中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

「5年後、誰もスマホを使わなくなっている」byジャック・マー

アリババが、アリペイエアーと呼ばれる新しいテクノロジーのデモ映像を公開した。小さなプロジェクターで手の平に映像が投影できるというもので、これと生体認証を組み合わせると、スマートフォンがなくても生活ができるようになる。5年後、誰もスマホを使わなくなっているかもしれないと話題になっていると凍海科技中心が報じた。

 

ホラを次々と実現していく「ホラ吹きジャック・マー」

中国では、アリババ会長ジャック・マーのことを、敬意を込めて「ホラ吹きジャック・マー」と呼ぶことがある。ジャック・マーは「銀行が自ら変わろうとしないのであれば、我々が変えてみせる」「Amazon Goよりも先に無人スーパーを実現する」など数々の「宣言」を口にし、その度にネットワーカーたちから「ホラ吹き」と苦笑された。

しかし、ジャック・マーはその数々のホラを実現していってしまうのだ。今では、ジャック・マーのことを「ホラ吹き」だと言ってバカにする人はいない。ネットワーカーたちが「ジャック・マーがまたホラを吹いた!」と言う時、それはかなりの確からしさで実現されるという期待と敬意が込められている。

そして、最新のジャック・マーのホラが「5年後、誰もスマホを使わなくなっている」という驚くべきもの。にわかに信じがたいが、ジャック・マーの発言だからと、中国のネットワーカーたちはざわついている。

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▲アリペイエアーでは、手のひらに映像が投影される。チップ経由でネットにも接続されているので、ここから電話をしたり、SNSにアクセスすることが可能。

 

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▲自転車に乗っても空中にナビゲーション映像が表示される。

 

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▲アリペイエアーの世界では、コンビニの冷蔵庫を開けると、商品にオーバーラップする形で、商品名や価格などが表示される。この商品を手にとると、決済が行われる。

 

手のひらに映像が投影されるアリペイエアー

スマホを不要にする新しいテクノロジーとは、アリペイエアーと呼ばれるもの。小さなプロジェクターで、空中に映像を表示することができる。つまり、スマホがなくても、手の平の上に映像を表示して、スマホと同じように操作ができると言うものだ。

さらに、指紋や顔認証、静脈といった生体認証でアリペイの支払いができるようになっている。コンビニでは、冷蔵庫のドアを開けて、ペットボトルに手を伸ばすと、そのペットボトルにオーバーラップされる形で、価格や商品情報が表示される。そのペットボトルを手にして、冷蔵庫の外に出すと、自動的にアリペイで支払いが完了する。

ユビキタス社会そのもので、スマートフォンは不要になる。これを5年以内に実現すると言うのだ。


如影计划@阿里巴巴支付宝

▲アリペイエアーのデモ映像。発表されたのは、昨年の4月1日。アリババのエイプリルフールネタだったが、アリババは過去、エイプリルフールネタを実現したことが何度かある。

 

アリペイエアーはエイプリルフールネタだったのか

このアリペイエアーについては、実によくできたデモ映像が公開されている。しかし、この映像が公開されたのは、2017年4月1日、エイプリルフールなのだ。

「なんだ、エイプリルフールネタか!」とがっかりするのは早い。アリババは、過去6年、毎年エイプリールには未来的な技術を発表してきた。網膜認証、指を触れることで送金できる技術、写真やタトゥーなどをパスワードとして使える技術、必要なものを近くの他人にすぐ借りることができるアリペイエブリホウェア、ARグラスなどのデモ動画を公開してきた。

このうち、写真パスワード、アリペイエブリホウェアは、現実にサービスを提供しているのだ。その他のテクノロジーにしても、ニーズが大きくないからサービスインしていないだけで、技術的にはやろうと思えばやれるレベルには到達している。

つまり、毎年4月1日にエイプリルフールネタを公開しておきながら、反応を見て、ニーズがあるようなら現実にサービスを始めてしまう。


马云点赞的未来智能餐厅 不用买单 起身就走

▲アリババが実現しているスマートレストラン。テーブルがタッチパネルになっており、メニューが表示される。ここからタッチをして注文をする。こちらはエイプリルフールネタではなく、すでに実現されているもの。

 

一部実現済みのアリペイエアー

アリペイエアーも、一部はすでに実現済みだ。「無感支払い」と呼ばれる顔認証技術がいろいろなところですでに使われている。駐車場では、運転手の顔認証と自動車のナンバーを読み取って、停車するだけで決済が行われ、バーが開閉する。ケンタッキーフライドチキンと共同で杭州市にオープンしたレストランKProでは、顔認証で支払いができ、スマートフォンは不要だ。

アリペイエアーも、プロジェクターをどうするかという問題あるが、実現しようと思えば、実現できるところまではきているのだ。

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▲すでに実現されている無感支払い駐車場。ドライバーの顔認証とナンバー読み取りで、アリペイで決済され、バーが開く。

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未来は、想像よりも近いところにある

でも、こんな未来社会が本当にやってくるのだろうか。未来は、私たちの想像よりもずっと近いところにある。10年前、日本の評論家、識者と呼ばれる人たちは、アップルが発売したiPhoneを見て、「このようなものは、日本では主流にはならない」と口を揃えた。日本人は物理キーで文字入力することを好むし、日本のケータイはiPhoneよりもはるかに高性能、高機能だからという理由だった。しかし、わずか10年で、スマートフォンが生活の中心になり、ビジネスの考え方も180度変わった。

アリババは、3年前、「アリペイスマート都市の未来生活」というコンセプト映像を公開した。日常生活のすべてでスマートフォンを使うようになり、アリペイで決済をするようになるという映像だった。それから3年、今ではコメント欄にこう書かれている。「ここで描かれていることはもう普通のことになったよね」。

5年後、ジャック・マーのホラは、また現実になっているかもしれない。


支付寶錢包中的智慧城市未来生活

▲アリババが3年前に公開した「アリペイ・スマート都市の未来生活」。当時は、未来的だと思われていたが、この世界はすでに実現されている。3年前、中国人でさえ、こんな生活が3年後に実現するとは誰も思っていなかった。