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USB端子が統一へ。網易CEOの提案を工信部が了承。問題は、アップルと急速充電技術

工信部がUSB端子を統一するガイドラインを策定することを発表した。内容に関しては触れられていないが、現状を考えるとType-C+ワイヤレスになると見られている。この問題は、網易CEOが政府に提案をしたもので、それに工信部が素早く判断をしたものだと中国経済網が報じた。

 

網易CEOが提案したUSB端子の統一

中国工業信息化部(工信部)が、USB端子の統一に乗り出すことになった。現在、主に使われているUSB端子は、Type-A、Type-C、マイクロB、Lightningの4種類。これを国家統一基準を定めて統一しようというものだ。

元々は、ゲーム開発企業「網易」(ワンイー)の創業者である丁磊(ディン・レイ)が工信部に対して提案したもの。丁磊は、「スマート電子設備の充電器標準端子の統一により、電子廃棄物を減少させ、カーボンニュートラルに資する提案」という文書を提出した。

この中で、充電の端子形状の規格が複数混在しており、消費者はデバイスを買い替えるたびに今まで使っていた充電器を廃棄することになり、大量の廃棄物を生み出していることが指摘されている。

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▲種類が増えすぎたUSB端子の規格。さらにケーブルも「充電のみ」「データ転送のみ」「充電、データ転送」の3種類があり、多くのデジタル製品ユーザーが頭を悩ませている。

 

ガイドラインを設定し、統一基準を制定

丁磊は、中国人民政治協商会議の全国委員2158人の1人に選ばれた。丁磊は経済委員会に所属をし、その活動のひとつとしてUSB端子の統一を提案した。この他、丁磊は食品トレーサビリティをQRコードシステムを用いて実現するという提案もしている。

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▲USB端子規格統一を提案した丁磊CEO。創業した網易はゲーム開発を中心としたエンタメテック企業。丁磊は人民政治協商会議の全国委員として、政府に対してさまざまな提案を行っている。

 

Type-Cに統一されると見られている

この丁磊のUSB端子に関する提案に関して、工信部は2022年1月10日に文書を公開し、この提案を受け入れる旨を表明した。

要点は3つある。1つ目はモバイル端末の端子に関する国家標準ガイドラインを制定することで統一を促す。2つ目は産学連携をし、急速充電技術の統合を模索する。3つ目は充電器などの廃棄物のリサイクルを行う企業を支援し、リサイクル体制を確立するというものだ。

どの端子に統一されるかなどについては触れられていないが、現状を見れば、Type-Cに統一され、オプションでワイヤレス充電に対応するということになるのが自然だと見られている。

 

データ転送はType-C、充電はLightningのアップル

しかし、課題はいくつか存在している。ひとつはアップルのLightning端子の問題だ。アップルはiPadMacBookではType-C端子への移行を始めているが、iPhoneでは独自規格のLightningを使い続けている。

USBには2つの用途がある。ひとつは充電で、もうひとつがデータ転送だ。周辺機器を使うことが多いMacBookiPadでは周辺機器の利用しやすさを考えてType-Cを採用しているが、iPhoneでのデータ転送はAirDropやワイヤレスイヤホンを利用するため端子はほとんど充電にしか使わない。そのため、Lightningのままでも問題ないと考えているのではないかとも言われている。一部には、iPhoneはType-Cを採用するのではなく、ポートそのものをなくして、充電もMagSafeなどのワイヤレス充電を標準にすると見ている人もいる。

いずれにしても、ユーロに続き、中国でもType-Cが標準となるとアップルも無視ができなくなる。

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▲網易CEOの提案に対して、工信部はその提案を受け入れる文書を公開した。ようやくUSB端子が統一される方向に進み始めた。

 

最大の課題は急速充電技術の統一

もうひとつは中国のスマートフォンやモバイルデバイスではほぼ標準となっている急速充電だ。どのスマホも急速充電の機能を搭載しているが、その規格はメーカーによって異なっている。そのため、市販の充電器を使った場合は標準充電しかできないために、その機種専用の充電器を使う人が多い。これも買い替えをした場合は充電器が不要となり、廃棄物となる。

工信部はこの急速充電の規格も「融合」を図るとしているが、早くもエンジニアなどからは簡単ではないという声があがっている。急速充電は、スマホの売りの機能のひとつであり、各社とも他社よりも早い急速充電技術を開発しようとしているからだ。

このような課題はあるものの、Type-Cへの統一が進むだけでも、消費者にとってはありがたいことだ。ネットでは早く統一規格ガイドラインを出してほしいという声が早くもあがっている。ようやく、デジタル製品ユーザーの悩みのひとつが解決される方向に進む。