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中国を中心にしたアジアのテック最新事情

中国のユニコーン企業の現状。第1世代ユニコーンはどれだけ生き残っているか

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今回は、中国のユニコーン企業についてご紹介します。

 

ユニコーン企業とは、創業10年以内で、企業価値が10億ドル以上、未上場の企業のことです。つまり、スタートアップ企業とはもう呼べないほど大きくなったけど、まだ上場をしていない企業のことです。

中国では「独角獣」(ドゥージャオショウ)と、ユニコーン(一角獣)の直訳がそのまま使われます。

ユニコーン企業は、上場目前の企業でもあり、上場も大型上場になる可能性が高いため、投資家にとっては垂涎の的になっています。もし、ユニコーン企業に投資ができれば、短期間で上場して大きな利益をもたらすことができるからです。

もちろん、世の中そんなに甘くはありません。すでに投資をしているベンチャーキャピタルや投資家たちが、経営権が薄まるのを防ぐために、新たな投資家の参入は防ごうとします。そんなところから、「誰でも知っているけど、なかなか捕まえることができない」幻の動物としてユニコーンという名前が使われるようです。

ただし、最近はこの定義もぶれてきて、創業10年以上でもユニコーンと呼ばれることが増えてきました。たとえば、SpaceXは、2002年にイーロン・マスクによって創業され、もう20年になる企業ですが、いまだにユニコーン企業と呼ばれることが多いようです。

このため、ユニコーン企業の統計は、調査をした機関の定義により異なってきます。このメルマガでは、調査会社の「胡潤」(フールン)のデータを使います。

 

以前は、ユニコーン企業はいずれ上場をするものだと考えられていました。上場をすれば創業者は大きな利益を得ることができ、いわゆる富豪になることができます。また、株式市場から広く資金を調達できるため事業を拡大させることができます。同時に、株主によるガバナンスが効くことにより、企業の運営が公正なものになります。未上場時に投資をした投資機関、投資家は、上場により資金が何倍にも増えることを望んでいるため、上場を急かします。上場しない理由はどこにもないというのが以前の考え方でした。

ところが、最近は、ユニコーンのまま、あえて上場をしない企業も増えてきました。上場をしなければ、株主は限定されたメンバーになるため、大胆な経営がしやすくなります。株式公開をすれば、まったく知らない人まで株主になることができ、いわゆる「もの言う株主」にも対応していかなければならなくなります。それが企業の方針上の違いならまだしも、企業価値を一時的にあげて売り抜けたいと考える株主に対応をするのは非常に難しい舵取りが必要になります。

また、公開企業になると、成長が事実上のノルマになることも大きな問題です。企業ですから成長をするのは当たり前のことですが、大きな成長を目的とする大改革を行うために、数年の間、業績を落ちることがわかっても実行するということもあるでしょう。公開企業では間違いなく株主から批判をされて、最悪の場合は経営者の解任動議が出されてしまいます。

これを避けるには、とにかく売上を上げるしかなくなり、儲かるのであれば創立時の志にはないこともしなければならなくなります。これは創業者にとって我慢ならないことでしょう。

また、会社の体力がない時に無理に上場してしまうと、敵対的買収に合うリスクもあります。

このようなことを考え、上場をしないままでいるユニコーン企業も増えています。

 

2022年版の世界のユニコーン企業の企業価値ランキングは次のようになっています。

▲トップ10ユニコーン企業のうち、半分が中国企業となった。胡潤調べ。

 

トップの抖音(ドウイン)は、TikTokなどを運営しているバイトダンスのことです。中国名は「字節跳動」という名称で、その英語訳がバイトダンスでしたが、ごく最近、社名を「抖音」に改めました。ただし、現在のところ、英語名称はバイトダンスのままのようです。

SpaceXは、最近、知名度があがり続けているイーロン・マスクが創業した宇宙開発企業です。

アントグループはアリババの子会社で、スマホ決済「アリペイ」を軸にしたフィンテック企業です。Stripeは大きなシェアを握っているオンライン決済代行企業です。ECを開設するときなど、Stripeのサービスを利用することで、すぐにクレジットカードなどのオンライン決済に対応することができます。

SHEIN(シーイン)は、「vol.153:SHEINは、なぜ中国市場ではなく、米国市場で成功したのか。持続的イノベーションのお手本にすべき企業」で取り上げた低価格アパレルの越境EC企業です。

Binanceは世界最大の暗号通貨の取引所です。実はBinanceを創業したのは、江蘇省生まれの趙長鵬(ジャオ・チャンパン)で、創業の地も上海であるため、中国企業と言ってもいいかもしれません。ただし、趙長鵬自身は10歳前後の時に家族と一緒にカナダに移住をしているため、中国系カナダ人です。

中国政府が暗号通貨の取引を禁止をしたため、地中海のマルタに移転をしました。趙長鵬の総資産は19億ドルと推定されていますが、ご本人によると資産のほぼすべてが暗号通貨の形で保有しているそうです。

Databricksは、ビッグデータを解析するための基盤を提供するサービスを運営している企業です。

WeBankは、テンセントが出資をするネット銀行で、わずか1分の申請で500万元までの融資を可能にしたマイクロファイナンス銀行です。アリババのジャック・マーが設立した浙江網商銀行と双璧をなす中小事業者、個人事業者向けの銀行です。

京東科技は、EC「京東」(ジンドン)の開発部門が独立した会社で、物流系のシステム開発、ドローンや無人カートなどを手がけています。

Checkout.comは、150以上の通貨に対応したデジタル国際送金プラットフォームです。

 

ユニコーンランキングトップ10では、中国企業が半数もありましたが、ユニコーン企業の数ではやはりなんと言っても米国が圧倒的に多くなります。

▲2022年現在の国別ユニコーン企業数。圧倒的に米国が多い。緑色は2022年の増加分。

 

米国が625社に対して、中国は312社とほぼ半分です。それなのにトップ10に中国のユニコーンが多いのは、どうしてでしょうか。ここに中国特有の事情があります。答えを先に言えば、中国ではユニコーン企業が上場をせず、ユニコーンのまま事業を続ける例が増えているのです。

今回は、ユニコーン企業を取り巻く中国の状況をご紹介します。また、2016年までにユニコーン企業と認められた企業は「ユニコーン第1世代」と呼ばれますが、この第1世代のユニコーン企業がそれから7年ほど経って、どうなっているのかをご紹介します。紙面の都合で、細かい解説はできませんが、第1世代のユニコーン企業がそれぞれどんな企業であるかも簡単にご紹介します。

 

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先月発行したのは、以下のメルマガです。

vol.153:SHEINは、なぜ中国市場ではなく、米国市場で成功したのか。持続的イノベーションのお手本にすべき企業

vol.154:中国に本気を出すスターバックス。3000店の新規出店。地方都市の下沈市場で、スタバは受け入れられるのか

vol.155:変わりつつある日本製品に対するイメージ。浸透する日系風格とは何か

vol.156:あらゆる商品が1時間で届けられる時代。デリバリー経済がさらに進化する中国社会