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スマホ決済のWeChatペイが、アリペイを猛追。その立役者はお年玉機能の「紅包」

スマホ決済2位のWeChatペイが、1位のアリペイを猛追し、シェアは49.9%、40.7%にまで迫っている。シェアを伸ばした最大の理由は、個人送金機能「紅包」の利便性と楽しさにあると金塔県融媒体中心が報じた。

 

WeChatペイの利用者が急増

中国の対面決済は、その多くがスマートフォン決済になっている。最もよく使われるのはアリババの「支付宝」(アリペイ)、テンセントの「微信支付」(WeChatペイ)、銀聯の「雲閃付」(UnionPay)の3つになる。

コロナ禍前、利用されるのはアリペイが圧倒的に多かった。決済金額シェアでは、6:3:1と言われ、WeChatペイはアリペイの半分程度のシェアしかなかった。ところが、2022年の統計ではアリペイ49.9%、WeChatペイ40.7%と、WeChatペイが急速に追い上げ始めている。

▲支付宝(アリペイ)と微信支付(WeChatペイ)は、以前はシェアが2:1にまで開いていたが、紅包機能によりWeChatを使う人が増え、シェアが迫りつつある。

 

利便性の高い個人送金機能「紅包」

WeChatペイがじわじわとシェアを伸ばしている理由は、「紅包」(ホンバオ)の存在だ。紅包はお年玉などを入れる赤いポチ袋のことで、WeChatペイでの紅包は、他人にお金を送金できる仕組みのことだ。チャット画面で紅包を送るが、受け取った方は開けてみるまでいくら入っているかわからない。実際、旧正月である春節には家長から子供たちにお年玉をあげる習慣があるが、その多くがWeChatペイの紅包に置き換わった。儀式性を大切にし、現金をポチ袋に入れて手渡しする人もまだ多いが、遠方にいて会うのが簡単ではない場合は、WeChatペイの紅包が使われる。

また、企業が春節、目標達成などで金一封を配る場合、企業が消費者に向けてキャンペーンで配る場合にも紅包が使われるようになっている。

▲WeChatペイの紅包。紅包は、通常のメッセージに添付されてくる。タップして開くまで、中に入っている金額がわからないことがミソ。送られたお金は、WeChatペイに自動的にチャージされる。

 

アリペイよりも利便性の高い個人送金機能

WeChatは本来がSNSであり、連絡を取るのによく使われている。そのため、知人の連絡先はだいたい登録されている。送金をしたい場合は、対面でQRコードを読み合って送ることもできるが、連絡帳に登録をされていれば遠隔地にいても送金をすることができる。

一方、アリペイは商店での決済を基本に考えた決済アプリで、SNS機能は存在していない。そのため、目の前にいる人に送金をしたい場合はQRコードなどを介して送ることができるが、遠隔地にいる人に送りたい場合は、相手のアリペイアカウントがわかっていないと送ることができない。

この違いがあるために、お金を送る時はWeChatペイが使われ、楽しく送金ができる紅包がよく使われる。

▲紅包には無料、有料の袋がさまざまあり、好きな袋を使ってお金をオンライン送金することができる。

 

子どもたちがお年玉が欲しくてWeChatを使う

お年玉に紅包が利用されるようになると、子どもたちはそれをきっかけとしてスマートフォンを持つようになり、WeChatを使うようになる。遠い親戚からもお年玉をもらえるようになるからだ。親としても、子どもと連絡がつきやすくなり、位置情報までわかるため、早い時期からスマートフォンを持たせ、WeChatを入れることを歓迎する。

つまり、子どもたちにとって、初めてのスマホ決済がWeChatペイになることが多い。このような子どもたちが成人をすると、自然にWeChatペイを使うようになる。これがWeChatペイのシェアがじわじわとあがってきている要因になっているのではないかと見られている。