中国イオンが新小売に対応した。店舗から6km圏内に宅配をする。中国に進出をした外資系小売が次々と撤退、経営難になる中で、イオンは3年連続赤字を記録しながらも店舗数を伸ばす積極経営を行なっている。新小売への対応も遅かったが、ようやく対応をし、競争のスタートラインについたと時代財経が報じた。
向い風の中で出店数を増やし続けたイオン
イオンは、2008年からイオンモールを中国で展開している。北京周辺エリア、湖北省エリア、江蘇省・浙江省エリア、広東省エリアの4エリアに集中して、21モールを出店している。また、スーパーは56店舗の展開、さらにはグループ企業のマックスバリュー、ミニストップなども出店している。
外資系小売の撤退、縮小が続く中国で、店舗数を増やし続けている。外資系小売の厳しい状況の要因は、新小売、生鮮ECの登場だ。アリババの新小売スーパー「盒馬鮮生」(フーマフレッシュ)、テンセント系の生鮮EC「毎日優鮮」などが、生鮮食料品を短時間で宅配するサービスを始め、店舗にいかなければ買うことができない既存スーパーは苦境に立たされていることだ。
そこで永輝スーパー、ウォルマート、カルフール、大潤発などの既存スーパーは、近隣へ宅配する新小売サービスを始めて対抗をしている。
中国では、生鮮食料品はどのスーパーでも宅配されるのが常識になっていた。
▲イオンモール青島西海岸。日本のイオンモールとほぼ同じコンセプトで出店されている。「日本小売No.1」を前面に打ち出し、消費者からのイメージはものすごくいい。
一歩遅れたイオンの新小売対応
しかし、イオンはこの新小売対応が遅かった。2019年4月になって、イオンデジタルを設立し、アプリ開発などを始め、2019年12月から、深圳、仏山、広州の3店舗で新小売サービスを試験運用、そして2020年5月から全店舗に拡大した。店舗から6.3km以内に宅配をする。
ただし、時代財経は「ようやく対応」という表現をしている。対応が遅かったことは否めない。新小売は宅配をするというコストのかかるサービスで、多くのスーパーが配送料も実質無料で運営している。黒字化をするのは簡単ではない。どのスーパーも苦しみながら新小売対応を進めていたが、2020年1月から3月までのコロナ禍により状況が変わった。外出を控える消費者が新小売サービスを積極的に使うようになり、どのスーパーの新小売サービスも3倍から5倍の需要となり、多くの新規顧客を獲得できた。
イオンは、ちょうどこの新小売にとってのボーナスステージを逃してしまったことになる。時代財経が「ようやく対応」という表現を使うのは、このことだ。
しかも、イオンの宅配サービス「イオン到家」は、京東到家のプラットフォームを利用しており、購入商品が5kg以内でかつ58元(約890円)未満の場合は、配送料が10元必要になる。他の新小売サービスと比べて、競争力は決して強くない。
▲市内にはいわゆるイオンスーパーも出店。このスーパーが新小売サービスに対応をした。
▲イオン店内も日本とよく似た設計。通路が広めで商品が豊富に陳列されている。スタッフがこの売り場から注文に応じて商品をピックアップし、宅配をする。
3年連続赤字の中、新小売に参入するイオン
しかも中国イオンは、この3年赤字が続いている。2017年は4150万香港ドルの赤字で、2018年は5980万香港ドルと赤字が拡大し、2019年は8080万香港ドル(約11億1800万円)とさらに赤字が拡大している。
しかも、この数字は香港に上場している中国イオンのもので、広東エリアと華南エリアの33店舗のみの数字だ。華北エリア、湖北エリアは別会社の運営となっているため、中国のイオン全体の赤字はこれ以上になることは確実だ。
ただし、消費者のブランドに対する評判は悪くない。日系ということで食品に対する安心感があるため、固定ファンが多いとも言われる。
外資系小売が苦しみ、日系企業の撤退が続く中で、イオンもようやく競争のスタートラインにつくことができた。これからどのような成長戦略を描いていくのか、注目されている。
▲煙台のイオンモール。中国らしく、デザインは派手目。