでなく、病院やレストランにも設置されている。

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スマートフォンで会員登録をした後、専用アプリからQRコードを読み込むと、1日1個無料でポケットティッシュがもらえる。会員のプロフィールに合わせた広告付きのポケットティッシュが出るようになっている。

 

転換率は驚異の20%

スマートフォンアプリから会員登録をし、配布機のモニターに表示されるQRコードを読み込むことで、ポケットティッシュ1つが無料で出てくる。1台の配布機には、5種類のティッシュが入れられ、会員のプロフィールに合った適切な広告が印刷されたティッシュが出てくる。このため、主要な広告の転換率は、ZHOによると20%という高いものになっているという。

ティッシュの原価は3元から5元程度で、転換率を考えると、街頭でチラシを配布する手法や、ネットを使った広告よりも効率がいい。

ティッシュは1日1個無料だが、2個以上欲しい場合は、1個0.5元で購入することもできる。ティッシュの販売価格としても安価なので、ZHO会員はコンビニなどではなく、ZHOでティッシュを購入するようになり、こちらの売り上げも無視できない。

シェアリングティッシュというと、あまりITテクノロジーっぽさがなく、軽く見てしまいがちだが、旧来のマーケティングとITテックをうまく組み合わせ、効果をあげている事例として、注目され始めている。

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▲様々な企業が広告出稿をしている。中には、割引クーポンをつけるなど、より積極的な広告を展開している企業もある。

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北朝鮮で公衆WiFiサービスが始まっていた

国際的にさまざまな問題を起こしている北朝鮮平壌空港の出発ロビーで公衆WiFiサービスが始まったとAP通信が報じた。AP通信北朝鮮担当の記者エリック・タルマッジが体験した。

 

ネットアクセスが制限されている国、北朝鮮

北朝鮮は、世界でも最もネットアクセスが制限されている国のひとつだ。北朝鮮市民は、WiFI接続が可能な機器を携帯しているだけで、罰金か、最悪の場合拘束される危険性がある。

外国人の場合は、このような制限はないが、そもそもWi-Fiどころか、インターネット回線が大きく制限されている。公衆WiFiサービスなどどこにもなく、ホテルや空港に有料の有線ネットサービスがあるのみ。アクセスできるサイトは大きく制限されている。詳細はわからないが、特定のサイトへのアクセスを遮断するブラックリスト方式ではなく、政府が認めたサイトにしかアクセスができないホワイトリスト方式の制限であると推測されている。

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平壌空港の出発ロビー。一応売店などもある。有線のインターネットコーナーは2015年から設置されていたが、最近、WiFiサービスが始まったという。

 

平壌空港にWiFiコーナー誕生

ところが、平壌空港の出発ロビーのインターネットコーナーに突如WiFiのロゴが掲示をされ、話題を呼んでいる。

宣伝のための風船も飾られ、エリック・タルマッジによると、この風船はプエルトリコの空港で使われていた風船と同じものだという。

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平壌空港出発ロビーのインターネットコーナー。どうやって使ったらいいかがわからず、利用する人はまったくいない。

 

料金は30分2ドル、カフェでも利用可能

このインターネットコーナーは、外国人旅行者のために2015年から設置されているが、利用する人はほとんどいない。なぜなら、説明員もいないので、利用料金を誰にどうやって支払ったらいいかがわからないからだ。近くを通りかかる職員に尋ねても、首を振られるか、怖い目で睨まれるだけだ。

しかし、WiFiロゴが掲示されて、まったく雰囲気が変わった。女性の担当者がインターネットコーナーに常駐し、そばを通りかかる人に笑顔で公衆WiFiの利用を勧めてくる。その女性によると、30分で料金は2ドルだという。

料金を支払い、パスポートを見せると、引き換えにユーザー名とWEPキーが書かれた紙が渡される。係員の女性によると、WiFiルーターはインターネットコーナーではなく、カフェに設置しているので、カフェで利用した方が電波状況は良好なはずだという。

 

結局つながらないWiFiサービス

ところが、どうやっても接続することができず、タルマッジは結局ネットを利用することができなかった。しかし、担当者は親切で、接続設定を変えながら、何度もトライするのを手伝ってくれた。さらに、上司に連絡を取るなどしたが、飛行機の出発の時間となり、結局、アクセスすることをあきらめた。担当者は、申し訳なさそうに利用料の2ドルを返却してくれたという。

結局、アクセスできなかったので、どのような制限が書けられているかを確かめることはできなかったが、北朝鮮もゆっくりではあるが、変わり始めている。

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