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ファーウェイが突然、無人バスの運行を発表

深圳市で、無人運転バスの試運転が始まる。そのようなニュースは、中国ではもはや珍しくない。しかし、このニュースには中国中のネット民が驚いた。なぜなら、この無人運転バスを運行するのが、携帯電話メーカーのファーウェイだからだ。ファーウェイの新しい戦略を今日頭条が報じた。

 

携帯電話メーカーのファーウェイが無人運転バス?

ファーウェイの無人運転バスといっても、ファーウェイ単独で開発したものではない。ファーウェイと深圳バス集団が共同開発してきたものだ。これが年内にも深圳市の公道で、試験運行を始める。

この無人運転バスは、コンセプトカーなどではなく、実際の運行を見据えたものだ。深圳市のかなり交通量の多い市内道路、2路線で試験運行を行い、定期運行を視野に入れている。

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▲深圳市で試運転が始まった無人運転バス。これまでの長距離バス、観光バスの無人運転試運転とは異なり、停留所に止まり、乗客が乗り降りする路線バスとなる。

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高速5G回線を利用したクラウド無人運転バス

無人運転技術では、一般の乗用車に比べて、バスの方がはるかに難しい。バス停に停止をしなければならず、乗降客の状況も確認しなければならない。さらに、定時運行もしなければならない。極端なことを言えば、一般の乗用車の無人運転の場合、他の車や人とぶつかりさえしなければ一応の合格点だが、バスの場合、それに加えて「定時運行」「乗客の安全」も考えなければならないのだ。

ここまで自動化しようとすると、車体にコンピューターを積んで、センサーで周囲の状況を取得し、自分で行動を判断するという「自律型」では限界がある。そこで、この無人運転バスは「クラウド型」を採用した。センサー情報をクラウドに上げ、行動判断は、クラウドコンピューターで行う。

問題は、クラウドとバス間の通信速度だ。ここに遅延があるようでは、リアルタイムの行動判断はできない。ここでファーウェイが必要となった。このクラウド無人運転バスでは、5G回線での高速通信を行う。この通信システムをファーウェイが開発をした。

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クラウド無人運転コントロールパネルのイメージ図。5G回線という高速通信を利用して、バスのセンサーデータを遅延なくクラウドに送り、強力なクラウドコンピューターで行動判断をする。ファーウェイが参加する理由は、ここにある。

 

無人運転がいちばん必要とされているのは「路線バス」

このファーウェイのクラウド無人運転技術は、中国だけでなく各方面から注目をされている。バスのセンサー情報と、行動判断をするクラウドコンピューターが遅延なく結ばれれば、クラウドコンピューターの能力を上げることで、より複雑な行動判断ができるようになるからだ。

自律型の無人運転バスの場合、専用道路を運行するもの、公道であってもバスレーンが整備されている場合、あるいはバス停で乗降することのない長距離バスなどが多かった。しかし、クラウド無人運転バスの登場で、ごく普通のバスレーンの整備されていない公道上を路線運行するバスにも無人運転の可能性が生まれてくる。

中国では、以前からバスの無人運転技術の開発が、各企業で行われてきた。しかし、技術的な限界から、観光バス、長距離バス、シャトルバスの用途に限定され、交通量の多い道路を停留所に停車しながら進む路線バスの無人運転にはなかなか踏み込むことができなかった。

しかし、ファーウェイが無人運転技術領域に参加してきたことで、複雑な行動判断をクラウドで行うという新しい突破口が見えてきた。社会が必要としている無人運転技術は、実は乗用車が最優先ではなく、路線バスが最優先であり、次にタクシー、それから乗用車だ。関係者は、無人運転路線バスの実用化を進めることで、中国が都市交通技術の領域で世界をリードできるのではないかと期待をしている。

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▲試運転が予定されている深圳市の道路。バス専用レーンが設置されているが、守らずに走行してしまう一般車もいる。こういうアクシデントにどう対処するかが、無人運転バスの実用化の大きなハードルとなる。