中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

スマホ最後のフロンティア「アフリカ」。輸出、現地生産だけでなく、多数の販売業者もアフリカへ

先進国ですでに頭打ちになっているスマートフォン。残された最後のフロンティアはアフリカであると言われている。しかし、アフリカにはすでに中国ブランドが進出するだけでなく、深圳市華強北の販売業者もアフリカに渡り、卸業を始めていると南風窓塩財経が報じた。

 

スマホの最後のフロンティアーーアフリカ

今、世界の中でスマートフォンが飛ぶように売れるのがアフリカだ。20年前の2002年、タンザニアウガンダケニア、ガーナなどのアフリカ主要国での成人の携帯電話普及率は10%程度で、最も普及をしている南アフリカでも33%程度だった。しかし、2019年には、GSMアソシエーションの統計によると、サハラ砂漠以南のスマホ普及率は45%になり、2025年には67%になると予測されている。

 

アフリカに進出するファーウェイ、現地化する伝音

この成長市場に世界のスマホ関係者が注目をしている。華為(ファーウェイ)は、1996年にアフリカ市場に参入し、アフリカの主要ブランドのひとつになっている。

また、輸出ではなく、アフリカ現地メーカーとして成功をしたのが伝音(チュワンイン)だ。2006年に創立された伝音は、アフリカでTECNO、itel、Infinixなどのブランドを立ち上げ、2019年には上海証券取引所の科創板に上場をしている。2020年には1.74億台のスマホをアフリカで販売し、アフリカでのシェアが40%となるばかりでなく、グローバルシェアでも第4位になっている。

アフリカに注目をしているのは中国企業だけではない。Facebookは、中国移動などと共同して、3.7万kmの海底ケーブル「2Africa」の敷設を進めている。グーグルはポルトガルから南アフリカケープタウンを結ぶ海底ケーブルの敷設を進めている。

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▲伝音のブランドTECNO。アフリカで40%のシェアを持っている。

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▲Meta(旧Facebook)は、アフリカと欧州をつなぐ海底ケーブル「2Africa」の敷設計画を進めている。ネット企業にとって、アフリカは最後のフロンティアになっている。



純国産品として認知される伝音のスマホ

伝音は現地生産を行うため、アフリカ人からは準国産品と認められている。機能に関しても、アフリカに特化をさせている。例えば、防水機能よりも防汗機能をつけた。暑いアフリカでは汗をかくことが多く、スマホを握った手から汗が内部に侵入したり、顔から汗が落ちる。また、表面の仕上げも汗をかいた手でもすべららないような加工をした。

また、カメラには美白効果ではなく、美黒効果をつけた。逆光で自撮りをすると、顔の色が暗いためつぶれてしまうのだ。そこで顔を認識して、顔の明度をあげる処理を組み込んだ。このような機能がアフリカで受けている。

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▲伝音が搭載して話題になった美黒効果。逆光で撮影すると、顔が暗くなってしまうので、顔認識により顔の部分の明度を自動的にあげる。

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▲伝音のスマホはアフリカ現地工場での生産を行なっており、各国から純国産として認められている。



販売業者も華強北からアフリカへ

2017年、深圳市の巨大電気街「華強北」(ホワチャンベイ)で、スマホの販売をしていた彭亮(ポン・リャン)は、親戚がアフリカでスマホの販売をやっていて、月に3万元から4万元(約72万円)の収入を得ていると聞いて、自分もアフリカで商売をしようと思い立った。当時の華強北では、1台のスマホを売っても利益は5元から10元でしかなかった。しかも、ECの登場により、客流は減る一方だったのだ。

深圳で卸値が300元から400元のスマホ仕入れて、アフリカで売れば倍以上の値段で売れる。しかも、アフリカ人は機能などにあまりこだわらなかった。バッテリーが持つことと、ダブルSIM対応であれば売れた。電波が入る場所が少ないので、複数のキャリアと契約をするのが当たり前になっていたからだ。

しかも、アフリカではスマホの故障が多く、買い替え需要が旺盛だ。アフリカ人は少しでも嬉しいことがあると踊り、バスにも飛び乗ったり、飛び降りたりする。そのため、スマホを落とすことが多く、画面がすぐに割れ、買い替えをする。スマホはよく売れ、消費者はハイスペックな機能にはあまり興味を示さない。

 

アフリカに昔の中国を感じる中国人

飛行機で15時間、彭亮はコンゴ第2の都市ルブンバシ市に30平米の店舗を借りた。家賃は2000ドル(約23万円)だった。市内に行くと、彭亮は昔の中国なのではないかと錯覚をした。道路が見えないほど人で溢れかえっている。そこに勝手に立てたあばら家のような建物がひしめいている。AK47をもった兵士が治安の監視をしている。その中で、「美団」や「広西菱馬」など中国ブランドのロゴが入ったTシャツを着ているアフリカ人が歩いている。

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コンゴ第2の都市ルブンバシ市の日常。中国人は、この姿に「活気があった頃の中国」を重ねて見ているようだ。

 

中国で買付けアフリカで販売

彭亮は、消費者にスマホを売る小売店ではなく、卸業を始めた。アフリカでスマホを販売する小売店の主人にまとめて中国製のスマホを販売する。ある人は20台まとめて買っていき、少ない人でも5台はまとめ買いをしていく。1ヶ月に2000台ほどのスマホを中国で買い付け、利益は3万元から4万元程度になった。6名ほどの店員も雇い、基本給400元で、1台売るたびに3元のインセンティブを与える。どの店員も月に1000元から2000元程度の給料を得る。これは現地の保母の給料が700元ぐらいで、警察官の給料が2000元ぐらいなので、悪い仕事ではなかった。

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▲中国の古着がアフリカに輸出をされているため、アフリカで中国の服を見かけることができる。

 

小米、OPPOもアフリカ市場に参入

華強北の衰退とともに、アフリカでスマホの販売をする中国人が増えている。非常に簡単な商売で、難しいことは何もない。中国でスマホを買い付け、店に並べれば、小売店の主人が勝手にやってきて買っていってくれる。これにより、多くの華強北業者がアフリカに渡っている。

しかし、アフリカでの商売にも翳りが見え始めてきた。ひとつはコロナ禍により空輸コストが高騰していることだ。当然ながら利益を圧迫することになる。

もうひとつは中国スマホメーカーの本格参入だ。2019年1月、小米(シャオミ)は、アフリカ支社を設立し、地元のEC「Jumia」と販売の提携を結んだ。2021年6月の段階で、シャオミのスマホ販売額の8.5%がアフリカでのものになっている。

2020年8月には、OPPO(オッポ)が南アフリカに参入した。すでに、伝音、サムスンに次ぐシェアを獲得している。

 

伝音は現地向け機能で対抗

伝音は、アフリカで必要とされる翻訳アプリHi Translate、辞書アプリHi Dictionaryをプリインストールし、販売量を伸ばしている。アフリカ56カ国のうち23カ国が多言語国家だからだ。60%が英語を使い、20%がフランス語、10%がアラビア語、残りの10%は50種類以上の現地の言語を使う。FacebookやWhatsAppなどのSNSアプリはアフリカでも人気だが、言葉が異なるので、コミュニケーションが進まない。そのため、伝音は110もの言語に対応した翻訳アプリ、辞書アプリを提供している。

すでに、スマホであればなんでも売れる時代は終わった。現地で必要とされる機能を提供していく質の時代に入ろうとしている。彭亮は、中国に帰る時期が近づいていることを自覚している。