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中国のデジタル科学研究は米国にどこまで迫っているのか。論文、人材、特許の量と質から考える

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今回は、中国のデジタル科学研究が、米国を中心とする国際レベルの中でどこまで迫ってきているのかについてご紹介します。

 

今年も6月7日から、高考(ガオカオ、普通高等学校全国統一試験)が開催されました。現在採点中で、6月27日から入学の申し込みが始まります。今年の受験者は1291万人と過去最高になりました。

高考の合格率は80%程度と報道されることが多いですが、高考は総合大学だけでなく、単科大学職業大学なども含まれます。4年制のいわゆる「本科」だけに限ると、今年の募集人数は490万人で、本科に進学するには倍率2.63倍というかなり厳しいハードルを超えなければなりません。

 

高考は、統一試験と言っても、実際は省、直轄市などの行政単位ごとに行われ、科目なども微妙に違っています。例えば、上海市では国語、数学、外国語が必須で、政治、歴史、物理、化学などの科目から1つを選択します。江蘇省では必須3科目の他、選択科目を2つ選択します。

各大学は、行政単位ごとに募集人数を割り振り、受験生は得点上位から希望の大学を選んでいきます。定員が埋まってしまうと選択できないため、第2希望、第3希望に進学をするということになります。

 

今年の高考受験生が多かったのは、コロナ禍の影響だと言われています。高考は高卒資格を持っていれば年齢制限はありません。ただし、合格をしたのに進学をしないと受験資格を失います。そのため、どこも不合格であったら翌年また受験することができます(アリババの創業者ジャック・マーは高考を3回も受験しています)。また、多いのが、大学に入学してみたものの、自分が思っていたのとは違うと失望して、翌年の高考を受け直すというパターンです。コロナ禍の間、多くの大学が授業をオンラインに切り替えたため、授業の内容に不満を持った学生が多かったのではないかと言われています。

これにより、再度高考を受験する人が増え、過去最高になったようです。それでも、昔よりはかなり大学は入りやすくなりました。教育部の統計によると、1970年代の本科合格率は、5%以下、つまり倍率20倍以上で、大学進学は簡単ではありませんでした。入りやすくなったのは、2000年前後からで、本科の合格率が30%を超えます。そして、2015年には過去最高の44.17%となり、以降、合格率は再び下がり始めます。大学の数を増やし、募集人数も増やしていますが、それ以上に大学進学を希望する人が増加をし、進学しづらくなっています。

しかし、大学の新設はあまり行われなくなっています。4年制総合大学は教育機関であるとともに研究機関でもあるため、むやみな新設は研究機関としての質を下げることになるからです。一方で、即戦力を養う単科大学職業大学などを新設することで誰もが高等教育を受けられるように対応しています。

 

今回のテーマである中国の科学研究のレベルを考えるとき、中国の研究の質の悪さは常に議論になります。例えば、「発表される論文の数は多いが、粗製濫造で、質は悪い」「中国が取得する技術特許は数は多いが、価値を生み出す特許は少ない」などと言われます。

これはかなりあたっていますが、だからと言って、中国の科学研究のレベルは低いと思い込んでしまうと、いつか足元をすくわれることになります。なぜなら、みなさん、すでにおなじみになっていると思いますが、これがいつもの中国のやり方だからです。新しいビジネスを興す時もまったく同じですが、最初は大量のプレイヤーが登場してカオスな状態となり、そこから淘汰整理が行われ、質を上げていくというやり方です。中国の科学研究も、当初はとにかく論文発表をすることが奨励され、粗製濫造の研究が行われましたが、急速に質をあげる方向に進み始めています。

では、いったい粗製濫造からどのくらい質をあげてきているのでしょうか。中国の科学研究の現在地点を把握しておくことは非常に重要です。

 

そこで、今回ご紹介したいのが、中国の論文ポータル「AMiner」(https://www.aminer.org/)です。ここにはデジタル科学の論文が世界中から集められ、データベース化されています。検索をして論文を探すだけでなく、主要論文にはキーポイント解説や専門家によるコメントがつけられているものもあります。それだけでなく、引用数などの統計も公表しています。自然科学全般ではなく、あくまでもデジタル科学に限定したポータルサイトですが、ここの統計を見ると、中国のデジタル科学研究の現在地がはっきりとわかります。

今回は、このAMinerの統計を使い、中国のデジタル科学研究の論文、研究者、特許の量と質をご紹介します。また、論文数から、現在どの分野の研究がホットになっているかもわかるため、強いトレンドになっている10の研究分野もご紹介します。

 

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