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ラッキンコーヒーの氷はなぜ溶けづらい。品質にこだわるカフェが氷にもこだわる理由

ラッキンコーヒーのアイス飲料は氷が溶けづらいという評判がある。わざわざ溶けづらい氷がつくれる製氷機を導入しているからだ。溶けづらい氷は、飲料の温度を低く保つだけでなく、味に関しても大きく関わっていると壱読が報じた。

 

デリバリーでも溶けないラッキンの氷

スタンドカフェとして人気のある「瑞幸珈琲」(ルイシン、Luckin Coffee)は、その味と価格だけではなく、アイスドリンクの氷にも人気の秘密がある。モバイルオーダー+テイクアウトが基本となるラッキンのアイスドリンクの氷は、非常に溶けづらいという評判を得ているのだ。持って帰って、オフィスのデスクに置いておいても、長時間冷たいまま飲み続けることができる。この他、ネット民の報告によると、喜茶(シーチャー、HEY TEA)、奈雪的茶(ナイシュエ)などの氷も溶けづらいという。他の氷と何が違うのだろうか。

▲ラッキンコーヒーの氷は溶けづらいという評判がある。飲料の味にとって、アイス飲料の温度はきわめて重要な要素になっている。

 

空気を除去すれば氷は溶けづらくなる

答えは簡単で、溶けづらい氷がつくれる製氷機を導入しているからだ。家庭用冷蔵庫でつくる氷がすぐに溶けてしまう理由は、水の中に空気と不純物が含まれているからだ。一般的な冷蔵庫の製氷皿による製氷では、外側から氷結をしていくため、空気や不純物はまだ凍っていない中心部分に追いやられていき、中心部に封じ込められてしまう。家庭用冷蔵庫でつくった氷の中心が曇っているのはこのためだ。

このような気泡があると、氷は早く溶けることになる。氷が溶けて、気泡の部分にまで到達すると、氷の表面積は一気に大きくなる。これにより、氷の溶けるスピードがあがる。

 

噴射式製氷で、不純物と空気を除去

業務用製氷機では、まずフィルターを通して水を濾過する。これにより、ミネラル分や不純物が取り除かれる。そして、製氷も空気がや不純物が入らない方法で行われる。

業務用製氷器で多く使われるのは噴射式だ。下から水を噴射して冷やされた壁にぶつけ凍らせていく。こうすると、不純物の多くは水よりも重いため、凍る前に下に落ちる。また、上から凍り、下の部分が最後に凍るため、空気が中心に封じ込められることがない。また、温度は最も溶けづらい氷ができる-17度に設定されている。

▲溶けづらい氷をつくる業務用製氷器の仕組み。上から凍って行くため、不純物は下に落ち、気泡も入らない。

 

氷を多く入れると持続時間を延ばすことができる

また、ドリンクに氷を多めに入れるのも溶ける速度を遅らせるコツだ。例えば、氷が1つだけの場合、その氷は飲み物に浮くことになる。すると、多くの表面が飲み物に触れることになり早く溶けてしまう。一方、多めに入れると、飲み物内部で塊となり、温度の高い飲み物と触れる面積が小さくなり、溶ける時間が遅くなる。

カフェでアイスドリンクをテイクアウトにすると、店内で飲むよりも多くの氷が入っていることがある。これは飲み物の量を減らしてケチっているのではなく、氷の溶ける速度を遅くするためだ。

▲ラッキンのアイスコーヒーに大量の氷が入っていて、飲み物が少ないという点を非難する人もいるが、氷の量が多いのは美味しく飲むための工夫だった。

 

温度は飲み物の味に影響をする

品質にこだわるカフェが、店内とテイクアウトで氷の量を変えるのは、飲み物の温度により味が変わってくるためだ。

例えば、甘味料として一般的に使われる果糖は、温度が低いほど甘く感じる。5%果糖液は5度では甘味度が147だが、18度になると128.5まで下がる。果物を冷やして食べると美味しく感じるのはこのためだ。

しかし、一方で、低温になると舌の甘みの知覚が鈍くなっていく。飲み残しのアイスコーヒーが極度に甘く感じることがあるのはこのためだ。飲んでいる間は、果糖の甘味は高くなっているが、舌が冷やされて感度の方が鈍くなっている。しかし、飲み残しを飲む時は、舌の感度が元に戻っているため、甘く感じる。アイスクリームにウェハース、アイスコーヒーにホイップクリームを大量に入れて飲むのは、舌に空気をあて、鈍くなった感度を復活させ、甘みを感じさせるよことにより美味しく感じさせる工夫だ。

また、低温では酸味物質が多く溶け出す。しかも酸味に対する知覚は敏感になる。一方、苦味物質に関しては温度が高いほど多く溶け出し、温度が高いほど知覚が敏感になる。

甘味、酸味、苦味は温度によって量が異なり、知覚の敏感さも変わってくる。アイスドリンクは、このように複雑な味の方程式を解いていかなければならない。そのため、氷の溶ける速度や量は、ドリンクを美味しく感じてもらう上で重要な働きをしている。品質にこだわるカフェが、氷にこだわるのはこのためだ。