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ホコリまみれの汚れた車をアートに変える。綿棒で書いた「ホコリ画」がSNSで話題に

ショートムービープラットフォーム「抖音」で拡散しているのが、ホコリまみれの汚れた車にアートを描くというものだ。自分の車にも描いて欲しいという申し出が殺到していると九派新聞が報じた。

 

ホコリまみれの車に描かれたアート

ある男性が始めた自動車アートが話題になっている。それは、放置されてホコリでびっしりになった車の窓に、綿棒やウェットティッシュを使って絵を描いていくというものだ。多くの人がその絵の面白さに目を惹かれ、それがホコリを画材にしていることに気がついてびっくりする。

中国は多くの地域で、春になると黄砂が降る日が続く。この時期になると、車の洗車は意味がなくなる。洗車をしてもすぐに汚れてしまうからだ。もはやあきらめて、窓だけ拭いて、車体は汚れたまま乗っている人も多い。その悩みを逆手に取って、アートにしている点が面白がられた。

▲付文豪さんの作品。左のジャムス市がコロナ禍に見舞われた時の応援メッセージは、地元で大きく取り上げられた。

 

街を美しくするアート活動

この作者は、大学を卒業したばかりの付文豪さん。父親が脳溢血で倒れたため、看病をするために、故郷である黒竜江省ジャムス市に帰り、絵画、壁画、彫刻などのアトリエを開いた。

仕事の合間に近所の枯れた街路樹、大きな石、壊れかけた壁などにアートを描くことを始めた。近所の人からは、街中の汚い風景がアート作品に変わって美しくなったと喜ばれた。

その付文豪さんは、街中にあるホコリまみれで放置されている車に目をつけた。放置車両であることが多く、近所の人にとってはじゃまであるのに勝手に処分ができない頭の痛い問題だ。付文豪さんは、そのような美しくない風景を美しくしようと思い、綿棒を使って絵画を描き始めた。

▲付文豪さんは、街を歩いてホコリまみれの汚い車を発見した。たまたま綿棒を持っていたため、絵を描き、街を少しでも美しようとした。それが話題になった。

https://v.douyin.com/koLJrR7/

付文豪さんが、抖音で発信している動画。この動画が話題になったことで、本業にも依頼が大量に舞い込むようになった。

 

たまたま持っていた綿棒が画材に

付文豪さんは、ハルビン理工大学の芸術学院で絵画を専攻した。5、6歳の頃に絵を描くのが好きになり、それ以来、ずっと絵を描き続けてきた。

そして、生まれた街である黒竜江省ジャムス市でアトリエを開いた。アトリエのショートムービーの公式アカウントもつくり、自分の作品を発表していくと反応があり、なんとか本業のアートの依頼で生活がしていけるようになった。

放置自動車アートもアトリエの公式アカウントでショートムービーを配信してみたところ、大量に拡散されて、大きな話題となった。

付文豪さんは、転んで膝を擦りむいて、薬局で綿棒と消毒液を買った帰りに、汚れた車を見つけて、アートにすることを思いついた。たまたま持っていた綿棒で絵が描ける。そこで、「崖の上のポニョ」の宗介とポニョの絵を描いたのが始まりだ。

この車の持ち主は邢さんという人だった。彼女は最近仕事が忙しく、1月ほど車を使っていなかった。絵は断りなく描かれてしまったが、彼女はものすごく喜び、しばらくは洗車をしないまま車に乗っていた。しかし、半月後にやはりホコリが積もって、絵がほとんどわからなくなってしまったため、ようやく洗車をしたという。

▲最初に書いたポニョの絵。持ち主は喜び、絵が消えるまで洗車をせずに乗っていた。

 

1000台の車に絵を描く活動

付文豪さんが絵を描いた車のショートムービーを配信するようになると、あちこちから「私の車にも書いてほしい」「これからそっちにいくので書いて!」という声が寄せられるようになった。付文豪さんは、このような声に応えて、合計1000台の車の絵を描くことを目標に掲げた。1台の絵を描くのにかかるのは10分ほどで、求める人には無料で絵を描いている。

▲付文豪さんは、黒竜江省ジャムス市在住のアーティスト。街を美しくする活動を行なっていて、汚れた車を面白くしようと考えて、ホコリで絵を描き始めた。

 

動画が話題になり、本業にもいい影響が

これが本業にもいい影響になった。シャッターに絵を描いたり、駐車スペースに絵を描く依頼は以前からこなしていたが、その依頼が大量に入るようになったのだ。このような仕事は絵の複雑さにより600元から2000元で引き受けている。付文豪さんは子どもの頃から好きだった絵を描いて生活をしていけるようになった。

▲付文豪さんの本業は、ガレージなどの絵画制作。本業の方も注文がたくさん入るようになった。

▲付文豪さんは駐車スペースにペイントをする仕事もしている。