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ウーラマが行動経済学を応用したキャンペーンで成功。クイズは難しいほど、ネットで拡散をする

フードデリバリー「ウーラマ」がユニークなキャンペーンを行い、成功をしている。難易度の高いクイズを出し、正解の時刻に注文をすると、代金が無料になるというものだ。クイズが難しいため、ネットで情報が拡散し、広告効果は大きかったと界面新聞が報じた。

 

ウーラマが始めたユニークなキャンペーン

フードデリバリー「餓了么」(ウーラマ)が、今年2022年6月末からユニークなキャンペーンを行い、話題となるだけでなく、大きな効果を上げている。

一般的なキャンペーンというのは、割引クーポンを配布したり、一定回数以上あるいは一定金額以上使うと無料クーポンを進呈するというものが多く、このクーポンにより客数、利用回数、客単価などを押し上げるというものだ。

しかし、最近の消費者はクーポンに慣れてきていて、クーポンをもらうために無駄な利用をすることはなくなり、効果は薄れてきている。

▲フードデリバリー「ウーラマ」は、ライバルの美団に押されて、業績が伸び悩んでいた。

 

クイズを解くと、注文代金が無料になる

ウーラマのユニークなキャンペーンは、かなり難易度の高いクイズを解かなければならないというものだ。問題は毎日出題され、前日の19時に公開される。このクイズを解いて、答えである3つの時刻を導き出す。翌日、この3つの時刻の1分間の間に注文をすると無料になるというものだ。間違った時間に注文をしてしまうと無料にはならず、通常の料金が必要になる(注文のキャンセルはできる)。

このクイズが非常に難しく、ネットでは毎日、ウーラマのクイズの話題で溢れることになった。

 

動物の絵から3つの時刻をあてる

例えば8月13日の出題は、12匹の動物の絵と名前が描かれたもので、テーマは「動物保護」となっている。ここから3つの時刻を導き出さなければならない。非常につかみどころがない問題だ。

答えは、13:02、15:01、20:30であり、この3つの1分間にウーラマでデリバリー注文をすると料金が無料になる。

では、どうやってこの答えを導き出すのだろうか。中国では保護動物を1級から3級までの3段階に分けている。1級の動物はアジアゾウなど図の中の3匹の動物。これで01:03か03:01のいずれかが答えになる。2級の動物は1匹。01:02か02:01のいずれか。3級の動物は8匹なので、03:08か08:03のいずれか。

つまり(01:03、02:01、03:08)(03:01、01:02、08:03)のいずれかの組みが正解になる。

当たり前だが、深夜の時間帯というのはあり得ないので、(13:03、14:02、15:08)(15:01、13:02、20:03)となる。

これまでのパターンから、解答は「昼の時間帯」「午後の時間帯」「夕方の時間帯」と別れるようになっている。そのため、前の組は明らかにおかしい。午後の時間帯に答えが3つも集中することになってしまう。そのため、後ろの組が正解ということになる。

▲12匹の動物から3つの時刻をあてる。テーマの「保護動物」がヒントになっている。

 

ツボの位置から時刻をあてる

8月16日の出題は、テーマが「中国医学知識」。ツボの位置の図が提示され、その中で胃倉、肝、大腸の3つのツボの位置だけが青く表示されている。

胃倉は第12胸椎の高さ、横3寸の位置にあるため、12:03。

は第9胸椎の高さ、横1.5寸の位置にあるため、09:15。

大腸は第4腰椎の高さ、横1.5寸の位置にあるため、16:15。

ただし、胃倉の答えは、12:03かもしれない、12:30かもしれない。ここはもう、両方注文してみるしかない。

鍼灸のツボの図から3つの時刻をあてる。青く表示されているツボがヒントになる。

 

難しい問題ほどネットで拡散をする

このキャンペーンは大成功だった。まず問題が難しいために、多くの人が友人に助けを求め、問題を送信することでキャンペーンの告知が拡散をした。自力で解ける人はそう多くないため、SNS掲示板で問題の解答を求めて検索をする人が急増した。これだけですでにキャンペーンは成功したと言っていい。

さらに、無料になるならと注文をする人が急増したが、中には間違った時間に注文をして無料にならない人もいる。キャンセルすることもできるが、人はメニューを選び、注文操作した労力を無駄にすることを惜しいと思う気持ちが働く。どうせ食事はどこかに注文するのだからと、無料にならなくてもそのまま注文してしまう。

さらに、このキャンペーンは連日行われたため、毎日挑戦する人が続出をした。近年まれに見るうまいキャンペーンで、大きな成果もあげた。

 

人は、不確実なものに対して期待値が高くなる

このキャンペーンは、人が不確実なものに対して過度な期待を持ってしまう心理を応用している。つまり、ギャンブルに人がハマる心理だ。

香港中文大学でかつて面白い実験が行われた。春のジョギング促進キャンペーンで、15日間、1日ジョギングをするとポイントがもらえる。この参加者を2つのグループに分け、ポイントの与え方を変えた。Aグループには1日完走をすると5ポイントがもらえる。Bグループには完走をすると3ポイントか5ポイントがランダムに与えられる。

誰が考えても、Aグループの方が総ポイントが多くのなるのでいいと思うはずだ。しかし、実際には、Aグループの平均取得ポイントは7.5点だった。ジョギングをサボってしまう人も多かった。しかし、Bグループでは13.9点となった。

つまり、もらえる報酬がわかっていない方が、人は参加意欲が出てくるのだ。報酬が固定をされると、それに費やす労力と報酬を天秤にかけて、ジョギングをするかしないかを判断してしまう。しかし、報酬が分からないと、「今日はもしかして多くポイントがもらえるのではないか」という期待感が後押しをして、参加意欲が高くなる。

これにより、ウーラマのキャンペーンは、多くの人が毎日参加をしてくれるようになった。ウーラマではこのキャンペーンが好評であり、効果も高いことから、継続をして行うようになっている。