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ドローン規制で足踏みをするDJI。その技術を次は地上で活かして成長をねらう

DJIの成長が止まっている。中国政府がドローンに対する厳しい規制を始め、売上が落ちているからだ。しかし、DJIは、ドローンで培った技術を今度は地上に適用し、地上で鍛えられた技術を空中に還元することで、次の成長曲線を描こうとしているとAI藍媒匯が報じた。

 

DJIの成長に翳り、次の成長は可能か?

2006年に創業し、ドローンの分野で国際的なリーダー企業となった大疆(ダージャン、DJI)。セコイアキャピタルを始めとする多数の投資会社もDJIに注目をし、DJIはいまだ上場をしていないものの、企業価値はすでに1600億元(約3兆円)を超えていると見られている。

しかし、その輝きも最近では失われてきている。品質問題や米中貿易摩擦により、業績が伸び悩み、投資会社の中には離脱をするところも現れ始めている。技術力とイノベーションでドローンの領域を切り開いてきたDJIが、踊り場で足踏みをする状況になっている。

▲ドローンで世界的なリーダー企業となったDJI。その技術を地上で活かすことで、第2の成長曲線を描こうとしている。

 

停滞の理由は政府の厳しいドローン規制

DJIの業績が停滞をしたのは、中国政府がドローンに対する規制を始めたことが大きい。民生用ドローンで250グラム以上のドローンは、登録をすることが必須となった。さらに、落下をした場合に人に損害を与えるような市街地などが飛行禁止地域として設定をされたため、都市部ではほとんど飛ばすことができなくなった。このような規制を無視してドローンを飛ばし、処罰を受けるという事件も多発をし、ドローンのイメージそのものも悪化をして、売上は大きく後退した。

 

DJIは開発したAIを地上で使うことで成長をねらう

「2020ドローン市場部門報告」(DroneAnalyst)によると、DJIの中国でのシェアは2018年の74%から2019年の69%に低下をしている。DJIのシェアが低下をしたのはこれが初めてのことだった。

DJIの次の成長曲線は「AIの地上化」だ。DJIのドローンは、その飛行性能だけでなく、AIテクノロジーが突出をしていた。これにより、ドローンが物体を自動追尾して撮影することや撮影した物体の識別、さらには農薬の自動散布などに活かされている。

この蓄積されたAIテクノロジーを活かして、アクションカメラやロボット玩具、マイクロフォンなどの製品を発売している。いずれもAIテクノロジーが活かされ、他社製品とは差別化がされている。

アクションカメラは物体を認識して追跡をして撮影しながらピントを合わすという高度なことをしており、ロボット玩具は自動で障害を回避し、マイクロフォンはワイヤレスで長距離の伝送を可能にする。いずれも、ドローンで培った対象追跡技術、回避技術、信号伝送技術が活かされている。

▲DJIのアクションカメラ。撮影対象の物体を自動追尾し、焦点を合わし続ける。ドローンで培ったAI技術が活かされている。

▲DJIが発売しているロボット玩具。障害(兵士のフィギュア)を認識し、自動で回避をしながら走行する。

▲DJIは手ぶれをキャンセルするスタビライザーでも秀でている。実際ウェブメディアで業務用ビデオカメラを使うのはもはやかなり特別な場合だ。多くは、DJIのスタビライザーとスマホ一眼レフカメラが使われる。

 

地上で鍛えたAIを業務用ドローンに還元する

このような地上でAIテクノロジーが鍛えられることが、ドローンにも還元されている。DJIの農業用の農薬散布ドローンでは、上空から作物の品種を画像解析で識別し、異なる作物に異なる農薬、異なる量の農薬を散布をすることが可能になっている。農薬のドローン散布は、従来、単一の作物を植える大農場でないと業務効率があがらなかったが、このDJIのドローンを使うと小規模農家の小さな耕作地でも効率よく農薬を散布できるようになる。

DJIは、このAIテクノロジーを空中と地上の間で回っていくサイクルを確立して、空中でも地上でもイノベーションを起こす。それが可能になれば、DJIの第2の成長が始まる。DJIはドローン企業ではなく、AI企業になろうとしている。

▲DJIの農薬散布ドローンは、上空から作付けされた作物を自動認識し、異なる農薬を適切な量で散布をすることができるようになっている。狭小農地での自動化、効率化に大きな貢献をしている。