北京冬季五輪で注目された新素材が「グラフェン」だ。グラファイトの一層だけを分離したもので、非常に薄く、引っ張り強度が高い。伝導率も高いため、低電力で発熱できることから、座席や衣類への応用がされたと上観新聞が報じた。
北京冬季五輪で注目された新素材「グラフェン」
北京冬季五輪で注目された新素材がある。ナノテク素材のグラフェンだ。炭素素材の一種で、多層からなるグラファイトの一層だけを分離をしたもの。原子1個分の薄いシートだが、炭素結合であるため平面引っ張りに対して強く、電気伝導率、熱伝導率が非常に高い。
このようなことから、電子部品や太陽電池などへの応用が考えられている。また、すでに発熱、放熱素材としての応用が始まっている。微量の電流で発熱ができることから防寒素材として、あるいは熱伝導性が高いことからスマートフォンの放熱素材としての応用が始まっている。
椅子に織り込まれたグラフェン発熱シート
その中で、北京冬季五輪では、通称「鳥の巣」と呼ばれる国家体育館で発熱素材として採用された。
冬季五輪では、気温が零下になることも予想される。そこで、正面スタンドの観客席、貴賓席のソファ、カーペットにはグラフェンが織り込まれ、ボタンを押すだけで30度以上に保たれる。観客は寒い思いをせず、暖をとりながら、開会式、閉会式を観覧することができた。
普通の椅子と変わらない座り心地を実現
この技術を提供した北京創新愛尚家科技によると、従来の発熱素材である金属ワイヤーや発熱膜に比べて、グラフェンは非常に薄いため、座り心地がまったく違うという。暖かくならなければ、普通の椅子との違いはわからない。
さらに、このグラフェンを立体的に組み合わせることで、遠赤外線が放射される構造にすることができ、より暖かさが増すという。
グラフェン素材を使ったシートは通常の布と同じように水洗いをすることができ、よじったり切断しても安全性に問題は生じない。また、電圧24Vで発熱させることができ、これは鳥の巣全体が必要とする電力のわずか0.098%でしかない。
衣類にも応用されるグラフェン
また、創新愛尚家は衣類にもグラフェンを提供している。4年前の韓国ピョンチャン五輪では、米国選手団が発熱機能のついたジャケットを持ち込み、選手の体調管理に応用し、話題となった。北京冬季五輪では、ジャケットや靴下、手袋、マフラーに創新愛尚家のグラフェンが応用され、大会関係者に配布された。
ジャケットや手袋も表面は布素材であるため、雪が降ると表面につき、それが解けると濡れて非常に寒く感じる。そのような時に、スイッチを入れるとすぐに発熱をして暖かくなり、大会関係者に好評だったという。
人気となった公式マスコットのミニカイロ
その中でも好評だったのが、大会公式グッズのビンドゥンドゥンのキーホルダーカイロだ。ビンドゥンドゥンの中にグラフェンとバッテリーが備えられていて、寒い時に手に握り、ボタンを押すと、45度または55度に温めることができる。
北京冬季五輪でグラフェン素材の衣類が広く知られることになった。今後、冬物防寒衣類に広く使われていくことになる。