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今どきの子どもたちのネット事情。ゲーム規制、教育改革をしたたかかに生きる子どもたち

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明日、vol. 090が発行になります。

 

今回は、ゲーム規制、教育改革に揺れる子どもたちのネット事情をご紹介します。日本でも報道されているように、未成年はオンライゲームを平日は禁止、週末は1日1時間だけという非常に厳しい規制がスタートしました。同時に、民間の補習系のオンライン教育サービスや学習塾にも厳しい規制がかけられ、各社は倒産するか業態転換をするかというところに追い込まれています。

いったい中国では何が起きているのでしょうか。そして、肝心の子どもたちはどうしているのでしょうか。

 

「vol.084:テンセント帝国の終わりの始まり。ゲーム業界に起きている大きな地殻変動」で、ゲーム規制についてご紹介しました。国営メディア筋の経済参考報が、「精神アヘンが数千億元の市場に成長」と題した記事を掲載し、その日のうちにテンセントが未成年のゲーム時間の規制強化を発表したところ、問題の記事が「ネットゲームが数千億元の市場に成長」と改題され、本文中の「精神アヘン」「電子薬物」という刺激的な表現が削除されたというものです。民間メディアではなく、国営メディアの論評であったため、この記事は政府からのメッセージだったと見る人もいます。というより、多くの中国人はそう受け止めました。だから、テンセントも当日のうちに規制強化策(平日1時間、週末2時間)を発表したのです。

そして、記事が穏やかな内容に差し替えられたということは、政府はテンセントの発表に一定の満足をしたというメッセージだと受け止めらました。

しかし、中国政府はさらに厳しい規制に乗り出したのです。コンテンツの規制を行う国家新聞出版署は、各ゲーム企業に通達を出し、未成年は、平日はゲーム禁止、週末の金土日および祝日の午後8時から午後9時の間の1時間しかオンラインゲームができないようにする仕組みを導入することを求めました。

 

この規制に、日本人の多くの人が厳しすぎるという感覚を持つのではないでしょうか。あるいは、ゲーム時間を制限するのは親が家庭ごとの教育方針に基づいて行うことであり、政府が規制するべきものではないという意見が普通の民主的な国の感覚だと思います。

しかし、意外にも中国の親たちの大半はこの規制に肯定的です。私たちの感覚からは想像がつかないほど「学生の本分は勉学」という意識が強いのです。朝起きて学校に行き、授業が終わると少年宮という未成年用のカルチャーセンターのような場所に行き課外活動をし、それが終わると夕食を食べて、山のように出ている宿題をこなす。あとは寝るだけという生活で、日本の受験生の生活が大学を卒業するまで続く感覚です。

その中で、スマホゲームは唯一といってもいい楽しみでした。それが制限されることに、子どもたちは悲痛な声をあげているようです。SNSには、オンラインゲームにアクセスできずに泣き喚く子どもたちの動画が続々とあげられています。

この制限は新学年が始まる9月1日から実施をされました。子どもたちにとってみれば、9月1日と2日はゲームができず、ようやく3日金曜日の午後8時になって1時間だけゲームができるようになります。ところが、テンセントの人気ゲーム「王者栄耀」は、あまりにアクセスが殺到したため、サーバーが落ちてしまいました。回復をした頃には、終了時間の午後9時になっていました。再び、子どもたちは悲痛な声をあげることになりました。テンセントはさすがに申し訳ないと思ったのか、公式に謝罪をし、有料アイテムを全員に配布しました。

 

といってもしたたかな子どもたちもいます。制限を受けているのはオンラインゲームであって、ローカルに保存されるスタンドアロン型のゲームは対象外です。そちらの方にシフトをした子どもも多いようです。

また、制限を潜り抜ける方法がすでにいくつもネットに出回っています。テンセントの場合、ネットゲームのアカウントをつくるのに、身分証の登録と顔認証が要求されるようになっています。これにより、未成年を見分けるわけです。頭のいい子どもは同居の祖父などにアカウントをつくってもらい、ゲームをするときは祖父のところに行き、顔認証をしてもらうという方法を使っているようです。父親と母親はさすがにそういう協力はしてくれないので、祖父か祖母に甘えるのだと思います。

また、パブリックVPN(Virtual Private Network)を使って、海外からのアクセスだと偽装をすれば、海外ユーザーには年齢による制限はないので、好きなだけ遊べるようになります。

テンセントはこのような回避法も把握をしていて、今後、アカウントの凍結などをしていく予定ですが、しばらくの間はいたちごっこが続きそうです。

 

この制限により、ゲーム市場は大きな影響を受けざるを得ません。「2021スマホゲームユーザー洞察報告」(QuestMobile)によると、スマホゲームのユーザーのうち未成年(18歳以下)は15.7%で、課金ユーザーのうちの未成年も13.2%います。週末しかできないというのであれば、ゲーム以外の楽しみを見つける未成年もいるでしょうし、ましてや課金をする未成年はほとんどいなくなる可能性があります。未成年の課金は額が小さめであることを考慮しても、ゲームの収益の1割前後は落ち込むことになります。未成年といっても、ゲーム市場にとっては重要な顧客だったのです。

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スマホゲームユーザーの年齢構成。幅広い年齢層に広がっているものの未成年は15.7%もいる。課金ユーザーに占める割合も13.2%で、このほとんどが消えてなくなると見られている。「2021スマホゲームユーザー洞察報告」(QuestMobile)より作成。

 

実際、中国では小学生ぐらいでもスマホを持っている子どもは珍しくありません。下校時間になると、学校の帰りに子どもたちが街角に集まって、王者栄耀に興じている光景はよく見かけます。

「2020年全国未成年インターネット使用状況研究報告」(中国インターネット情報センターCNNIC)によると、未成年人口(6歳から18歳)は1.83億人で、インターネット普及率は94.9%に達しています。小学1年生から高校3年生までの95%がネットにアクセスできる状況にあるのです。しかも、自分専用のアクセスデバイスを持っている未成年の割合は82.9%もあります。

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▲中国の未成年のインターネット普及状況。小学生でも92.1%がインターネットにアクセスできる環境を持っている。学校にもアクセスできる環境が整っているため、100%の子どもがネットを使える環境にある。「2020年全国未成年インターネット使用状況研究報告」(CNNIC)より作成。

 

実際、中国の今の子どもたちは物心つく前にスマホに触れています。親がスマホを買い替えて不要になったスマホをおもちゃ代わりに与えるからです。SIMカードは抜いてしまうため、Wi-Fi経由でしか利用できませんが、ゲームをしたり、動画を見たりするにはじゅうぶんです。そして、小学生の間に、SIMカードの契約をしてスマホとして利用するようになります。スマホはゲームだけでなく、学習ツールとしても使われるため、小学生のうちから使うのが一般的になっています。

では、小学生にスマホをもたせて、どのように使われているのでしょうか。今回は、今どきの子どもたちのインターネットの世界をご紹介します。

 

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