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改革開放でGDPは340倍に。一方、給料の方は340倍になっているのか、計算してみた

中国では1978年に改革開放が始まり、経済成長が始まった。その頃から、GDPは約340倍になっている。GDPが340倍になったのだったら、個人の給料も340倍になっていないと、市民は経済成長を実感することができない。実際には何倍になっているのか、資本百科が計算をしてみた。

 

改革開放でGPDは340倍、収入は何倍?

中国の2023年のGDPは126兆600億元となり、2022年から5.2%増となった。改革開放が始まった1978年には約3700億元で、そこから比べると、約340.7倍になっている。

しかし、多くの人が気にするのは自分の収入だ。1978年から比べて、給与は340倍になっているのだろうか。GDPが成長をすれば、それに比例して物価もあがっていく。GPD成長率以上に給与があがっていなければ、実質目減りをしているようなものだ。

 

給料は340倍にはほど遠い

経済統計によると、1978年の平均給与は年644元だった。GPD成長率と同じように給与が増えていけば、国の経済発展の恩恵を市民全員が感じることができるが、それには給与も340倍になっていなければならない。

644×340.7=21万9400元

となり、現在は22万元程度の年収がなければならない計算になる。

中国の平均給与の統計は「非私営単位」と「私営単位」に分けられる。非私営単位とは、公務員、国有企業、株式会社などで、日本の感覚では公務員と企業だ。私営単位とは株式会社などの組織化をしてなく、経営者が直接従業員を雇用しているもので、飲食店などに多い。日本の感覚では中小零細企業にあたる。

2023年の平均給与の統計はまだ発表されていないため、2022年の統計を見ると、非私営単位では11万4029元となっており、1978年と比べると177.06倍になっている。私営単位では6万5237元となり、1978年と比べると101.3倍になっている。

いずれもGDPの伸び率340倍にはほど遠く、中国の労働者は経済の発展ほどの恩恵を感じられていないかもしれない。

 

上海市の企業ではほぼGDP成長率と同じ

中国は広く、給与、物価ともに地域による格差がまだまだある。最も給与が高いのは上海市で、上海市の2022年の平均給与は非私営単位では21万2476元、私営単位では10万4560元で、1978年から比べると、それぞれ329.9倍、162.4倍となり、上海市の非私営単位では、ほぼGDPの成長率と同じ程度の恩恵を受けることができている。

しかし、このレベルにあるのは北京、広州、深圳を加えた4大都市であり、省単位では10万元前後であり、1978年の150倍程度にすぎない。中国のほとんどの市民は中国の経済成長の恩恵をじゅうぶんに享受できていない。

 

2000年以降はGPD成長率と給与伸び率が一致をする

しかし、2000年以降は様子が異なる。2000年のGDP、平均給与を1として、各都市が何倍になっているかを計算すると、GDPと給与の伸び率は見事に重なる。政府がGDPの伸び率に合わせて賃金をあげるように促しているからだ。

2000年以降は、経済成長の恩恵を享受できていると考えられる。

▲2000年を基準にすると、GPDの増加割合と企業給与の増加割合はみごとに一致をする。

 

ジニ係数も下げ止まりをし始めている

ただし、問題は格差があることだ。所得の不平等さを表すジニ係数は、中国も2010年頃から下がり始めたが、0.46台で下がらなくなってしまっている。OECDの調査によると、日本は0.34程度、格差の大きな米国でも0.375であるので、中国はまだまだ先進国とは呼べない水準になっていることがわかる。平均給与の上昇よりも、この格差の解消が目下の大きな課題になっている。

低所得者の賃金を引き上げて格差を解消することは、購買力の拡大にもつながる。人口が減少をすると、国民全体の購買力の総和も減ることになる。その時、低所得者の賃金を引き上げ、格差を解消することは、経済を成長させる効果的な策にもなる。格差解消が、中国社会にとって大きなテーマになってきている。

▲格差を表すジニ係数は、2000年代半ばから2010年代半ばにかけては大きく下がっていった。しかし、2015年以降下げ止まっている。