清華大学の研究チームが、世界で初めてナノメートル級の3Dプリント技術を開発した。基本ユニットを造形し、それを組み立てることで複雑な構造を構築できる。これにより2万dpiという解像度を達成したと清華大学新聞が報じた。
ナノプリント技術をリードした清華大学チーム
世界中でナノプリント技術の競争が行われている。医療や電子回路基盤などの精密部品を高い精度で製造できるようになるからだ。また、小型部品の表面を極限まで滑らかにすることが可能になるため、精度が要求される部品の製造にも応用が考えられている。
一般的なナノプリント技術は100nm単位の3Dプリントができるものを指している。清華大学の研究チームは、これをさらに一桁進め、最小単位77nmのナノプリントを可能にした。
レゴのように組み立て製造する発想
一般的な3Dプリンターは、FDM方式(熱溶解積層)が使われる。樹脂を高温で溶かし、ノズルから噴き出し、一層ずつ重ねながら造形をしていくというおなじみのものだ。しかし、FDM方式では材料が高温になるため、冷える時に収縮が起こるなど、高い精度が要求される造形には向かなかった。
そこで、ナノプリントでは、紫外線に反応して固まるエポキシ樹脂などを使い、紫外線レーザーをあてて固めながら造形をしていく。
さらに、清華大学の研究チームは、基本ユニットをナノプリント技術でつくり、それをレゴのように組み立てる技術を開発した。基本ユニットを溶液中に漂わせ、接合部分にフェムト秒レーザーをあてて接合点を励起させる。これにより、他の接合点と結合させることで、立体構造を組み上げていくというものだ。プリント技術というよりも、ナノ組立て技術といった方が正確かもしれない。
2万dpiの解像度での造形が可能になった
このような技術で、世界最先端の解像度を達成した。一般的なレーザープリンターは1インチあたり300ドットから600ドットの解像度を持っている。写植機などの光学印刷機は1インチあたり1200から2400の解像度を持っている。清華大学が開発した技術では、1インチあたり2万の解像度に相当する。この精度で微細構造が製造できるようになったことで、医療、電子などの分野を大きく進歩させることが期待をされている。
この技術は、清華大学精密機械系の孫洪波を中心にしたチームにより開発され、その成果は、「3D nanoprinting of semiconductor quantum dots by photoexcitation-induced chemical bonding」(https://www.science.org/doi/10.1126/science.abo5345)として米科学メディア「サイエンス」で発表されている。