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永久にインクを無償提供。流行するインク付きプリンターはお得なのか、損なのか、あるいは詐欺なのか

淘宝網タオバオ)で販売されているプリンターの多くが、「永久インク無償提供」をうたうようになっている。インク代金は本体価格に含まれていて、必要なインクをその都度送ってくれるというものだ。これは得なのか損なのか、あるいは詐欺なのか、中関村在線が調査をした。

 

子どものいる家庭で需要のあるプリンター

スマートフォン時代になって、めっきり出番が減ったプリンター。それでもまだまだ写真を印刷して部屋に飾ったり、紙書類が必要だったり、一定の需要がある。小さな子どものいる家庭では塗り絵や紙模型を印刷し、子どもと一緒に楽しむということも流行の兆しがある。

また、華為(ファーウェイ)が販売をしているプリンターPixLabには、「打巻子」という機能があり話題になっている。これは、学習プリントをコピーすると、自動的に手書き文字と採点用の赤い文字を消してプリントしてくれるという機能だ。つまり、一度解答をして採点をした学習プリントをコピーすると、未解答の最初の状態のプリントがコピーでき、再度学習することができる。

子どものいる家庭では、まだまだプリンターの需要はあるようだ。

▲ファーウェイのプリンターにはユニークな機能が搭載されている。解答済みの宿題プリントをコピーすると、手書き文字と赤字採点部分を自動的に消して印刷してくれる機能だ。もう一度、プリントに解答ができるようになる。

 

多くの人が感じている純正インクの価格の高さ

ところが、多くの人が悩みのが交換インクの価格の高さだ。すぐになくなり、ひどいものになると、本体価格よりも交換インクの方が高いケースすらある。少しでも節約してサードパーティーによる互換インクカートリッジを使おうとすると、警告などが表示されて使い勝手が悪い。

本体価格を安くして普及させ、高価な純正インクで利益を得るというプリンター特有のビジネスモデルは以前から批判の対象となっており、「実際にはインクが残っている状態であるのにインク切れ表示が出て印刷ができなくなる」として、問題になったり、裁判になっている。プリンターメーカーとしては残量に余裕を持たせることで、印刷の品質を確保したり、機器の故障を防ぐのだとは思われるが、消費者から見れば不誠実に映るのは確かだ。

▲インクだけを直接購入すると、互換インクの場合、500mlの大容量ボトルで55元程度が相場になる。

 

目につくようになった「永久インク提供」販売

この「インクが高い」問題に対応して、現在多くのECで「永久にインクを提供します」とうたったプリンターが販売されるようになっている。価格は通常のプリンターよりも高めだが、永遠に使えるインクつきと考えればすごくお買い得になる。

「永久インク提供」は本当にお得なのか、問題はないのか。中関村在線では業者に連絡を取り、どのような仕組みになっているかを調査した。

▲「永久にインクを無償提供」をうたっている業者に問い合わせをすると、毎回20元の送料を支払う必要があることが判明した。郵便なら5元程度で送れるので、送料で利益をあげていると見られる。

 

インクは無料でも毎回送料がかかる

ある販売業者では、2種類のセットがあり、ひとつは互換インク、もうひとつは純正インクが永遠に送られてくる。互換インクセットは279元で、プリンター単体の価格とほぼ同じでお買い得感は大きい。純正インクセットは975元でかなり高くなるが、インク代込みと考えると、安いのか、高いのかは微妙なところだ。

業者に連絡を取り、どのような仕組みになっているのかを尋ねると、好きなだけインクは無料で注文ができるが、1回ごとに配送料が20元必要になるという。容量50mlの互換インクのボトルが送られてくるので、自分でカートリッジに注入をする方式だ。

多少工作などの経験がある人にとってはなんでもない作業だが、不慣れな人にとっては難しい作業になる。また、顔料インクは服などにつくと、なかなか落ちなくなるため、作業は決して簡単ではない。

別の業者では「毎月インクを送付」をうたっているところもある。しかし、送られてくるのは4色あるうちの1色だけで、10元の送料が必要になる。全色必要な場合は50元で購入しなければならない。

▲販売業者に問い合わせをすると、毎回送料が20元必要であることが判明。郵便なら5元程度で済むので、送料で利益をあげているのではないかと思われる。

 

送料で利益をあげている販売業者

結局、永久に送られてくるといっても純正インクではなく互換インクであり、なおかつ毎回20元程度の送料が必要になるというところが多い。

ところが、互換インクは非常に安い。500mlのボトルで55元程度が相場だ。販売業者が送ってくる50mlのボトルに換算すると5.5元になる。これに送料を20元支払う。プリンターインクは郵便でも送れるほどのサイズなので、実際にかかる送料は5元程度だ。つまり、販売業者は「無料でインクを提供」と言いながら、けっこうな利益を上げていることになる。

中関村在線では、「永久にインクを提供」は、詐欺的な商法であり、プリンターが必要であれば本体を単体で購入し、インクも自分で購入することを勧めている。

▲互換インクは、自分でインクタンクに注入をしたり、余剰インク吸水パッドを交換する必要がある。けっこうな手間であり、顔料インクは手や服についてしまうとなかなか落ちない。そのような面倒から純正インクを使ったり、そもそもプリンターを使うことをやめ、コンビニなどで印刷する人も増えている。