米国証券市場に上場をしているアリババ、京東、百度などの株価が3月に暴落するという現象が起きた。プロビジョナルリストに加えられて、米国投資家に対して上場廃止のリスクがあることを注意喚起されたことが直接の引き金になったとAI財経社が報じた。
アリババと京東の株価が暴落
3月10日に、中国の2大EC「アリババ」と「京東」(ジンドン、JD.com)の株価が暴落するという事態が発生した。その後、株価は戻しているものの、以前の水準には戻しきれていない。
この暴落の原因は、両社とも2021年Q4、通年の財務報告書の内容が悪かったことだ。アリババの2021年Q4は純利益が前年比75%減と大幅下落をした。これにより、アリババのニューヨーク証券取引所の株価は低迷を続けた。
さらに厳しかったのが京東だ。京東は証券市場の優等生と呼ばれ、中国の大手企業の中では株価が安定をしていた。自社で商品を仕入れ、配送をするという王道である店舗小売を素直にオンライン化し、景気の影響を受けづらい家電製品を主力にしているため、大きくはなくても着実な利益が期待できるからだ。
ところが、2021年Q4は純損益が52億元と市場予測よりも大幅に悪いものだった。
暴落の引き金となったプロビジョナルリスト入り
しかし決定的だったのは、米国証券取引所(SEC)のプロビジョナルリストに加えられたことだ。これは上場廃止の可能性があることを意味している。米国では「海外企業問責法」(Holding Foreign Companies Accountable Act、HFCAA)が成立し、米国で上場する海外企業のうち、米国公開会社会計監督委員会(PCAOB)の要求する報告を3年行っていない企業は、プロビジョナルリストに入れて、投資家に上場廃止の可能性があることを注意喚起することになっている。
京東がこのプロビジョナルリストに加わったことで、優等生だった京東が初めて経験する大幅な暴落が起こった。
アリババもこのプロビジョナルリストに入るのではないかという憶測から、アリババの株価も巻き込まれる形で大幅下落をした。
このような事情があるものの、アリババと京東が低利益時代に入ることは確実で、株価は今後も低迷をし続けるというのが大方の見方だ。
アリババの主力事業が初めてのマイナス成長
2016年には、すでにアリババの創業者、馬雲(マー・ユイン、ジャック・マー)は、「純ECはすでに死んだ」と宣言し、「盒馬鮮生」(フーマフレッシュ)などのオンライン小売とオフライン小売を融合した新小売に進出をした。
ジャック・マーの予言通り、2018年前後からECは伸び悩みがはっきりとしてきた。隘路は、下沈市場=地方市場への拡大だが、ここは新興のソーシャルEC「拼多多」(ピンドードー)が抑えてしまい、アリババと京東は成長空間を失うことになった。
京東が数年来の純損益となったばかりでなく、アリババも主力事業であるCustomer Management収入が初の減少となった。アリババのタオバオは出店料、販売手数料とも無料。そこでタオバオ内への広告出稿や、販促支援プログラムなどで収入を得ている。また、天猫(Tmall)では強力な販促支援を行う代わりに、出店料と販売手数料を徴収する。これがCustomer Management収入でアリババの主力収入源となっている。
2020年Q4は1014.49億元だったものが、2021年Q4には1000.89億元となり、わずかではあるが1.3%減となった。これはアリババ創業以来、初めてのことになる。アリババは「より参加企業のビジネスを促すため、料金設定を下げた影響」と説明しているが、アリババの主力収入源に陰りが生じたことには違いがない。
進む中国テック企業の香港への鞍替え
SECのプロビジョナルリストの影響は他の中国テック企業にも及んでいる。SECは追加で、中国でケンタッキーやピザハットを運営するヤム・ブランズ中国や百度などもリストに追加をしている。このような中国企業も、米国の投資家から見れば、高いリスクがあることになるので、株価は当然ながら下落をする。
中国政府は、海外の証券取引市場に上場する企業を香港や上海の国内証券取引所に引き戻そうとしている。米国のSECも中国企業を米国証券市場から排除をしようとしている。この点では、中国と米国の政府の思惑が一致をしているため、「米国から上場廃止をし、中国国内市場に上場」という流れは加速をすると見られている。