中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

中国排斥のインドで、シャオミのスマートフォンが売れる理由

インドが国内産業保護のために、中国製品の排斥を始めている。アプリの使用禁止、関税の引き上げ、輸入基準の厳格化、海外からの投資の許可制などで、国内産業が成長する空間を確保しようとしている。しかし、その中でもシャオミのスマートフォンはインド市場で最も売れているスマホになっている。その理由は現地化戦略にあると股権商業之道が報じた。

 

中国製品排斥を進めるインド政府

中国製品排斥が続くインド。6月29日には、インド政府は、Tik Tokを含む中国製アプリ59種類を使用禁止にした。国境での中印衝突がきっかけになっているが、このような「中国アプリ排除」は以前からたびたび行われている。理由はさまざまだが、その根底にあるのは国内産業の保護だと見られている。

インドには、中国の電子製品、日用品が大量に流入し、投資も盛んに行われている。このままでは、中国企業がインドで支配的になり、インド企業が成長する空間が奪われてしまう。4月には、隣接国からの投資は政府の許可を義務付ける規制が施行された。あくまでも隣接国からの投資だが、中国を標的にしていることは明らかだ。

 

中国排斥の中で売れているシャオミのスマホ

しかし、その中で、小米(シャオミ)のスマートフォンは売れている。調査会社CounterPointのデータによると、シャオミは2017年第4四半期にシェアでサムスンを抜き、以来、インド市場でのトップシェアを維持している。この統計に出てくるvivo、Realme、OPPO、ファーウェイはすべて中国メーカーで、インド地元のMicromaxは2019年から「その他」に含まれてしまい、市場シェアリストから名前が消えている。

インドは、中国の次に「ミーファン」の多い国であるともいわれる。なぜ、シャオミは中国企業であるのに、インドで歓迎されているのだろうか。

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▲シャオミは、2017Q4で、インド市場トップのサムスンを抜き、それ以来、インドで最も売れているスマホの地位を保ち続けている。政府は中国製品を排除しようとしているが、現地生産化を進めることでシェアを維持している。

Counterpointのデータより作成(https://www.counterpointresearch.com/india-smartphone-share/)。

 

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▲シャオミのスマホは、2017年後半より、インド市場でのトップの地位を保ち続けている。

 

シャオミが進める現地化策。シャオミは準国産

その理由は、シャオミがインド進出にあたって現地化戦略をとったことにある。インド政府の意向に耳を傾け、中国から輸出をするのではなく、インド向け製品はインド国内で製造する方針をとった。

シャオミはその方針を広告にも活かし、中国製品ボイコットの声が高まると「Made in India」「Mi from India」のコピーを使うようになっている。シャオミによると、75%の部品もインド製造のもので、それをインド国内で組み立てた製品であると説明されている。

シャオミは現地法人を設立した時も、少数の中国人は派遣されているものの、原則的に現地のインド人を雇用している。インド人が多く働く会社が、インドの工場で作ったスマートフォンであることから、多くのインド人が「準国産品」と考えているのだという。

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▲インドのシャオミショップにはテック好きの若者が集まる。現地生産を進めるシャオミのスマホは、彼らにすると「準国産」に映るのだという。

 

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▲インドのモディ首相と会談するシャオミの雷軍CEO。シャオミはインド政府と協調しながら、現地生産を進めている。

 

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▲インドのシャオミショップのオープンセレモニーに参加する雷軍CEO。シャオミにとって、インド市場はスマホスマートテレビなどで重要な市場になっている。

 

他企業も進めるインド現地化戦略

インドでは、シャオミのスマートテレビも好調に売れている。多くの中国企業が、インドでのビジネスに苦戦をする中で、好調を維持しているシャオミの雷軍(レイ・ジュン)CEOの手腕に注目が集まっている。

インド政府は、電子製品などの輸入の基準厳格化、関税引き上げを進めていて、海外企業は輸入する形式ではビジネスが成立しづらい環境になりつつある。そのため、インド向け製品はインドで生産するというシャオミの地産地消戦略が有効になっている。

アップルも、EMSのホンハイのインド工場の運営が暗礁に乗り上げていたが、再びインド工場での生産に再チャレンジしようとしている。インド向けiPhoneをインド工場で生産し、関税や輸入のコストを削減するのが狙いだ。

インドでは、今後も、このような現地生産化を進める企業が増えていくと見られている。

 

 

自動運転の大量投入が始まる。実戦投入される7つの領域

中国では、自動運転の実証実験、試験営業の段階が進み、大量投入の前夜になっていると言われる。7つの領域で、この1、2年で自動運転車の大量投入が始まり、5年ほどで普及をすることになると蓋世汽車が報じた。

 

自動運転の大量投入が始まる7つの領域

蓋世汽車が、自動運転車の大量投入が始まると指摘した7つの分野とは、「無人配送」「無人清掃」「閉鎖区間内物流」「幹線物流」「ロボバス」「ロボタクシー」「自働パーキング」。多くの人が期待している乗用車の自動運転化にはまだ時間がかかり、当面は「自働パーキング」などの単機能から自動運転を体験していくことになる。

特に、滴滴出行が上海にロボタクシーを投入し、2030年までに100万台を投入すると発表したことが各方面に衝撃を与え、にわかに自動運転界隈が実戦投入に向けて動き出している。

 

百度は全面開放、滴滴はモニター試験のロボタクシー

ロボタクシーは、百度バイドゥ)がすでに長沙市、滄州市でロボタクシーの試験営業を始めている。L4自動運転で、監視員が運転席に座り、状況に応じて手動運転をするというものだ。当初は、事前にモニター登録をした人しか利用できなかったが、現在は誰でも利用できる段階に進んでいる。

また、滴滴出行も上海でモニター登録者による試験営業を始めている。滴滴は2030年までに100万台のロボタクシーを導入する計画を発表している。

国電動汽車百人会スマートネットワーク研究院の朱雷氏は、百人会場景研究報告会でこう語った。「ついこの間まで、ロボタクシーを利用するには専用のアプリを使う必要がありました。しかし、今ではみなさんが日頃使っている百度地図や高徳地図などからロボタクシーを利用できるようになっています。それだけ、ロボタクシーが私たちに身近になっているということです」。

朱雷氏は、ロボタクシーの試験営業が次々と始まる理由を2つ指摘した。ひとつは中央政府、地方政府の積極政策により、自動運転可能なエリアが広がっていること。もうひとつが関連部品の劇的な低価格化だ。「国内レーザーレーダー技術の進歩により、多くが国産品でまかなえるようになりました。これによりコストは1/4、ものによっては1/10になっています。このレーダーの低価格化が、今後起きてくる大量投入のきっかけになっています」。

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長沙市、滄州市に投入されている百度のロボタクシー。すでにモニター試験を終了し、長沙市民であれば誰でも利用できる状態になっている。

 

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▲滴滴が上海で始めたロボタクシー。滴滴は2030年までに100万台のロボタクシーを投入する計画を進めている。

 

百度のロボバスはすでに営業運転を開始

ロボバスの分野では、百度とアモイ金龍が共同開発した「アポロ」(L4自動運転)がある。2019年7月には、累計走行距離が5万kmを突破し、乗客数も6万人を超えた。

現在、アポロは30都市で、通勤バス、公園内のシャトルバスなどに利用されている。条件が整っている場所での利用では、監視員が乗車しない無人運転を行っているケースもある。

バスは固定路線を走行するため、ロボタクシーよりも実戦投入がしやすい。

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百度のアポロ、ロボバスはすでに30都市で運用されている。公園、企業内のシャトルバスが多いが、公道を走行する運搬、通勤バスなどにも使われている。

 

無人配送は閉鎖区域に投入、実戦投入も始まっている

無人配送の分野では、美団(メイトワン)、ウーラマなどの外売(フードデリバリー)企業、京東物流(ジンドン)、菜鳥(ツァイニャオ)などの物流企業が、研究段階を終え、小規模生産を行い、数百台規模の試験投入を始めている。その中でも進んでいるのが、新石器科技で、2019年5月には、西安市のロケット発射基地に100台の無人販売車を納入した。見学者や隣接する公園で、走る自動販売機として活用されている。

無人配送車は現在の40万元から60万元という価格が、3年以内に8-15万元程度になると見られています。レーダーの国産化が低価格化の決め手になっています。大学や工場などの閉鎖空間での配送業務から導入されていくことになります」と朱雷氏は言う。

美団無人配送首席サイエンティストの夏華夏氏は、低速の無人配送車は3年から5年で大規模投入されると言う。「無人配送車は、研究と試験に大量の資金が必要になりますが、大量生産、大量投入は、研究、試験から比べれば大量の資金を必要としません」。ただし、普及には2つの前提が必要になると言う。ひとつは、無人配送が他の方法よりも運用コストが低い状態であり続けること。もうひとつは、大規模運用をする管理設備、例えば自動駐車場、充電設備、修理工場などが整備されることだという。

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▲新石器の無人配送車。スマホ決済で商品を取り出せるようになっていて、走る自動販売機として公園などの特定区域内に投入されている。

 

工場内物流では自動運転がすでに使われている

閉鎖区間内での物流も自動運転車がすでに投入されている分野だ。具体的には鉱山、港湾施設、空港、工場などだ。馭勢科技の無人運転EVが、自動車メーカー「上汽通用五菱」の河西工場、宝駿工場に75台投入され、工場内の物流を受け持っている。試験運用ではなく、すでに16の固定路線を設定し、日常業務に組み込まれている。

一般公道を走る幹線物流でも、図森、智加科技のロボトラックの試験導入が進んでいる。

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▲工場内では、製造部品を自動運転EVなどで運搬するというのが当たり前になりつつある。

 

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▲幹線物流を担うトラックの自動運転化も実証実験が進んでいる。すでに高速道路などの環境が整っている状況で、運転手が運転をしない自動運転は始まっている。

 

無人清掃車もすでに普及が始まっている

無人清掃車はすでに実用化され、普及が始まっている。智行者の無人清掃車「蝸小白」は、2019年後半に20の省市に導入され、学校キャンパス、マンション、観光地、遊園地などの清掃業務に投入されている。蝸小白は米国、スイス、ドイツ、サウジアラビアなどにも輸出されている。

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無人清掃車はすでに普及が始まっている。閉鎖される公園、企業、学校などが主体だが、繁華街の広場などの開放区域での夜間清掃なども使われるようになっている。

 

乗用車では自働パーキング機能が注目されている

乗用車の分野では、AVP(Automated Valet Parking=自働パーキング)が注目されている。一定条件下の駐車場では、自動で駐車してくれるというものだ。すでに各自動車メーカーが、今年と来年にAVP搭載車の量産に入ることを表明しており、にわかにAVP搭載乗用車の競争が始まろうとしている。

7つの分野で、自動運転は、実証実験がかなり進み、実戦投入目前になっている。自動運転は、開発に時間がかかるが、量産に時間はかからない。大量投入が始まれば、普及は早いと見られている。わずか5年で、自動運転車が珍しくなくなることもじゅうぶんに考えられる。

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▲パーキングに自動で車庫入れしてくれるAVP機能。高速道路などでの自動クルージング機能の次は、AVPが乗用車の自動運転機能として注目されている。

 

 

 

盛り上がるライブEC。しかし、高い返品率に大きな課題

網紅、商店主、農産物生産者などが直接商品を紹介するライブ放送を行い、その場で商品が購入できるライブECが新しい販売チャンネルとして注目されている。一方で、ライブECの返品率は50%以上になるとも言われ、大きな課題となっていると社交電商伝媒と報じた。

 

タオバオから始まったライブEC

2020年、ECの世界が大きく変わった。ライブECが急速に盛り上がってきたのだ。

ライブECとは、ライブ放送を利用して商品を販売する仕組み。EC「タオバオ」が以前からタオバオライブの機能を提供していて、そこでタオバオの販売商品を紹介するライブ放送を行っていた。視聴者はその場で商品を購入、決済することができる。商品が売れると、ライブ放送主に決められた手数料がもらえる。テレビショッピングとアフィリエイト広告を合体させたような仕組みだ。

以前は、網紅(ワンホン、インフルエンサー)と呼ばれる人たちのライブECが中心になっていた。トップ網紅の薇婭(ウェイヤー)クラスになると、11月11日の独身の日セールにはライブECで27億元(約410億円)の商品をたった1日に売り上げる。これは、中国の一般的なショッピングモール1年分の売り上げに相当する。異常な爆発力を持っている。

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タオバオのライブEC。スマホで見ることができ、コメントをつけて、その場で質問をすることもできる。トップ網紅は、セール1日でショッピングモール1年分の売上をあげる。


営業自粛をする商店主がライブECに参入

これが、新型コロナの感染拡大で新たなライブ主が参入してきた。営業自粛をしている商店主たちだ。感染拡大期には閉店をしなければならない、営業してもお客はこない、政府からの補償は何もないという中で、商店主たちは、自らライブ放送に出演して、自分の商品を売り始めた。さらに、物流が滞ったため、農民も自らライブECを使って農産物を売り始め、それを県長(県知事)が支援をして、県長がライブECに出演して農産物を売ることも目立つようになった。

困窮した商店主、農民たちはライブECに活路を見出し、ライブ放送プラットフォームもそれを支援した。

こうして、ライブECは網紅だけでなく、販売者、生産者も参入するようになった。

 

返品率が異常に高いライブEC

ところが、このライブECが思わぬ問題に直面している。それは返品率が高いのだ。例えば、女性向け衣類では、一般の店舗小売では返品率は3%程度であると言われる。これが一般的なECになるとセール時には30%に達することもあるという。ところが、ライブECだと50%から60%という異常な返品率になっているという。

多くの場合は、サイズ違いであり、交換をすればすむ。しかし、中国では「レシートなし」「現物なし」「理由なし」でも返品を受け付ける三無返品が一般的になりつつある。そのため、理由の不明な返品で返金を求められるケースも多いという。

なぜ、ライブECでは返品率が異常に高くなるのかが問題になっている。

 

返品率が多いのは「快手」

社交電商伝媒は、まず本当にライブECの返品が多いのかどうかを確認することから始めた。各ライブECプラットフォームは、返品率に関するデータを公開していないので、消費者クレームプラットフォーム「黒猫投訴」を利用した。ここは、消費者が、消費者問題に関する情報交換をする場所で、業者に対するクレーム情報を投稿できるようになっている。

ここから、ライブECの返品に関する投稿の数をカウントした。必ずしも、数値が高いからといって返品率が高いとは限らないが、ある程度の傾向はわかってくるはずだ。

すると、「快手」「淘宝」(タオバオ)の返品が突出して多いことがわかった。このうち、タオバオはそもそも購入者数が圧倒的に多いので、返品も多いのはある意味当然。一方、快手、抖音(Tik Tok)は歴史が浅く、利用者数はタオバオに比べると少ない。つまり、快手は利用者数がさほど多くないのに、返品は多い。快手に何らかの問題が潜んでいることがわかる。

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▲ライブECを行う「快手」「タオバオ」「Tik Tok」の返品数。快手が飛び抜けて多い。黒猫に投稿されたエントリーを社交電商伝媒がカウントしたもの。

 

返品理由は品質問題と虚偽宣伝

また、返品理由をまとめてみると、ライブECの場合、品質と虚偽宣伝が突出している。つまり、ライブ放送を見ている時はそうでもなくても、実際に送られてきた商品を見たら、あまりにも品質が悪かったという場合と、ライブ放送で言っていたことと違った部分があったという理由だ。例えば、ライブECで茅台酒を購入した消費者は、届いた茅台酒の品質があまりにもひどいという理由で返品をしている。その人は、温度管理をしていない場所に長期間放置されたものではないかと訴えている。

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▲ライブECで返品をした理由。多いのは虚偽宣伝(ライブECの内容と実際の商品に違いがある)と品質の問題だった。黒猫に投稿されたエントリーを社交電商伝媒がカウントしたもの。

 

ライブ配信主になるためのハードルが低い「快手」

ライブECの返品率の高さは、品質の問題のある商品が、快手で、虚偽宣伝をする内容で紹介されていることに原因がありそうだ。

では、快手の何が問題なのだろうか。

社交電商伝媒は、快手のライブECのハードルの低さを指摘している。タオバオの場合、ライブECで消費を販売するには、さまざまな条件をクリアしなければならない。身分証などを使った実名登録をすることはもちろん、タオバオですでに一定量の取引をしている必要がある。また、消費数が常に5種類以上あり、直近30日間で3個以上の商品が売れ、直近90日間の売り上げが1000元以上なければならない。つまり、通常のタオバオ店舗としてある程度の実績がなければ、ライブECはできないようにしている。ハードルとしては決して高いものではないが、詐欺的な商品をライブECで売り切って逃げようとする業者は排除できる程度になっている。

一方で、快手では、「アカウント登録をしてから7日以上」「ファンが6人以上」「直近7日間で、通常のライブ放送を1分以上実施している」の3つの条件をクリアすればライブECが始められる。

つまり、詐欺的なライブECをしようと考える業者が、快手に集中している可能性がある。

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▲中国消費者協会の調査によると、ライブECを使わない理由でいちばん多い回答は「品質が不安」だった。「ライブEC消費者満足度オンライン調査報告」(中国消費者協会)より作成。

 

安心を確立することがライブECの課題

コロナ禍で困窮をした商店主や農民を救済するために、ライブEC開始までのハードルを低く設定したことは正しいことだった。しかし、コロナも終息をし、不正な方法で儲けたいと考える業者がライブECに入り込むようになっている。

「ライブEC消費者満足度オンライン調査報告」(中国消費者協会)によると、「ライブECを利用しない理由」を尋ねたところ、最も多かったのが「商品の品質が保証されないのが不安」という回答が圧倒的に多かった。すでに消費者の中には「ライブECは品質が不安」というイメージができあがりつつある。

コロナ禍で生まれた生産者、販売者によるライブECというジャンルが定着をしようとしている。仕組みを整えて、消費者が安心して買い物ができる環境にしていく必要がある。

 

成長が続く東南アジアテック企業。投資家たちの視線が集まる

世界の投資家が東南アジアに熱い視線を送っている。報道されているだけで、2019年には309件の投資が行われ、投資金額は74.74億ドル(約7900億円)に達している。その中でも多いのがモビリティ関連、フィンテック関連だと浪在硅谷が報じた。

 

コロナ禍でもマイナス成長にならない東南アジア

東南アジアの市場が注目される理由は、その高い成長力だ。コロナ禍が起きる前、東南アジア主要国は、GDP成長率6.6%から7.3%の間を維持していた。特にベトナムは2年連続で7%を超え、5年連続で6%を超えている。

また、シンガポールブルネイ、マレーシアなど、豊かと言っていい国もある。シンガポールの2019年の1人あたりのGDPは6.77万ドルに達し、アジアで最高額になっている。ブルネイも2.93万ドルに達している(日本は3.93万ドル)。

当然ながら、コロナ禍の影響を受けているが、それでも2020年第1四半期のベトナムの成長率は3.82%、インドネシアは4.7%であり、コロナ禍の影響は限定的であり、回復も早いと見られている。

世界の先進国の成長が止まる中、東南アジアだけは成長を続けている。それが投資家が注目する理由だ。

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北アジア(日本、韓国、台湾)の成長率(オレンジ)と東南アジアの成長率(青)。東南アジアは、世界の投資家から熱い視線を浴びるようになっている。

 

平均年齢が若く、人口ボーナスが期待できる東南アジア

また、東南アジアの人口は6.7億人で、大国の人口並だが、多いだけでなく、平均年齢が28.8歳と若い。

スマートフォンの普及で、ネット人口も3.6億人と増え、現在も増加中だ。約3億人がなんらかのSNSを使いコミュニケーションを取り合っている。

一部では「若い中国」とも呼ばれていて、今後、人口ボーナスによる各産業の発展が期待されている。これらのことが投資家にとって大きな魅力になっている。

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労働人口の国別比較。東南アジア各国では、今後も労働人口が増加をする。しかし、韓国、中国、日本などでは労働人口が減少をしていく。労働人口=消費者主力群なので、東南アジアの経済に注目が集まっている。

 

バイクタクシーから商品も人も配送するGoJek

その中でも最も注目されているのが、インドネシアジャカルタで始まったライドシェアGoJekだ。スマホで呼べるバイクタクシーから始まったが、現在、これを起点にサービスを広げている。スマホ決済を始め、さらに飲食品、商品の即時配送を始めた。さらに、商品だけでなく、人の配送も始め、マッサージ師や美容師、清掃員、自動車修理などのエキスパートを自宅に運んでくれる。

2020年3月、多くの投資家が投資マインドが減退する中で、GoJekはFラウンド投資12億ドル(約1300億円)を行った。投資元は公開されていないが、Amazonではないかと推測する報道もある。

創業以来、GoJekは10回以上の投資を受け、累積投資金額は100億ドル(約1兆円)を超えていると推測されている。前回の投資は30億ドルで、テンセント、グーグル、Visa、京東などが投資をした。

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▲GoJekはバイクタクシーからスタートして、商品や専門スタッフの配送まで行うようになっている。

 

ウーバーを買収したGrab

2012年にシンガポールで創業したGrabは、GoJekのライバルになっている。すでに20回以上の投資を受けていて、GGVキャピタル、ソフトバンク、タイガーグローバル、ヒルハウスキャピタル、中国投資、平安投資などのベンチャーキャピタルの他、滴滴、去哪児などの企業が、2020年2月に8.5億ドルの投資を行い、累積投資金額は140億ドルを超えている。

Grabもバイク、トゥクトゥクなどのタクシー配車から始まったが、2016年からフードデリバリー、2018年には東南アジア地区のウーバーを買収、さらにスマホ決済、即時配送なども行うようになっている。

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▲Grabはバイクやトゥクトゥクの配車サービスからスタートして、ウーバーを買収し、フードデリバリー、即時配送まで事業を広げている。

 

配食サービスのDhamakanが成長

フードデリバリーも東南アジアで成長が期待されている市場だ。2018年には20億ドル規模だったが、2025年には80億ドルになると予測されている。しかも、コロナ禍により、フードデリバリーの需要は大きく伸びている。

GoJek、Grabともにフードデリバリーサービスを行っているが、フードデリバリー専業のスタートアップとしては、2015年にクアラルンプールで創業したDahmakanの成長が目立っている。2020年2月にBラウンド1800万ドルの投資を決め、累積投資額は2800万ドルとなった。楽天キャピタル、ホワイトスター、JAFCOアジア、GEC-KIPファンドなどのベンチャーキャピタルの他、Yコンビネーターが投資をしている。

Dahmakanとは、マレーシア語で「ご飯食べましたか?」の意味だという。同じくフードデリバリーのフードパンダ香港を立ち上げたジョナサン・ウェインが仲間とともに起業をした。

しかし、Dahmakanは一般的なフードデリバリーとは違っている。一般の飲食店の飲食物を配達するのではなく、自分たちで調理をし、独自のスマホ決済を使うという完結型フードデリバリーになっている。自社で調理をすることで、低価格で質の高い食事を届けるというのがコンセプトになっている。

Dahmakanでは200種類以上の食事メニューが用意されていて、そのうち、原材料価格などを考慮して、毎週40メニューが選ばれる。利用者はこの40種類から選び、配送時間を指定する。

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▲配食サービスのDahmakan。調理から配送まで一貫して行う安心感から利用者を広げている。

 

インドネシア最大級のユニコーンEC企業Tokopedia

ECの分野ではすでに競争が熾烈になっている。人口構成が若く、スマホ利用率が高い地域は、ECにとっては魅力的な市場で、さまざまなECが起業され、多くの投資資金が流れ込んでいる。

特に、Tokopedia、Lazada、Shopeeの3社が注目されている。

2009年にインドネシアで創業されたTokopediaは、俗に「インドネシアのアリババ」とも呼ばれている。2018年にはソフトバンクビジョンファンドとアリババから11億ドルの投資を獲得している。2020年初めに、ソフトバンクとアリババから15億ドルの追加投資を受け、インドネシア最大級のユニコーン企業となった。

それでもTokopediaの名前をあまり耳にしないのは、Tokopediaが海外進出をすることなくインドネシアに特化する戦略をとっているからだ。インドネシア市場は巨大であり、2025年にインドネシアのEC市場は820億ドルになると予測されていて、その場合でも東南アジアEC市場の54%を占める。また、Tokopediaは、いわゆるママパパショップ=個人商店の生存という社会貢献を掲げていて、これによりインドネシア市場に特化をしている。

中国でコロナ禍により、ライブEC(店主自らライブ放送に出演して、商品を販売する)が流行をすると、TokopediaもすぐにライブEC「TokopediaPlay」を導入している。

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インドネシアに特化したEC「Tokopedia」。インドネシア最大級のユニコーン企業に成長している。

 

独身の日セールを東南アジアで行うLazada

2012年にシンガポールで創業したLazadaは、インドネシアベトナム、マレーシア、タイ、フィリピンなどでサービスを提供している。特にマレーシア、フィリピン、シンガポール、タイの4カ国では月間アクティブユーザー数がトップのECになっている。アリババが投資をしており、アリババと同じように11月11日には独身の日セールを行うことで有名だ。2019年11月11日には、開始1時間で300万件の注文を受け、アクセス数は13億人に達したという記録を作った。

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▲Lazadaは、中国と同じように毎年11月11日にセールを行う。

 

ニューヨークに上場済みのSea傘下のShopee

2015年にシンガポールで創業したShopeeは、東南アジア最大のテック企業Seaの参加だ。ゲームのGarena、ECのShopee、フィンテックのSeaMoneyが主要事業。そのため、Shopeeもゲーム性の高いECになっている。口コミがSNS化されていて、利用者同士で交流できる他、ミニゲームで遊んで結果によって優待を受けることもできる。

LazadaとTokopediaにはアリババの資本が入っているが、Seaにはテンセントの資本が入り、2017年にニューヨーク市場に上場した時には、39.7%の株式を保有する最大株主になっている。

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▲Shopeeはミニゲームを用意して、ゲームの成績で優待が決まるという仕組みを取り入れ、消費者の心をつかんでいる。

 

ソフトバンク、セコイアが積極投資する東南アジアテック

投資家にとっては、東南アジアは今いちばんホットな地域になっている。2019年の投資額が最も多かったのはシンガポール政府投資公社(GIC)だが、日本のソフトバンク、米国のセコイアキャピタルも大型の投資を行っている。

特に、コロナ禍の負の影響が世界の中ではきわめて小さく、一方で「宅経済」系のフードデリバリー、ECなどは需要が刺激されたという点も大きい。もともと成長率の高かった東南アジアだが、コロナ禍によって、成長に弾みがつく可能性すらある。

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▲東南アジアに積極的に投資をしているのはシンガポール政府投資公社(GIC)、ソフトバンク(軟銀)、セコイア(紅杉)の3社。

 

 

コンテンツのプロはいらない。エンジニアと機械学習で成長したバイトダンス

中国のテックジャイアントBATの座を狙う新御三家としてTMDという言葉が使われるようになっている。バイトダンス、美団、滴滴の3社のことだ。最初に成功したニュースアプリでは、ニュースのプロは雇わなかった。エンジニアと機械学習で人とニュースをマッチングさせることに専念したことが成功に結びついたと富人靠科技が報じた。

 

BATに続く新御三家TMD

中国のテックジャイアントを表す言葉にBATがある。百度バイドゥ)、アリババ、テンセントの頭文字をとったものだ。このBATを脅かす新御三家として、TMDという言葉もよく使われる。頭条(トウティアオ)、美団(メイトワン)、滴滴(ディーディー)の頭文字をとったものだ。

このうちの頭条は、社名ではなくニュースキュレーションアプリ「今日頭条」のこと。開発した企業は字節跳動(ズージエティアオドン、バイトダンス)という。最初に「今日頭条」がヒットをしたため、通称として「頭条」と呼ばれることが多い。

バイトダンスは2012年3月に北京で創業された。半年後には「今日頭条」が広く普及し、一気に名前が知られるようになった。

 

百度を追い落とすTik Tokのバイトダンス

その後、2016年9月にショートムービー「抖音」(ドウイン)を開始、これが瞬く間に広まり、海外にTik Tokとして展開をしている。

2019年の売上額は1400億元(約2.1兆円)。そのほとんどは広告収入だ。コンテンツのリコメンド技術に人工知能を使ったことが核心技術となっており、圧倒的な効率で広告効果をあげている。そのため、検索広告大手だった百度は市場を蚕食され、業績を落としている。最近では、BATのBは百度ではなく、バイトダンスだとも言われるようになり始めている。

 

大学時代にソフトウェアに目覚めた張一鳴

創業者の張一鳴(ジャン・イーミン)は、1983年に福建省龍岩で生まれた。父親は東莞市で電子製品の工場を運営し、母親は看護師だった。父親がテクノロジー好きだったため、家庭でも海外の新しいテクノロジーや新しい製品についての話をすることが多かったという。

2001年に、張一鳴は天津にある南開大学に入学し、電子工学を専攻したが、成績は芳しくなかった。正弦波生成装置を組み上げるのに2時間もかかった上に、できあがった装置は期待通りには動かなかったという。それで、ソフトウェア工学に転科をした。これがよかったのか、張一鳴はソフトウェア開発にのめり込み、プリント基板を自動化するソフトウェアを開発して、大学生コンテストで入賞したこともある。

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▲バイトダンスの創業者、張一鳴。検索というスタイルが古く、それに変わるものとして、人と情報を機械学習でマッチングさせるという発想を得たことが、バイトダンス創業の基礎になっている。

 

不動産検索サイトの起業から出発した張一鳴

2005年に卒業した頃は、ネットバブル崩壊の影響がまだ残っていたが、それでもアリババやテンセント、百度といった新興企業が成功するのを見て、張一鳴はあこがれた。張一鳴は、マイクロソフトに在籍したこともあるが、すぐに辞めている。大企業の中でエンジニアとして働くことは、自分の目指すべきことではないと悟ったのだという。

そこで、同級生2人と開発チームを結成し、起業を目指したがすぐに失敗。そこで2006年2月に旅行検索サイト「酷訊網」に入社し、旅行用検索エンジンの開発を行った。これにより、業界では張一鳴の名前が知られるようになる。

2008年9月、張一鳴は、SNS「飯否」の経営に参加をする。その後、2009年10月に、不動産検索サイト「九九房」を起業、2年で150万人の会員を集めた。そして、2012年3月にバイトダンスを起業した。

 

ニュースのプロはいない。全員がエンジニアの会社

このバイトダンスという企業は風変わりにも程があった。なぜなら、全員がエンジニアだったのだ。最初のプロダクトは「今日頭条」。各メディアからニュース記事を収集して、利用者個人に適した記事だけを表示してくれるというニュースキュレーションアプリだ。

通常、このようなキュレーションを行うためには、ニュースに精通した人が必要で、既存の新聞社などからプロの編集者や記者を雇うものだ。バイトダンスにそのような「プロ」はまったくいなかった。ライバルたちは、鼻で笑って、バイトダンスは早晩消えてしまうスタートアップだと見ていたという。

しかし、張一鳴の信念は違った。どの記事を選ぶかは、プロの目ではなく、アルゴリズムで自動的に選ばれるべきなのだと考えていた。プロが上目線で、利用者のために「記事を選んであげて、押し付ける」のではなく、客観的なアルゴリズムで利用者と記事のマッチングがされるべきだと考えていた。勝負どころは、その精度をどこまで上げられるかだけだと考えていた。

そこに人工知能機械学習というテクノロジーが実用レベルになってきた。張一鳴は機械学習で、コンテンツと利用者をマッチングさせることをバイトダンスの中核テクノロジーとして定め、今日頭条、火山小視頻、Tik Tok、西瓜視頻などのプロダクトをリリースし、中国国内ではどれも広く使われるアプリになっている。

どのアプリも「なぜだか、自分の見たいコンテンツが次から次へと出てくる」という評判を得ている。

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▲バイトダンスの最初のヒットアプリ「今日頭条」。ニュースキュレーションアプリだが、ニュースのプロは介在しない。すべて機械学習により、記事と利用者がマッチングされる。

 

検索の時代は終わる。マッチングの時代が始まる

張一鳴は酷訊網のために検索エンジンを開発しているときに、検索というスタイルが終わることを感じたという。当時、列車のチケットは駅に行って窓口に並んで購入するしかなく、ネットで購入できるのは旅行社や個人が転売で出品するチケットだけだった。しかし、いつ出品されるのかわからない。そのため、タオバオなどのアプリに頻繁に開き、出品されているかどうかを、毎回検索して確かめなければならなかった。

自分が帰省をするチケットを買うときに、この手順に煩わしさを感じた張一鳴は、昼休みの1時間を使って、簡単なスクリプトを書いた。それは、一定時間ごとにタオバオを検索し、チケットの出品を見つけたら、携帯電話にメッセージで通知するというものだった。

この経験から、人が検索をしてコンテンツを探すのではなく、人とコンテンツが自動的にマッチングされる仕組みが必要だと感じた。そこに機械学習というテクノロジーが登場した。

このような経験が、バイトダンスの起点になっている。

検索大手の百度機械学習マッチングのバイトダンス。手法は異なるが、サービス領域は重なっている。そして、広告収入で百度は売上を落とし、バイトダンスは売上を急成長させている。検索は、インターネットの入り口ではもはやなくなっている。

 

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コロナ終息後、中国経済に起きている5つの変化

まぐまぐ!」でメルマガ「知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード」を発行しています。

明日、vol. 030が発行になります。

 

マッキンゼー&カンパニー中国が面白いレポートを公開しています。「快進中国:新型コロナはどのようにして5大経済趨勢を加速させたか」というものです。

5つの大きな経済変化とは次の5つです。

1)デジタル化

2)海外依存からの脱却

3)企業競争の激化

4)消費者の成熟

5)テック企業の社会的役割の増大

 

このレポートが面白いのは、「コロナ禍により起きた経済の変化」を論じているのではなく、「元々起きていた変化のうち、コロナ禍によりさらに加速した変化」を論じている点です。

もちろん、コロナ禍により中国経済は大きな打撃を受けています。2020年第1四半期のGDP成長率は-6.8%と記録的な落ち込みとなりました。1992年に四半期ごとのGDP成長率を公表するようになって初めてのマイナス成長です。

しかし、多くの都市が封鎖状態であったことを考えると、傷は浅くすんだとも言えます。

 

このメルマガでもお伝えしているように、店舗小売が全滅する中、EC、新小売、ライブEC、外売といった「宅経済」が大きく伸びて、減少分をある程度補えたからです。注意していただきたいのは、EC、新小売、ライブEC、外売を実現するテクノロジースマートフォンスマホ決済、ミニプログラム、即時配送といったものは、コロナ禍で急遽開発されたものではなく、以前から存在していたものです。新しく作るのではなく、以前からあったもので、コロナ禍という環境下に適合するものの需要が伸びたのです。

それが、2020年第2四半期のGDP成長率は+3.2%という素早い回復に結びついています。さらに、第3四半期では回復がさらに加速をすることになるでしょう。

 

「備えあれば憂いなし」とは殷の宰相の言葉「これ、ことをこととする。すなわち、それ備えあり。備えあれば憂いなし」から生まれた古事成語ですが、常日頃から「ことをこととする」=やるべきことはやっておくをしているかどうかで、コロナ禍のような大きな災難を乗り切れるかどうかが決まるのは当然と言えば当然です。

レポートが指摘するこの5つの「加速」を詳しく知ることで、中国のテック経済の強さが理解できるのではないかと思います。また、日本で、これから経済回復が始まるときのヒントにもなるのではないかと思います。

一応、先に答えをいっておくと、根底にあるのは「なんでもやってみる」です。なんでもやりますから、99%のものは失敗をして消えていきます。しかし、1%が生き残り進化を始める。すると、また別の「なんでもやってみる」が登場して、99%が消えていく。これを繰り返しています。まさに、生物進化そのものなのです。

今回は、コロナ禍により、加速する5つの変化についてご紹介します。

 

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今月発行したのは、以下のメルマガです。

vol.027:中国に残された個人消費フロンティア「下沈市場」とは何か?

vol.028:MaaSにいちばん近い企業。滴滴出行の現在

vol.029:店舗、ECに続く第3の販売チャンネル「ライブEC」

 

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同時に10人まで体温をリモート測定。新たな人工知能防犯カメラを開発した深蘭科技

新型コロナの感染拡大後、深蘭科技(シェンラン、ディープブルー)が開発した「猫頭鷹」(ふくろう)が全国に普及している。猫頭鷹は防犯カメラと体温測定を兼ねた機能を持っている。設置しておくだけで、一度に最高10人まで体温測定を行い、同時に顔認証などもすることができる。学校、駅、空港などを中心に導入されていると紫金山科技が報じた。

 

体温測定と防犯カメラ機能を兼ね備えた「猫頭鷹」

猫頭鷹は赤外線と可視光を感知し、さらに画像解析を行うことで、体温測定と防犯カメラの機能を備える。360度回転することができ、13m以内の人物を検知して、体温を計測する。人は、止まることなく、普通に通路を通るだけでいい。また、体温に異常を感知した人を発見すると、30秒間追跡をして、精密な体温測定をし、最終的に0.1度の誤差で計測する。

さらに、オプションで顔認識などもできるので、発熱の疑いがある者、部外者が通ろうとすると警告通知を出すことができる。また、屋外環境でも正確な体温測定ができる。5G接続にも対応しているので、管理画面とケーブル接続をする必要はない。

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▲深蘭科技公式サイトにある猫頭鷹の紹介。可視光と赤外線を同時感知し、人工知能による画像解析で体温などを計算する。深蘭科技は人工知能技術をさまざまに応用する企業。

 

公共空間、オフィス、マンションなどの標準装備に

すでに公安部第三研究所の防犯機器としての認証も取得したため、武漢、上海、北京、重慶山東省、内モンゴル自治区などの学校、駅、空港、地下鉄駅、さらにはオフィスビル、マンションなどに設置され、防犯、防疫の決定版になろうとしている。

見た目はやや大き目の防犯カメラと変わらないため、ヒット商品となり、普及が進んでいる。現在のところ、入り口にスタッフが控え、額にあてる非接触体温計により体温測定を行うのが一般的になっている。しかし、あまり評判はよくない。「額に銃口を突きつけられるようだ」と不快感を感じる人が多いという。また、専任のスタッフを配置しなければならず、しかもそのスタッフは感染者と接触をするリスクもある。

猫頭鷹は、このような問題を一挙に解決してくれる。人は以前と同じように通過をするだけでよくなり、同時に防犯カメラによる監視ができ、体温測定もできる。さらに、顔認証機能が搭載されれば高いセキュリティが確保される。

すでに猫頭鷹と同様のデバイスも登場してきていて、中国のオフィスビルやマンション、学校の入り口には標準されていく可能性がある。

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武漢市のマンションに設置された猫頭鷹。マンションに入る人の体温測定を行う。発熱している人が入ろうとすると、管理人に通知が送られる。戸外に設置されても、体温が正確に測定できる。

 

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上海市の嘉定第一中学に設置された猫頭鷹。学生は普通に通学するだけで、自動的に体温測定されることになる。

 

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武漢市新華江北社区に設置された猫頭鷹。ひとつの通りに町内会のような組織があるが、現在はドアを設置して、部外者を入れないようにしているところが多い。その入り口に猫頭鷹が設置された。左手にこの社区の事務所があり、猫頭鷹の管理を行っている。

 

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武漢漢口駅に設置された猫頭鷹。体温測定だけでなく、防犯カメラとしても機能している。

 

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▲猫頭鷹の管理画面。顔検知機能で人を捉え、体温測定をする。近日中に顔認証機能も搭載される。

 

原沢製薬工業 非接触型体温計 イージーテム HPC-01

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