中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

中国のメタバース状況。教育、トレーニングの分野で産業化。スタートアップ企業も続々登場

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今回は、中国のメタバース状況についてご紹介します。

 

一時は、世界を席巻した話題となったメタバースですが、元フェイスブックのメタが株価を大幅に下げたのと同時にすっかり過去の話題になってしまった観があります。メタバースが失敗したために、メタの株価が下がったと誤解されているようなところがあります。あるいはすぐにNFTアートの話題が登場したために、そういう人たちの中ではもう「メタバースは古い」ということになっているのかもしれません。実際、メタのホライズンにアクセスしても、何だか閑散としています。

しかし、メタが株価を下げたのは、本業の広告ビジネスが危うくなっているからです。特にメタは過去に何度もプライバシー情報の不適切な取り扱いを指摘され、利用者からの信頼を失いかけています。そこにアップルが、トラッキング広告(追跡広告)を不可能にする仕組みをiPhoneなどに導入するなどして、デジタル広告は苦しい立場に追い込まれています。メタバースそのものはこれからなので、メタの株価だけで決めつけるのは早計です。

 

実際、このメタバースの話題が登場したことで、VRヘッドセット「Meta Quest 2」が好調に売れ、1500万台に迫る勢いです。

メタバースは必ずしもVRVirtual Reality、仮想現実)とイコールではないのですが、VRバイスが一定程度普及をしたということは悪いことではありません。

しかし、明らかにコンテンツ不足です。VRバイスに対するネットでの評価は「最初はすごく感動するけど、3日で飽きて、1週間で使わなくなる」という意見が多く、私も同じような感想を抱きました。

教育系のコンテンツには面白いものがいくつもありました。例えば、ISS国際宇宙ステーション)の中を歩き回れるものだとか、昆虫が象ほどの大きさに拡大され、蜘蛛が餌を捕食するところをつぶさに観察できるなどというのは、今までにない映像体験で、可能性を感じます。

しかし、ゲームを中心としたエンターテイメントになると、「Beat Saber」(飛んでくるブロックをライトセーバーで切るリズムゲーム)以外にはこれといったものがない状態です。

 

https://store.steampowered.com/app/620980/Beat_Saber/?l=japanese

VRゲームで多くの人が楽しめる唯一と言ってもいいコンテンツ「ビートセーバー」。

 

もちろん、「バイオハザード」などの著名ゲームもVR化されていて、質の高いVRゲームを提供していますが、VR化したことによって新たな遊び方が生まれるというところまではいっていないように思います。有名なゲームの世界観をVRでも楽しめるという段階にとどまっているように思います。

 

ゴーグル型のVRは、必然的に一人称視点になってしまうことが、大きな制限になっています。

実はゲームというのは、一人称視点というのはFPSFirst Person Shooter、一人称視点のシューティングゲーム)ぐらいしかなく、多くのゲームは三人称視点です。例えば、PUBGや「荒野行動」などのバトルロワイヤルゲーム(武器を使って敵を倒し、生き残ることを目指す)では、背後霊のように自分のキャラクターを後ろ上方から見るような視点になっています。

これは、その方がキャラクターの動きが見えて、操作がしやすいということもありますが、自分のキャラクターの戦うところが見えるという演出のひとつにもなっています。

FPSが一人称視点でにできるのは、ゲームの基本構造が、「隠れている相手を見つけ」「自分は物陰に隠れ」「ねらいをつけて」「引き金を引く」というシンプルなものになっているからです。引き金を引いてしまえば、もう弾丸を曲げたり、早めたりという操作はできないので、一人称視点でもじゅうぶんに操作ができ、リアルさが倍増します。

ですので、FPSVR化は比較的うまくいっていて、VRアプリのストアのランキングでも必ず上位に入ってきます。

しかし、これも従来のゲームの拡張版にすぎません。BeatSaberのように、従来の2D画面ではできない(または面白みが出ない)けど、VRでは面白いというVR特有のキラーコンテンツがもっと登場してこないと、どこかで息切れをしてしまうかもしれません。

グーグルが開発したTilt Brushも可能性を感じさせます。手を使って、空間に「立体的な絵」を描いていけるというものです。もちろん、できあがった作品は3Dモデルになります。クリエイティブ力が必要とされるため、絵心のある人でないと使いこなせませんが、これの子ども用の簡略化された3Dペイントアプリが登場すれば、キラーコンテンツになりそうです。

 

https://www.youtube.com/watch?v=91J8pLHdDB0&t=69s

▲可能性を感じさせるTilt Bruch。三次元の絵を描いていける。

 

中国でもメタバースVRの話題は盛り上がっています。メタバースは「元宇宙」(ユエンユージョウ)と呼ばれ、百度バイドゥ)はメタの「ホライズン」に対抗して、「希壌」(シーラン)を発表しています。

 

https://www.youtube.com/watch?v=VGVppkDoYjs&t=44s

百度が開発したシーラン。メタのホライズンと基本的な部分は共通している。

 

メタのホライズンは、今後どうなるかはわかりませんが、現在のところ、VRバイス「Meta Quest」向けのアプリとして提供されています。つまり、VR専用の空間です。

しかし、シーランはVR用アプリだけでなく、スマートフォンやPC用のアプリも提供されています。つまり、VRだけでなく、2Dからもアクセスが可能です。オンラインミーティングなどがやりやすくなり、実用性を高める、優れた考え方だと思います。

 

日本や諸外国では、VRバイスというと、Meta QuestシリーズかPlaystation VRが主なものになりますが、中国ではMeta Questが利用できません。Meta Questを利用するには、現在、Facebookアカウントが必須となっていて、中国政府はFacebookを遮断しているため、Facebookアカウントが取得できないからです。

とは言え、VPN経由でFacebookにアクセスしている人はたくさんいて、Facebookアカウントを取得している人もかなりの人数に上ります。淘宝網タオバオ)などのECでもMeta Questは普通に売られていて、VPN経由でFacebookにアクセスをして、Meta Questを使っている人もそれなりにいると思われます。

ただ、レビューの欄を見ると、「VPN経由でのアカウント取得は難しくありませんか」という質問が必ずあって、「難しいです。私はできませんでした」という回答が寄せられています。すでにFacebookアカウントを持っている人や、ネットに慣れている人はともかく、普通の人がMeta Questを使うのはハードルが高いようです。

中国では、Meta Questの代わりに北京小鳥看看科技がVRバイス「Pico」シリーズ(https://www.picoxr.com/jp/)を発売していて、日本でも発売されています。ラインナップにBeatSaberはないようですが、主だったVRアプリには対応しているようです。

このように環境が整ってきたため、中国にもメタバース関連の企業がさまざま登場してきて、メディアを賑わせるようになっています。その多くが、VR特化ではなく、バーチャルキャラクター制作など、他の分野にも応用が効く領域でビジネスを展開しています。

今回は、百度メタバースVRでどのような領域に注力をしていて、どのような関連企業が登場しているかという現状をご紹介します。

 

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