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アップルがiPhoneだけで撮影した新春映画「小蒜頭」。今年で7本目

アップルが今年の春節も恒例の新春映画を公式サイトで公開した。iPhoneだけで撮影したショートフィルムで、今年で7年目になる。映画として楽しまれるだけでなく、多くのクリエイターに勇気を与えていると映像麦客が報じた。

 

アップルが公開した7本目の新春ショート映画「小蒜頭」

アップルは毎年、中国の新年である春節に、10分から15分程度のショートフィルムを公開している。今年は「小蒜頭」(シャオスワントウ、Little Garlic)だった。ハリウッドで「アメージング・スパイダーマン」などを監督したマーク・ウェブが監督を務めた。脚本家、俳優も中国では著名な人を起用するという本格的な映画だ。これが春節の間、アップルの中国公式サイトで無料で視聴することができる。この試みは2018年から毎年行われていて、今年で7本目になる。

▲今年の映画は「小蒜頭」。鼻が丸いことにコンプレクスを感じている少女が、自分を見失い、そして自分を取り戻すまでを描いた物語だ。


www.youtube.com

▲アップル公式チャンネルで公開されている「小蒜頭」。言語は中国語、字幕は英語のみ。

 

「自分以外の誰かになりたい」SNS時代のファンタジー

この「小蒜頭」は、鼻が丸いことを気にしている少女の物語だ。一緒に暮らしている祖父は、その少女の鼻を「ニンニクちゃん」と呼んで愛しているが、少女はその鼻のせいで人から好かれないと気にしている。学校でもいじめられたりしているが、それも鼻のせいだと思い、自分ではない誰かになりたいと願うようになる。

その願いがかなってしまった。少女は自分のなりたい人物に変身する能力を身につけてしまうという奇跡が起きた。成人した少女は、イケてる女性に変身をして都会の生活を楽しんでいた。しかし、今度は、本来の自分に戻ることができなくなってしまう。SNSにポジティブな面だけを投稿し、本来の自分を失ってしまうという現代の感覚を題材にしている。

▲祖父と二人で暮らす少女。少女は鼻が丸いことを気にし、自分の容姿にコンプレクスを持っているが、祖父はそれが愛らしいと少女に愛情を注いでいた。

▲大人になった少女に、なりたい自分に変身できる能力を身につけるという奇跡が起きる。少女は都会生活を満喫するようになる。

 

iPhoneだけで撮影された映画

このアップルの新春映画に共通をしているのは、すべてがiPhoneで撮影されているということだ。今年の「小蒜頭」は、3台のiPhone 15 ProMaxが使用された。スタビライザーなどの器具は使うものの、撮影はiPhoneだけであり、編集や特殊効果もiPhoneアプリMacBookで行われる。

中国やハリウッドの著名な映画監督が、スマホ撮影に挑戦するということも、見どころのひとつになっている。

▲撮影はすべてiPhone ProMaxで行われた。

 

変身シーンは役者が場所を入れ替える

そのため、クラシックな撮影トリックも多用される。次のシーンはその典型だ。右側の女性は少女が変身した後のイケてる女性、左側にしゃがんでいるのが主人公の少女だ。変身後の女性が本来の姿に戻るシーンを、特殊効果なしで実現している。

変身後の女性が右手を伸ばして饅頭をつかむ。この饅頭をつかむ手のクローズアップで、少女の手と入れ替えて、カメラアングルの外で、体の位置も入れ替え、元の姿に戻るというシーンを撮影している。

▲人が変身するシーンでは、2人の役者がアングルの外で体を入れ替えるというシンプルなトリックが使われた。

 

監督もiPhoneを持って走る

少女が走るシーンでは、ハリウッドの大監督が、iPhoneを手に持って、一緒に走って撮影をする。iPhoneの手ぶれ補正があるために、これでもじゅうぶん安定した映像が撮影できる。それどころか、走っている感覚を表現するために、手ぶれ補正の度合いを何度も調整して撮影し直したほどだという。

▲少女が疾走するシーンでは、マーク・ウェブ監督がiPhoneを持ち、自分でも走るというやり方で撮影された。

▲用意された3台のiPhone ProMax。この他、撮影を中断させないため、モバイルバッテリーも大量に用意sれた。

▲フォーカスを人から人へ移動させるシーンでは、指でフォーカスを指定するというiPhoneの機能そのものを使って撮影された。

▲ボールにiPhoneをガムテで貼り付けて、従来にない視点での映像づくりに挑戦するマーク・ウェブ監督。

iPhoneは小さく薄いので、どこにでも設置できる。従来にはないアングルのシーンが撮影できる。

 

中国で毎年楽しみにされているアップルの新春映画

このショートフィルムが映画館で上映をするのであれば、プロ用機材にはまだ及ばない点もあるのかもしれない。しかし、iPhoneは非常に小さく、棒の先につければ今までになかったアングルの撮影ができ、ドローンにだって装着することができる。それでいて、ウェブやスマートフォンで見る限りは、画質の問題は感じない。

多くの人は、毎年、感動させてくれたり、共感させてくれるアップルの新春映画を楽しみにしているが、学生やクリエイターたちは、毎年「このシーンはどうやって撮影したのだろうか」と考えながら、楽しむようになっている。なぜなら、同じレベルの作品は、情熱さえあれば、今すぐ自分も撮影できるはずだからだ。アップルは映画をも再定義しようとしている。

 

ロボトラックはなぜ失速をしたのか。物流の無人化に抵抗する人々

自動運転の時代が個人所有の乗用車から始まっている。テスラやファーウェイが自動運転システムを販売し、利用者数が増え続けている。一方、物流のロボトラックは技術は成熟をしているのに普及が始まらない。ロボトラックを拒む人たちがいるからだと遠川汽車評論が報じた。

 

自動運転の時代が始まっている

自動運転の時代が始まろうとしている。米テスラは、L2自動運転に相当する自動運転システム「FSD」(Full Self Driving)を、2021年末の段階で6万台以上販売した。中国ファーウェイのADS(Advanced intelligent Driving System)もセレスAITOの問界シリーズへの提供を始め、すでに個人がL2+と呼ばれる自動運転を利用し始めている。

L2+自動運転と呼ばれるのは、あくまでも人間が運転主体となり、自動車側から介入を求められたらすぐに対応できる状態でなければならないというものだが、FSDもADSも、ユーザーのレビュー映像や自動車メディアの路上レビューを見る限り、都市部の環境では90%以上の時間を運転を自動車に任せられるようになっている。

さらにL4自動運転では、百度北京市などで無人運転ロボタクシーの営業運転を始め、深圳市などではAutoXが試験営業を始めている。

 

一方、進まない物流トラックの自動運転

乗用車の自動運転は、いよいよ社会実装される段階に入ってきたが、当初、自動運転は乗用車よりも物流トラックにいち早く導入できるのでないかと言われていた。それは乗用車に比べて技術的難易度が低いからだ。

物流トラックは、ほぼ固定されたルートを走行する。しかも、その多くが高速道路という、整備され、人や自転車は入ってこない環境が確保されている。難しいのは、制動距離が長いために、LiDARなどで遠方の状況を把握し、早めに走行戦略を立てる必要があるが、それもLiDARの技術革新などで乗り越えることが可能になっている。

▲高速道路の走行は、もはや自動運転でまったく問題がなくなっている。

▲LiDARで外界の対象物を察知し、運転戦略を立てる。



2人体制のトラックを自動運転+1人に

一般道や高速の料金所などの走行は難易度が高い一方で、長距離トラックは運転手が2人体制が標準になっている。1人の運転手が20時間、30時間の運転を連続して行うことは法的に許されていないため、交代で運転をすることになる。これを人間2人ではなく、自動運転と人間の組み合わせにし、難易度の高い部分は人間が運転をするようにすることもできる。

さらに、高速道路部分はロボトラックによる無人運転、高速以外の部分を人間という分担をすれば、出荷側で人間が高速道路まで運転し、高速は人が乗務しない無人自動運転、納入側では別の人間が倉庫まで運転をするという効率的な分担も可能になる。

しかし、なぜかロボトラックの実用化は遅れている。何が問題になっているのだろうか。

▲上のグラフは運転手2人体制のもの。休憩のたびに運転を交代する。下は運転手1人と自動運転のもの。高速道路までは道が複雑であるため人が運転し、高速道路では自動運転を行う。人は休憩するか、別の業務ができる。

 

米国の安全保障と反感から図森未来が上場廃止

ロボトラック失速の象徴的な出来事が、2024年1月に、米カリフォルニア州の中国系企業「図森未来」(TuSimple)がナスダックからの上場廃止をする方針を表明したことだ。TuSimpleは2021年4月にナスダック上場を果たしたが、一時は投資資金が集まり株価を上げる局面もあったものの、2022年に入ってから株価は下落を続け、ここにきて上場廃止を考えるところまで追い込まれた。

TuSimpleの経営が苦しくなった背景には、米国の厳しい調査があった。TuSimpleに最も投資をしているのは、中国のポータルサイト「新浪」(シンラン)であり、共同創業者2人も中国人。それがカリフォルニア州で創業することに、米政府は警戒感を抱いた。自動運転関連の米企業を買収などして、そのデータや技術を中国に移転する可能性があるのではないかという疑いだ。上場の前から、対米外国投資委員会(CFIUS)は、TuSimpleに対する調査を開始している。

その結果、TuSimpleと米政府は安全保障協定を締結した。TuSimpleの米国人チームと中国人チームは分離をされ、また取締役会から中国人が追い出され、すべて米国人かカナダ人となった。また、CFIUSに対して定期的な内情報告をすることも義務付けられた。

しかし、その後も、CFIUSの調査が入ることがあり、多くの投資家がリスクを感じるようになった。これによりTuSimpleの株価は低迷をすることになる。

また、米国人の中には自動運転に対して反感を持つ人たちがいて、これもTuSimpleには逆風となった。2023年5月、カリフォルニア州議会は、自動運転トラックには安全監視員の乗務を義務付ける法案を可決した。つまり、無人運転が技術的に可能になっても、運転技術を持った人間を乗せなければならないのだ。これでTuSimpleだけでなく、多くのロボトラック企業が行き詰まってしまった。

▲図森未来のロボトラック。技術的には成熟をしたが、市場が獲得できず、普及できていない。

▲図森未来の株価。対米外国投資委員会の調査が入るようになると、投資家の不安が高まり、株価が下がり続けてしまった。現在は上場廃止を検討している。

 

中国は7割が個人所有の物流トラック

2021年にTuSimpleがナスダック上場を果たすと、中国でもロボトラック開発企業が次々と生まれ、ロボトラックブームが訪れた。技術面では目覚ましい成果があったものの、ビジネス面ではまったくと言っていいほど進展がない。

中国では、約850万台の物流トラックが走っているが、その7割に当たる590万台は個人所有だ。個人で借金をするなどしてトラックを購入し、物流企業から仕事を請け負う。夫婦や兄弟であることが多く、長距離であっても、交代で運転をして荷物を運ぶ。企業がトラックを購入し、運転手を雇用するという組織化された物流トラックはわずか3割でしかない。

このような個人の自営業者がロボトラックを購入するだろうか。自分の仕事をなくしてしまうようなロボトラックに、通常のトラックの数倍もの資金を借金してまで注ぎ込む人はいない。ロボトラック企業が顧客にできるのは3割の大手物流企業であり、そこも自社トラックでは物流の増減に対応ができないため、自営業者を活用している。つまり、中国ではロボトラックの市場が非常に小さいのだ。

▲ロボトラックは、港湾、鉱山などの閉鎖区間では盛んに用いられるようになっている。運転手が不要になり、人件費が圧縮できるだけでなく、人の事故のリスクがなくなるからだ。

 

「運転手の仕事を奪う」反感に阻まれているロボトラック

このような市場状況は、米国でも似たところがあり、米国で起きている自動運転への反感の根っこにあるのは「運転手の仕事を奪う」という事実だ。数年前まで、自動運転は未来の夢物語にすぎなかったが、今ではテスラやAITOが街中を走るようになっている。ロボトラックも試験走行ではじゅうぶんすぎる成果を出しており、自動運転が現実のものとして捉えられるようになっている。それだけに、リアルな反発も起き始めている。

技術的に成熟をしたロボトラックは、この社会実装の段階での課題に直面をしている。現在のところ、鮮やかな解決策は誰にも思いつけていない。

 

 

「つながらない権利」に関する裁判の行方。どこにいても、残業代を支給すべきだという判決

北京市で「つながらない権利」に関する裁判が行われ、多くの人の注目を集めている。時間外に業務上の対応をした場合は、残業代を支払うべきだという判決が出た。中国でも「つながらない権利」に対する認識が広がろうとしていると央視網が報じた。

 

つながらない権利に関する判決

「つながらない権利」に対する認識が世界中で広がっている。つながらない権利とは、時間外や休暇中に電話やメール、メッセージを拒否できる権利のことだ。各企業は、従業員のつながらない権利を認める、時間外には自動応答のメッセージが返信される仕組みを導入する、適切な担当者に自動転送される仕組みを導入するなどの対応を急いでいる。

中国でこの「つながらない権利」に関する裁判が行われ、北京市第三中級人民法廷は、時間外に連絡を受けることは残業にあたり、企業側に残業代として3万元(約60万円)を支払うという内容の判決を下した。

 

時間外での業務対応は残業にあたる

李さん(仮名)は、2019年にあるソフトウェア開発会社に入社し、プロダクトマネージャーを務めていた。李さんは会社側と不定時勤務の労働契約を結んでいたが、会社側はどのような状況が労働にあたるのかの定義を示さなかった。これが後々、大きな問題になる。

李さんが担当するプロダクトのWeChatグループがあり、そこには李さんの他、従業員、顧客などもメッセージを投稿してくる。そして、問題が大きければ「釘釘」(ディンディン)などのビデオ会議システムで話し合いをすることになっている。李さんはプロダクトマネージャーであるため、勤務時間外でも休日でも、WeChatグループに返信をし、ビデオ会議をしなければならなくなる。

李さんは、これが時間外残業にあたるとして、2019年12月21日から2020年12月11日までに勤務日残業140.6時間、休日残業397.9時間、法定休日残業57.3時間分の残業代を請求する訴訟を起こした。

▲裁判に提出されたWeChatのチャット記録。簡単な返答だけではなく、指示を出すなどしているため、業務にあたるとして残業代の支払いが命じられた。

 

簡単な返信は残業にはあたらない?

第一審では、「簡単なコミュニケーション」であり、残業にはあたらないとされ、労働契約が不定時勤務であったこともあり、残業とは認められないという判断だった。しかし、納得ができない李さんが上告をしたところ、二審では一転して残業が認められ、残業代の支払いが命じられた。

第二審では、不定時労働勤務であっても、労働者と企業側が勤務時間に関する合意をする必要があり、労働者が同意をしていない時間に業務が発生した場合は残業と認めるべきだとした。また、技術の発展により、労働をする場所がオフィスであるか、それ以外の場所であるかは問題にならないとした。また、ソーシャルメディアによるコミュニケーションは、双方向のメッセージ交換が求められ、さらには会社側から作業指示を受け、指示書の転送、人員の配置、指揮などを行っており、「簡単なコミュニケーション」の範囲を超えており、なおかつ周期性と固定性が認められ、労働にあたるとした。

 

武漢市でも24時間待機は残業にあたるとの判決

昨2023年10月には、武漢市洪山区法廷は別の訴訟に対し、従業員の残業を認め、残業代5000元を支払う命令を出している。原告は2021年7月から11月まで、業務が終わって帰宅をしても、24時間待機を会社から求められ、問題が発生した場合は対応をしなければならない状態だった。実際には午前2時に、WeChatで業務に関する打ち合わせをしたこともある。

これも「周期性と固定性が認められる」として業務だと判断され、残業代の支払いが命じられた。

 

つながらない権利の現実と理想のギャップ

しかし、「つながらない権利」を厳密に適用することは現実にそぐわないところがある。責任者の時間外に突発自体が発生した場合は、連絡を取らざるを得ず、責任者も対応をしなければならない。そのため、時間外であってもメッセージを送ることは認め、そのメッセージに対する返信、対応は従業員が自分の裁量で行える(多くの場合は出勤後)ルールを設定する。一方、内容によって従業員がどのような状況であってもすぐに返信、対応をしなければならない場合は時間外残業として認め、規定の残業代を支給するべきだという考え方が広がろうとしている。つまり、会社は、従業員がオフィスにいてもいなくても、拘束をしている時間に対して給与を支払うという考え方だ。

しかし、具体的にどのような状況が労働にあたるのか、労働時間をどう計測するのか、難しい課題がある。中国でも、「つながらない権利」が認知されようとしている。

 

 

解答を教えるのではなく、考え方を教えるAI先生。対話型AIを搭載した学習タブレット「有道X20」

対話型AIを搭載した学習タブレットが登場した。問題の解答をいきなり教えるのではなく、考え方をステップバイステップで示していき、生徒に考えさせるAI先生「小P先生」が搭載されているとCCTV財経が報じた。

 

対話型AIが先生の学習タブレット

教育用デジタルデバイスを開発している網易有道(ワンイー・ヨウダオ)は、2024年1月3日に、学習用タブレット「有道X20」の発売を発表した。このX20には対話型AI大規模言語モデル「子曰」(ズーユエ)が搭載され、そのアプリケーションとしてAI家庭教師「小P先生」が搭載されている。対話型AIにステップバイステップで教わりながら演習問題に挑戦ができるというものだ。

このような対話型AIを使った自習教材は、すでにいくつも存在するが、そのほとんどは中国語や英語などの言語学習に特化されていた。しかし、小P先生は英語、中国語だけでなく、数学、物理、化学、生物学、歴史、地理、情報、総合科学など、主要10科目に対応をしている。また、学年は幼稚園から高校までをカバーしている。

▲学習タブレット「有道X20」の製品発表会。考え方を教え導く対話型AI「小P先生」が搭載されている。

▲学習用タブレット「有道X20」。幼稚園から高校までの主要10科目の演習問題が内蔵されている。



ステップバイステップで教えてくれる「小P先生」

問題は、対話型AIの教え方だ。宿題の中でわからない問題を尋ねて、一気に解答と解法を教えてしまうのであれば、単なるアンチョコになってしまい、生徒は次第に考えることをしなくなり、対話型AIの回答を丸写しするようになってしまう。

小P先生はここが工夫をされている。例えば、次のような算数の問題を例に、小P先生がどう回答し、どう指導するかを見てみよう。

 

問:赤いビーズ2個、緑のビーズ3個、黄色のビーズ4個をこの順番で糸につなげていきます。600個目にくるビーズは何色ですか?

回答:この問題を解くには、ビーズの繋ぎ方にくり返しがあることに注目しましょう。最初に何個のビーズの組み合わせが繰り返していくのかを数え、それから600個の中に何回のくり返しがあるのかを考え、最後に600個目のビーズがこの繰り返しの中の何番目にあるのかを考えます。

繰り返しは赤2緑3黄色4ですから、繰り返しの数は2+3+4=9となり、9個のビーズの並びが繰り返していきます。次に600を9で割ると、600個目のビーズが何回目の繰り返しの中のどの位置であるかが求まります。このような方法で、600個目のビーズの色を決めることができます。

このような考え方で計算をしてみて、途中でわからなくなったり、もっと詳しく知りたくなったら、いつでも聞いてください。アドバイスをします。

おわかりだと思うが、全部を解説するのではなく、考え方しか解説をしない。ここが小P先生の最大の特徴になっている。

 

問:600個目のビーズになるまで何回繰り返しがあるのかはどうやって計算しますか?

回答:600個目のビーズまでに何回ビーズの繰り返しがあるかは、600を繰り返しの個数で割ることで求めることができます。

繰り返しの数は、2+3+4=9で9個でした。つまり、600を9で割ると繰り返しの数を求めることができます。

600÷9=66余り6

この計算結果から、600個目のビーズは67回目の繰り返しの中の6個目のビーズであることがわかります。9個のビーズの並びが繰り返していくのですから、66回目の繰り返しのところで、66×9=594個のビーズが並んでいることになります。次の67回目の繰り返しの6番目が600個目のビーズになります。

このような計算方法で、600個目のビーズの色を決めてください。途中で疑問があればいつでも質問してください。

 

問:600個目のビーズは黄色だと思います。正解ですか?

回答:この答えがあっているかどうかを確かめてみましょう。

これまでに繰り返しのビーズの数は9個であり、600を9で割ると答えは66で余り6ということから、600個目のビーズは67回目の繰り返しの6個目であるということがわかっています。

この繰り返しは、「赤赤緑緑緑黄黄黄黄」ですから、1個目から2個目は赤、3個目から5個目までが緑、6個目から9個目までが黄色になります。ここから、600個目のビーズは67回目の繰り返しの6個目ですから、黄色であるということが言えます。

あなたの回答した黄色は正解です。あなたの計算方法と考え方は正確です、素晴らしいです。別の問題にも挑戦したい場合は、いつでも私に尋ねてください。

問:ありがとうございます、先生。

回答:礼には及びません。他の問題に挑戦したかったり、助けが必要な時はいつでも尋ねてください。楽しく勉強できることを願っています。さようなら!

▲高校数学などについても、このような考え方を中心にした教え方をしてくれる。

 

対話型AIにより、考えさせるAI先生が登場した

おわかりの通り、いきなり解答まで示すのではなく、考え方や計算方法だけを示して、生徒に実際に考えさせ、手を動かさせる仕組みになっている。2年ほど前、「AI先生」と呼ばれるサービスが流行し、社会問題となったことがあった。それは、宿題の課題の写真を撮影すると、それを解析して、解法と回答を示してくれるというサービスだった。そのため、子どもたちは、その解答を丸写しして宿題を提出するようになり、学習の妨げになっていると教育界、親などから強い批判を浴びた。

この小P先生は、そこを踏まえて、いかに生徒に考えさせるかの工夫をしている。もちろん、宿題や問題集の問題をカメラで撮影して、その問題の解き方を教わることもできるようになっている。

この小P先生が搭載されたX20は、7126元(約14.9万円)という価格ながら、発売2ヶ月で15万台が売れるというヒット商品になっている。幼稚園から高校卒業まで使える学習デバイスと考えれば、親たちは決して高くないと考えているようだ。

▲すでに発売されていて、淘宝網などでは5999元(約12.4万円)で購入可能。

 

 

電気自動車EVはオワコンなのか?中国で克服されるEVの弱点

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明日、vol. 223が発行になります。

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今回は、中国EVがどこまで進んでいるかについてご紹介します。

 

「vol.215:BYDのEVは欧州市場で成功できるのか。スイスUBSの衝撃的なレポート」で、中国の電気自動車(EV)が欧州市場で大きなシェアを取る可能性があると予測するレポートをご紹介しました。BYDが低コストで高品質のEVを製造できる理由についてもご紹介しました。

このメルマガの内容を整理して、ビジネス+ITに「なぜBYDは世界を獲れた?「BYD・テスラ・VW」3車分解比較で判明、圧倒的コスパの秘密」(https://www.sbbit.jp/article/st/134787)という記事を書きました。これがYahoo!ニュースに転載をされ、たくさんの方からコメントをいただくことになりました。

その多くは「学びがあった」という好意的なもので、コメントをしてくださった方にはお礼を申し上げたいと思います。とても励みになります。

一方、批判的な意見もありました。その多くが「EVはもうオワコンになっているのに、この筆者は知らないのか?」というものです。EVの普及が踊り場に差し掛かっているのは事実ですが、「EVは失敗だった、終わった」というのはかなり極端な見方で、そう考えている人が多いことにかなり驚きました。

個人としてEVを選択するかどうかはまったくの自由です。EVが嫌だという人は燃料車やハイブリッド(HEV、PHEV)を買えばいいだけです。しかし、メディアまで「EVは失敗だった」と書き始めたことに二度驚きました。

例えば、「【言わんこっちゃない!】世界でEVの逆回転始まる!中国の弱点を攻めるトヨタの粘り勝ち」(https://carview.yahoo.co.jp/article/detail/722dd48536e4d8e7aa4b2ce62fedc5feb66bb89f/?page=4)などという記事もあります。

 

EVがオワコン、失敗と感じている方々は次のような事実を根拠にしているようです。

1)欧州市場において、ハイブリッド(HEV)の伸び率がEVの伸び率を上回った。

2)米国市場において、HEVがEVの販売台数を抜いた。

3)これによりトヨタのHEVが売れ、過去最高益を記録した。

4)1月、シカゴに寒波が襲来し、充電器が凍結し、多数のテスラ車が充電できず立ち往生した。

5)メルセデスベンツが2030年以降も燃料車を開発、販売すると方針転換した。

6)アップルがEVの開発を断念した。

 

欧州でEVの伸び率が鈍化をしたのは当然です。9月にはフランスでEV補助金の対象車の条件が厳格化されました。国内メーカーを守るため、中国EVを補助金対象から外すための措置だと言われています。また、12月にはドイツで補助金が1年前倒しで終了しました。補助金予算を新型コロナ対策費から支出していたことが、憲法裁判所によって違憲だと判断されたためです。

補助金が少なくなれば実質価格が高くなるのですから、伸び率が鈍化するのは当然です。それでもEVは前年よりも伸びているのです。あくまでも伸び率鈍化です。EU各国は新たなEV促進の枠組みを構築しなければならなくなっています。

 

アップルが自動車製造プロジェクト「タイタン」を放棄しましたが、「EVが売れていないから」という理由づけは、かなりピント外れの見方です。アップルがつくる自動車は、コアファンに向けた高級車になるはずで、EVが売れていようが売れていまいが、アップルカーの売れ行きにはほとんど影響しません。

2015年、腕時計をしない人が増える傾向が進んでいる時代に、アップルはアップルウォッチを発売しました。そして、腕時計としては驚異的な売れ行きを示しました。アップルウォッチは腕時計の形をしていますが、腕時計とは別物で、それがアップルのねらいなのです。アップルカーも同じように、EVには見えるけど、EVとはまったく別物という線をねらっていたはずです。「EVが売れていないからやめよう」などという発想はしないと思います。

 

アップルのタイタンプロジェクトはベールに包まれていて、その中身は誰にもわかりませんし、断念をした理由も誰もわかりません。しかし、報道から推測すると、EVということよりも自動運転の開発に行き詰まりを感じたようです。ティム・クックCEOは「自動運転技術が最も重要な根幹の技術であり、すべての人工知能プロジェクトの母だ」とコメントしたことがあります。つまり、アップルはアップルカーでAI人材を獲得し、そこからさまざまなAIプロジェクトを派生させようと考えていたようです。

アップルがやるのであれば、ハンドルもペダルもない、L5完全自動運転を目指したはずです。車というより、動く部屋でなければインパクトがありません。しかし、L5自動運転は技術的に無理なのではないかという見方が一般的になってきています。L5自動運転は砂漠やジャングルといったオフロードでも自動運転走行できなければなりません。オート三輪や歩行者が交通法規も守らずに飛び出してくる中国やインドの裏町も自動運転走行できなければなりません。あらゆる環境に対応できる完全自動運転というのは無理なのではないかと考えられるようになっています。

一方、「条件つき自動運転」であるL4はすでに実現できています。例えば、高速道路だけであるとか、キャンパスやマンション、公園などの閉鎖区域内であるとかです。また、シャトルバスのように固定ルートを走行する場合も実現できています。あらかじめ道路条件が限定できるため、ハンドルをなくした完全自動運転ができるわけです。

おそらく、アップルはここを悩んだのではないでしょうか。アップルカーが、遊園地の乗り物のように限定された区域しか走行できないものになるのか。どこでも走れるようにしようとするとハンドルをつける必要がある。どっちを選ぶべきなのかという議論が内部でされていたことでしょう。実際、断念報道の前には、L5自動運転を放棄して、テスラやファーウェイと同じL2+自動運転(人間が運転の主体となる自動運転)に方針転換をするのではないかという観測報道もありました。しかし、ハンドルとペダルがある一般的な自動車では、アップルのブランドイメージやミッションにそぐわないのだと思います。そこに莫大な資金を投じることは意味があるのかという話になり、だったら、最初から現実性のあるAIプロジェクトに直接投資をした方がいいということになったのではないかと思います。アップルが断念をしたのは完全自動運転であって、EVであるかどうかは問題ではなかったと思います。

 

EVの欠点と言われているのは次のようなものです。

1)充電ステーションが少なくて充電できない

2)航続距離が短い

3)火力発電でつくった電気で走ってもエコじゃない

4)充電に時間がかかる

5)寒冷地では出力が落ちて使い物にならない

6)自然発火をするので危険

7)バッテリーが劣化をしてエコじゃない

8)製造とリサイクルの過程で大量の二酸化炭素を排出するのでエコじゃない

 

EVにはこのような問題があるのは事実ですが、EV先進国(もはやそう言っていいかと思います)である中国では、すでにこのような課題に対して克服されつつあります。簡単に言えば、「EVはオワコン」とおっしゃっている方は、5年くらい前のEVの状況に基づいて「EVは使えない」と判断してしまっています。

では、中国ではどのように克服をしているのでしょうか。今回は、中国EVで、どのような技術や工夫が行われているのかをご紹介します。

 

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110番通報はショートメッセージで。聴覚障害者、音が出せない状況で活用

中国公安局は2015年からショートメッセージによる公益通報システムを運用している。指定された電話番号のショートメッセージを送ると、それが110番通報と同じように対応してもらえる。このシステムは聴覚障害者を中心に活用されていると光明網が報じた。

 

ショートメッセージによる110番通報

2024年1月3日午前3時、浙江省嘉興市の公安110センターは、一通のショートメッセージを受け取った。そのメッセージにはこう書いてあった。

「音声が聞こえないと思いますが、現在、バリアフリー通報システムを使って通報をしていています。すぐに応答できませんがお許しください。私の住所は浙江省嘉興市桐郷市文華路x-x-xです。救助をお願いします。もうだめです」。

110センターのオペレーターには、このメッセージの読み上げ音声が聞こえるようになっている。オペレーターは、通報者が聴覚障害者だと判断し、すぐに通報者の地区を担当している武通警察署に連絡がいき、2人の警察官が現場に急行した。

▲市民からショートメッセージで送られてきた緊急通報。聴覚障害のある人などはショートメッセージで110番通報ができるようになっている。

 

食中毒で倒れていた聴覚障害者を発見

警察官は、通報された住所の家で、ソファーに横たわる中年女性を発見した。その女性は大量に汗をかき、ぐったりとしている。近くにあった紙に「病院に連れて行ってください。食中毒のようです」と書いてあった。警察官はすぐに救急救命の連絡をとり、救急チームが駆けつけ、病院に搬送された。

女性は夕方に骨付き肉の煮込みとヨーグルトを食べた。その時、味に違和感を感じたが食べてしまったという。その後、夫が夜勤に出かけたため、女性は就寝した。しかし、午前2時頃、頭痛とめまいが激しく目が覚めてしまった。しばらく様子を見ていたが、体調は悪化をし、どうにもならないと感じて110番通報をした。

▲警察官が急行すると、聴覚障害の中年女性が自宅で倒れていた。食中毒のようだった。

▲警察官がテーブルの上を見ると、「医者に連れて行ってください。食中毒のようです」というメモがあった。

▲警察官は救命チームに連絡を取り、無事病院に連れていくことができた。

 

2015年からスタートしているショートメッセージによる110番通報

女性は聴覚障害があるために、警察や救急の通報の電話ができない。中国の公安局では、2015年からショートメッセージによる公益通報システムを導入している。それは、フィーチャーフォンスマートフォンのショートメッセージを利用して、「12110」+「地域局番」のアドレスにメッセージで通報できるというものだ。

各地公安では、110センターでこのメッセージを受け、電話による緊急通報と同じ手順で対応をする。

▲救出した後、警察官のスマートフォンに送られてきたメッセージ。感謝の言葉が述べられている。

 

音が出せない状況での通報にも活用

公安によると、このショートメッセージ通報「12110」は、主に3つの目的で運用されているという。

ひとつは、聴覚障害などがあり、電話での通報ができない場合だ。2つ目は、状況が逼迫をしていて音が出せない状況にある場合。3つ目は、市民が写真、URLなどの捜査に必要な証拠を提供したい場合だ。

聴覚障害のある人が通報する時以外にも、たとえば深夜に泥棒が自宅に侵入をして声を出せない状況、犯人が近くにいて電話ができない状況などでも利用されている。また、警察官が現場に急行する間に、現場の状況を知るために、通報者に写真やビデオの撮影を依頼することもあるという。この場合、この12110でやりとりが行われる。

日本でもアプリから110番通報ができる「110番アプリシステム」(https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/jiken_jiko/110/110site.html#:~:text=聴覚や言語に障害,を開設しています。)が運用されている。

 

 

改革開放でGDPは340倍に。一方、給料の方は340倍になっているのか、計算してみた

中国では1978年に改革開放が始まり、経済成長が始まった。その頃から、GDPは約340倍になっている。GDPが340倍になったのだったら、個人の給料も340倍になっていないと、市民は経済成長を実感することができない。実際には何倍になっているのか、資本百科が計算をしてみた。

 

改革開放でGPDは340倍、収入は何倍?

中国の2023年のGDPは126兆600億元となり、2022年から5.2%増となった。改革開放が始まった1978年には約3700億元で、そこから比べると、約340.7倍になっている。

しかし、多くの人が気にするのは自分の収入だ。1978年から比べて、給与は340倍になっているのだろうか。GDPが成長をすれば、それに比例して物価もあがっていく。GPD成長率以上に給与があがっていなければ、実質目減りをしているようなものだ。

 

給料は340倍にはほど遠い

経済統計によると、1978年の平均給与は年644元だった。GPD成長率と同じように給与が増えていけば、国の経済発展の恩恵を市民全員が感じることができるが、それには給与も340倍になっていなければならない。

644×340.7=21万9400元

となり、現在は22万元程度の年収がなければならない計算になる。

中国の平均給与の統計は「非私営単位」と「私営単位」に分けられる。非私営単位とは、公務員、国有企業、株式会社などで、日本の感覚では公務員と企業だ。私営単位とは株式会社などの組織化をしてなく、経営者が直接従業員を雇用しているもので、飲食店などに多い。日本の感覚では中小零細企業にあたる。

2023年の平均給与の統計はまだ発表されていないため、2022年の統計を見ると、非私営単位では11万4029元となっており、1978年と比べると177.06倍になっている。私営単位では6万5237元となり、1978年と比べると101.3倍になっている。

いずれもGDPの伸び率340倍にはほど遠く、中国の労働者は経済の発展ほどの恩恵を感じられていないかもしれない。

 

上海市の企業ではほぼGDP成長率と同じ

中国は広く、給与、物価ともに地域による格差がまだまだある。最も給与が高いのは上海市で、上海市の2022年の平均給与は非私営単位では21万2476元、私営単位では10万4560元で、1978年から比べると、それぞれ329.9倍、162.4倍となり、上海市の非私営単位では、ほぼGDPの成長率と同じ程度の恩恵を受けることができている。

しかし、このレベルにあるのは北京、広州、深圳を加えた4大都市であり、省単位では10万元前後であり、1978年の150倍程度にすぎない。中国のほとんどの市民は中国の経済成長の恩恵をじゅうぶんに享受できていない。

 

2000年以降はGPD成長率と給与伸び率が一致をする

しかし、2000年以降は様子が異なる。2000年のGDP、平均給与を1として、各都市が何倍になっているかを計算すると、GDPと給与の伸び率は見事に重なる。政府がGDPの伸び率に合わせて賃金をあげるように促しているからだ。

2000年以降は、経済成長の恩恵を享受できていると考えられる。

▲2000年を基準にすると、GPDの増加割合と企業給与の増加割合はみごとに一致をする。

 

ジニ係数も下げ止まりをし始めている

ただし、問題は格差があることだ。所得の不平等さを表すジニ係数は、中国も2010年頃から下がり始めたが、0.46台で下がらなくなってしまっている。OECDの調査によると、日本は0.34程度、格差の大きな米国でも0.375であるので、中国はまだまだ先進国とは呼べない水準になっていることがわかる。平均給与の上昇よりも、この格差の解消が目下の大きな課題になっている。

低所得者の賃金を引き上げて格差を解消することは、購買力の拡大にもつながる。人口が減少をすると、国民全体の購買力の総和も減ることになる。その時、低所得者の賃金を引き上げ、格差を解消することは、経済を成長させる効果的な策にもなる。格差解消が、中国社会にとって大きなテーマになってきている。

▲格差を表すジニ係数は、2000年代半ばから2010年代半ばにかけては大きく下がっていった。しかし、2015年以降下げ止まっている。