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コロナ禍で店舗数を拡大した焼肉チェーン「北木南」。加盟費用0元にして、さらに飛躍

飲食店はどこもコロナ禍で大きな打撃を受けた。閉店、倒産があいつぐ中で、むしろ店舗数を拡大したチェーンがある。中国式焼肉の「北木南」だ。その拡大の鍵となったのは学生街と下沈市場、そして加盟店費用無料だったと職業餐飲網が報じた。

 

コロナ禍で店舗数を伸ばした格安焼肉店「北木南」

長いコロナ禍は飲食業に大きな打撃を与えた。その中で中国式焼肉の「北木南」(ベイムーナン)は、むしろチェーン数を拡大した。2021年には241店舗も新規開店をしている。

北木南の創業は2016年。重慶大学の都市科学技術学院を卒業した李長志は、同級生や友人たちから10数万元の資金を集めて、大学のそばに焼肉店「北木南」を開店した。これが繁盛をした。

中国にも韓国式焼肉、日式焼肉の飲食店は存在するが、いずれも高級店であり、学生で焼肉を食べる人はほとんどいない。しかし、北木南は、客単価を50元に抑えるという格安店であったために人気となり、他都市の大学近くにも出店をし、2017年には13店舗にまで増えた。

▲北木南の店舗。当初は学生街を中心に店舗展開をしたが、コロナ禍で打撃を受け、地方都市に進出をしたことが飛躍のきっかけになった。

 

学生市場に特化をしたためコロナ禍で大打撃

しかし、2020年にコロナ禍が起きると、北木南は危機に陥った。多くの大学で、学生を実家に戻し、リモート授業に切り替えたからだ。大学近辺は人気がなくなり、北木南は危機的状況となった。

創業者の李長志は、ここで守りに入るのではなく、攻めに出ることにした。これまで大学の近辺という学生市場をねらっていたが、地方都市を中心とした下沈市場に出店をすることにした。なぜなら、学生市場と下沈市場は、客単価や消費性向が似通っているからだ。コロナ禍がやや落ち着いた2021年に241店舗を下沈市場に展開をした。

▲地方都市では人気となり、どの店も行列ができる賑わいとなっている。

 

学生市場と下沈市場の類似性に着目

多くの飲食店が大都市での展開をし、成功をすると、次の成長を求めて下沈市場に進出をしようとする。しかし、大都市と地方都市では、客単価や消費性向や家賃まで何から何まで違っている。このため、多くの飲食チェーンが下沈市場への展開で苦しむことになっている。

しかし、北木南は大都市の中でも学生市場というきわめて下沈市場と似ているニッチな市場で地位を確立したため、うまく下沈市場に展開をすることができた。

▲北木南の店内。韓国式焼肉、日式焼肉の店は高級店が多い。中国式焼肉の北木南は庶民的な価格であるため、学生街と地方都市で受け入れられた。

 

下沈市場に着目したことが飛躍のきっかけとなった

さらに重要なのは学生市場と下沈市場を比べた場合、市場としては下沈市場の方がはるかに大きいということだ。

2016年に北木南が創業した時の目標は「2000校2000店」だった。中国の大学、専門学校は2000校ほどで、これは市場の物理的限界とも言える。しかし、下沈市場は1866の県があり、1つの県に3つから4つの地方都市がある。北木南は下沈市場で、5000店舗、6000店舗を展開することが可能になる。

 

セントラルキッチン方式、店舗で調理はしない

現在、北木南は198都市670店舗を展開している。その急成長を可能にしたのは客単価50元という安さだ。しかし、肉質はいい。黒竜江省チチハル市は、肉の里として知られ、肉質がいいことで有名だ。

チチハルの焼肉は、漬け込むソースが優れていることでも有名だ。牛肉、鶏肉はもちろん部位によってもソースの味を変えている。これにより、さまざまな部位の焼肉の味を楽しむことができる。

北木南では、このチチハルの焼肉をベースにしている。しかも、肉に関しては本社で一括仕入れをすることでコストを下げている。また、ソースに漬け込む作業もセントラルキッチンで一括して行い、真空包装をして各店舗に配送をする。

これにより、店舗では、配送された肉を開封して皿に並べるだけで済むようになっている。焼く作業は来店客が自分で行い、この焼くという作業も楽しみのひとつになっている。

つまり、北木南の店舗には本格的なキッチンはなく、調理師もいない。技術的な難しさがないので、店舗の人件費も安く抑えることができる。

また、大都市では店舗の家賃が大きなコストとなり、利益を圧迫するが、地方都市ではその圧力は小さい。120平米という北木南の標準店舗の家賃は、年間5万元(約97万円)程度でしかない。

▲北木南の店舗に調理師はいない。セントラルキッチンで味付けをし、店舗ではそれを皿に並べるだけ。調理は来店客が自分で行う。

▲食材はすべてセントラルキッチンで加工をし、真空パックして、各店舗に配送する。店舗ではそれを皿に並べるだけ。調理師は不要の飲食店になっている。

 

加盟費を0元にしてさらに成長

北木南はさらに成長するために、2022年10月にフランチャイズの加盟店費用を0元にした。加盟店に肉などの食材を販売することで利益を上げている。

この加盟店費用をゼロにするというのは、店舗の品質を維持する上で大きな効果があるのだという。加盟店費用を払うと、加盟店オーナーはブランドにとってお客さんになる。支払った加盟店費用をいち早く回収をしようとして、ブランドが禁止している食材などを勝手に使い始めてしまう。この管理をして、品質を維持するために本社のコストがかかるようになる。地域マネージャーを配置して、加盟店がブランドの指示通りに業務を行っているかどうかを管理しなければならなくなる。

一方、加盟店費用をゼロにすると、店舗の改装費を除けば、加盟店オーナーは開店初日から利益が出るようになる。加盟店が勝手なことをやり始めるのは、加盟店費用を取り戻そうとして困ったあげくに始めることが多い。利益が出るのであれば、勝手なことはせずに、ブランドのやり方を信じてその通りやるようになるのだ。また、勝手なことをするのであれば、食材を供給しないという強い手段を取ることもできる。契約解除や違約金、加盟費用の返還などの問題で揉めることも起こらない。

北木南は、コロナ禍という厳しい環境の中で、チェーンを拡大しただけでなく、加盟店費用0という新しい手法で今後もチェーンが拡大していくと期待されている。

▲北木南では加盟店費を0元にした。これにより、店舗オーナーは早く初期投資を回収できるようになるため、マニュアル違反行為をすることがなくなる。