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店長も失敗経験者なら従業員も失敗経験者。中年失敗者連盟が起業したタニシ麺のお店が人気店に

深圳市で4店舗を展開するタニシ麺「二胖二両」は、店長も従業員も中年の失敗経験者ばかり。そのことを正直に店舗紹介文に掲載したところ、それがバズって、応援する人が増え、人気店になっていると深圳微時光が報じた。

 

中年失敗者連盟が開いた人気店

深圳市で4店舗を展開する「二胖二両」。タニシ麺の専門店だ。タニシ麺は、広西チワン自治区柳州市の郷土料理で、タニシのダシをとったビーフン。独特のクセのある臭いと辛さに、初めての人は食べるのを躊躇してしまうが、食べてみると美味しいことから、全国的に名前を知られるようになり、インスタント麺も販売されるほどの人気になっている。

このタニシ麺を出す二胖二両を創業した老于(ラオ・ユー)さんは、これまで何度も飲食店を起業して失敗してきた。そこで、デリバリープラットフォームの店舗紹介欄に、そのことを正直に書いた。しかも、4人の従業員も過去に起業に失敗した経験がある。それも紹介をした。これが話題になり、二胖二両はネットで「中年失敗者連盟」と呼ばれるようになり、人気店になった。

▲中央が創業者の老于さん。過去に3回起業に失敗している。そのことを店舗紹介に正直に書いたところ、それがバズって人気店になっている。

 

正直な自己紹介文がSNSで話題に

老于さんは、デリバリープラットフォームの自店紹介欄に次のように書いた。

私は老于です。中年になる今まで起業に3回失敗し、妻には毎日5回は罵られ、家の猫は私を無視します。それでも勇気を出して、故郷の料理であるタニシ麺のお店を出しました。

20年、飲食店をやってきて、それ以外のことはできません。過去の失敗は私の自信を失わせましたが、みなさんが応援してくれることに感謝します。もし、おいしくないとか、こうしたらいいということがあったら、ぜひ教えてください!一生懸命改めます!

▲美団のデリバリーの店舗情報のところに、正直に過去に失敗をしていることを書いた。これがバズって多くの人に知られる店になった。

 

従業員も失敗経験者ばかり

なぜか、この店は従業員も失敗経験者だ。35歳の陽友仁と妻の李賓は、故郷で豚の飼育をしていたが失敗をし、100万元以上を失い、借金を抱えている。49歳の老鄧さんも深圳でビーフンのお店を開いたが3ヶ月で閉店して借金を抱えている。

創業者だけでなく、従業員もみな中年の失敗経験者であることから、この二胖二両は誰ともなく、次第に「中年失敗者連盟」と呼ばれるようになり、熱い支持者たちが熱心に食べにきてくれたり、デリバリーを注文してくれるようになった。

▲二胖二両では、働くスタッフも過去に失敗をした経験があり、多くの人が借金を背負っている。

 

自然に集まった中年失敗経験者

なぜ、老于さんは、従業員に中年の失敗経験者ばかりを集めたのか。それは意図的なものではなかったという。「若い人は、ネットプロモーションに積極的な店、店長になれる可能性が高い店に職を求めます。そういう自分が成長できる店を選ぶのです。私の店のように、失敗経験者が経営していて、ネットプロモーションに消極的な店にはきてくれないのです。自然に中年の従業員が集まることになりました」。

老于さんは、中国でも最も自信のない店長とまで呼ばれるようになっている。

▲二胖二両のスタッフ紹介。スタッフ紹介の欄がなかったために、0元の注文メニューとしてスタッフを紹介している。このちょっとおかしなデリバリープラットフォームの使い方も面白いと話題になっている。

 

あきらめた瞬間に起き上がれなくなる

現在は、店舗を4軒にまで増やすことができたが、業績は黒字と赤字のラインをいったりきたりしている。特にこの数年間のコロナ禍はほんとうに厳しい環境だったという。新型コロナが終息をした今、ようやく明るい気分になれるようになった。「私の故郷には商売に失敗したからといって、起き上がらなくなってしまう人はいません。何かをできれば、必ず起き上がれます。あきらめてしまったら起き上がれなくなってしまう」。中年失敗者連盟は、今日もタニシ麺をつくっている。

▲話題の人気店になり、ファンは増えたが、それでも平日の午後は客入りは少ない。客商売は簡単ではない。