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今回は、広がってきた消費行動「平替」についてご紹介します。
時代の変化のスピードというのは非常に速いものです。多くの人が中国経済は低迷をしていて、つける薬もないと思っていますが、中国メディアや米メディアは「底打ちをしたのではないか」と報じるようになっています。「中国経済、ついに底打ちか?」(ウォールストリートジャーナル、https://jp.wsj.com/articles/is-chinas-economy-finally-bottoming-out-3adff9f3)などがその典型例です。中国メディアも、住宅市場が弱さはあるものの動き出していることや輸出が好調であることなどから底打ち感が出てきていると報じるようになっています。
ただし、「明るい兆しが出ている」とまで言えないのは、個人消費が凍りついていることと失業率の高止まりです。
社会消費品小売総額(個人消費に相当)の伸び率は決して悪い数字ではありません。しかし、2023年の伸び率が高いのは、前年の2022年に新型コロナの感染再拡大があり、個人消費が落ち込んだことによる反動です。
国内旅行は好調ですが、平時にはみなお金を使わなくなっています。「平替」(ピンティー、代替品)という言葉が流行をしています。平替とは、平価代替品(安価な代替品)の略で、ブランド品の代わりをする低価格商品のことです。「ユニクロの平替はこれがおすすめ」などという記事がSNSに出回っています。買い物をしなくなっているわけではありませんが、価格には敏感になり、無駄な出費はしない、低価格のものを求めるという習慣が定着をしています。
このようななじみのない代替品は「白牌」(バイパイ、ホワイトブランド)と呼ばれていて、SNS「小紅書」などでは盛んにどの白牌だったら買う価値があるかという情報交換が行われています。
この平替が興味深いのは、最初は「お金がないから安い同類の商品で我慢をする」ということがきっかけだったかもしれませんが、結果として消費行動の王道を行くようになっていることです。
平替は安いものならなんでもいいというわけではなく、安くても品質が悪くては意味がありません。そのため、誰もが価格と品質のバランスを見極めようとします。その情報源としては、おなじみのSNS「小紅書」(シャオホンシュー、RED)が盛んに使われます。価格と品質のバランスを見極めるのは、手間はかかりますが、消費者としては正しい姿勢です。しかも、最適の平替を見つけるにはECだけでは難しく、店舗に出かけていき、現物を見ることもします。つまり、商品をよく確かめて、店舗を巡って、いちばんいいものを選び出す。それが買い物の仕方の王道であり、しかも適度な手間であれば楽しくもあるのです。
これが平替にハマる理由になっています。お金も節約できて、買い物を楽しめて、賢い商品選びができる。そのため、専門家たちも「平替は理性的消費のひとつの形態」として肯定的に捉える人が多くなっています。
このような平替は、日本人の間にも広がっていると思います。私自身も小紅書で、「iPadスタンドの平替として書見台がおすすめ」という記事を見かけました。書見台といっても、キッチンなどで料理本を立てかけるもので、ワイヤーを曲げた簡単なつくりのものです。日本でも買えないのかと思い、業務用品の小売チェーン「シモジマ」に行ったところ、ぴったりのものが260円で販売されていました。喫茶店などで、メニューやサイネージボードなどを入り口やカウンターに立てかける道具だと思います。
iPadを立てかけて見ると、角度の具合もよく、安定をしています。しかも、ワイヤーの端には滑り止めのゴム球までつけられています。角度を変えられないというのが唯一の難点ですが、何しろ260円ですから気になりません。
この他、小紅書には、簡易的な写真立てがスマホ立てに使えるとか、浴室のシャンプーなどの収納ラックに、コンビニのタバコショーケース(壁に取り付けられ、10個ぐらいのタバコを並べられる)が利用できるとか、さまざまな記事があります。そうか、こんなもので代用できるのかという発見があり、なかなか楽しく、うまく代用できた時は感動すらします。非常に健康的な消費行動なのです。
この他、日本では、ダイソーの「電子メモパッド」(500円)、「完全ワイヤレスイヤホン」(1000円)などもSNSで話題になっています。価格が価格なので、数千円から1万円以上する製品には機能面ではかないませんが、そこが割り切れるのであれば非常にいい製品です。ダイソーは、100円均一ショップですが、100円ではない(ダイソーとしては)高価格帯商品で優れた商品を販売するようになっています。
平替には3種類の考え方があります。
1)平替:初見台をタブレットスタンドにするなど、異なる製品を異なる用途に工夫をして使う。本来の平替。
2)同源平替。一流品と同じOEM供給元が製造している製品を購入する。
3)白牌平替。ホワイトブランド。著名音響メーカーのイヤホンではなく、ダイソーの安価なイヤホンを購入する。
平替という消費行動は、中国にはかなり以前からありました。偽ブランド品なども平替の一種だったと思います。しかし、そのようなものを買うのは、中国人にとっても恥ずかしいことだったのですが、コロナ禍以降、多くの人が品質のいい平替があることに気がつき、節約を兼ねて広まっています。この平替という消費行動が市民権を得て、広がっているというところがが新しい現象になっています。
当然、翻弄をされる企業も出てきますし、逆に平替を利用して事業を拡大する企業もあります。最もうまく、しかも戦略的に活用をしているのが名創優品(MINISO、メイソウ、https://www.miniso.com/)です。メイソウは、以前に「ロゴはユニクロ風、店舗はMUJI風、商品はダイソー風」と、日本の小売業のパクリ企業だと、日本のSNSでは批判をされたり、おもちゃにされてきました。しかし、中国事業だけを見れば、店舗数はMUJIの10倍近く、売上は1.5倍ほどになり、MUJIの方がチャレンジャーの立場です。グローバルではさすがにMUJIの方が大きいですが、それでも売上高でMUJIの半分近くに迫ってきています。
メイソウは低価格雑貨を扱うダイソーと同じポジションのチェーンですが、同源平替をうまく活用して人気を得ています。同源とは同じサプライヤーという意味です。同源平替については後ほど詳しくご紹介します。
白牌平替はブランド品を買わずに、同類の無名ブランド商品を購入することです。白牌とはホワイトブランド=無名ブランドのことです。ユニクロのラウンドミニショルダーバッグが今、世界的に売れています。中国でも餃子包と呼ばれ、ヒット商品になっています。アパレルの世界では、ある商品が模倣をされることはもはや仕方のないことになっていますが、さすがにユニクロはアパレル越境EC「SHEIN」(シーイン)を提訴しました。報道によると型紙レベルで同一で、触発をされた商品、模倣をした商品ではなく、完全なコピー商品だからです。
このような白牌平替が広がると、ブランドの中には平替に侵食されて業績が苦しくなるところも出てきます。中国でカジュアルブランドとして地位を確立したユニクロと無印良品の業績はどうなっているでしょうか。これも、後ほどご紹介します。
また、平替によって業績を落としてしまう企業もあります。平替で影響を受ける企業と受けない企業はどこが違うのでしょうか。ここが、今回みなさんに考えていただきたいテーマになります。
平替は、「お金がないから安物で我慢をする」というところから始まったものの、現在では「よく調べて、品質と価格のバランスを見極めて購入する」という方向に進み始めています。これは、消費者の買い物行動としては基本中の基本であり、平替が理想的な理性的消費に進むのではないかと見ている専門家も少なくありません。
今回は、この平替により消費者の意識がどう変化をしているのかをご紹介します。また、平替を利用して成長の原動力としたメイソウの試み、そして、日本のユニクロとMUJIの中国事業が平替により影響を受けていないのかどうかについてもご紹介します。
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