アリババのジャック・マー会長が、以前から「無人スーパーを開業する」と公言していたが、中国ネットワーカーからは「ホラ吹き」とまで言われるほど実現が疑問視されていた。しかし、7月8日、浙江省杭州市の杭州博覧センター内に「アリババ無人販売店」=無人スーパーが正式営業を始め、入場待ちの行列ができるほどの盛況だったと捜狐が報じた。
レジ処理不要のスタッフレススーパーは大盛況
杭州市に開業したアリババ無人販売店の一号店は、広さ約200平米で、同時に50人が買い物ができる。入り口には自動改札があり、スマートフォンに表示したECサイト「タオバオ」またはアリペイのQRコードをかざすことで入場ができる。
驚くのは、レジがなく、精算処理が不要なことだ。自分で商品を選び、そのまま、精算用の通路を通るだけで、外に出られる。購入した商品が自動認識され、代金はアリペイから自動的に引き落とされる。
ジャック・マー会長は、以前から「Amazon Goよりも先進的な無人スーパーを開業する」と発言していたが、中国ネットワーカーたちからは、「無理だ」「ジャック・マーはホラを吹いている」と揶揄されていた。しかし、突如、その無謀な計画を実現したため、ネットワーカーたちは一転して「小売業の革命が起こった!」と絶賛することになった。
▲アリババ無人販売店の様子。スマートフォンを使って、改札を通ることで、入場できる。奥にはカフェなども併設されている。同時に約50人が買い物ができる。
アリババが開発し、ワハハが販路を広げるTakeGo技術
この無人スーパーで使われている精算システムは、TakeGoと呼ばれ、深蘭科技が開発したものだ。スーパーの営業主体は、中国飲料メーカー最大手の哇哈哈(ワハハ)。約7000社の販売代理店と契約する巨大企業で、このチャンネルを通じて、TakeGo無人レジ技術を販売していく。数年内に2000店舗の無人スーパー開業を目指している。
TakeGo技術は、まだ発展途上にある。商品の識別はRFIDタグ(近距離無線タグ)で行うが、来店客の識別は、監視カメラによる顔認識で行う。そのため、商品棚やイートインの椅子、テーブルなどあらゆるところにカメラが設置されている。
最大の問題は、精算処理に数秒がかかることで、精算専用通路を歩かせるのは、歩いている時間で、処理に必要な時間を確保するための工夫だ。
▲精算は不要で、精算専用の通路を通って外に出る。精算処理には数秒かかるため、歩く時間で処理時間を確保している。外に出ると、自動的にアリペイから代金が引き落とされる。
人件費が高騰する中国で発揮される強い競争力
システムは大掛かりだが、それでも営業コストは同規模スーパーの1/4程度だという。商品補充スタッフ、管理スタッフなどは、1人で10店舗を担当できる上、レジ要員が不要となるためだ。特に、現在の中国では、レジ要員のコストが最低でも一月5000元(約8万3000円)は必要で、毎年20%程度上昇し続け、この傾向は変わらないと見られている。人件費コストが上がれば上がるほど、無人スーパーは有人スーパーとの競争で優位に立てることになる。
この点がAmazon Goとコンセプトが異なっている点だ。Amazon Goは、レジに並ばなくていいというユーザー体験と、店内での行動を把握することで精密なマーケティングデータを取得することに主眼が置かれている。しかし、アリババ無人販売店は、人件費コストを抑えることで、競争力を高めることに主眼が置かれている。
先日、紹介した無人コンビニBingoboxも市民から歓迎され、これから中国は、無人店舗の時代に入っていく可能性がある。
▲購入は一般のスーパーと同じ。商品棚には、カメラが埋め込まれていて、常時、顔認識により、個人識別が行われている。商品はひとつひとつにRFIDタグがつけられている。
すぐ分かるスーパーマーケット使える計数ハンドプック (すぐ分かるスーパーマーケットハンドブック)
- 作者: 紙谷佳伸
- 出版社/メーカー: 商業界
- 発売日: 2016/11/11
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログを見る