武漢大学の卒業生たちが母体になった極意科技は、新しい方式のCAPTCHAを開発している。人間とロボットを高精度で見分けることができ、国内では90%のシェアを獲得し、海外ではグーグルがライバルになっていると長江雲新聞が報じた。
人間であることを確かめるためのCAPTCHA
「消火栓の画像をすべて選んでください」「私はロボットではありません」と尋ねられたことはないだろうか。これはウェブページがあなたがロボットでないかどうかをテストしている。
例えば、お問合せフォームをウェブにつけておくと、いたずらをする人は必ず出てくる。それが人間のいたずらであればまだしも、スクリプトで動作するボットを使って大量に投稿をされると、ウェブのまともな運営が妨げられる。このような攻撃を防ぐのがCAPTCHA(キャプチャ)と呼ばれるシステムだ。
人間ができることはボットもできる
CAPTCHAの初期の仕組みは、歪んだ文字や数字を表示して、それを人間に入力してもらうというものだった。大量のOCRデータから、判読に失敗したデータを利用している。つまり、OCRという機械には判別ができないが、人間には判別ができないという文字列を利用している。
しかし、問題があった。OCRに読めない文字列は、しばしば人間にも読めないのだ。読めない場合は、変換ボタンを押すと別の文字列が表示されるが、人間にとってはユーザー体験は決していいものではなかった。
しかも、OCRの精度があがっていくと、このような方式ではボットでも難なく読めるようになってしまった。
画像選択方式は、AIもできてしまう
次に登場したのが「私はロボットではありません」というチェックボックスをクリックした後に、画像テストが現れるというものだ。「消火栓の画像をすべて選んでください」というものだ。
しかし、これも人間でも判別が難しいものがある。「バイクの画像を選んでください」では、バイクがオートバイを指すのか、自転車を指すのか曖昧なこともあり、画像そのものも解像度が悪く非常に見づらい。また、「信号機をクリックしてしてください」というものでは、信号機の画像がある部分を選ばなければならない。これもどこまで選べばいいのかがわかりづらい。やはりユーザー体験は非常に悪い。
しかも、AIの進歩により、AIでも画像を判別できるようになってしまった。
スライダーの動かし方で人間であることを判別する
このCAPTCHAという仕組みは、AIにはできないものの、人間にはできるという問題を出題し、なおかつ人間には簡単に解けるというものでなくてはならない。
ここにビジネスチャンスを見出したのが、2012年に武漢大学を卒業した呉渊を中心とした卒業生で創業された極意科技(ジーイー、GEETEST、http://www.geetest.com)だ。
極意科技の発想は、ウェブフォームに入力する前に、人間はマウスカーソルを動かしたりしているのだから、その行動を機械学習しておけば、人間かボットかを判別できるのではないかというものだった。
ここから生まれたのが、ジグゾーパズルの1つのピースをスライダーを使ってうまく嵌めるというものだった。人間にとってはさほど難しい操作ではないが、知らず知らずのうちに人間らしい痕跡を残すことになる。
極意科技では、ピースをはめるという人間の行動を7つに分解し、それを機械学習させている。今のところ、これをボットで完全にシミュレートして人間だと誤解させることは不可能だという。
グーグルとシェア争いをする極意科技
このような技術で、極意科技は国内市場の90%のシェアを獲得した。海外にも展開しているが、最大のライバルはグーグルだ。グーグルのreCAPTCHA v3は、ウェブ上の動きを機械学習で判別するため、ユーザーに何かのアクションを求めることは必要なくなっている。現在、極意科技のCAPTCHAはAirbnb、トリップアドバイザー、ナイキなどが採用している。
しかし、CAPTCHAの世界は、対戦ゲームのようで悪意のあるハッカーたちは、いずれ極意科技のCAPTCHAをAIで自動化をしてくることになる。それまでに、極意科技は現在のAIでは突破することのできない仕組みを考案しなければならない。研究と開発が終わることはない。