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デジタル時代でも生き延びる広告付きポケットティッシュ

デジタル広告の時代になっても、街頭で配るポケットティッシュは生き残っている。転換率が高く、広告効果が高いからだ。中国広東省のスタートアップ「ZHO」は、この転換率の高さに目をつけ、自動配布機で広告付きポケットティッシュを配布するというシェアリングティッシュビジネスで業績を伸ばしていると36クリプトンが報じた。

 

転換率が高いことから生き残る広告付きポケットティッシュ

インターネットが登場して、多くの広告がネットに移行する中で、時代錯誤とも思える広告ポケットティッシュ配りは不思議なことになくならない。答えは簡単で、ネット広告並みの効果があるからだ。

最も大きいのは、広告の持続時間が長いことだ。一般の紙チラシのようなものであれば、もらっても広告の内容が必要ないと感じれば、すぐに捨てられてしまう。しかし、広告ポケットティッシュは、広告の内容が無関係だと思っても、ティッシュが使えるので、しばらくの間は持ち歩くことになる。もらった時は必要のない広告だと思っても、しばらくした後で、広告の内容に反応することがあるからだ。わかりやすいのは、消費者金融や出会い系サイトの広告で、もらった時は不必要だと思っても、自宅で寝る前にティッシュを使った時に、その広告にピンとくるということがある。

また、配布員が人を見ることによって、広告ターゲットだけに渡すことも可能で、広告ポケットティッシュは、ネット広告よりも転換率が高いという人もいる。

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▲広告付きポケットティッシュを無料配布するビジネス「ZHO」。ニッチなところに目をつけた賢いビジネスとして注目されている。写真は創設者の鄭品氏。

 

手を一切触れることがないニーハオトイレ

中国の衛生観念は、日本とはまったく考え方が違っている。中国の伝統的な公衆トイレは、俗にいうニーハオトイレで、個室にドアがない。トイレットペーパーも備え付けられていない。観光地などのトイレなどは、日本と同じように個室のドアがあり、トイレットペーパーが備え付けられているが、下町の無料の公衆トイレは、今でもニーハオトイレだ。

日本人にとっては、このニーハオトイレを使うのはなかなか難しいが、公衆衛生的には極めてよく考えられている。なぜなら、トイレに入って、用を足し、外に出るまで、どこにも手を触れないからだ。感染症の多くは、手を触れることによって感染をする。消毒などの公衆衛生の知識が乏しい時代、手を触れることがないニーハオトイレは、感染症予防に大きな役目を果たしていたと思われる。

トイレットペーパーも備え付けられていないが、逆に備え付けのペーパーは、誰が手を触れたのかわからないので、不安なのだ。紙は自分で持ち込み、手を触れることなく用を足す。そうすることで、感染リスクを避けている。

 

トイレにトイレットペーパーは置いていない

そのため、中国の公衆トイレには、ほとんどの場合、ポケットティッシュ自動販売機がついている。ここで、新品のティッシュを買って、使うのだ。

ここに目をつけたのがZHOシェアリングティッシュだ。広東省中山市で起業したZHOは、500万元(約8600万円)のエンジェル投資を受け、現在では60都市に7000台の配布機を設置し、毎日20万個のポケットティッシュを配布している。

このティッシュは、会員登録をすると1日1個まで無料で手に入れることができる。ティッシュには広告が印刷され、会員登録時のプロフィールから最も適した広告が印刷されたティッシュが出てくる。

ZHOの創設者、鄭品氏は36クリプトンの取材の応えた。「公衆トイレの75%にはトイレットペーパーが備え付けられていません。しかも、80%の男性、62%の男性はティッシュを持ちあかず、トイレで購入しています。ZHOの会員になれば無料で手に入るのです」。

このZHOシェアリングティッシュは、トイレだけでなく、病院やレストランにも設置されている。

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スマートフォンで会員登録をした後、専用アプリからQRコードを読み込むと、1日1個無料でポケットティッシュがもらえる。会員のプロフィールに合わせた広告付きのポケットティッシュが出るようになっている。

 

転換率は驚異の20%

スマートフォンアプリから会員登録をし、配布機のモニターに表示されるQRコードを読み込むことで、ポケットティッシュ1つが無料で出てくる。1台の配布機には、5種類のティッシュが入れられ、会員のプロフィールに合った適切な広告が印刷されたティッシュが出てくる。このため、主要な広告の転換率は、ZHOによると20%という高いものになっているという。

ティッシュの原価は3元から5元程度で、転換率を考えると、街頭でチラシを配布する手法や、ネットを使った広告よりも効率がいい。

ティッシュは1日1個無料だが、2個以上欲しい場合は、1個0.5元で購入することもできる。ティッシュの販売価格としても安価なので、ZHO会員はコンビニなどではなく、ZHOでティッシュを購入するようになり、こちらの売り上げも無視できない。

シェアリングティッシュというと、あまりITテクノロジーっぽさがなく、軽く見てしまいがちだが、旧来のマーケティングとITテックをうまく組み合わせ、効果をあげている事例として、注目され始めている。

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▲様々な企業が広告出稿をしている。中には、割引クーポンをつけるなど、より積極的な広告を展開している企業もある。

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