飲食業は2020年に大きな打撃を受けた。しかし、2022年、再び同規模の打撃を受けている。感染再拡大に対する不安から、外食の習慣が失われようとしているという人もいる。その中で、特に困難に直面しているのがピザハット、サブウェイ、吉野家の3チェーンだ。いずれも中国市場への適応に問題があったと砺石商業評論が報じた。
外食の習慣が消える?関係者の不安
中国の飲食業は、コロナ禍により大きな打撃を受けた。最も大きいのは2020年の新型コロナの感染拡大期だったが、2021年はやや持ち直し回復の傾向が見られたものの、2022年になって再び2020年と同じ規模の打撃を受けている。感染がぶり返し、部分的封鎖などが繰り返されることが大きいが、もはや市民の外食の習慣が消える傾向にあるのではないかということを関係者は不安視している。
その中でも苦境に陥っているのが、外資系飲食チェーンだ。ケンタッキーフライドチキン(KFC)とマクドナルドはすっかり中国に定着をして、安定した経営を続けているが、ピザハット、サブウェイ、吉野家の3チェーンが撤退待ったなしの危機的状況に苦しんでいる。
高級ピザレストランとしてスタートしたピザハット
ビザハットは1990年に中国に進出をした。KFC、タコベルなどを運営する米ヤム・ブランズの中国企業「百勝」(ヤム・チャイナ)が中国での運営を担当している。当時、すでにマクドナルド、KFCが中国に進出をしていたため、ピザハットはピザレストランの形式をとった。日本や米国でおなじみの宅配ピザではなく、ピザやパスタを中心とした食事が楽しめるやや高級感のあるレストランとしてスタートした。当時の飲食業の平均客単価は20元ほどだが、ピザハットでは70元から80元であり、ホワイトカラーの中産階級をターゲットにした。
当初は大成功、しかしライバルが登場
当時の中国人にとってピザは「知ってはいるけど食べたことがない」食べ物の代表格で、物珍しも手伝って、ピザハットは繁盛した。最初の5年間の平均成長率は34%前後で、利益率も40%以上という高いものだった。
しかし、2003年に米国のパパ・ジョンズ・ピザが上陸をし、価格は安く、味もピザハットに負けないということから瞬く間に100店舗を展開した。パパ・ジョンズも中国ピザハットと同じようなレストランタイプのピザチェーンだ。
サラダタワーをめぐる失敗
ピザハットは対抗するために、エンターテイメント方向にシフトをした。それまでの「休日のレストラン」から「楽しいレストラン」にシフトをした。その中から出てきた人気メニューが25元のサラダバーだ。
サラダバーは取り放題なのだが、1人1皿1回限りという制限がある。ならばと、サラダを山盛りにする「サラダ建築士」が現れ、その写真をSNSにあげることで、ピザハットの人気が高まった。
しかし、ピザハットはこの流行をよく思わなかったようだ。サラダバーの価格を32元に値上げをした。さらに、サラダタワーをつくるには、基礎建材となるニンジンとキュウリが必要になる。固い食材であるため、この2種類で基礎を組み、その上に他の食材を載せていくのだ。ピザハットは、この基礎建材となるニンジンとキュウリの提供を停止し、サラダタワーを高くできないようにした。
そして、2009年には、採算が取れないとしてサラダバーの提供そのものを停止していった。
個性を失っていくピザハット
消費者からは「ピザハットは楽しいレストランだと言っているのに、楽しくない」と言われ、人気は次第に低下をしていった。2007年には売上が20%低下をし、それからほぼ毎年売上が減少していっている。パパ・ジョンズやドミノピザなどのライバルに客を取られ始めていった。
ピザハットは立て直しのため、KFCを見習い、地方都市への進出を始めていった。しかし、レストラン形式は地方市場に合わないため、どんどんファストフード化をしていった。短時間で食べられるように、ピザの直径はどんどん小さくなっていき、KFC同様のフライドチキンなどのメニューも追加されていった。
ピザハットはファストフード化をしていき、個性を失っていった。一方、KFCやマクドナルドは、油条などの中華メニューを開発し、子どもから高齢者まで楽しめるファストフードになっていったが、ピザハットはそれにも消極的で、次第にピザの専門レストランではなく、ありきたりなファストフードになってしまった。それでいて、価格は高めだ。
フランチャイズ導入でさらに業績は悪化
2015年には、テコ入れのために、それまでの直営方式を断念し、フランチャイズ方式を開始した。これにより、一気に地方に展開しようとした。しかし加盟するには、600万元(約1.2億円)の投資資金が必要になる。直営店の買取りに300万元、加盟料に30万元、トレーニング費用に6万元が必要で、全部で336万元の初期費用がかかる。さらに改装費、運転資金が必要になる。これで10年間の経営ができるという強気のフランチャイズ契約だった。
これで2021年末には、600都市2500店舗にまで増えたが、全体の売上は店舗が増えても頭打ちのままだった。2022年Q1には既存店売上が5%低下をし、利益率も4.6%ポイント下がり10.7%にまで低下をした。2022年Q2には、全体の売上が15%を低下をし、業績不振が鮮明になった。
フランチャイズ加盟をしたオーナーにとっては、大きな資金を投入しているため抜けるに抜けられない状況となってしまった。この中で、北京の店舗が、期限切れの食材を使っていた問題、フライヤーの油を10日に1回しか交換していない問題が発覚をし、ピザハットの衛生問題がクローズアップされた。もちろん、ひどい話だが、業界にはフランチャイズオーナーの置かれた状況に同情的な見方もある。
ピザハットは八方塞がりになってしまっている。この状況を脱することは簡単ではない。