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アリペイ運営のアントに上場中断と株主構成の変更。統治権を奪われたジャック・マーに何が起きていたのか?

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今回は、アリペイを運営するアントグループについてご紹介します。

 

今年2023年1月7日に、スマホ決済「アリペイ」を運営する螞蟻集団(アントグループ)が株主構成を大きく変えたという発表を行いました。アントは、アリババのスマホ決済「アリペイ」を運営するフィンテック企業で、決済だけでなく、投資や貸付、保険、信用調査などにも事業を広げ、未上場であることから、中国最大級のユニコーン企業と呼ばれています。

その株主構成変更の眼目は、アリババの創業者、馬雲(マー・ユイン、ジャック・マー)の議決権の大幅縮小です。この変更があるまで、ジャック・マーはアントの議決権の53.46%を持っていました。過半数を超えているので、ジャック・マーは個人でアントの重要事項を決定することができます。アントを統治している、支配していると言ってもいいでしょう。これが変更後には、ジャック・マーの議決権は、わずか6.208%に減少してしまいました。

アントグループは、2020年11月5日に上海証券取引所の科創板と香港証券取引所に上場をする予定でした。しかし、政府当局から待ったがかかります(形式的には、アント自ら上場申請を取り下げたことになっています)。金融監督部門とのミーティングが11月と12月にかけて数度行われ、さらに翌2021年4月になって、アントグループの新しい構成をどうするかが決まり、そこから1年以上もかけて、株主構成の大幅変更の準備が行われてきたものと見られます。

つまり、上場しようとしたら、政府から待ったがかかり、最終的にジャック・マーの影響力を排除する形で決着をしたということになります。

 

この出来事を聞くと、多くの方がびっくりするのではないでしょうか。日本では考えられない事態です。

まず、民間企業の上場は、民民の取引です。日本の場合、証券取引所も株式会社です。重要な経済インフラであるため、金融庁の厳しい監督を受けるとは言え、金融庁が特定の企業の上場に難癖をつけるなどということはありえないことです。

さらに、ジャック・マーの議決権が53.46%から6.208%に減らされるなどということもあり得ないことです。ジャック・マー自身が株式を自発的に譲渡したのならともかく、譲渡を強制されるなどということは自由主義市場では考えられません。

そのため、「中国は、わけがわからないことする、無茶苦茶なことをする」と感じられた方も多いのではないかと思います。

 

ウォール・ストリート・ジャーナルも社説でこう書いています。

「中国の規制当局は、アリババ傘下のアント・グループが築いた巨大なフィンテック(ITを活用した金融サービス)の帝国を事実上解体しようとしている。これは投資家にとっての教訓だ。アントの解体は、中国国内企業の生死が共産党の思惑次第だという現実を改めて気付かせてくれた」(https://jp.wsj.com/articles/SB10630137526570893697904587200250766804684)。

こういう見方になってしまうのはわからないでもありません。確かに、表面だけを見れば、共産党政府は気まぐれに厳しい規制をかけているように見えます。まるで、有力な政治局員が、その日の虫のいどころで規制をかけているようにも見えます。

しかし、本当に「共産党の思惑次第」なのでしょうか。アリペイの歴史をたどってみると、事業を成長させて中国社会をアップデートしたいジャック・マーの強い意志と、それを認めながらも周囲との整合性を考える政府の、ぎりぎりの駆け引きが見えてきます。

今回は、なぜ中国政府はアントの上場に待ったをかけたのか、そして株主構成を大幅に変えさせたのか、そしてジャック・マーはなぜそれに応じたのかをご紹介します。

 

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