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広がるサードパーティー製インプットメソッド(漢字入力)。人気の理由は音声入力とAI機能

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今回は、入力メソッドについてご紹介します。いわゆる日本のかな漢字変換にあたるものです。

 

ところで、最近の中国のネットスラングでyydsという言葉をご存知でしょうか。これは「神ってる」「永遠の神」のような意味で、誰かを賛辞する時に使います。

なぜyydsなのかというと、「永遠的神」が、中国語のピンイン表記ではyong yuan de shenになるため、その頭文字をとったものです。日本人にはなにか複雑な成り立ちに感じますが、中国人であればピンインには慣れているので、成り立ちを聞けば、1回で覚えてしまうと思います。

 

このようなネットスラングの発信源となっているのは、動画共有サイト「ビリビリ」です。yydsが生まれたのもビリビリでした。

中国と韓国ではeスポーツが盛んで、特に人気があるのがLoLリーグ・オブ・レジェンド)です。中国にはLPL(LoLプロリーグ)、韓国にはLCK(LoLチャンピオンズ・コリア)というプロリーグがあり、この2つが世界最高峰のリーグとも言われ、中国チーム対韓国チームの対戦ライブ中継は1億人以上の視聴者が集まるほどになっています。

そのLPLの中でも圧倒的な強さを持っているのが、RNG(ロイヤル・ネバー・ギブアップ)というチームで、その中心選手がUzi(ウズ)でした。2020年にUziが引退をすると、RNGの戦績は如実に落ちてしまい、現在、再び強豪の座を取り戻すため、チームを再構築中です。

スタープレイヤーだったUziは、知名度を生かしてビリビリなどのライブ配信主として活躍しています。eスポーツファンにとっては神様のような存在で、Uziライブ配信では「Uzi、永遠的神!」という弾幕が大量に流れます。

この永遠的神が、文字の美しさから「永遠滴神」(発音はほぼ同じ)になり、さらには頭文字を取ってyydsと表記されるようになりました。

これが広まって、SNSや中国版TikTok「抖音」の中では、何かに最大の賛辞を送る時にはyydsという言葉が使われるようになっています。

 

また、同じパターンで、よく使われるのがxswl、nsddです。いずれも笑死我了(xiao si wo le、笑える、受ける)、儞説的対(ni shuo de dui、あなたの言うとおり、そのとおり)の略です。

さらにこのようなスラングは、複雑化をしていきます。nbcsは「誰も気にしないよ」「どうでもいい」の意味ですが、nobody caresの略なのだそうです。

また、もっと複雑なものもあります。bblは「お願い」「頼む」などの意味ですが、中国語では求求了(qiu qiu le)なのですが、これが同じ音の「球球了」になり、これを英語に置き換えて、ball ball leの略なのです。

つまり、スラングですから、すぐにわかってしまうのは面白くない。特に大人のおじさんやおばさんが不思議がっている方が面白い、若い世代でもネットに疎いやつはわからないのが面白い。そういう理由で複雑化をしているようです。

 

しかし、このようなスラングは、ずっと以前から存在をしています。インターネットにアクセスをするツールがPCしかない時代にすでにmmという言葉が盛んに使われていました。若い女性に呼びかける時に使う言葉です。

中国では21世紀になったあたりから、「若い女性をなんと呼ぶか」問題が起きていました。毛沢東時代は、建前上、男女の区別、身分の上下もないので、誰を呼ぶのにも「同志」(トンジー)が使われました。しかし、改革開放時代になると、同志ではいかにもおかしい。

そこで、若い女性に呼びかける時に「小姐」(シャオジエ)が使われるようになりました。元々は、中国の南方のお金持ちの箱入りのお嬢様を指す言葉です。しかし、すぐに男性の横に座ってお酒を注ぐ、あるいはもっと直接的なサービスを提供する女性が小姐と呼ばれるようになり、この言葉の持つイメージは悪くなっていきました。

普通の飲食店や小売店で、女性スタッフに声をかける時に「小姐」と呼びかけると、「私は小姐なんかじゃない」と怒る人も現れるようになりました。では、なんと呼べばいいのか。服務員(フーウーユエン)=スタッフと呼ぶべきだということになりました。男性でも女性でもスタッフに声をかける時は服務員で、今、小姐を使う人はまずいません。保証はできませんが、今、小姐という言葉を使うと、怒られるどころか、一周回って「久しぶりにその言葉を聞いた」と面白がられるかもしれません。

しかし、服務員という言葉では味気も親しみもありません。そこで、「妹妹」(メイメイ)という呼びかけが使われるようになりました。しかし、この言葉は少し距離が近すぎるニュアンスがあって、店舗スタッフを呼びかけるには多少座りの悪い言葉です。そこで「小妹妹」(シャオメイメイ)を使う人もいます。

ネットでも、女性に呼びかける時や、女性を表すときに「妹妹」が使われ始めましたが、やはり落ち着きが悪い言葉です。年上の女性を呼びかける時に使うと、多少、上目線の失礼な感じもあります。そこで、誰が考えたのかわかりませんが、「美眉」が使われるようになりました。音の上げ下げは異なるものの、読み方は「メイメイ」で同じです。しかも、美しい女性のイメージをうまく掬い取っている感覚の言葉で一気に広まりました。この美眉が次第にmmと表記されるようになりました。

この他、名詞もどんどん英文字化されています。例えば、SNSのWeChatは中国では「微信」(ウェイシン、weixin)なので、wxと書かれます。中国語の文章の中に、唐突にwxと使うわけです。アリペイの中国名は支付宝(zhifubao)なのでzfbとなります。

 

このような英語の短縮語が広く使われるようになっているのは、PCやスマートフォンのインプットメソッド(日本のかな漢字変換)の影響が小さくありません。入力方法はさまざまありますが、拼音入力が一般的です。拼音入力は、英文字キーボードを使って、音のローマ字表記である拼音を入力し、漢字に変化をするというものです。

しかし、近年、この拼音入力を使う人が次第に減り始めています。ひとつの理由は音声入力の精度が非常に上がってきたことです。特に、今ではスマホでもテレビやスピーカーのようなデバイスでも、AI音声アシスタントが搭載されているのが当たり前になり、音声で命令をしたり、調べ物をすることが増えてきました。

もうひとつが、インプットメソッドが進化をし、各社がAIを活用したさまざま便利な機能を搭載しています。これを利用する人も増えています。

そこで、今回は、中国のインプットメソッドの現状と、どのような機能があるのかをご紹介します。

 

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