中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

ソーシャルEC。次世代ECなのか、それとも中国独特のECなのか


まぐまぐ!」でメルマガ「知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード」を発行しています。

明日、vol. 032が発行になります。

 

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中国のECが好調です。新型コロナの感染拡大で、多くの人が外出を控えたため、ECの需要が急増しました。

ECの世界でのトップ企業はアリババです。CtoC型EC「淘宝」(タオバオ)、BtoC型EC「Tmall」の2つのサービスで他を圧倒しています。その次に有名なのが京東(ジンドン)です。京東は量販店から出発したECで、購入だけでなく、配送まで自前で行う点がアリババと異なっています。

長い間、中国のECは、この2強を中心に回っていました。中国テックジャイアントを表すBATのうちのアリババ以外の百度、テンセントもECを運営したことがありますが、この2強に迫ることができず撤退をしています。

 

ところが、近年、この2強に食い込む新たなるECが登場してきました。ソーシャルECの「ピンドードー」です。2015年9月に創業し、わずか3年後の2018年7月には米ナスダック市場に上場をするという快挙を成し遂げました。それほど勢いがあり、MAU(月間アクティブユーザー数)では、京東を抜き、第2位のECに成長しています。

しかし、これだけではありません。ピンドードーよりも少し早い2015年5月に創業したソーシャルEC「雲集」(ユインジー)も2019年5月に米ナスダック市場に上場を果たしました。

ECの分野でナスダック上場を果たした企業が2社も登場してきたのです。しかも、従来のBtoC型という単純な方式ではなく、いずれもソーシャルECと呼ばれる一風変わった構造を持っています。ピンドードーはC2B、雲集はS2b2cの構造だとも言われます。この不思議な記号がどのようなものであるのかは、後ほどじっくりと解説します。今は、この2つは「ソーシャルEC」だと理解しておいてください。

 

問題は、ソーシャルECは日本でも有効か?成功するのか?という点です。日本でも成功する可能性があるのなら、起業をする人が出てくることになるでしょうし、そうでないなら、日本には関係のない中国独特のスタイルにとどまることになります。この問題は、「ピンドードーや雲集の日本進出はあるのか?」という問いへの答えにもなります。

 

その答えはわかりません。流行というのは、サービスの質や内容だけで決まるのではなく、偶然のきっかけで広がることがあるからです。その何かがあれば、日本でも爆発的に流行り、アマゾンや楽天を脅かす存在になることはじゅうぶんにあり得ます。

今回は、このメルマガをお読みいただき、この問いに対する答えをみなさんそれぞれに考えていただければと思っています。

 

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vol.031:大量導入前夜になった中国の自動運転車

 

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自動運転ロードーローラーで、高速道路の舗装作業を完全無人化

四川省の攀大高速道路で、世界初となる自動運転ロードローラーによる高速道路建設工事が行われた。1台のフィニッシャーと4台のロードローラーのチームで、舗装作業を完全無人化することが可能になったと二十四簡史が報じた。

 

自動運転で有害気体の出る舗装作業を無人

攀大高速道路は四川省の攀枝花市と雲南省の大理を結ぶ全長40.9kmの高速道路。険しい山地を通るため、81%が橋梁かトンネルとなる。そのため、通常の高速道路よりも平面度の基準が厳しく、作業員による舗装作業は通常以上の手間がかかる。また、アスファルトが150-170度に加熱されて生じる有害気体への対策も必要になる。

そこで、無人の自動運転アスファルトフィニッシャー1台、自動運転ロードローラー4台が投入された。作業は、納入されたアスファルトをフィニッシャーが路面に撒いていき、それを4台のロードローラーが押し固めていくことで行われた。


清华团队助力智慧交通建设 实现全球首次高速公路无人机群施工

清華大学が公開した舗装作業の様子。5台の自動運転車が通信をして、強調しながら作業が進められていく。

 

2年間の実証研究の後、実戦投入

この自動運転土木機器は、清華大学の「地下空間開発利用及びスマート建造研究」チームが開発をし、土木機器建設メーカーの徐工集団と共同製作、四川路橋集団が運用する形で、実戦投入された。すでに2年間の実証実験を行い、9月の高速道路完成まで実際の工事に用いられる。

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▲舗装作業は8人の作業員が必要になる。それが自動運転車を利用すると、1人の監督だけで作業が進められるようになった。

 

5台の自動運転車は通信をし、協調して作業を遂行する

5台の機器は、それぞれにGPSマイクロ波通信、ミリ波レーダーを搭載し、自動で舗装作業の手順を計画し、5台の機器が協調しながら作業を進めていく。施工精度は2-3mm。通常なら8人の作業員が必要になる作業を、1人の監督で行えるようになる。人間よりも高い精度の作業が行え、建設に必要な人件費を大幅に下げることに貢献する。

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▲加熱されたアスファルトからは人体に有害な気体も出るため、作業員にはその対策も必要になる。完全無人作業にすることで、そのような対策も必要がなくなり、コストは大きく下がり、工期の短縮も可能になる。

 

5G通信の普及で、土木建設の無人化が加速する

清華大学では、無人運転土木建設機器の研究開発を2016年から進めてきた。すでに河南省前坪の堤防工事などで実証実験を進めてきた。5Gネットワークの普及に伴い、土木建設機器の無人化がさらに進むと見られることから、清華大学の研究チームは今後も多方面に応用をしていく予定だ。

 

 

Tik Tok使用禁止は、タルサの報復?中国ネット民の反応

Tik Tokの米国での使用禁止問題あるいは売却問題は、中国人の目にはどう移っているのだろうか。Q&Aサイト「知乎」から主な意見を拾った。

 

中国メディアは冷静な反応

バイトダンスのTik Tokが米国での使用禁止、または米国企業への売却の問題が起きている。当の中国のネット民たちはどのように反応しているのだろうか。

中国メディアの反応は冷静だ。この件について、報道される記事の数は多いものの、米国やトランプ大統領を批判する内容はほとんどない。ただ起きている事実だけを淡々と報道している。

そこで、Q&Aサイト「知乎」で検索をして、ネット民の本音を探った。知乎は本来、ネット民が質問をし、誰かがそれに対する回答をコメントするというQ&Aサイトだったが、時事ニュースに対する意見表明をして、それにコメントで議論をするということにも使われている。日本のYahoo!ニュースのコメントの雰囲気によく似ている。

しかし、こちらも過熱している様子はほとんどない。ざっと検索をして、コメント数が多いものを見つけると、「品玩」というウェブメディア公式が投稿した「バイトダンスから米国業務を剥離する事件。これは何を意味するのか?」という記事が見つかったが、これでも閲覧数は152万程度で、「いいね」の評価をした人が1.8万人程度。中国での人気記事からすると、桁がひとつ少ない。しかも、記事の内容は米国を批判するのではなく、事実経過を解説し、今後中国企業にどのような影響が出るかを論じたものだ。

 

「米国業務剥離事件」と呼ばれるようになっている

ただし、全体から中国ネット民が、この件について否定的な印象を持っていることは窺われる。この事件のことは「米国業務剥離事件」や「トランプ過干渉事件」と呼ばれるのが一般的になり、米国政府ではなく「トランプ政府」という用語も使われるようになっている。一部には「Tik Tok強奪事件」と呼んでいる人もいるが、あまり一般には広がらないようだ。

 

米国政府ではなく、トランプ政府ゆえの干渉

知乎に投稿をしているネット民、コメントをつけているネット民の意見の多くに共通しているのが「トランプ政府」のダブルスタンダードに対する困惑だ。米国は自由の国であり、市場経済を尊重する国なのに、政府がビジネスに対して過度の干渉をすることに驚いている。だから、米国政府と呼ばずに、トランプ政府と呼ぶ傾向が強くなっている。このような過度の干渉は、米国本来の姿ではなく、トランプ政府特有のものだと考えているようだ。

Tik Tokが米国市民の個人情報を盗み出しており、安全保障上問題があるという指摘についても否定的だ。なぜなら、Tik Tokが米国に上陸して2年間、トランプ政府はこの問題について何も指摘してこなかった。それが唐突に問題だと言い出した。ではなぜ、2年もの間、そのような重要な問題を放置してきたのかという指摘だ。

 

一連の中国排除が、ネット民のプライドをくすぐっている

多くのネット民が、この問題を、中国テック企業の存在感が大きくなってきたことが原因だと考えているようだ。ファーウェイ問題でもそうであるように、米国は中国テック企業を無視できなくなり、米国の地位を脅かすものとして脅威に感じている。だからこのような問題が起きていると考えている。

これは、中国ネット民にとって、プライドをくすぐることにもなっている。だから、露骨な怒りを示すのではなく、冷静にことの成り行きを見ているように感じられる。

あるいは10月の米大統領選で、トランプは勝つことができず、バイデン候補の民主党政権に変わり、そうなれば、このような問題は起こらなくなると指摘する人もいる。

 

中国ネット民が指摘する「タルサの報復」

また、多くのネット民が指摘しているのが「タルサの報復」だ。トランプ大統領は、6月20日オクラホマ州タルサで百万人集会を計画していた。ところが、Tik Tokユーザーたちの手によって、赤恥をかかされてしまった。この報復でTik Tok使用禁止に踏み切ったのではないかというのだ。


「100万人申し込み」も空席だらけ……3カ月ぶりのトランプ氏選挙集会

BBCが報じたタルサ集会の映像。トランプの背景にあたる場所に人が集められている。多くの人がマスクをしていないことに注意していただきたい。

 

米国市民から批判を受ける百万人集会

このタルサ集会は、そもそもが問題が多すぎた。当初は6月19日に予定されていた。この日は奴隷解放記念日にあたる。しかも、タルサという場所は、1921年に、黒人の大量虐殺事件が起きたという場所だ。当然、タルサでも当日は、Black Lives Matterのデモが行われることことが予想される。そこに、トランプ支持者が集まれば、不測の事態が起こりかねない。そのような批判を受け、6月20日に日程をずらすことになった。

さらには、この時期だ。新型コロナの感染拡大が収まらない中で、トランプ支持者たちがタルサという小さな都市に集結をする。しかも、トランプ支持者たちはマスクをしないことで有名だ。マスク装着を強制されることは個人の権利を侵害していると主張する人たちだ。タルサ集会で、大規模クラスターが発生するのではないかと批判されていた。

実際、タルサ集会の2週間後に、数百人規模の新規陽性者が確認され、タルサ市の公衆衛生当局は「2週間前に複数の大規模イベントがあった」と述べ、その「イベント」との因果関係を調査すると発言している。

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▲タルサ集会の実際の様子。空席が目立つ。しかし、ソーシャルディスタンスのための使用禁止シートを無視して、トランプ大統領の背景にあたる席に、観客が密に集められている。

https://twitter.com/AsteadWesley/status/1274472367989960704?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1274472367989960704%7Ctwgr%5E&ref_url=https%3A%2F%2Fwww.newsweekjapan.jp%2Fstories%2Fworld%2F2020%2F06%2Fpost-93742.php

 

100万人のマスクなしの人たちがタルサにやってくる!

このタルサ集会の無料チケットのオンライン申し込みが始まると、応募が殺到し、参加者は100万人に迫る勢いになった。用意されている会場「オクラホマ銀行センターアリーナ」は収容人数が2万人足らずで、急遽、屋外に4万人が収容できる会場を設定することになった。

タルサ市民はパニックに近い状態になったという。100万人ものマスクをつけない人たちが、全米から集まってくるのだ。中には郊外に疎開をする人もいた。

メディアは取材をどうするか頭を悩ませた。なぜなら、記者やカメラマンが取材業務を拒否するからだ。このタルサ集会の取材をすれば、個人で感染防止対策をいくら取ろうとも、かなりの高確率で新型コロナに感染することになる。

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ドナルド・トランプ大統領は、タルサ集会の5日前に、ツイッターで「オクラホマ州タルサの土曜日の支持者集会に、100万人の人がチケットの申し込みをした!」とツイートした。しかし、当日、トランプ大統領は赤恥をかかされることになる。

https://twitter.com/realDonaldTrump/status/1272521253136498690

 

集まったのはたった6200人

ところが、6月20日、蓋を開けてみると、100万人どころか、集まったのはわずか6200人だった。会場側では、椅子に禁止サインを貼り、ソーシャルディスタンスを取るように促していたが、そんな必要もなかった。2万人収容の会場に6200人なので、放っておいても、ソーシャルディスタンスになる。

このような事態になったのは、あるTik Tokユーザーのショートムービーがきっかけになっている。タルサ集会に反対をするメアリー・ジョー・ラウップという女性が「集会の無料入場券をみんなで取得して、欠席することで、彼を無人の会場のステージに立たせよう」という投稿をしたのだ。

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▲メアリー・ジョー・ラウップさんが投稿したTik Tokムービー。タルサ集会のチケットを取って、欠席することで、トランプ大統領を無観客のステージに立たせようと呼びかけた。これにK-POPスタンたちが反応したと言われている。

https://www.tiktok.com/@maryjolaupp/video/6837311838640803078

 

ラウップさんの呼びかけに反応した「K-POPスタン」

面白いのは、これに「K-POPスタン」と呼ばれるK-POPの熱狂的ファンが反応をした。スタンというのは、エミネムの「Stan」という曲のPVに登場するストーカーの名前がスタンリーであることに由来するとも、Stalker+Fanの造語であるとも言われている。

このようなK-POPスタンたちは、オンラインチケットを多重取得するスキルに長けている。お気に入りのK-POPアーティストを宣伝するために、あたかも大量の人が再生したり、いいねを押しているかのように偽装することはお手のものだ。このようなK-POPスタンたちが、ラウップさんのショートムービーに反応をして、大量の集会チケットを取得することにより、100万人の参加申し込みになったのではないかと言われている。

K-POPファン、Tik Tokユーザーは若者が中心で、若者はリベラルな民主党を支持している人が多い。つまり、トランプの百万人集会は、若者、Tik Tokユーザー、K-POPファン、民主党支持者によって赤恥をかかされたことになる。


Eminem - Stan (Short Version) ft. Dido

エミネムのStanのPV。このPVに登場するストーカー「スタンリー」の名前から、熱狂的なK-POPファンのことを「K-POPスタン」と呼ぶようになったとも言われている。

 

中国ネット民が信じる「タルサの報復」説

このような見方に対し、トランプ陣営は否定をしている。参加登録は携帯電話の番号が本物であるかどうかを確認するので、架空の番号からの申し込みは除外される。最初から参加者数に含まれていないと反論する。参加者が6200人しかいなかったことについては、米メディアが、タルサ集会ではBlack Lives Matter運動の参加者たちとの衝突が起きるかのような不安を煽ったために、不安に感じた支持者が参加を取りやめたせいだと説明している。

しかし、トランプ大統領がTik Tokユーザーたちから反発を受けていることは間違いない。それにより、トランプ大統領がTik Tokの使用禁止を決断したというのはやや短絡すぎる話にも思えるが、中国のネット民の中には、このストーリーを信じている人が多いようだ。

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iPhone組み立てロボット計画。中国人に負け、失敗に終わる

アップルのiPhoneiPadなどの組み立てを行っているフォクスコンが8年間にわたって、ロボット導入計画を進めていたが、失敗に終わった。原因は、ロボットは中国人の手先の器用さに敵わないというものだったと澎湃新聞が報じた。

 

iPhoneを組み立てる「百万ロボット計画」失敗

台湾のEMS企業「鴻海精密工業」(ホンハイ)は、アップル製品や任天堂のEMS(Electronics Manufacturing Service、電子機器受託生産サービス)としてよく知られている。EMS事業は主に中国で行い、鴻海精密工業の中国向けブランド名が「富士康」(フーシーカン)、米国向けブランド名が「フォクスコン」となる。

そのフォクスフォンが、2011年から「百万ロボット計画」を進めて、iPhoneiPadのロボットによる自動製造ラインを構築しようとしていたが、どうやら失敗に終わったようだという観測が流れている。

 

反発が多かった自動化計画

この「百万ロボット計画」は、2010年に起きた「14連続飛び降り事件」に端を発している。フォクスコンの従業員14人が、プレッシャーや待遇に悲観をして、社員寮の屋上などから次々と飛び降りるという痛ましい事件だ。

しかし、当時すでにフォクスコンの従業員は100万人に達しており、全員の精神面の健康管理をすることは容易ではなくなっていた。

その翌年に発表されたのが「百万ロボット計画」だった。3年間で100万台のロボットを導入し、すべての生産ラインをロボットに置き換え、自動化するという内容だった。ネットでは「ロボットなら飛び降りしないからだ」と話題になり、フォクスコンで働く従業員たちは自分たちの職がなくなると反発をした。

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▲百万ロボット計画だけでなく、フォクスコンでは待遇をめぐってさまざまな反発が起き続けている。女性従業員たちは「私たちは、夏休みをとって泳ぎに行くこともできない」と、水着を着て作業を行うという抗議活動をした。この抗議活動は、面白さからメディアやネットで話題になり、一定の成果をあげた。

 

アップルも乗り気になった百万ロボット計画

しかし、2012年になって、アップルがこの計画を支持する姿勢を見せた。アップルのティム・クックCEOに、まずiPadの製造ラインをロボットによる自動化をすると説明。フォクスコンが開発をしているFoxbotsが生産を担当するとした。そして、iPhoneの生産ラインを自動化した後、フォクスコンの生産ラインのすべてをロボットに置き換えるというものだった。

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▲フォクスコンの製造現場を視察するアップルのティム・クックCEO。百万ロボット計画は失敗に終わった。

 

アップルの精密作業ぶりに、ロボットが負ける

アップルはこれに呼応して、非公開のラボをアップル社内に設立した。アップルでもロボット技術を開発して、それをフォクスコンに提供することで、アップル製品独特の精密な工程の自動化を可能にし、高い品質を保ったまま自動化を実現することが目標だった。しかし、失敗に終わった。このラボは2018年にはすでに解体されたという。

問題はネジの精度だった。アップルは、日本のデンソーや三菱にネジ締めをするロボットの開発を依頼したが、成果が挙げられなかった。フォクスコンのFoxbotsのネジの精度は0.05ミリだが、アップル製品のネジは極小であるため、アップルが求める精度は0.02ミリだった。

ロボットは、複数のカメラで多角的にネジの位置、姿勢を制御しながらネジを持ち上げ、ネジ穴に軸を合わせて挿入しなければならない。ネジ穴に正対したかどうかを確認する方法は、カメラによる視覚ではなく、ネジからフィードバックされる触覚しかない。これを適切に検出することが大きな技術課題となった。

また、ディズプレイパネルの装着のために接着剤を塗布する作業も、塗布範囲を誤差1ミリ以内に納めなければならない。

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iPhoneiPadの精密な組み立て作業は、現在でも人手で行われる。ロボットは習熟した人間に勝つことができない。

 

人間の手作業にしかできない精密作業

このような作業を行うロボット開発は難航し、現場では習熟した中国人に敵わなかった。

2014年にはMacBook Proの組み立て自動化に挑戦をしている。しかし、キーボードを本体に装着するのに、88本の極小ネジを占めなければならないという作業にロボットは苦戦をし、最終的には習熟した工員がすべての作業をやり直すという結果になった。

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▲フォクスコンが開発したFoxbots。10万台が導入されているが、精密組み立て作業は人手で行うしか方法がなく、全工程の自動化は達成が難しくなっている。

 

人間は低コストで精密、ロボットはまだ追いつけない

この前後から、フォクスコンは海外工場の設置計画を進める。2014年にはインドのチェンナイに工場を開設したが、最終的に求める品質が出せず、計画を放棄している。2015年には、インドのマハラシュトナに工場を開設したが、2020年になって計画を放棄した。この挑戦は、現在でも続いていて、iPhoneの少量生産が始まったという報道もある。

フォクスコンは、2019年に導入されたロボットは10万台程度であることを公表した。「百万ロボット計画」は2014年までに100万台の計画だったが、8年経っても、その計画の10%程度しか進んでいない。

質の高い製品を作ろうと思ったら、ロボットはまだ人間に勝つことができない。フォクスコンは年々上昇する従業員の人件費を重荷に感じているが、ロボットの開発費と製造費を考えると、人間というのは低コストで高性能なのだ。フォクスコンでの重要な組み立て作業は誰にでも簡単にできる作業ではない。Foxbotsを上回る技術を身につけるには、最低でも数年の習熟が必要になる。

フォクスコンは、中国国内工場と海外工場の問題。人間とロボットの問題。さまざまな選択をしなければならない難しい時期を迎えている。

 

すでに始まっている京東の無人配送。仕分けから配達までを自動化

京東の無人配送が普及の段階に入ろうとしている。長沙市にはスマート配送ステーションを設置し、仕分けから配送までをすべて自動で行える環境が整っている。今後のこのシステムを他都市展開していくことになると車東西が報じた。

 

京東の戦略は「テクノロジー、テクノロジー、テクノロジー

2017年2月10日、北京で京東の年会が開催された。その場で、京東の創業者、劉強東(リウ・チャンドン)が登場して、マイクを手に、集まった従業員にこう檄を飛ばした。「これからの12年間、京東には3つのことしかない。テクノロジーとテクノロジーとテクノロジーだ!」

それ以来、京東はドローン配送、無人カート配送などを実用化してきた。全面的な導入にはまだ時間がかかると見られているものの、実証実験の段階は終わり、すでに一部の固定路線に実戦投入をしている。

京東はアリババに次ぐ第2のECサービスだったが、アリババと異なるのは物流と配送を独自に行っている点だ。入荷、販売から消費者の手元に届けるまでの一貫したサービスを提供している。

さらに、ソーシャルEC「拼多多」(ピンドードー)が急速に成長をしてきて、第2位の座も脅かされ、月間アクティブユーザー数などではすでに抜かれている。アリババや拼多多に対抗するためにも、物流、配送を進化させる必要がある。京東は、テクノロジーの積極的利用で物流を変えようとしている。

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▲X事業部と京東物流が共同開発した初代の無人カート。現在は4世代目になり、すでに100台以上が製造されている。

 

感染拡大する武漢無人カート投入で注目される

この京東の試みは、国内ではよく知られていたが、海外からも注目されるようになったのは、2020年2月に、新型コロナウイルスの感染拡大が凄まじかった武漢市に2台の無人カートを投入し、医薬品などの無人配送を行ったことだ。

京東では、前年の2019年から北京、長沙、貴陽など20都市の一般公道での無人配送をすでに行っていた。監視員が付き添うのではなく、環境整備された固定路線をL4自動運転し、完全無人で配送を行う。この技術を武漢市に投入した。多くの人が京東のテクノロジーレベルの高さに驚いたが、京東としては、応用問題にすぎなかった。

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▲感染拡大期、武漢市の武漢第9病院に無人カートが医療物資を配送した。敷地内の定位置に停車する。

 

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無人カートは一般公道を走行する。約4日間、手動運転をして周辺環境データを採取し、それ以降は自動運転が可能になっている。

 

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▲敷地内に停車した無人カートから、病院関係者がスマホまたは顔認証で開錠して、荷物を取り出す。

 

接触配送を実現するために無人カート投入

2020年1月23日午前10時から、武漢市では全面都市封鎖が実施された。その間、武漢市のスタッフからは、無接触で配送をするひとつの方法として、北京で使用されている無人カートの投入が希望された。そこで、無人カートの武漢市投入が急遽決定された。

この無人カートは、京東の仁和ステーションから武漢第9病院へ向けて、主に医療物資を配送することになった。従来の配送状況、配送路線の道路状況などから70%の配送は無人配送に切り替えられると判断されたからだ。

2月中旬には、もう1台の無人カートが武漢市王家湾地区に投入された。この地区には、2つの大規模マンションがあり、配送量も多い。集荷ステーションから往復をしても2km以内に収まることから無人配送に適していると判断された。

無人カートの配送方法は実に簡単だ。集荷ステーションで、スタッフが無人カートに荷物を入れると、ラベルの情報が自動的に読み取られる。すると、無人カートが配送先を認識して、最適な路線を計算する。それから受取人に対して、ショートメッセージまたは電話をかけ、到着予想時間を知らせ、無人カートが出発する。受取人が、無人カートに受取用のQRコードを読み取らせると、自分の荷物が入っているドアが開く。また、登録を済ませている人は顔認証でも荷物が受け取れるようになっている。

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▲ステーションでは、リモートにより道路状況を確かめることができる。危険が生じた場合は、リモートで急停止が可能になっている。


4日間は手動走行で環境データを収集

京東物流の自動運転主席サイエンティストの孔旗氏によると、2月1日に最初の無人カートが武漢市に投入されたが、最初に行ったことはリモコンによる手動操作で無人カートを配送路線を走らし、道路状況などを採取させた。さらに、クラウド上の地図で路線を編集し、それから自動運転をさせた。無人カートが自動運転を始めたのは、2月5日の夜になってからだという。

 

第4世代無人カートはすでに100台以上製造

京東では、2016年から無人カートの研究を始めている。当初の無人カートは、安全監視員が付き添わなければならないものだった。しかし、それでは実戦投入する意味がない。現在、京東の無人カートは第4世代となり、安全監視員が付き添う必要のない完全無人カートになっている。すでに100台以上が製造され、研究、実証実験、実戦投入に使われている。

 

長沙市ではスマート配送ステーションも設置

また、無人カートによる配送を前提にしたスマート配送ステーションの設置も進んでいる。すでに長沙市経済開発区科技新城に600平米のスマート配送ステーションを運用している。このステーションに届けられた荷物は、行き先別に自動仕分けされ、異なる無人カートに入れられ、効率的な無人カート配送が行われている。

ただし、孔旗氏によると、すべての配送を無人カートに頼ることは現実的ではなく、今後、重要になるのが、無人配送と有人配送をどのように組み合わせて、一元管理をするかということだという。無人配送の利点、有人配送の利点を組み合わせて、京東の価値をさらに高めることに貢献したいという。

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長沙市では、スマート配送ステーションがすでに稼働している。自動仕分けされた荷物を無人カートに収納すると、無人カートがルート計算を行い、配送先に向かう。

 

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▲荷物を配送して、ステーションに戻ってきた無人カート。自動で充電位置に停車する。すべての配送を無人カートにするのではなく、人の配送と無人カートをどのように組み合わせるかが今後の課題になるという。

 

京東のテクノロジーの中心「X事業部」

京東は京東物流、京東零售、京東数字科技の3つの子会社を持っている。無人カートを開発しているのは、京東のX事業部と京東物流の協同作業だ。X事業部は、京東が必要としている新たなテクノロジーの研究開発を行う部署で、ドローン配送、無人倉庫などのテクノロジー開発も行っている。

2016年に、以前から京東社内にあった智能物流ラボが事業部に昇格する形で成立した。開発拠点は北京と米国に置かれているが、その人数、規模などは非公開になっている。

しかし、京東の決算報告書によると、2015年からの研究開発費は、29億元、44.53億元、66.52億元、121億元、146億元(約2200億円)と増えてきている。売上に占める割合も現在は2.5%程度になっている。今後も、京東が研究開発に力を入れていくことは間違いない。

無人カートも、武漢市の貢献で有名となり、さらに拡大することが期待されている。日本でも楽天が京東の無人カートを使って実証実験を始めている。コロナ禍という異常事態がきっかけになって、中国は無人配送時代に突入していくかもしれない。

 

ユニコーン企業数で、中国が米国を抜く。貢献したのは物流系ユニコーン

胡潤研究院が公開した「2019胡潤グローバルユニコーン企業ランキング」によると、ユニコーン企業は世界に494社あり、国別では中国が米国を抜き、世界で最大のユニコーン企業を擁する国になった。貢献をしたのは物流企業で、自動化が進んでいると物流搬運機器人が報じた。

 

成長意欲の強いユニコーン企業

ユニコーン起業は、企業価値10億ドル以上、創業10年以内、未上場の企業のこと。上場する実力がありながら、上場をしない理由は、各社さまざまあるが、最も大きいのは意思決定の速度を重視するからだ。上場をすると、意思決定をするのに上場企業として必要な手順を経なければならない。しかし、非上場企業であれば、内部ルールに基づいて素早い意思決定が行える。つまり、まだ大きな成長をする意思を持っている企業ということになる。

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▲世界のユニコーン企業ランキング。上位10位は米国と中国で占められている。「2019胡潤グローバルユニコーン企業ランキング」(胡潤研究院)より作成。

 

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ユニコーン企業の国別ランキング。中国が米国を抜いた。「2019胡潤グローバルユニコーン企業ランキング」(胡潤研究院)より作成。

 

物流系ユニコーンが多い中国

そのユニコーン企業の数で、中国は米国を抜いた。ユニコーン企業のジャンルでは、クラウドフィンテック人工知能、製造小売が最も多いが、中国の場合、特徴的なのはメディア、物流のユニコーンが多いことだ。物流系ユニコーンは16社もある。ロボット、自動仕分け、スマート倉庫など、テクノロジーを導入し、成長に結びつけているからだ。

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▲ジャンル別の世界のユニコーン企業。EC、フィンテックが多いのは世界共通だが、物流が多いのが中国の特色になっている。「2019胡潤グローバルユニコーン企業ランキング」(胡潤研究院)より作成。

 

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ユニコーン企業に投資をしているVC、企業。ソフトバンクも数多く投資をしている。「2019胡潤グローバルユニコーン企業ランキング」(胡潤研究院)より作成。

 

菜鳥網絡(ツァイニャオ)

中国で最もテクノロジー導入が進んでいるアリババ系の物流企業。2018年には、江蘇省無錫に大規模な物流センターを開設し、IoT技術、人工知能、エッジコンピューティングなどを活用し、ほぼ無人の仕分けを可能にしている。2000平米ある仕分けセンターでは、350台のロボットが24時間仕分け作業を行い、1日に50万件の荷物を仕分けることができる。ロボットの走行距離は、3日で地球1周分になるという。

さらに、同様の物流センターを四川省天津市浙江省広州市などにも開設し、全国29省、138都市をカバーしている。倉庫数は3417個、総面積は4757万平米に達している。

また、無人カートの研究開発も進んでいて、すでに閉鎖区域の中では無人カートによる配送を始めている。

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▲アリババ傘下の菜鳥でも、仕分けの無人化が進んでいる。

 

京東物流(ジンドン)

無人倉庫、無人配送を進める京東系の物流企業。仕分けから配送まで、100%の無人化を目指している。すでに北京、上海、武漢、深圳、広州を始めとして、50の無人倉庫を設置している。

京東物流は、EC「京東」との関係が深く、多くのテクノロジー開発は、京東のX事業部(テクノロジー開発部門)と共同で行っている。無人カート、ドローン配送などはすでに実戦投入が行われている。

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▲京東の無人物流センター。ロボットの上に荷物を置くと、自動仕分けをして穴に落としていく。穴の下には、袋が設置され、配送先別に分けられる。

 

日日順(リーリーシュン)

家電メーカー「ハイアール」から独立した物流企業。大型家電を主に扱う青島市の黄島倉庫では、15台の無人搬送車(AGV=Automated Guided Vehicle)を投入している。136のスマート倉庫を持ち、6000のミニ倉庫を配置し、3300の定期配送路線で全国を結んでいる。

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▲ハイアール傘下の日日順では、AGVにより、必要な荷物が倉庫から搬出される。

 

安能物流(アンナン)

宅配物流を中心に、11月11日の独身の日セールで成長してきた物流企業。仕分けセンターのスマート化を進めていき、現在、全国に40カ所のスマート仕分けセンターを持っている。浙江省金華仕分けセンターでは、大型荷物では毎時2000件、小型荷物では毎時21600件の仕分け処理能力を持っている。

 

越海智能(ユエハイ)

配送請負を行う物流企業。独自の基地も大型が8カ所、中型が32カ所、小型が82カ所あり、総面積は330万平米を超える。また、マレーシア、タイ、フィリピン、ベトナム、欧州など一帯一路関連の海外拠点も持っている。

独自の無人搬送車(AGV)を活用し、作業の多くを自動化している。

 

 

大量導入前夜になった中国の自動運転車

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明日、vol. 031が発行になります。

 

中国が、自動運転車大量投入の前夜を迎えています。滴滴出行は、上海でロボタクシーの試験営業を始めました。エリア内では、運転手は操作せず、すべてを自動運転するというものです。

上海の嘉定区の10km四方ぐらいのエリア限定で、事前予約をしたモニターを1日に30組程度乗せています。現在は、ほとんどがメディア関係者で、なかなか予約が取れないそうです。

このエリアは、上海の虹橋空港の北側で、F1が開催される上海国際サーキットのあるエリアです。東京近辺でいえば、幕張メッセ地区のような地域です。

 

もちろん、始めたばかりですから、メディアはいろいろ面白おかしく報道しています。ロボタクシーといっても無人ではなく、運転席には運転安全員が、助手席にはエンジニアが同乗しています。自動運転が難しい状況では、運転安全員が手動運転を行いますし、常にエンジニアがシステムのモニターを行なっています。

メディアでは、出発に戸惑って数分間止まったままだったとか、自動運転車は遠回りをしてでも右折ばかりするなどと報道されています。中国は右側通行なので、右折は簡単ですが、左折は対向車に注意しなければならず難易度が高い運転になります。そこで、システムはミスを起こしづらい左折を優先してルートを決めているのではないかというのです。

あるいは、脇道から侵入しようとする車を見つけると停止してしまいお見合い状態になるとか、速度の遅いオート三輪があっても抜かそうとせずに、後ろを徐行しながら走るとか、さまざまな「まだ運転がこなれていない」状況であることは確かなようです。

とは言え、この試験区域には、地下鉄の駅もあり、ホテルなどもあります。走るのは専用道路ではなく一般道で、上海中心地ほど交通量は多くなくても、一般車両が走っている地域です。

 

滴滴出行は、このロボタクシー投入に強気で、2030年までに100万台のロボタクシーを投入すると宣言しています。

また、百度バイドゥ)は、長沙市、滄州市ですでにロボタクシーの試験営業を昨年9月から始めています。長沙市では45台のロボタクシーを投入するという大掛かりな試験営業で、段階を経て、そのまま正式営業に入ることを前提とした試験です。

当初は、滴滴と同じように長沙市民限定で事前予約してもらうことで乗車できるというやり方でしたが、現在は全面開放され、専用のdutaxiというアプリから、誰でも空きがあれば乗ることができるようになっています。先に自動運転の開発を始めていた百度としては、今回の滴滴の上海での試験営業に大きな刺激を受けたことは間違いありません。近々、百度側にも大きな動きか発表があると考えるのが自然です。

 

このロボタクシーはL4自動運転と呼ばれます。

自動運転にはレベル0からレベル5までの区分がされています。

レベル0:すべて人が操作する

レベル1:ペダル操作、ハンドル操作のいずれかを自動化。オートブレーキ、車線維持など。

レベル2:ペダル操作、ハンドル操作の両方を自動化。高速道路でのオートクルージングなど。

レベル3:一定の条件下ですべての運転を自動化。ただし、システムが状況により、人側に運転操作を戻す。一般には高速道路や郊外バイパスなどでの自動運転。

レベル4:一定条件下ですべての運転を自動化。ただし、人が運転に介入できる。

レベル5:人が介入しない。完全自動運転。

 

このうち、レベル3以上が「自動運転」と呼ばれます。

このレベルの違いは、運転者の側から見ると、理解しやすくなります。レベル3では、システムがいつ手動運転を要求するかわかりません。運転手はいつでも手動運転ができる状態であることが必須になります。そのため、運転者は、自分が運転するのと同じように状況を把握しなければならず、スマホ操作や映画鑑賞、居眠りはできません。

「あれ?日本ではL3の自動運転が解禁になり、運転中にスマホを見てもいいと報道されているけど?」と思われた方もいるかもしれません。改正道路交通法で、L3自動運転が認められましたが、自動運転可能な条件は「高速道路で同一車線を時速60km以下の低速走行している」場合です。この場合は、スマホを見たり、テレビを見たりしてもかまいません。しかし、高速道路を60kmで走るというのは、周りの車にすれば迷惑にもなりかねない走行で、あまり現実的ではありません。もちろん、それ以上の速度での自動運転をしてもかまいませんが、その場合は、「運転者が自動運転装置を使って、運転を行っている」扱いになるので、通常の運転と同じようにスマホを見たりすると違反になります。

まずは、リスクの少ないところから、自動運転を解禁していくということなのだと思います。

 

レベル4でも運転者は乗車しなければなりません。一定条件下では、運転者は安全監視も操作も必要なく、寝ていてもかまいませんが、条件下を外れると、人が運転しなければならなくなるからです。例えば、一定条件が「高速道路の走行」でしたら、高速道路を降りたら手動運転する必要がありますし、一定条件が「基準を満たした道路の走行」でしたら、生活道路に入る時には手動運転する必要があります。

ただし、このレベル4で、無人運転を実現する方法がないわけではありません。それはバスなどの固定路線を走る車両です。あらかじめ固定路線の道路環境を整備して、自動運転の条件を外れないようにしてやれば、手動運転の必要がなくなるので、運転者が乗車する必要がなくなります。5G通信を活かして、リモートで走行状況を監視し、緊急時にはリモートによる停止、リモートによる操作を可能にすることで、無人運転を実現しようという試みも行われています。

レベル5では、すべての状況で自動運転となるので、運転者は必要なく、中でスマホを使ったり、眠ったり、好きにすごせることになります。

中国は今、このレベル4自動運転をさまざまな分野で実現しようという段階にきています。

 

中国の自動運転が進んだのは、もちろん人工知能などを含めた技術水準が上がったこともありますが、地方政府が積極的に試験区域を提供していることも大きく貢献しています。むしろ、北京、上海、長沙、重慶などでは、積極的に自動運転の試験エリアを開放し、「世界で初めて完全自動運転車が走る都市」にする競争を行っているほどです。

中国の都市が、自動運転に積極的になったのは、百度のロビン・リーが2017年に起こしたある事件が大きなきっかけになっています。

 

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vol.028:MaaSにいちばん近い企業。滴滴出行の現在

vol.029:店舗、ECに続く第3の販売チャンネル「ライブEC」

vol.030:コロナ終息後、中国経済に起きている5つの変化

 

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