店舗の店主が5ヶ国語で商品を紹介するビデオが話題になっている。アリババと義烏国際商貿城が共同開発したシステムで、中国語で商品を紹介したビデオを生成AIを使い、声質はそのままで4ヶ国語に翻訳し、音声を生成するというものだと環球時報が報じた。
日用雑貨の巨大集積地「義烏」の悩みは多言語対応
浙江省義烏市。ここには約7.5万店舗が軒を並べる義烏国際商貿城があり、世界中のバイヤーが日用雑貨の買い付けにやってくる。面積は640万平米、東京ドーム140個分。210万種類の商品が購入できる。そのため、店舗のスタッフはほぼ全員が取引に必要な程度の英語を話すことができる。しかし、最近では中東や欧州のバイヤーも訪れるようになり、その中には英語が苦手なバイヤーもいる。そのため、今までは翻訳アプリを使って取引に必要な意思疎通をしていた。
しかし、翻訳アプリでは細かい意思疎通が難しいことも多く、英語以外の言語にどう対応するかが問題になっていた。
誰でも6ヶ国語で話せる「デジタル店主」
ここに、「デジタル店主」が導入されて話題になっている。義烏国際商貿城のサイトに掲載された店舗のビデオでは、店主が中国語で商品の紹介をしている。しかし、下には「アラビア語、英語、スペイン語、中国語、フランス語」の5つのボタンがあり、これをクリックすると、瞬時に店主が話している言語が他の言語に切り替わるのだ。もちろん、言語が切り替わっても、店主の声そのままで外国語を話している。
このデジタル店主を利用して、5ヶ国語を話すビデオを公開した宏盛玩具廠の孫麗娟社長は、環球時報の取材に応えた。「来店してくださるお客様から、どこでこんなにたくさんの外国語を学んだのかとよく聞かれます。あるお客様は、あなたのアラビア語は発音が非常にきれいですと褒めてくださいました」。
生成AIが中国語を声質そのままで翻訳
孫麗娟社長は英語は話せるものの、アラビア語やスペイン語はまったくわからない。このシステムは、生成AIが中国語で話した内容を声質を変えずに外国語に翻訳してくれているのだ。
しかも、外国語の発音に合わせて、口の開き方を映像的に調整する機能も備わっているため、外国語に切り替えても、不自然さが生まれない工夫もされている。
義烏国際商貿城では、英語以外の外国語の問題を解決するために、昨2023年8月からアリババと提携し、中国語で話した内容を多国語に翻訳し、本人の声で話すシステムの開発を始めていた。これが現在、テスト段階にきており、孫麗娟社長がテストに協力をした。そのビデオを公開したところ、早速、義烏の商店主たちから注目を浴びることになった。
商売に必要なのは対面コミュニケーション
孫麗娟社長は、商売に必要なのは対面コミュニケーションであるという。顔を見て話をして、最後は相手が信用できるかどうかを判断して購入を決断する。特に義烏では、数個のサンプルを見て、数十万個、数百万個の購入を決断するのだから、店主が信頼できるかどうかは購入の大きな決め手になる。
このような多言語ビデオがあると、非英語圏のバイヤーが店主に親しみを持ってくれる。帰国をしてから追加発注や相談を受けた場合も、翻訳ツールを使ってテキストで返事をするのではなく、ビデオを撮影して、それを多言語化し、送信するということが行われ始めている。さすがにリアルタイムで翻訳をしてくれるわけにはいかないが、数分で多言語ビデオが完成をするため、海外取引に大きな力となってくれると期待をされている。