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設定は子どもが行い、高齢者の親は使うだけ。高齢者でもスマホ決済やタクシーサービスまで利用可能

騰訊(テンセント)SSV銀髪科技ラボと幾米物聯(ジーミー、Jimi IoT)は協働をして、高齢者向けスマートフォン「銀齢守護カード」を発売した。家族などに電話ができるだけでなく、WeChatペイでの決済も可能だ。ポイントは、設定は子どもがリモートで行い、高齢者の親は使うだけという点だと全是技能が報じた。

 

高齢者には難しいスマホ決済の設定

高齢者向けスマートフォンは、これまでも発売されているが、なかなか決定版と呼べるものが出てこない。高齢者向けと言っても機能を絞りすぎると売れない。しかし、機能を盛り込むと、その設定をしなければならず、高齢者には難しく不満が出る。そのバランスがうまくいかず、結局は、多くの高齢者がシンプルなスマートフォンを購入し、自分でわかる範囲の機能だけを使うということになりがちだった。

しかし、ネックとなったのはスマホ決済の設定だった。使うだけであれば高齢者でも問題はないのもの、銀行口座との紐付けや本人の身分確認などはハードルが高い。そこで、銀齢守護カード(通称ミニスマホhttps://www.jimiiot.com.cn/product/yanglao/130.html)では、子どものスマホに依存し、設定などは子どもが行うということで、この問題を解決している。

▲そもそもは、高齢者のWeChatペイ決済カードとして開発が始まり、そこに携帯電話機能が後から搭載された。物理ボタンはいずれも長押ししないと動作しない高齢者仕様になっている。

 

子どものWeChatペイ口座を利用する

高齢者がWeChatペイを使うのは簡単だ。画面を長押しすると、QRコードが表示されるので、決済端末にかざすだけだ。自分でQRコードを読み取る形式の場合は、QRコードが表示された状態で、店舗のQRコードにかざすとスキャンされるので、金額を入力することで決済ができる。

このWeChatペイの特徴は、自分の口座ではなく、子どものWeChatペイ口座から支払われるということ。つまり、高齢者は面倒な設定をする必要はない。利用額は1日1000元(約2万円)に制限されているが、子どもは、使った金額、場所などを自分のWeChatペイ履歴から確かめることができる。子どもは、決済履歴から親がどのような生活を送っているかがわかる点も評価されている。

▲画面を長押しするとWeChatペイのQRコードが表示されるので、それをかざすと決済ができる。商店側のQRコードを読み取るには、そのままかざすとカメラからQRコードのスキャンが行われる。

 

長押しで動作する物理ボタンを採用

このミニスマホの特徴は、子どもがWeChatミニプログラムからすべての設定を行うというのが基本だということだ。通話ボタンは3つしか用意されてなく、その3つの通話ボタンにどの電話番号を割り当てるかは、子どもがあらかじめ設定しておく。多くの場合は、家族や介護サービス、友人などを割り当てる。また、専用のリモート診療、滴滴(ディディ)の配車サービスコールセンターなども用意されており、このような電話番号を割り当てることもできる。

また、通常のスマートフォンと同じように電話を受けることもできるが、ホワイトリスト方式になっているため、詐欺や営業電話など、登録していない番号からの電話は無視される。

また、すべてのボタンは物理ボタンであり、長押しが基本になっている。タッチだけだと誤って押してしまう可能性があるからだ。特に、SOSボタンは3秒長押しをしないと動作しない。SOSボタンを押すと、警察署につながり、氏名や年齢、位置情報などのデータも送られる。急病の場合は、そこから救急に連絡をしてもらえる。

▲ディスプレイはタッチパネルになっており、お薬タイマーやアラームの設定ができる。しかし、基本はあくまでも子どもがミニプログラムからリモートで設定する。

 

お薬アラームやジオフェンスも設定可能

この他、アラームの設定もできる。朝起きるアラームにも使えるが、薬を飲む時間を設定しておくことができる。さらに、ジオフェンスを設定することができ、一定範囲から外に出ると子どもに通知をする、危険な場所(山、沼地など)に入ると自動的に警察に緊急通報がされるなどを設定することができる。

この銀齢守護カードの特徴は、設定をすべて子どものスマートフォンのミニプログラムから行うということだ。これにより、高齢者の本人はやっかいな設定から解放され、高齢者の行動が逐一子どもが知ることができるようになる。このような設定はすべて、子どものスマートフォンから行えるため、実家が遠い人でも親に使ってもらうことが可能だ。

また、首から下げられるストラップもついており、下げておけばなくすことも避けられる。

▲銀齢守護カードのWeChatミニプログラム。子どもはこのミニプログラムからさまざまな設定や、現状確認をする。ジオフェンスも設定でき、高齢者の徘徊や危険地域への立ち寄りなどもリアルタイムで確認できる。

 

子どもが設定し、高齢者の親は使うだけ

通話ができるため、携帯電話の系列の製品ではあるが、そもそもは、高齢者のためにカード型のWeChatペイ支払い端末というところからこのプロジェクトはスタートしている。つまり、元々は高齢者用電子財布というのが原点になっている。そのため、商品名も「○○ケータイ」ではなく「銀齢守護カード」になっている。

アプリなどをダウンロードして、ゲームを楽しんだり、ショートムービーを楽しむことはできない。しかし、そういう楽しみ方をしたい高齢者は、別途スマートフォンを購入すればいいのだ。

今までの高齢者向けスマートフォンの多くが、「使い方をわかりやすくしたので、高齢者でもつかないこなせる」だったものが、銀齢守護カードでは「難しいところは子どもに頼る」というものになっている。これは大きな違いだ。価格も239元(約4900円)と低価格に抑えられている。