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コロナ後に急増したネット詐欺。ねらわれる若い世代。被害者の6割以上が20代

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明日、vol. 100が発行になります。

 

今回は、ネット詐欺被害についてご紹介します。

中国はネット詐欺が多い国で、以前は、ウェブにアクセスしただけでマルウェアがインストールされるとまで言われましたが、ここ5年ほどは毎年のようにネット詐欺被害が減少をしていきました。国家反詐欺センターが公安と協調して、さまざまな啓蒙活動するだけでなく、360やテンセントなどの優秀なホワイトハッカーチームが登場して、実行犯の居場所を突き止め、公安に情報提供をするという活動を行い、それが成果を上げ始めたからです。

ところが、新型コロナの感染拡大が始まると、再びネット詐欺被害が急増をしています。飲食店や小売店の閉鎖により職を失った人が大量に出たことが引き金になったと見られています。仕事がないので詐欺に手を染める人が増えているのです。また、詐欺の中心になっている手口が副業詐欺です。「楽に稼げる仕事がある」という誘惑をして、登録料などを騙し取るというものです。仕事がなくなり、このような副業詐欺に騙されてしまう人が増えています。

そして、コロナ後のネット詐欺の大きな特徴が、若者が騙されるということです。以前は40代、50代以上の中高年が主な被害者で、投資詐欺が手口の中心でした。それが、中国信息通信研究院の公開した「新形勢下での電信ネット詐欺管理報告」によると、詐欺被害者のうち最も多かったのが90后(90年代生まれ、20代)の63.7%となったのです。ネット詐欺の世界に大きな変化が起きています。

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▲コロナ後のネット詐欺被害は、圧倒的に20代が多い。コロナ禍で集中的に生活苦の打撃を受けている世代だからだ。

 

今年2021年7月に、ビリビリの人気配信主が詐欺にあったとことを告白して大きな話題になりました。

被害に遭ったのは、ビリビリで150万人のファンを獲得している人気配信主「波桑喫遍世界」で、普段はグルメや海外バックパック旅行の映像を公開しています。その波桑が25万元(約450万円)を簡単に騙し取られてしまいました。

波桑の携帯電話に電話がかかってきました。出てみると、相手は女性で、中国銀行監督管理委員会の職員だと名乗りました。波桑の銀行口座が凍結される恐れがあるので、今のうちに資金を移動しておくことをお勧めするという内容です。よくある詐欺の手口で、波桑も「これは詐欺なのではないか」と思ったそうです。

しかし、その女性職員は、波桑の本名や仕事なども知っていました。そして、配信のファンであり、「最近、配信が少ないので寂しく思っていました」とも言います。これで波桑は信じてしまったのです。

さらに、中国銀監会の正式書類と称する画像をスマホに送ってきて、ここに記載された口座にまず2万元(約36万円)を送金してほしいと言います。それがその口座の保証金となり、口座が有効となり、全財産を安全に保全ができるようになると言うのです。送られてきた書類の画像はもちろん偽造ですが、波桑は信じてしまい、2万元を送金し、さらに合計25万元を送金してしまいました。

 

送金してみると、波桑はやっぱりおかしいのではないかと思い始めました。不安になり、近くの派出所に相談に行くと、警官はそれは典型的な詐欺の手口だと言います。問題の職員に連絡をしようとしましたが、もちろん連絡はつきません。中国銀監会に問い合わせをしても、そのような職員はいないし、中国銀監会がそのような口座の保全を案内するようなこともないという返答でした。

警官は調査をしてくれましたが、電話の発信地がミャンマーカンボジアのいずれかということまでは分かりましたが、それ以上の追跡はできません。警官は、お金を取り戻すのは難しいだろうと説明しました。

波桑は、注意喚起のためにもこの経験をビリビリで配信すべきだと考えました。そこで経緯を説明した動画を配信すると、その動画に公安部刑偵局が注目をしました。ウェイボーの公式アカウントでこの動画を紹介し、「国家反詐欺センター」のアプリをインストールしておくことを勧めるという啓蒙活動に使ったのです。これもあり、波桑の動画の視聴者数は通常100万回再生弱ですが、この動画だけは800万回再生を超えることになりました。25万元は戻ってきませんが、動画によってある程度は補うことができたようです。

 

https://www.bilibili.com/video/BV12w411o7kb?spm_id_from=333.999.0.0

▲ビリビリの人気配信主「波桑」が詐欺被害にあったことを告白した動画。配信のファンであると言われたためにすっかり信じてしまったという。

 

このような詐欺というのは、以前は、「中高年」「投資詐欺」が基本でした。しかも、数打てば当たる方式で大量の電話をかけ、脈がありそうな人に詐欺を仕掛けていくというものでした。それが現在は「若者」「副業詐欺」が基本になり、あらかじめ騙されやすそうな人をピンポイントでねらってくるようになっています。

コロナ禍により、詐欺業界のトレンドが大きく変わり、これにより詐欺被害者数が急増をしています。

そこで、今回はコロナ後の新しいネット詐欺についてご紹介します。

 

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