中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

コロナ終息後の復調の鍵は「中高年」と「ネットサービス」

コロナ終息後、さまざまな業種が復調をしているが、その中でも目立つのが中高年に対応をしたネットサービスだ。中高年のネット人口は増え続けている。アクティブな中高年が増え、スマートフォンを使いこなすようになっているからだ。また、中高年は信頼度でブランドを選ぶ傾向があるため、一度信頼を勝ち得た企業は復調が早かったと健康産業人が報じた。

 

店舗の客足は戻るのか、永遠に戻らないのか

このコロナ禍で、旅行、飲食、娯楽、日用品小売などが大きな打撃を受けた。特に実体店舗への打撃は深刻だった。しかし、中国の新規感染者数はほぼゼロになったものの、経済に対するコロナ禍の影響は終わっていない。復調をする企業もある一方で、実体店舗の客足は鈍いままで、完全復調がなかなか見えてこない。

言うまでもなく、EC、デリバリー、モバイルオーダーという非接触、宅配のサービスが広まったからだ。感染への不安が解消した今でも、このような非接触サービスを使い続ける人が多く、その分、実体店舗の売上に影響をしている。

これがコロナ禍という一時的な現象で、いつかは以前と同じように戻るのか、それとも消費スタイルが転換をしてしまったのか、関係者の間で大きな議論になっている。

 

コロナ禍でEC化率は20%+で定着

有力な見方は消費スタイルが転換したというものだ。なぜなら、中国は2003年にSARSの感染拡大で同じ体験をしており、その時にアリババや京東(ジンドン)などのEC企業が登場し、一気に中国はEC時代に突入した。

社会総消費に対するECの消費額、つまりEC化率はコロナ前で20%に達していた。それがコロナ禍以降、30%近くになる月もあるほどだった。実体店舗が営業再開を始めるとEC化率はやや下がったが、EC化率は20%代前半を推移している。

なお、「令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子取引に関する市場調査)報告書」(経済産業省)によると、日本のEC化率は6.76%とされている。いかに中国のECが日常生活に浸透しているかがわかる。

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▲社会消費に対するEC消費(EC化率)の変化。コロナ禍以前は20%程度だったが、コロナ禍で急上昇をした。その後落ち着いているが20%前半で推移をしている。

 

ネットサービス復調の鍵は中高年

では、ネットサービスはなぜ素早く復調できたのだろうか。その鍵になっているのが中高年だ。中国の国営企業では、早ければ50歳、遅くとも60歳には定年退職になる。そのため、50歳以上を「老年」に分類することが多い。この50歳以上の中高年に対応した企業が、終息以降素早く復調をしている。

それは、コロナ禍以前にじゅうぶん予測できたことだ。「第46次中国インターネット発展状況統計報告」(中国インターネット情報センター、CNNIC)によると、2020年6月時点の中国のネット利用者は約9.4億人。3年前の2017年6月は約7.5億人であり、いまだに伸び続けている。

しかし、その内訳を見ると、伸びているのは40代以上。特に50代以上の中高年の伸び率が著しい。若年層は人口が減っていることもあり、相対的な割合は減少傾向にある。

つまり、中国のネットサービスの新規顧客は、若年層ではなく、中高年となっているわけで、ここのフォーカスをすることが企業には求められていた。それができていた企業は、終息以降に復調だけでなく成長を始め、それを怠っていた企業は苦しむことになっている。

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▲中国のネット人口。現在、約9.4億人。伸び率は年々鈍化している。

 

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▲ネット人口の世代別変化。30代以下は構成比としては減少をしている。一方で、中高年以上が大きく伸びている。

 

中高年がライブコマースで買い物体験を楽しむ

特に目立ったのは、感染拡大期間に中高年がライブコマースで買い物をする現象だ。ライブコマースは「Tik Tok」「快手」「タオバオライブ」などで、販売業者がライブ配信をし、その場で紹介されている商品を購入できる仕組み。

体験していただければわかるが、フリックするだけで次のライブコマースに切り替えられる使い勝手のよさもあり、見ているだけで、賑やかな商店街を冷やかして歩いているような楽しさがある。買い物をせずに、ただ見るだけというエンターテイメントのひとつとして楽しんでいる人も多い。

 

・思った以上にスマホを使いこなしている中高年

健康産業人では、アンケート調査ではなく、手間をかけて、中高年の訪問調査を行っている。その知見によると、現在の中高年は想像以上にアクティブで、スマートフォンになじんでいる人が多いという。

・常用しているアプリは、WeChat、タオバオ、京東、拼多多、百度、今日頭条、美篇(写真、テキスト主体のSNS

・旅行関連のアプリを多数使っている。携程、飛猪などの予約アプリ、百度地図、高徳地図などの地図アプリ、滴滴出行などのタクシー配車アプリなど。

・金融理財アプリも使っている。中国工商銀行招商銀行など、自分が利用している銀行のアプリを入れ、オンラインバンキングとオンライン投資信託を利用している。

・動画共有アプリをよく使う。優酷、愛奇芸、テンセントビデオなどの映画やテレビ番組が見られる動画アプリや、Tik Tokなどのショートムービーアプリを使っている。以前の中高年はテキスト志向だったが、現在では完全に動画志向になっている。

ライブコマースで桁外れの売上をあげるライブ配信主、網紅(ワンホン)は若い世代がメディアではよく取り上げられるが、近年、目立つのが中高年の網紅だ。販売しているものは、健康食品や旅行、投資信託、車、家など単価の高い商品が中心になっている。

 

中高年に特徴的な「ブランドへの信頼感」の作り方

健康産業人は、終息後、素早く復調し、成長軌道に乗った日用品販売EC企業を紹介している。この企業では、コロナ禍以前から、将来性を考えて、中高年への販売に力を入れていた。

と言っても、中高年向けの特別な商品を用意したわけではない。全世代向けの商品を販売し、そこに中高年向けの視点を持ち込んだ。例えば、緑茶のような飲料を販売するときに、緑茶の成分が生活習慣病予防にどのような効果をもたらすかを説明するというものだ。

この企業は、今年2020年の2月と3月の感染拡大が最も厳しい期間、購入者に無料のおまけとして、消毒液とマスク、サプリメントをつける施策を行なった。中高年はアクティブだといっても、感染拡大期間には、感染リスクを恐れて買い物すら控える人が多かった。そのため、このおまけ策は歓迎された。

それでも、感染拡大期間、売上は50-60%に落ち込んだという。消毒液やマスクを配布したといっても、それだけで必要な量をまかなえるほどではなかったからだ。マスク欲しさにそのECを利用するという人が現れるほどまでではなかった。

しかし、終息後の復調スピードが違った。4月の段階で、昨年の80%程度まで回復をし、6月になると昨年より20%も売上が増えた。

健康産業人は、この企業は消毒液やマスクを配布することで、中高年顧客の信頼を勝ち取ることに成功したと分析している。中高年は、ブランドに関しては保守的で、高機能の新興ブランドが登場し、そのよさを理解していていも、なじんでいるブランドの製品を購入する傾向がある。

中高年の消費行動には、「ブランドへの信頼感」が大きく作用していると指摘している。

 

コロナ禍は想定できなくても、中高年シフトは想定できた

コロナ禍のようなリスクが存在することを予測できた人はほとんどいない。ましてや、それがどのタイミングで起きるかなど予測できるはずもない。しかし、「ネット小売は中高年にフォーカスすべき」「中高年の消費行動はブランドへの信頼感が決め手になる」ということは、コロナ禍以前から明らかになっていたことで、その対応をしていた企業が終息後に業績を伸ばしているという、ビジネスではあたり前のことが起きているにすぎないとも言える。

コロナ禍によって、目先の利益にしか興味がない企業が淘汰され、事業を持続させていくことを考えている企業が生き残る。そのような選別が起こっている。