新型コロナウイルスが終息をした中国。経済活動はほぼ平常通りに戻っているものの、再拡大する不安も残されている。北京市中関村にあるテックパーク「ZPark」では、ZParkに入居する企業が開発をしたARグラス、マスク顔認証などのテクノロジーを使って再拡大の防止策を取っていると北京日報が報じた。
職場復帰の安全を担保するテクノロジー
北京市の北西郊外にある中関村。ここは中国の秋葉原ともいえる電気街で、機器の調達がしやすいことから百度などのテック企業が集中し、中国のシリコンバレーとなっている。
その中にある中関村軟件園(ZPark)は、2.6平方kmのテックパークで、680社以上が入居し、ここで起業し上場に至った企業も67社に達する。ここでは約9万人の人が働いている。
新型コロナウイルスの感染拡大時期、多くのエンジニアが在宅テレワークで乗り切ったが、終息以降、職場復帰が始まっている。しかし、ただ従来通り職場復帰をしてしまえば、再び感染が拡大しないとも限らない。そこで、ZParkでは、職場復帰にあたって、再び感染拡大をさせない数々のテクノロジーを投入している。
ARグラスで自動車のナンバーを判別
国内外で話題になったのが、警備員が使っているARグラスだ。このARグラスを通して、車両を見るだけで、自動的にナンバーを読み取り、ZPark関係者の車であるかどうかが表示される。関係者の車は受付などをすることなく中に入れ、関係者以外の車のみ、停止をさせて、受付処理をすることで、接触機会を減らすというものだ。
認識に必要な時間は約1秒で、雨天や夜間でも認識が可能。車両が8mから18mの範囲に入ったときに認識ができ、複数の車両を同時に認識することができる。
このARグラスをつけた警備員は、ZParkの入り口にあたる16カ所に配置され、1時間で最高で約1000台の車両の認識が可能になっている。
▲ZParkの16カ所の自動車入り口には、ARグラスをかけた警備員が配置されている。自動車を見るだけで、ナンバーが自動的に読み取られ、入庫が許された自動車であるかどうかが判別できる。8mから18mの距離で認識が可能で、同時に複数台を処理することもできる。
▲ARグラスで読み取った自動車のナンバーをもとに、その車両の持ち主などが表示され、入庫を許された自動車であるかどうかがわかる。
条件を自動で判断する通行証システム
また、ZParkでは、北京にきて14日以内の人、体温測定をしていない人、体温が37.3度以上の人の入館を禁止している。
これを確実にするため、ZParkでは、感染拡大時期の間に、専用の電子通行証アプリを開発している。入り口にはQRコードが掲示され、これをスキャンすると、電子通行証アプリが、システムが記録している情報から、北京にきてからの日数、体温測定の結果などから通行可能であるかどうかを判断し、OKの場合は通行証を表示する。この通行証を警備員に見せることで、ビルの中に入ることができる。
また、ZParkのシステムは、この電子通行証の表示時間から、各施設の入館者数を把握し、その統計情報を入居している各企業に提供をしている。各企業ではこの統計を見て、在宅テレワークをする人の数を調整したり、時差出勤をして、社内の密度が高くなりすぎないように調整することができる。
▲入館をする人は、ZPark専用の電子通行証アプリをインストールして、必要事項を入力しなければならない。
▲ZParkの建物内に入るには、電子通行証の提示が必要になる。北京にきて14日をすぎていて、体温が37.3度以下の人にだけ通行証が発行される。
密集しがちな出退勤管理デバイスの前
職場復帰の際、問題になるのがタイムカードだ。現在では、紙のタイムカードは使われなく、各社ともスマホか顔認証を使っているが、それでも出社時間には端末の前に人だかりや行列ができるため、感染リスクを高めてしまう。
特に顔認証で出退勤管理をしている企業では、マスクをしていると顔認証ができないため、人の密度が高い場所でマスクを外すということをしなければならなかった。
そこで、ZPark内に拠点を構える「漢王」では、マスクをしたままでも顔認証ができるシステムを開発した。同時に体温測定も行える。複数人を同時認識することができるので、このシステムの前でマスクをしたまま立ち止まるだけで出退勤管理ができる。
このマスクをしたまま顔認証、体温測定ができるシステムは、ZPark内の漢王ビルだけでなく、北京鳥巣金色ホール(国家体育場施設)、北京第三中級法廷、友邦保険、北京消防博物館、弘祥文化産業園などで導入され、さらに湖北路橋、鞍山スティール、江西国家電網、アモイ金林湾花園などで導入が決まっている。
▲電子通行証により、各建物にいる人の人数がリアルタイムで通知され、各企業はこれを参考に時差通勤や在宅テレワークなどの計画を立てていく。
ZParkそのものをプレゼンの場所として利用
新型コロナウイルスの感染終息後に誰もが恐れているのが再拡大だ。そのためには「部外者を入れない」「感染リスクの高い人を入れない」の2つが求められる。ZParkには、このような認証テクノロジー、セキュリティテクノロジー関連の企業、スタートアップも多く、ZParkをモデル地域とすることで、全国にプロダクトのプレゼンテーションを行なっている。