北京市三里屯のショッピングモールにも裸眼3Dディスプレイが登場した。その下が通路になっており、上下方向に3D効果を生み出すという新しいタイプのものになっている。韓国から始まった裸眼3Dディスプレイは東京やニューヨーク、ロンドンなどさまざまな都市に広がっているとMall先生が報じた。
韓国発で世界に広がる屋外裸眼3D広告
この数年、屋外広告の世界で裸眼3D広告ディスプレイが世界中に広がっている。最初に登場したのは、韓国ソウルのSMタウン本社ビルのものを皮切りに、中国成都市、東京新宿、ロンドンピカデリー広場などに設置をされている。
直方体の2つの側面を利用するもので、一定の角度から見ると、裸眼による3D効果が得られる。
さらに北京市の三里屯(サンリードゥン)の新しいタイプの3D広告が登場した。直方体の側面の2つのディスプレイを利用するのではなく、正面と底面を利用するものだ。
この場所はアップルストア、トムフォード、ラルフローレンなどの店舗に囲まれた場所で、アーケードのように下を通り抜けるようになっている。歩きながら裸眼3Dを楽しめるようになっている。
3D広告に作品を提供するアート集団「OUTPUT」
この屋外3D広告を制作したのは、上海視初文化科技(シーチューウェンホア、OUTPUT、http://www.output3d.com/)。2017年に創業したアート集団で、テクノロジーとアートを融合した創作活動を行なっている。上海のTX淮海、新天地、K11、深圳市の万象天地、成都市の太古里などのショッピングモールに、裸眼3Dを含めて作品を提供している。
三里屯太古里には4つの作品を提供している他、ニューヨークのタイムズスクェア、東京新宿にも作品を提供している。
韓国ソウルの公共アートから始まった裸眼3D広告
この裸眼3D広告を最初に手掛けたのは、韓国ソウルのSMタウン本社に設置された横80m、高さ20mの立方体ディスプレイだ。作品を手がけたのは韓国のアート集団「D’strict」(https://www.dstrict.com/)。立方体のディスプレイの中に波がおしょせるというものだ。
2021年7月にはニューヨークのタイムズスクエアの風景を利用して、滝を再現した公共アートを制作して話題になった。2022年には人のパフォーマーが演じる動きをリアルタイムで3Dディスプレイに投影し、メディアアートと人のアートを融合するという試みを行なっている。
中国でこの裸眼3D広告に先鞭をつけたのは「燧石行」(スイシーシン、Flint Walk、https://flintwalk.com/)で、2020年10月1日に、成都市太古里で、宇宙船がディスプレイの中から飛び出してくる映像を公開して大きな話題となった。
▲韓国ソウル市SMタウンにある裸眼3Dディスプレイ。この公共アートが世界中に広がっている。
▲D’strictの作品「Giant Toy」
▲韓国のアート集団「D’strict」がニューヨークで行った「流れる滝」の公共アート作品
▲同じくD’strictが制作した公共アート。パフォーマーの動きとデジタルアートを融合して都市の中に別の空間を生み出している。
集客に高い効果がある裸眼3D
このような裸眼3Dは屋外広告を大きく変えていくことになる。屋外広告はいわゆる街中看板からなかなか進化をすることができなかった。大型ディスプレイが導入され、動画コンテンツを扱えるようになっても、目を惹くのは最初のうちだけで、すぐにどちらかというと雑音寄りの風景になってしまう。
歩行者が屋外ディスプレイに注目をするのは、歩いていたり、信号待ちをしたりする10秒ほどの時間でしかなく、この間に、足を止めてもっと見ようという気にさせる魅力に乏しいからだ。
しかし、裸眼3D広告であれば、わずか数秒間で歩行者を惹きつける魅力を持っている。一定の角度から見ないと正しい3D効果は得らず、正しくない位置にいる歩行者には歪んだ映像になってしまうが、それすら、正しく見える位置を探したいという惹きつける要素のひとつになっている。
デメリットは、通常の屋外ディスプレイに比べて高価になることと、歩行者が滞留をするため、ディスプレイの位置と歩行者の位置関係を考えて設計する必要があることだが、ショッピングモールであれば、この2つの問題はクリアしやすい。今後も、ショッピングモールを中心に裸眼3D広告が広がっていくことになる。