中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

減収に転じた中国ATMメーカー。活路は海外

QRコード方式スマホ決済「アリペイ」「WeChatペイ」が、決済手段の主役となり、ATMメーカーの凋落ぶりが決算数字にもはっきりと現れるようになった。生き残りのための活路は海外しかないと愛范児が報じた。

 

電子決済比率が増えても減らないATMの出荷台数

電子決済社会が進展して、いちばん困る業界は、ATM(現金自動預け払い機)メーカーだろう。しかし、日本のATM国内出荷台数は高止まりをしていて、少なくとも統計からは、ATMメーカーの堅調ぶりがうかがえる。

日本の電子決済化が進展してしないわけではない。POSレジ端末とカード決済端末の出荷台数も順調に伸びているからだ。

ATMは毎年7万台も出荷されているが、市中のATMの数が増えているというわけではなく、置き換えが起こっている。街中の銀行ATMコーナーは減少し、ショッピングモール、コンビニなどの店内ATMが増えている。お金を預ける、出す場所ではなく、お金を使う場所に設置されるようになっている。

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▲日本のATM出荷台数。電子決済が普及する中で、毎年7万台以上のATMが出荷されている。ショッピングモール、駅など銀行のATMコーナー以外の場所への設置が増えているため。JEITA電子情報技術産業協会)の統計より作成。

 

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▲ATMの出荷台数が減少しない一方、電子決済に必要なPOSレジ端末、カード決済端末の出荷台数も増えている。この業界は、現金決済関連、電子決済関連の両方で成長をしているが、個人消費が伸び悩んでいる今、小売業の負担増につながっている。JEITA電子情報技術産業協会)の統計より作成。

 

ソフトランディングする日本、ハードランディングする中国

これが日本スタイルの変革だ。旧産業が突然凋落して、次の新産業に置き換えられるのではなく、旧産業が成長はしないものの堅調に推移をし、同時に新産業が成長する。不幸になる人が最も少ないソフトランディングだ。これは素晴らしい日本の知恵であるかもしれない。

ただし、唯一の欠点はスピード感に欠けることだ。従来は、国内だけであれば大きな問題にならないが、国際競争をしなければいけない今、そのスピードの遅さが国際競争力の足かせとなっている。

一方で、たくさんの不幸な人を生みながら、劇的に変革してしまうのが中国だ。昨年、いよいよATMメーカーの急落ぶりがはっきりと財務状況に現れた。

tamakino.hatenablog.com

 

ATM大手メーカーはいずれも30%程度の売上減

中国のATMメーカーは、「卸銀科技」と「広電運通」の2社が大手。2017年の財務報告では、2社とも大幅に営業収入が減少している。卸銀科技の営業収入は5.6億元だったが、これは昨年から27.27%も減少をした。広電運通の営業収入は16.2億元。これも昨年から30%も減少している。

理由は明らかで、都市での決済手段のほとんどが、QRコード方式スマホ決済「アリペイ」「WeChatペイ」になったため、現金を引き出す人が激減したため、新規にATMを設置する需要がほとんどなくなったからだ。

この2社は、大手であり、まだ体力があるため、営業収入の大幅減少といった程度で済んでいるが、小さなメーカーではすでに倒産、倒産状態のところも増えている。例えば、北京の維珍創意科技は、2016年の営業収入が1.1億元(約19億円)と急成長した企業だが、2017年は4300万元(約7億4200万円)と、営業収入が60%も減少し、大規模リストラを考えないと、会社が持たないところまできている。

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▲中国のATMの典型的な例は、銀行の入り口横の路上に面した壁に設置するもの。防犯のため覆いがつけられている。中国のATM業界は完全に失速したことが明らかになった。

 

完全に飽和したATM市場

このようなATMメーカーの中には、技術を生かして、スマホ決済関連のPOSレジ、支払い端末(例えば映画を検索してチケットを購入、決済できる情報端末)などを開発しているが、ほとんど売れず、研究開発費の無駄遣いに終わっているのが現状だ。スマホ決済関連の機械を開発しても、同じことがスマホアプリでできてしまい、そっちの方が便利なので、誰も機械を購入しないからだ。

また、本業のATMも価格競争が厳しくなっている。各メーカーが、市場が狭まっていることから、価格を下げて生き残ろうと図るからだ。

中国国内のATMは、2011年から本格普及が始まり、2015年に90万台を超え、そこで成長が止まった。現在でも毎年3%程度増えてはいるものの、日本と同じように、モール内などに設置される需要が主体で、初期に設置されたATMが耐用年数を迎えるとともに廃止されていくだろうから、2018年頃からは設置台数も減少に転ずるのではないかと見られている。

tamakino.hatenablog.com

 

活路は海外。海外比率50%を越えられないメーカーは消える

ATMメーカーも技術開発は行なっている。指紋認証、顔認証なども技術も投入しているが、そもそも現金の使用率が激減しているのだから、これといった妙手がなく、各メーカーはすでに国内市場をあきらめ、海外市場に活路を求めようとしている。

広電運通はすでに営業収入の35.56%が海外市場からの収入で、2016年には全体の10.36%でしかなかった。全体の収入が減少していることもあるが、急速の海外市場からの収入が増えている。

専門家によると、今年、来年で、海外収入比率を50%以上に高めることができないATMメーカーは、市場から消えていくことになるという。

愛范児は、中国国内で衰退する企業は「塀の中で開いた花は、塀の外まで香る」という中国の故事成語を思い出し、国内市場にこだわるのではなく、海外市場に積極的に活路を求めるべきだと提言している。

日本の「花」は、アジア圏だけでなく、欧米、中東まで香っている。日本の衰退産業企業は塀の外に出ていくことができるだろうか。

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