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改ざんされる紙書類。AIで紙書類画像の改ざんを発見する検出システムが登場

ネットが浸透し、紙書類をスマートフォンで写真を撮り、画像データとして提出をするということが増えている。しかし、この画像は簡単に改造ができてしまい、さまざまな詐欺犯罪にも利用されるようになっている。「合合」ではこの改ざんを検出するシステムを公開したと合合テックチームが報じた。

 

紙書類はもはやリスクの高い情報

PS=Photoshopの登場で、紙書類はもはや脆弱性のあるツールになってしまっている。2022年8月、上海市浦東公安は、レシートを使ったある詐欺犯を摘発した。あるショッピングモールが、購入したレシートの写真を撮り送信をすると、その金額に応じてポイントを還元したり、景品をプレゼントするキャンペーンを行った。この犯人は、SNSなどを検索し、レシートの写真を複数枚収集した後、PSを使って改ざんを行い、大量の偽レシート画像を生成し、送信をして、約3万元相当のポイントや景品を騙し取った。

2022年9月、安徽省濉渓県裁判所は、自動車保険のリベートを騙し取った容疑者に有罪判決を出した。この犯人は、ある自動車購入者が自動車保険に入る作業を手伝った際に、自動車購入の領収書を撮影。これをPSを使って改ざんし、複数の架空の自動車領収書を生成。これを使って自動車保険に架空加入をし、仲介手数料を騙し取ったというもの。

2023年3月、海南省陵水公安は、ローン詐欺を行った容疑者を摘発した。この容疑者は、銀行業務証明書を手に入れ、それをPSで改ざん。銀行業を運営する免許を取得しているという触れ込みで、SNSを通じて投資を募り、お金を騙し取った。

このような紙書類を改ざんする犯罪が頻発をしている。

▲左上が元の書類。その下が改ざんをした書類。画像上で改ざんをされているため人間の目にはまったくわからない。しかし、検出システムは改ざんを検出した(右)。

 

紙書類の写真を撮って提出することが多くなった

このような問題が生じているのは、デジタル書類とアナログ書類が併用されて使われているからだ。紙の書類が改ざんしづらかったのは、どうやっても痕跡が残ってしまうということがあった。そのため、紙書類だけを使っていた場合、注意深い人であれば改ざんを見抜くことができる。

しかし、インターネットが普及した現在では紙の書類を直接提出するのではなく、紙書類の写真を撮って送信するというケースが増えている。ここにPhotoshopを使って改ざんができる機会が生まれる。

従来はExif情報、画像の統計的特徴などから、改ざんを判断していたが、改ざん技術のレベルがあがってきて、このような統計的な手法では改ざんが見抜けないようになってきた。

そこで、「合合信息」(https://www.intsig.com/)では、ディープラーニング技術を応用して、PS改ざん検出技術を開発した。身分証明書の改ざんでは、改ざんの補足率は99%を超えているという。

▲医療費の領収書なども日付を改ざんして保険料申請の詐取に使われる。検出システムはこれも検出をする。

 

書類の改ざんをAIで検出をする

このPS改ざん検出技術には、マルチスケールディープラーニングモデルが採用されている。簡単に言えば、まず1つの判別モデルが改ざんのタイプを判別し、その後、改ざんのタイプごとの判別モデルが改ざんを判断するというもの。最初に改ざんのタイプを判別するということで、各判別モデルの精度があがり、全体として高い検出制度を達成している。

将来的には、セキュアな電子書類に統一をされていくことになるが、それまでにはまだまだ時間がかかる。それまでは公的な書類は紙で発行され、その写真を各機関に提出をするという運用がされていくことになる。そこでは、このPS改ざん検出技術が重要になってくる。

合合信息では、怪しいと思える紙情報をチェックするという使い方ではなく、紙情報を写真提出してもらうシステムに組み込み、全数検査をするという使い方が望ましいという。PS改ざん検出技術は、情報を扱う機関にとっては、ファイヤーウォールと似た役割をすることになるとしている。

▲開発元の「合合」(https://www.intsig.com/public/textin/product/textin_image.shtml)では、検出システムの体験コーナーを用意している。サンプルで改ざん検出を試すことができる他、自分で用意した画像の検出をすることも可能になっている。